経営者保証には、経営が悪化すれば経営者個人に債務の弁済義務が発生したり、思い切った事業展開の障害になったり、後継者への負担になるなどの問題点があります。しかし、「経営者保証に関するガイドライン」の要件を満たせば、経営者保証がない融資を受けられたり、現行の経営者保証を外せる可能性があります。ここでは、そのガイドラインの内容と、実際に経営者保証を外すことができた事例を紹介します。
(本記事は2024年8月13日時点の情報です)
- 経営者保証には、経営が悪化し返済が滞ると、経営者個人に債務の弁済義務が生じるため、思い切った事業展開や事業承継の妨げになるという問題点がある。
- 一定の要件を満たすことで、経営者保証がつかない融資や、現行の融資の経営者保証を外せる可能性が高まる。
- 「経営者保証改革プログラム」により、金融機関は経営者保証が必要な理由の説明義務が生じるため、会社のどの部分を改善すれば経営者保証を外すことができるのか具体的にわかる。
経営者保証の問題点
経営者保証は、経営者が連帯保証人になることで、金融機関は貸し倒れなどのリスクが軽減され、会社は融資が受けやすくなるというメリットがありますが、一方で以下のような問題点があります。
経営が悪化したときに経営者個人の生活が犠牲になる
経営者保証をつけた借入れがある場合、経営が悪化し返済が滞ると、経営者個人に債務の弁済義務が生じます。経営者個人は預貯金や不動産など、自分の資産を切り崩して返済することになり、経営者の生活に大きな影響をあたえます。
会社が倒産した時に、経営者個人も破産を申し立てることもあり、経営者の生活再生が難しくなってしまうケースも多くあります。
経営者の負担が大きく思い切った事業展開がしにくくなる
新規に事業を始める場合や、新しい事業展開を進めたい場合には資金が必要です。金融機関から融資を受ける際に経営者保証が必要であれば、もし事業がうまくいかなかったらと躊躇し、思い切った事業展開に踏み込めないこともあります。
経営者保証があることで、起業や会社の成長の阻害要因になっている場合があるのです。
後継者に個人破産のリスクを背負わせる可能性がある
会社の事業承継をする場合には、経営者保証も引き継ぐことになります。後継者は、事業を引き継ぐと同時に個人的にも連帯債務を負うということになりますので、後継者になるのを躊躇してしまい、事業承継がスムーズに進まないことがあります。
経営者保証を外すには「経営者保証ガイドライン」が活用できる
これらの経営者保証の問題点を改善するため、2014年に「経営者保証に関するガイドライン」が策定されました。
経営者保証に関するガイドラインは、経営者保証に依存しない融資の促進を目的に策定されたもので、このガイドラインを利用すれば、経営者保証がつかない融資や、現行の融資の経営者保証を外せる可能性が高まります。
経営者保証に関するガイドラインを利用するには3つの要件を満たす、または満たす体制を整えることが必要となります。
経営者保証ガイドライン適用の3要件
経営者保証に関するガイドラインを利用するための3つの要件とは以下のとおりです。
法人と経営者の関係が明確に区分・分離されている
会社の業務や経理、資産所有などに関し、会社と経営者個人との関係を明確に区分・分離することが求められます。具体的には、会社から経営者へ貸し付けや役員報酬、賞与など、資金のやりとりを、社会通念上適切な範囲で行う体制を整えなければいけません。
また、経営者個人名義の車や資産を業務で使用しているなら、法人名義に変更しておくなど、会社と個人の一体性の解消に努める必要があります。
財務基盤が強化されている
経営者保証なしで融資を受けるには、会社の経営のみで滞りなく返済できなくてはなりません。会社の財務状況が十分に健全であり、業績が安定しているなど、返済能力があることが求められます。
具体的には、業績が安定していて十分な利益(キャッシュフロー)がある、または業績は不安定であっても、内部留保が十分にあるなどです。会社は、経営者個人の資産に頼ることなく、財務状況や経営成績の改善で返済能力を向上させ、自らの信用力の強化に努めなければなりません。
財務状況の正確な把握と経営の透明性が確保されている
経営者保証に関するガイドラインには、対象債権者から、事業計画や業績見通し、資産負債の状況などの情報提供を求められたときに、正確かつ丁寧に信頼性の高い情報の開示・説明をし、経営の透明性を確保するとあります。
経営の透明性を確保するために、決算書や貸借対照表、損益計算書の提出はもちろんですが、定期的に試算表などを使って報告することも効果的です。
また事業計画や事業の見通しに変動があった場合も、自発的に説明、報告するなど、適時適切に経営状況を開示する必要があります。
経営者保証を外すためにできること
2014年に経営者保証に関するガイドラインが策定され、さらに2023年4月から「経営者保証改革プログラム」の運用が開始されたことにより、経営者保証を外す動きが加速してきました。
経営者保証によって、経営者個人の心理的負担や、後継者が決まらないなどの問題を解消するために、経営者保証を外すための行動を検討してみましょう。
金融機関に経営者保証の解除を頼んでみる
まずは、金融機関に直接、「経営保証を解除してほしい」とお願いしてみましょう。
金融機関にはそれぞれ経営者保証に関する取り組み方針が定められており、経営者保証に関するガイドラインの3つの要件をクリアしていれば、すんなり経営者保証を解除してもらえる金融機関もあれば、解除できないといわれる金融機関もあります。
それは、経営者保証に関するガイドラインは、あくまで自主的なルールのため、経営者保証を外すかどうかの最終的な判断は、金融機関に委ねられているからなのです。
ただ、「経営者保証改革プログラム」には、保証契約の必要性について個別具体的に説明をする義務があるとされていますので、解除できない理由を詳しく説明してもらい、経営者保証を解除する可能性を高めるためにどのような改善を図れば良いかを提示してもらうことができます。
この改善策を踏まえ、会社の体制を整えたうえで再チャレンジすることができます。
税理士や中小企業診断士などへ相談する
経営者保証を外すには、金融機関に会社の信用力を認めてもらうことが大切です。経営者保証に関するガイドラインには、3つの要件の整備や運用の状況について、外部専門家による検証の実施が望ましいと書いてあります。
税理士や中小企業診断士などの専門家から、会社を客観的に評価・判定してもらい、その結果を金融機関へ提出する方法が有効です。また、専門家に経営者保証外しのための改善策を相談する際には、事業資金の調達方法についても一緒に検討することをおすすめします。例えば、不動産を担保に資金を調達する不動産担保ローンなどが選択肢となり得ます。
経営者保証を外すことができた事例
経営者保証を解除した事例をいくつか見てみましょう。
法人経理と経営者の家計を分離したケース【自動車メンテナンス業】
- 「背景」
事業承継にあたり、取引金融機関から「法人個人の分離が必要」との説明を受けていた。
- 「問題点」
業績は良く、財務内容も良かったが、経営者への多額な貸付金があった。
- 「解決策」
事業承継を円滑に進めるため「事業承継計画策定のための専門家派遣制度」を活用して、承継計画を策定。承継計画では、経営者への貸付金解消や後継者への役割等の指南を織り込んだ上で、金融機関と進捗状況を共有。
- 「結果」
金融機関から計画の実現性を評価され、新旧両経営者の経営者保証解除が実現し、事業承継の円滑な実施が可能になった。また、新経営者の負担感が軽減し、新経営者が新しいことにチャレンジできる環境になった。
財務基盤を強化したケース【金属製品製造業】
- 「背景」
事業承継後、経営改善のための改革は継続していたが、さらなる成長を目指すためには経営者保証が抑制していることから、経営者保証の解消の交渉を実施することにした。
- 「問題点」
新工場を建設したが思うような需要を獲得できず、売り上げは工場建設前より上がらなかった。そのため、新工場の固定費や工場建設に伴う年間借入返済額の増加分を自社の収益力でカバーできないことから、経営者保証を外して会社のみの収益力で返済ができるという判断が難しい。
- 「解決策」
外部の専門家とともに、経営課題を整理し、課題解決に向け、①生産体制の見直し、②技術力強化を企図したエンジニアの採用、③新市場への進出と営業力強化を実施。また、経営計画を毎期策定し、金融機関へ事業計画と実績を提出して説明。
- 「結果」
これらの改革推進により、売上・収益が向上し、全借入の経営者保証を解除することができた。以降、さらなる成長を目指し、工場を増設。
経営の透明性確保を実現したケース【卸売業】
- 「背景」
金融機関の働きかけもあり、業績が好調であるタイミングで事業承継と経営者保証解除への取り組みを開始することにした。
- 「問題点」
長期にわたり経営者への多額の貸付金があり、その内容について金融機関に説明できる材料を有していないため、経営の透明性に課題がある。
- 「解決策」
外部の専門家のアドバイスの下、代表者への貸付金の解消に向けて、引当金計上や経営者の退職金による一部充当など事業承継計画書に課題解決策を細かく落し込み、着実に実行。また、金融機関及び信用保証協会の協力を受け、資金調達を実態に即した形に見直し、返済緩和していた全借入を正常化。
- 「結果」
経営者への多額の貸付金の解消に目処がついたことで、金融機関や信用保証協会からの信頼が向上し、経営者保証を解除することができた。
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おわりに
経営者保証に関するガイドラインは、経営者保証に依存しない融資を促進する制度です。このガイドラインにある要件をクリアできるよう、会社の改善を行うことによって、これから融資を受ける場合や既存の融資の経営者保証を外す可能性が高まります。
また、経営者保証改善プログラムでは、専門家派遣の支援も構築されていますので、会社の経営を客観的に判断し、具体的な改善に導いてくれる専門家への相談をおすすめします。