個人事業主が開業届を出してないとしても、何か罰則があるわけではありません。しかし、提出していなければできない手続きが多数あるため、事業を始める際は提出しておくほうが良いでしょう。このコラムでは、個人事業主が開業届を出してない場合にできないことなどを解説します。
出さなくてもいい?個人事業主の開業届について
個人事業主として継続的に事業を行う場合は、開業届の提出が必要です。届出をせずに事業を行っても、何か罰則があるわけではありません。税務署から提出を促されることもないでしょう。
しかし所得税法では、事業を開始してから1ヵ月以内に届出することと定められています。つまり、開業届は任意で「出す」「出さない」を決められるものではなく、提出が義務付けられているものです。また、届出している方しかできない手続きがあるため、場合によっては不便を感じるかもしれません。個人事業主として事業を始める際は早めに届出を行いましょう。
開業届を出していないとできない手続き4選
開業届を出していない方は、以下の手続きができません。
- 青色申告
- 補助金や助成金など給付金の申請
- 小規模企業共済の加入
- 屋号付き口座の開設/法人用クレジットカードの作成
例えば、青色申告ができないと青色申告特別控除を受けられないため、節税面で不利になるでしょう。また、給付金を申請できなければ、資金調達が難しくなるかもしれません。ここでは、開業届を提出しないとできない手続きについて詳しく解説します。
1.青色申告
開業届を出していないと、確定申告時に青色申告を選択できません。青色申告とは、所定の方法で記帳を行った場合に税金面のメリットが得られる制度です。主な税務上のメリットには、最大65万円が控除される青色申告特別控除や、家族に支払った給与の経費計上などが挙げられます。
青色申告ができるのは、事前に青色申告の申請をして承認を受けた方のみです。申請時に提出する青色申告承認申請書を受理してもらうためには、開業届を提出しておく必要があります。
2.補助金や助成金など給付金の申請
個人事業主が資金調達する際は、補助金や助成金などを利用する方法があります。そのような給付金を申請する場合、開業届を提出していることが条件として定められているケースが多いです。
例えば、生産性向上に関わる設備投資を支援する補助金として、「ものづくり補助金」が挙げられます。ものづくり補助金を個人で申し込めるのは、すでに創業して開業届を提出している方のみです。開業届を出さないと給付金の対象から外れてしまうことがあるため、開業時に届出しておくのが賢明です。
3.小規模企業共済の加入
開業届を提出していないと、初年度は小規模企業共済に加入できません。小規模企業共済とは、共済金を積み立てることで退職金を用意できる制度です。
小規模企業共済の加入には、確定申告書の写しが必要です。しかし、確定申告をしていない初年度は写しがないため、開業届の写しを提出することとなります。開業届を出していない場合は開業届の写しも用意できないため、初年度の小規模企業共済の加入は認められません。
4.屋号付き口座の開設・法人用クレジットカードの作成
屋号付き口座を開設する際は、金融機関から開業届の控えを求められるのが一般的です。また、確定申告の前に法人用クレジットカードを作成する場合も開業届が必要です。
法人用クレジットカードに限らず、個人事業主は信用面からクレジットカードの審査に通過するのが難しいとされますが、開業届の控えを提出して事業の実態を示すことで、審査に通過できる可能性があります。法人用クレジットカードを作っておくと、事業に役立つ特典を受けられたり、経費管理を効率化できたりします。
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開業届を提出する際の注意点
さまざまな手続きができたり、節税につながったりするため、開業届を提出するメリットは大きいでしょう。一方で、開業届を提出する際には注意すべきポイントもいくつかあります。例えば、開業届を出して個人事業主になると、記帳の義務が生じます。これは青色申告に限らず、白色申告であっても記帳と帳簿の保存が必要です。
また、会社を辞めて独立することを考えているなら、開業届を提出するタイミングをよく考えなければいけません。なぜなら、開業届を提出すると失業給付(失業保険)が受給できなくなるためです。
失業給付は、求職活動中の方の生活支援を目的とした制度です。個人事業主は失業状態とみなされないため、給付対象から除外されます。失業給付を受給する予定の方は、開業届の提出時期を検討しましょう。また、再就職手当の申請も検討してみましょう。
また、扶養に入っている方が開業届を出すと、扶養から外れることがあります。扶養の条件は配偶者が加入している社会保険によって異なるため、個人事業主になる際は事前に確認しておきましょう。
「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出方法
届出を行う際は、税務署や国税庁のホームページで「個人事業の開業・廃業等届出書(=開業届)」を入手しましょう。主な記入項目は「事業主の氏名」「納税地の住所」「開業日」「職業」などです。従業員を雇用する場合は「給与等の支払いの状況」も記入します。
必要事項を記入したら、控えとしてコピーを作成し、納税地を管轄する税務署に提出します。青色申告の承認を申請する場合は、開業届と一緒に青色申告承認申請書も提出しましょう。
開業届に関するよくある疑問
特に開業届を初めて提出する方は、開業届について疑問が生じることもあるでしょう。ここでは、開業届に関するよくある疑問を解説します。開業届を提出する前に、以下の3つのポイントを整理しておきましょう。
- 開業届を出すべき方・不要な方の違いとは?
- 開業届を出すと保育園を利用できる?
- 開業届の提出を忘れた場合はどうすべき?
1.開業届を出すべき方・不要な方の違いとは?
継続して事業を行う方は開業届の提出が必要です。事務所や店舗を有する自営業者に限らず、フリーランスも該当します。また、副業として事業を行う方であっても、継続的に収入を得る場合は開業届を出さなければいけません。
反対に、継続的な収入を得ていないのであれば、開業届の提出は不要です。例えば、フリマアプリへの出品のように収入が一時的で反復しない場合は、届出の義務はありません。
2.開業届を出すと保育園を利用できる?
個人事業主が保育園利用を申請する際は開業届の写しが必要です。そのため、子どもを保育園に預けたい場合は開業届を出しておくことが重要です。
ただし、個人事業主の保育園利用が認められるかどうかは、自治体ごとの基準によって異なります。入園の可能性を広げるためには、開業届とあわせて就労状況申告書や確定申告書の控えなどを提出し、就労状況をきちんと説明することが大切です。
3.開業届の提出を忘れた場合はどうすべき?
開業届は事業を開始してから1ヵ月以内の提出が義務付けられていますが、場合によっては提出を忘れることもあるでしょう。また、事業の開始には明確な定義がないため、事業を準備する段階で開業届を提出するケースもあれば、事業が安定してから届出するケースもあります。
事業の開始から開業届の提出までに時間が空いても罰則はありませんが、気付いた時点で早めに提出することが大切です。
おわりに
開業届を出していないと、さまざまな手続きができなくなります。例えば、資金調達に役立つ給付金の申請や節税につながる青色申告ができないため、事業を進めるうえで損をするかもしれません。開業届を出すことによって得られるメリットはたくさんあります。個人事業主として事業を継続的に行うのであれば、早めに開業届を提出しておきましょう。