ファクタリングは多くのメリットがある資金調達方法です。融資と違い、売掛金を売却して資金を調達するため、期日前に現金化できます。このコラムではファクタリングのメリットや注意点を解説します。ファクタリング会社選びのポイントもご紹介するので参考にしてください。
1.ファクタリングの概要
ファクタリングとは、売掛金を売却することによって早めに現金を手にする資金調達の方法です。融資とは仕組みが異なるため、利用しても負債が増加することはありません。2020年の民法改正によりファクタリングを利用する側の保護強化が行われたため、今後さらに需要が増えることが予想されます。
ファクタリングにはいくつかの種類があります。利用目的によって「買取型」と「保証型」という2つのタイプがあり、買取型はさらに2社間ファクタリングと3社間ファクタリングに分かれます。利用目的や利用対象の違いによって「買取型」「保証型」のほかに「一括型」「国際型」「医療型」の5種類に分けることもできます。
この5つのファクタリングのなかでも特に近年注目されているのが医療機関が利用できる医療型ファクタリングです。新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、事業経営に影響を受けた医療機関を支援するファクタリングサービスとして期待されています。
ここからは「医療型」の詳細も含めて、5つのファクタリングそれぞれの特徴を解説します。また、あわせて手形割引や売掛債権担保融資との違いも説明します。
2.5種類のファクタリングがある
一般的にファクタリングは「買取型」を指しています。しかしこの「買取型」のほかに、通常の利用目的とは異なる「保証型」、売掛先の会社が申し込む「一括型」があります。貿易取引で利用される「国際型」、医療関係者が利用できる「医療型」は利用者が限定されるファクタリングです。
ここではこの「買取型」「保証型」「一括型」「国際型」「医療型」という5種類のファクタリングについてご説明しましょう。
2-1.買取型ファクタリング
買取型は売掛金を早く現金化したい場合に利用される方法です。通常、ファクタリングのほとんどは買取型です。利用者は売掛債権をファクタリング会社に売却して、手数料が差し引かれた金額を受け取ります。買取ファクタリングは融資ではないため、担保が不要です。審査対象も利用者自身ではなく売掛先となるため、中小企業や個人事業主でも利用しやすい特徴があります。
2-2.保証型ファクタリング
保証型は売掛先の信用面に不安がある場合や、取引先企業の倒産などによる貸倒のリスクを低減したい場合に利用されるファクタリングです。買取型と違って、資金調達が目的ではありません。ファクタリング会社に一定の保証料を支払うことによって、なんらかの理由で売掛金の回収ができなくなった場合に、ファクタリング会社から保証金を受け取れる仕組みになっています。
2-3.一括型ファクタリング
売掛先が主体となって申し込みをするファクタリングを一括型ファクタリングと呼びます。手形に代わるものとして利用されるのが一般的です。手形を発行するには煩雑な事務手続きや印紙税が必要になり、支払先の負担が大きくなります。手形と同じように信頼性が高くて手軽に使える仕組みとして、一括型ファクタリングが登場しました。取引の仕組みは買取型と同じです。
2-4.国際型ファクタリング
貿易取引で利用されるのが国際型ファクタリングです。国内の輸出業者が輸出時に海外の輸入業者から商品の代金を回収するために行われます。国内の輸出業者と海外の輸入業者のほかに、国内のファクタリング会社と海外のファクタリング会社の4社間で契約を結び、取引を行うケースもあります。
2-5.医療型ファクタリング
医療機関が利用できるファクタリングが医療型ファクタリングです。国民健康保険団体連合会(国保)や社会保険診療報酬支払基金(社保)から医療機関に支払われる診療報酬は、一般的に、診療日から支払われるまでに2~3ヵ月かかりますが、ファクタリング会社が診療報酬債権を買い取ることで、現金化の期間を短縮できます。医療型ファクタリングの対象となるのは病院やクリニック、介護サービス事業者、調剤薬局でそれぞれ以下の3種類に分類されます。
- ・診療(医療)報酬債権ファクタリング
- ・介護報酬債権ファクタリング
- ・調剤報酬債権ファクタリング
国民健康保険団体連合会(国保)や社会保険診療報酬支払基金(社保)から支払われる報酬を債権化するため、取引先は行政機関です。倒産の心配がないため、手数料も通常のファクタリングよりも良い条件となる傾向があります。
2-6.ファクタリングには2社間と3社間がある
買取型のファクタリングには、2社間で行うものと3社間で行うものがあります。2社間ファクタリングは利用者とファクタリング会社の間で契約を結ぶファクタリングです。取引先への通知の必要がないため、売掛金を売却した事実を取引先に知られることはありません。やり取りも2社間のみで行うため、手続きがスムーズに進むことが期待できます。
3社間ファクタリングは利用者と売掛先とファクタリング会社との間で契約を締結して行うファクタリングです。売掛債権を譲渡することを売掛先に打診して、承諾した場合にファクタリングが行われます。
2-7.手形割引や売掛債権担保融資との違い
ファクタリングと似た資金調達の仕方に手形割引と売掛債権担保融資がありますが、それぞれ明確な違いがあります。手形割引は期限到来前の手形を金融機関に売って現金化することです。手形は通常、期限到来前には換金できません。しかし手数料や利息に相当する分の割引料を支払うことで、特別に金融機関での売却が可能になります。ファクタリングと手形割引はともに売掛債権を現金化するという点では共通していますが、現金化する対象が異なります。
ファクタリングは売掛債権、手形割引では受取手形を現金化します。また、売掛債権担保融資は売掛債権を担保として融資を受ける資金調達方法です。ファクタリングが売掛債権を売却するのに対して、売掛債権担保融資は担保にし融資を受けるという点で違いがあります。
3.ファクタリングの4つのメリット
ファクタリングは売掛債権を売却する手法であり、融資とは異なるため、さまざまなメリットがあります。手続きが少なく利用しやすい仕組みになっていることが多くのメリットにつながっているといえるでしょう。主なメリットは以下の4つです。それぞれ詳しく解説しましょう。
- 期日前に売掛金の現金化が可能
- 利用者の業績と関係なく資金調達が可能
- 融資よりも審査が柔軟
- 保証人や担保が必要ない
3-1.期日前に売掛金の現金化が可能
ファクタリングの大きなメリットは、期日前に売掛金を換金できることです。通常の融資は審査にある程度の期間を要するため、資金を調達するまでに2週間から1ヵ月かかるのが一般的です。急に資金が必要になった場合には、融資では対応が難しいケースも出てくるでしょう。
ファクタリングは審査が短期間で済む傾向があり、融資よりも早く換金が可能です。資金繰りが悪化してしまい、すぐにでも現金が必要な時に、ファクタリングは有効な資金調達手法といえるでしょう。
3-2.利用者の業績と関係なく資金調達が可能
利用者の業績と関係なく資金調達できることはファクタリングの大きなメリットです。融資では、利用者の業績が悪いと審査に通るのが困難なケースも出てきます。しかし、ファクタリングは売掛金による資金調達であるため、利用者の業績は関係ありません。
売掛先の業績が特に問題なければ、売掛金を回収できるからです。利用者の業績が悪くて、通常の融資を受けられないというケースでも、ファクタリングを利用できる可能性があります。
3-3.融資よりも審査が柔軟
融資よりも審査が柔軟であることもファクタリングのメリットです。ファクタリングは売掛金を買い取ることなので、審査の内容も融資の場合とは異なります。審査での主なチェック項目は「売掛金が実在するものなのか」「定期的に発生しているのか」「期日が長すぎないか」といったことです。また審査対象は利用者ではなく取引先の会社であるため、利用者への審査は柔軟といえるでしょう。
3-4.保証人や担保が必要ない
保証人や担保が必要ないこともファクタリングのメリットです。そもそもファクタリングは融資ではなく売掛債権の売買なので、保証人も担保も不要です。保証人を探すのはそれなりに手間がかかり、精神的な負担もあるでしょう。担保を簡単に用意できないケースも考えられます。保証人も担保も必要ないことは利用者側の状況が切迫しているほど、大きなメリットとなるのです。
4.ファクタリングの3つの注意点
たくさんのメリットがあるファクタリングですが、注意しなければならないこともいくつかあります。ファクタリングの利用は緊急を要するケースが多いと考えられますが、ファクタリング会社と契約する際には、あせらずにしっかり確認すべきことがいくつかあります。主な注意点は以下の3つです。それぞれ詳しく解説しましょう。
- ・手数料が発生する
- ・掛け目が発生する場合がある
- ・債権譲渡登記が必要な場合がある
4-1.手数料が発生する
ファクタリングを利用すると、手数料がかかります。ファクタリング会社が売掛金を回収できない場合のリスクを背負うことになるため、手数料の金額は高めに設定されています。2社間ファクタリングと3社間ファクタリングでは2社間のほうが手数料は高くなる傾向があります。目安は以下のとおりです。
- ・2社間の手数料 売掛金額の10~30%
- ・3社間の手数料 売掛金額の2~20%
4-2.掛け目が発生する場合がある
ファクタリングでは掛け目が発生する場合があるので注意が必要です。売掛債権を買い取る時に額面に一定の比率をかけて買い取るケースがあります。掛け目とはその比率を表す言葉です。一般的にはファクタリング会社が売掛債権を回収した際に、掛目で減った差額分は返却されます。つまり掛目は「保証金」に近い役割を果たしているのです。
4-3.債権譲渡登記が必要な場合がある
ファクタリングは通常は契約書があれば債権譲渡ができますが、債権譲渡登記が必要な場合もあります。債権額が大きい場合に売掛債権が譲渡されたことを第三者に証明できるように、登記を求められるケースがあります。登記は、法務局で誰でも確認できますので、調べようと思った第三者は、容易に知りえることができると認識しておく必要があります。
5.ファクタリング会社選びの2つのポイント
ファクタリングで失敗しないためには、ファクタリング会社選びが重要です。ファクタリング会社は多くありますが、提供されるサービスの品質に差があるので、注意が必要です。事前に情報をしっかり収集・確認しておくことが求められます。ファクタリング会社選びのポイントは以下の2つです。
- ・手数料の金額で選ぶ
- ・償還請求権の有無で選ぶ
5-1.手数料の金額で選ぶ
ファクタリング会社を選ぶ際に重要な要素は手数料です。ファクタリング会社によって手数料率には幅がありますが、10%と20%では営業利益に大きな違いがでます。
例えば、売上が100万円で原価が80万円とした場合、手数料が10%で10万円ならば、粗利は10万円となります。しかし手数料が20%ならば20万円となり、粗利は0円です。手数料のほかに、審査手数料や事務手数料が必要になる場合があるので注意が必要です。
5-2.償還請求権の有無で選ぶ
ファクタリング会社を選ぶ場合には償還請求権の有無もチェックしましょう。償還請求権とは、売掛先の倒産などによって売掛金の回収ができなくなった場合に、売掛債権を売却した利用者に損害補償を求められる権利です。
契約したファクタリング会社に償還請求権がない場合には、売掛先の倒産リスクを背負わずに済みます。一般的には償還請求権のないファクタリングサービスがほとんどです。しかし、償還請求権が設定されているケースもあるので、申し込み前に確認する必要があります。
おわりに
ファクタリングは売掛金を売却することによって現金化する資金調達方法です。融資とは違い審査が柔軟で、早期に現金化できるメリットがあります。手数料がかかるので注意が必要ですが、医療ファクタリングのように、手数料が低く抑えられているサービスもあります。早期の資金調達がしたいという場合は、ファクタリングサービスを検討してみてはいかがでしょうか。