築古物件は新築と比べて価格が安く、不動産投資の初心者でも始めやすい選択肢の1つです。しかし、築年数が経過した物件は融資を受けにくく、購入できる方が限られてしまうこともあります。
この記事では、築古物件でも融資を受けられる可能性があることや、実際に融資を受けるためのポイントを詳しく解説していきます。不動産投資を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
- 建物の構造で耐用年数が異なり、木造は22年、鉄骨造は27年、鉄筋コンクリート造は47年です
- 築古物件の購入に際して融資を受けられるかどうかは、土地の担保評価や物件の利回り、耐震性能などが重要なポイントです
- 築古物件は価格が安く投資しやすい一方で、修繕費用がかさむ可能性があるため、購入前の収支シミュレーションが重要です
不動産投資で融資を受けられるかは耐用年数がポイント
築古物件への投資を検討する際、重要なポイントとなるのが物件の耐用年数です。金融機関は、この耐用年数をもとに融資の可否や条件を判断します。ここからは、耐用年数の基礎知識と、融資への影響について詳しく見ていきましょう。
物件の耐用年数とは?
不動産投資において、耐用年数には「法定耐用年数」と「物理的耐用年数」の2種類があります。
法定耐用年数は、税法上で定められた減価償却費を計算するための期間のことです。一方、物理的耐用年数は、建物が実際に使用可能な期間を示しています。
特に法定耐用年数は、不動産投資ローンを組む際の重要な指標となります。金融機関はこの年数を基準に融資期間を設定し、返済計画を立てるためです。そのため、投資物件を選ぶ際は、必ず法定耐用年数を確認しておきましょう。
建物の構造による耐用年数の違い
建物の構造によって法定耐用年数は大きく異なります。主な構造別の法定耐用年数は以下の通りです。
構造(住宅) | 耐用年数 |
---|---|
木造 | 22年 |
鉄骨造 | 骨格材4mm超:34年 |
骨格材3mm超4mm以下:27年 | |
骨格材3mm以下:19年 | |
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は47年ですが、構造の堅牢性を考慮し、より長い期間を耐用年数と考えて融資する金融機関もあります。ただし、築年数が古くなるほど、融資条件は厳しくなる傾向にあることを覚えておきましょう。
築古物件の購入に融資は受けられる?
築30年以上の物件は築古物件と呼ばれることが多く、一般的には融資を受けにくいとされています。これは、不動産投資ローンの返済期間が法定耐用年数に基づいて設定されるためです。
しかし、物件や金融機関の条件によっては、融資を受けられる可能性もあります。以下で具体的な条件を見ていきましょう。
金融機関によっては融資可能
不動産投資ローンの審査基準は、金融機関によって大きく異なります。法定耐用年数にとらわれず、独自の基準で融資判断を行う金融機関であれば融資を受けられるでしょう。
例えば、建物の状態や収益性を重視して審査を行う場合などです。特に、地方銀行やノンバンクは、物件の収益力や借入人の返済能力を総合的に判断する傾向にあるため、築古物件への融資に柔軟な対応をしてくれる可能性が高まります。
土地の担保評価が高ければ融資可能
築古物件は建物の価値が低くても、土地の評価額が高ければ融資を受けやすくなります。特に都心部や駅近の物件は、土地の価値が維持されやすく、融資を受けやすい傾向にあるのです。
金融機関は担保評価時に、建物と土地を総合的に判断します。例えば、対象不動産があるエリア内で希少な大きさの土地であったり、最寄り駅から徒歩10分以内であったりすると、建物が古くても融資を検討してくれる可能性が高まります。また、再建築や再開発の可能性がある土地であれば、さらに融資を受けやすくなるでしょう。
築古物件で不動産投資を行うメリット・デメリット
不動産投資において、築古物件には新築や築浅物件とは異なる特徴があります。ここからは、投資判断の重要な要素となるメリットとデメリットについて、具体的な数値を交えながら詳しく解説します。
【メリット1】高い利回りが期待できる
築古物件は物件価格が安いため、同じ家賃収入でも高い利回りが期待できます。
例えば、月額家賃8万円の物件で比較すると、3,000万円の新築物件の表面利回りは「8万円×12ヶ月÷3,000万円」で3.2%になりますが、1,500万円の築古物件だと6.4%まで上昇します。
ただし、空室リスクや修繕費用なども考慮する必要があるため、表面利回りのみで判断しないようにしましょう。
【メリット2】物件価格が安い
物件価格の安さは、築古物件の大きな特徴のひとつです。
東日本不動産流通機構の「首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況」によると、東京都の中古マンションの平米単価は以下のとおりです。
〜築5年 | 〜築10年 | 〜築15年 | 〜築20年 | 〜築25年 | 〜築30年 | 築30年〜 |
---|---|---|---|---|---|---|
168.6万円 | 133.8万円 | 123.6万円 | 106.8万円 | 93.7万円 | 81.6万円 | 62.9万円 |
出典:東日本不動産流通機構「首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況」
築5年と築30年を比較すると、価格に50%程度の差があることがわかります。そのため、築古物件は自己資金が少ない方や、複数物件への分散投資を考えている方にとって、有効な選択肢となるでしょう。
【メリット3】減価償却によって節税が期待できる
減価償却とは、建物など時間の経過とともに価値が減少する資産(減価償却資産)の取得費用を、使用可能な期間にわたって分割して必要経費として計上できる制度です。
不動産投資では、この仕組みを活用することで、所得税の計算で認められる経費を計上できるため、節税効果が得られます。
なかでも築古物件は残存耐用年数が短いため、1年あたりの減価償却費が大きくなります。例えば、建物部分に2,000万円の価値がある築30年のRC造マンション(新築時の法定耐用年数47年)の場合、計算式は以下の通りです。
・計算式:法定耐用年数-経過年数+(経過年数×20%)
・具体例:47年-30年+(30年×20%)=23年
<年間の減価償却費>
・築古物件:2,000万円÷23年≒87万円
・新築物件:2,000万円÷47年≒42.5万円
この計算例からわかるように、築古物件は新築物件と比べて年間に計上できる減価償却費が増えるため、課税所得を抑えられます。
ただし、税務上のメリットは、あくまでも投資判断の一要素として捉えましょう。物件の収益性や将来的な価値など、総合的な観点から投資判断を行う必要があります。
【デメリット1】融資を受けにくい
金融機関は一般的に、築古物件への融資に対して慎重な姿勢を示します。特に築30年以上の物件では、融資期間が短くなったり、金利が上乗せされたりすることが多いと考えましょう。また、一部の金融機関では築古物件への融資を行っていない場合もあります。
【デメリット2】購入後に修繕費用がかかりやすい
築古物件は、建物の経年劣化によりさまざまな修繕が必要になる場合があります。例えば、トイレや浴室、キッチンなど、水回り部分の設備の入れ替えや、エアコン、給湯器の故障などです。
建物が老朽化すると、入居者が集まらない原因になってしまうため、リフォームの必要性も考えておくことが大切です。設備の更新や日常的な修繕費用も新築物件より多くかかることを想定しておきましょう。
【デメリット3】耐震やセキュリティの面で不安が大きい
1981年5月31日以前に建築確認を受けた物件は、「旧耐震基準」が適用されており、現代の耐震基準を満たしていないケースが多いです。そのため、旧耐震物件の場合、金融機関からの融資が一層困難になると考えましょう。
また、オートロックや防犯カメラなどの設備が整っていないケースも多く、これらの導入には追加の投資が必要になります。特に、女性入居者や防犯意識の高いテナントの確保が難しくなる可能性も考慮しておきましょう。
築古物件でも融資を受けるコツ
築古物件は一般的に融資を受けにくいものの、金融機関は収益性や担保価値を総合的に判断して融資を決定します。そのため、築古物件でも融資を受けるには、以下のコツを踏まえて金融機関と交渉しましょう。
- 利回りが高い物件を選ぶ
- 耐震性の高さを証明する
- リフォームを前提として融資を申し込む
それぞれ解説します。
利回りが高い物件を選ぶ
金融機関は融資をする際、物件の収益性を重視します。築古物件でも融資をしてもらうために、以下のような準備をしましょう。
- 近隣相場より安価な物件を探す
- 賃料収入の確実性を示す資料(過去3年分の収支資料)を用意する
- 実質利回り(経費控除後)の計算書を作成する
- 将来の賃料収入予測を示す資料を準備する
これらの資料をもとに、物件の収益性を具体的な数字で示すことで、金融機関の審査担当者に対して説得力のあるプレゼンテーションができます。特に実質利回りの計算書は、経費を考慮した実態に即した収益性を示すため、融資判断において重要な判断材料となります。
耐震性の高さを証明する
1981年5月31日以前に建築確認を受けた物件であっても、耐震性が確保されている場合、金融機関からの評価が高くなります。耐震性を証明する方法は以下のとおりです。
- 耐震診断の実施
- 診断結果に基づく耐震基準適合証明書の取得
- 必要に応じた耐震補強工事の実施
- 工事後の耐震基準適合証明書の取得
耐震診断を実施し、基準を満たしていなかった場合は、耐震補強工事を実施しましょう。その後改めて耐震基準適合証明書を取得すると、金融機関に対して物件の安全性と資産価値を明確に示せます。これにより、融資期間の延長や金利の優遇を受けられる可能性も高まるでしょう。
リフォームを前提として融資を申し込む
リフォームを前提に融資を申し込むことで、融資審査が通りやすくなる可能性があります。なぜなら、リフォームによって物件の価値が高まることが期待できるからです。実際にリフォーム前提で申し込む際は、以下のような書類を準備しましょう。
リフォーム計画書 | ・工事内容の詳細 ・概算費用(見積書) ・工期スケジュール ・完成後の想定賃料 |
リフォーム後の収支計画 | ・予想される賃料収入の増加額 ・想定入居率の向上効果 ・投資回収期間の試算 |
物件価値向上の根拠資料 | ・近隣の改装済み物件の取引事例 ・リフォーム後の想定査定額 ・エリアの将来性に関する資料 |
このように具体的な計画と資料を準備することで、融資判断のプラス要素となる可能性があります。
築古物件をローンで購入するときの注意点
築古物件をローンで購入する際は、新築物件とは異なる特有のリスクや課題があります。ここからは、購入前に確認すべきポイントを3つ紹介します。
- 毎月の返済額が高額になる可能性がある
- 売却は難しい
- 購入前に収支のシミュレーションをする
それぞれ見ていきましょう。
毎月の返済額が高額になる可能性がある
築古物件は残存耐用年数が短いため、金融機関は融資期間を短く設定する傾向にあります。例えば、新築物件では35年の返済期間が設定される一方、築30年の物件では15年程度に制限されることもあるでしょう。具体的な返済額の違いを見てみましょう。
【借入額3,000万円、金利2%の場合】
- 新築(35年返済):月々約10万円
- 築古(15年返済):月々約19万円
また、金利が高く設定されることもあります。このように、返済期間や金利によって毎月の返済額が大きく異なります。空室や修繕などの予期せぬ支出にも対応できるよう、十分な資金的な余裕を持っておきましょう。
売却は難しい
築古物件は経年とともに市場価値が低下するため、売却時の価格が購入時の価格を下回る(オーバーローン)恐れがあります。土地の価値も立地によっては下落すると考えましょう。
また、以下のような理由で買い手が限定される可能性があります。
- 金融機関の融資が受けにくい
- 投資家の関心が低い
- リフォーム費用の負担が大きい
築古物件を売却する際は、建物としての価値よりも、土地としての価値や将来性が重要な判断材料となります。特に、最寄り駅からの距離や周辺の開発計画など、立地の優位性を示せる物件であれば、売却時の選択肢が広がるでしょう。
購入前に収支のシミュレーションをする
築古物件は耐用年数が短く空室リスクも高いため、長期的な収支シミュレーションが必要です。想定される家賃収入だけでなく、修繕費や管理費などの支出も考慮し、収益が安定的に見込めるか慎重に検討しましょう。
築古物件の収支計画では、以下の項目を含めた詳細なシミュレーションが必要です。
- 想定家賃収入
- 空室率
- 長期的な賃料下落の可能性
- ローン返済額
- 固定資産税
- 管理費用
- 修繕費用(大規模修繕の可能性も考慮)
築古物件は予期せぬ修繕費用が発生するリスクが高いため、毎月の収支に余裕を持たせることが重要です。長期的な視点で収支を見通し、安定的な収益確保が見込めるかどうかを慎重に判断しましょう。
セゾンの「不動産フリーローン」なら使い道自由
築古物件への投資では、物件購入だけでなく、リフォームや修繕などさまざまな資金需要が発生します。セゾンの不動産フリーローンは、こうした多様な資金ニーズに柔軟に対応できる融資商品です。ここからは、セゾンの不動産フリーローンの特徴と活用方法を詳しく解説します。
セゾンの不動産フリーローン4つの特徴
セゾンの不動産フリーローン4つの特徴は、以下のとおりです。
- 不動産担保ローン
- 資金の使い道は自由
- WEBで借入申し込みができる
- 返済方法が選べる
それぞれみていきましょう。
不動産担保ローン
自宅以外の保有不動産を担保として設定することで、通常の無担保ローンと比べて有利な条件での借り入れが可能です。融資限度額は1,000万円以上、担保評価に応じて柔軟な融資条件が設定されます。
資金の使い道は自由
物件購入資金はもちろん、リフォーム費用、修繕費用、事業資金、相続対策など、幅広い用途に活用できます。また、複数の既存ローンの借り換えにも利用可能で、返済負担の軽減にも役立ちます。
WEBで借入申し込みができる
不動産フリーローンは、設定された極度額(限度額)の範囲内で、必要な時に何度でも借り入れと返済を繰り返すことができる”極度型”ローンです。そのため契約後は、24時間いつでもWEBで追加の借入申込が可能です。初回契約時に審査が完了するため、その後の借入手続きはスピーディで、急な資金需要にも対応できるでしょう。
返済方法が選べる
回数指定払い(元利均等返済)と元金据置返済の2種類から選択できます。返済方法は借り入れの都度選択可能です。
不動産フリーローンの活用例
セゾンの不動産フリーローンは、不動産投資家と会社員の方、それぞれの資金ニーズに柔軟に対応できる商品です。ここでは、具体的な活用事例についてご紹介します。
不動産投資家の利用事例
ご利用方法として多いのは、物件購入やリフォーム資金としての利用です。通常の金融機関では審査に時間がかかり、購入のタイミングを逃してしまうケースもありますが、本商品は初回契約後のWEB申し込みで最短4営業日での融資が可能です。
会社員の利用事例
会社員の方からは、相続物件の修繕費用や子どもの教育資金など、複数の資金需要に対応できる融資として好評です。特に、目的ローンのように使途ごとに書類を準備する必要がなく、一括での申し込みが可能な点が特徴です。
また、相続物件を担保に、融資が付けられなかった築古物件の購入や不動産購入資金の不足部分の補填などに活用も可能です。
このように、セゾンの不動産フリーローンは、不動産投資に関わるさまざまな資金ニーズに対して、柔軟な借入・返済プランを提供しています。WEBでの手続きが中心となるため、仕事で忙しい方でも効率的に資金調達が可能です。ぜひご活用ください。
おわりに
築古物件は、物件価格が安く高い利回りが期待できる一方で、融資を受けにくい、修繕費用がかさむなどの課題もあります。これらの課題に対しては、物件選びの段階で収支計画を十分に検討し、耐震性や立地条件をしっかりと確認することが重要です。
また、金融機関との交渉においては、物件の収益性や安全性を具体的な数字で示すことで、融資を受けやすくなるでしょう。セゾンの不動産フリーローンのような柔軟な融資商品も、投資をより効率的に進めるための選択肢の1つとなります。築古物件への投資は、適切な物件選びと資金計画があれば、十分に収益を上げることができる投資手法です。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。