子どもが独立し、夫婦ふたりの生活には今の自宅は広すぎると感じませんか。また、静かな郊外でのんびり暮らしたい、住みやすくリフォームしたいという方もいらっしゃるでしょう。しかし、住み替えもリフォームもそれなりに費用がかかります。60歳を超えてからの大きな出費に悩んでいる方、ローンについて不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
- 60歳からでも住宅ローンを借りられるのか不安
- 返済が滞らないか不安
- 60歳から住宅ローンを組むデメリットを把握しておきたい
この記事では、60歳からでも住宅ローンを組む可能性や、審査に通過しやすくなるポイントを解説します。また、60歳から住宅ローンを組むデメリットと注意点についても詳しくご紹介します。この記事を参考にすれば、60歳からでも安心して住宅ローンを組めるようになるでしょう。
60歳からでも住宅ローンは組める
結論、60歳からでも住宅ローンは組めます。住宅ローンの要件によっては60歳でも借り入れが可能であり、年齢を理由に住宅ローンを諦める必要はありません。
代表的な住宅ローンの例として、フラット35の場合、契約時の年齢が満70歳未満と規定されています。
ただし若い年代と比べて、以下の3つの項目が原因で審査に通りにくいことは知っておきましょう。
- 健康状態
- 年齢制限
- 収入の減少
一つひとつ確認していきましょう。
健康状態
一般的に住宅ローンを組む際は、団体信用生命保険(団信)に加入しなければいけません。
団信とは、住宅ローンの債務者が死亡または高度障害状態になった際、生命保険会社が残債を肩代わりしてくれる保険商品です。
加入の際は、健康状態の告知をしなければならない「告知義務」が課せられます。したがって、健康状態が良好でない場合、加入を断られる恐れがあります。
もし健康状態を理由に団信の加入を断られた場合は、健康に不安のある方でも加入しやすい「ワイド団信」や、加入が必須ではない「フラット35」の利用を検討しましょう。
参照元:住宅金融支援機構「【フラット35】の団体信用生命保険」
年齢制限
多くの金融機関では、住宅ローンに年齢制限を設けています。例えば三菱UFJ銀行は、住宅ローンの利用者を「満18歳以上70歳未満」、完済時に「80歳の誕生日まで」としています。
国土交通省の「令和5年度 民間住宅ローンの実態に関する結果報告書」によると、金融機関が審査の際に注意する項目は以下のとおりです。
項目 | 金融機関が考慮すると回答した割合 |
---|---|
完済時の年齢 | 98.5% |
健康状態 | 96.6% |
借入時の年齢 | 96.0% |
年収 | 94.0% |
勤続年数 | 93.6% |
参照元:令和5年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書 P19-国土交通省
同報告書によると、金融機関は「完済時の年齢」を最も重視しています。また「借入時の年齢」も3番目に考慮されやすく、高齢になるほど年齢制限で審査に落ちる可能性は高まります。
収入の減少
金融機関は、収入によって返済負担率の基準を設けています。返済負担率とは年収に占める返済額の割合です。
【計算式】
年間のローン返済額÷年収×100
例えば、年収500万円の方が年間150万円をローン返済している場合、返済負担率は30%(150万円÷500万円×100)となります。
一般的に返済負担率を30%〜35%以内にすると、審査に落ちにくいといわれています。
また、収入が低くなるほど返済負担率の上限は低くなる傾向があります。例えば、フラット35では、年収400万円を境に返済負担率の上限が変化します。
- 年収400万円未満:30%
- 年収400万円以上:35%
60歳を過ぎると多くの方が定年を迎え、一般的に収入が減少します。その結果、返済負担率が上昇しやすくなり、住宅ローンの審査において不利になるケースが多いです。
60歳から住宅ローンの審査を通すポイント
60歳からの住宅ローンは、以下のポイントを踏まえると審査に通過しやすくなります。
- 頭金を増やして月々の返済額を減らす
- 他の借り入れを先に返済する
- 複数の金融機関を検討する
- 値下がりしにくい物件を購入する
- 親子リレーローンを検討する
少しでも審査に不安のある方は、これらを実施すると通過する可能性が高まるので、参考にしてください。
頭金を増やして月々の返済額を減らす
前述したように、返済負担率は、住宅ローンの審査において非常に重要です。返済負担率が高いと、金利の上昇や収入の減少時に滞納のリスクが増すため、金融機関は慎重に審査を行います。
一般的に金融機関の住宅ローンの審査では、返済負担比率の基準を35%以下に設定していると言われています。ただし金融機関や年収によっては、返済負担比率の基準が30%に設定されているケースもあるため、利用前の確認が必要です。また頭金を多めに入れることで借入額が減り、月々の返済額も減少します。その結果、返済負担比率が低下し、審査に通りやすくなります。
他の借り入れを先に返済する
他の借り入れがあると、審査に通りにくくなったり、希望額まで借りられなかったりすることがあります。特に、カードローンやカーローンなどの借り入れがある場合は審査で不利になりやすいです。
住宅ローン以外の借り入れがある方は、なるべく審査までに完済しておきましょう。
複数の金融機関を検討する
複数の金融機関を検討することも有効です。金融機関によって審査基準は異なるため、ひとつの金融機関の審査で落ちたとしても、別の金融機関では通る可能性が十分にあります。
ただし、あまりに多くの金融機関に申し込みをすると、審査で不利になる可能性があります。申し込みをした情報は、信用情報機関に登録され、他の金融機関も参照できます。申し込み件数があまりに多いと、「問題のある方」と認識されるリスクがあるため、審査は1社ずつ受けましょう。
また、金融機関によって、住宅ローン返済時に適用される金利やオプションも異なります。より有利な条件で借り入れするためにも、複数の借入先を比較検討することが重要です。
担保価値の高い物件を購入する
担保価値の高い物件を購入すると審査に通過しやすくなります。住宅ローンを借りる際は、購入する物件を担保に入れます。
金融機関は万一返済が滞った場合に、担保に入れた物件を売却し、借入金の回収を行います。そのため駅近や築浅の物件は担保価値が高く、金融機関からの評価も良くなります。
借り入れを希望する物件で審査が通らない場合は、担保価値の高い物件に狙いを定めることも検討しましょう。
親子リレーローンを検討する
親子リレーローンは、親と子の2世代で契約する住宅ローンです。初めは親が返済を行い、後に返済義務が子に引き継がれます。借入期間は子の年齢を元に算出するため、60代の方でも長期間の借り入れが可能です。
ただし、団信には親と子のどちらかしか加入できないため、万一の事態への備えは民間の生命保険で対策しなければなりません。
60歳から住宅ローンを組むデメリットと注意点
60歳からでも住宅ローンを組むことはできますが、次の3点には注意が必要です。
- 借入期間が短く月々の返済額が高くなる
- 返済が滞ると物件を売却しなければならない
- 老後資金の取り崩しが発生する
よく考えておかないと、住宅ローンが組めないことや、住宅ローンを組んでものちのち大変な思いをしてしまう可能性もあるのでご注意ください。
借入期間が短く月々の返済額が高くなる
高齢で住宅ローンを組むほど、返済期間が短くなる一方で、月々の返済額は高くなります。先述の三菱UFJ銀行のように、80歳の誕生日までに完済しなければならないと定めている金融機関もあります。
45歳以下で住宅ローンを組むと最大35年の返済期間がありますが、60歳で組むと20年以内に住宅ローンを完済しなければいけません。そのため、月々の返済額が大きくなり、老後の生活に支障をきたす恐れがあります。
返済が滞ると物件を売却しなければならない
返済が滞ると、物件を売却して借入金を返済しなければいけません。売却金額が残債よりも少ない場合、負債だけが残るリスクがあります。
このリスクを避けるためには、担保価値の高い物件を購入することや、自己資金を多めに持つといった対策が必要です。
老後資金の取り崩しが発生する
一般的に60歳から住宅ローンを組むと、定年退職後も返済が続きます。基本的には退職後の収入や年金で返済を行いますが、返済が滞った場合には退職金をはじめとした老後資金を取り崩す必要が出てくるかもしれません。
老後資金を取り崩すと、趣味や習い事などの楽しみを諦めざるを得なくなる恐れがあります。60歳から住宅ローンを組む際は、無理のないしっかりとした資金計画を立てましょう。
60歳で利用したい住宅ローン
60歳で住宅ローンを組む場合、シニア向けの住宅ローンを検討してみるのもおすすめです。特に有名なのは、以下の3つです。
- フラット35
- リバースモーゲージ型住宅ローン
- リ・バース60
シニア向けでも有名なサービスなだけあって、一般的な住宅ローンを借り入れするよりも多くのメリットがあります。ひとつずつ見ていきましょう。
フラット35
「フラット35」は、60歳以上でも借り入れができる住宅ローンの代表格です。
クレディセゾンが取り扱っているフラット35は、業界最低水準の固定金利による借り入れができます。固定金利は急な金利変更がなく、資金計画を立てやすいのが魅力です。
クレディセゾンの住宅ローンは自己資金ありの「保証型」と、できるだけ自己資金を抑えた「買取型」の2種類をご用意しています。
「保証型」は一定の自己資金を求められますが、低金利なのが強みです。一方で「買取型」は物件価格の100%まで融資が受けられ、老後資金を取り崩したくない方におすすめします。
クレディセゾンは、無理のない住宅ローンの設計をお手伝いいたします。
リバースモーゲージ型住宅ローン
「リバースモーゲージ型住宅ローン」も検討したい住宅ローンのひとつです。60歳以上を対象にした住宅ローンの一種で、自宅の資産価値を利用して借り入れを行います。
借入金の用途に制限はなく、老人ホームの入居資金から旅行費などの趣味に使うこともできます。
一方で自宅を担保にするため、使える範囲が首都圏や関西圏など、大都市地域に限定される点がデメリットです。
年利は2%~4%と通常の住宅ローンよりも高めかつ、融資限度額も低めですが、月々の支払いは利息のみなので、老後資金を取り崩す必要がありません。
また、リバースモーゲージには「リコース型」と「ノンリコース型」の2種類があります。
- リコース型:契約者が死亡した場合、相続人が残債を一括返済する
- ノンリコース型:担保にしていた土地や建物を売却して返済する
リコール型は比較的金利が低く、ノンリコース型は相続時に負債が残らないメリットがあるため、ニーズに応じて選択可能です。
リ・バース60
上記のリバースモーゲージ型住宅ローンの中で住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して実現している住宅ローンを「リ・バース60」と言います。
リ・バース60の借入目的は住宅資金に限られているため、注意しなければなりません。ただしエリアの制限はなく、一般的なリバースモーゲージ型住宅ローンよりも利用しやすいのもメリットです。
リ・バース60に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。ご一読ください。
リースバックとは
住宅ローンとは少し違いますが、自宅を活用し、まとまった資金を得るリースバックをご紹介します。リースバックとは、所有物件をリースバック事業者に売却し、同時に賃貸借契約を結ぶ取引です。今の自宅に愛着があり、ずっと住み続けたい方におすすめです。リースバックの流れは以下のとおりです。
- リースバック事業者を選定する
- 査定を依頼する
- 机上査定と訪問査定を受ける
- 契約条件の提示を受ける
- 保証会社の審査を受ける
- 不動産売買契約と賃貸借契約を締結する
- 引き渡しと賃貸借契約を開始する
- 毎月賃料を支払いながら、自宅に住む
リースバックを利用するとまとまったお金を得ながら、今の自宅に住み続けられます。引っ越しをする必要がないため、人気が高いです。
リースバックは、相続時のトラブル回避が期待できます。不動産は売却時期や不動産会社によって、大きく価格が変動します。また、売却に時間がかかるため、相続税の申告時期までに現金化ができない場合もあります。そのため、相続財産の中に不動産があると、相続時にトラブルが生じやすいです。
リースバックを活用すると、事業者に自宅を買い取ってもらい現金化できるので、相続時のトラブルを未然に防げます。また、所有物件を売却するため、固定資産税等の不動産所有にかかる税金を支払う必要がありません。リースバックの仕組みについては、こちらの記事で詳しく解説しているので、気になる方は参考にしてください。
おわりに
60歳からでも住宅ローンを組める可能性は十分にあります。しかし、年齢や健康問題などで審査に通らないリスクは、若い世代よりも高くなります。
万一審査に通らなかった場合は、一般的な住宅ローンに代わる方法も活用しましょう。
クレディセゾンが取り扱っている「セゾンの住宅ローン」では、多様なフラット35を取り扱っています。団体信用生命保険もさまざまなタイプがあり、充実した保障プランまで選択可能なので、住宅ローンの利用を考えている方は、検討してみてはいかがでしょうか。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。