「人生100年時代」といわれるようになり、老後資金への関心が高まっています。平均寿命が延びるのは喜ばしい一方で、老後の生活費がいくら必要か不安を感じる方もいるでしょう。セカンドライフを安心して過ごすには、必要な資金の目安を知り、早めに準備をすることが大切です。本コラムでは、高齢夫婦の生活費と年金額の目安や必要な資金を準備する方法を紹介します。
- 高齢夫婦世帯(無職世帯)に必要な老後資金は1,000万円が目安
- 実際に必要な老後資金を知るには年金見込額や生活費、その他の支出を把握する必要がある
- 夫婦の老後資金を貯めるには投資信託やiDeCo、NISAなどを活用するのが有効
- 持ち家を活用して老後資金を確保するなら「リースバック」という選択肢もある


老後にいくら必要?高齢夫婦の生活費と年金額を紹介

老後にいくら必要かを考えるときは、平均的な生活費や年金額を把握することから始めるといいでしょう。
まずは、高齢夫婦の生活費と年金額の平均額をもとに、必要な老後資金の目安を紹介します。
老後は夫婦2人でいくらの生活費がかかる?
総務省が発表している「家計調査年報2022年」によると、高齢夫婦世帯(無職世帯)の消費支出(食費・光熱費・医療費など)は月額239,441円です。高齢夫婦世帯とは、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦1組のみの世帯を指します。
内訳をみると、最も大きいのが食料の68,078円で、消費支出の約3割を占めています。住居は15,791円と比較的小さいことから、持ち家に住んでいる方が多いと考えられます。
非消費支出(税金や社会保険料など)32,449円を加えると、実支出は月額271,890円となります。
参照元:総務省|家計調査年報2022年|4 (高齢者のいる世帯)世帯主の就業状態別|高齢夫婦世帯(無職世帯)
老後は毎月いくら収入がある?
同じく総務省の「家計調査年報2022年」によると、高齢夫婦世帯(無職世帯)の実収入は月額246,034円です。
内訳は主に社会保障給付(年金収入)で全体の約9割を占めていますが、勤め先収入や事業・内職収入、財産収入なども含まれています。実収入から税金や社会保険料を差し引いた「可処分所得(いわゆる手取り)」は月額213,585円です。
この結果から、高齢夫婦世帯(無職世帯)の月間の家計収支は以下のように計算できます。
可処分所得213,585円-消費支出239,441円=▲25,856円
あくまでも平均額を用いて算出した金額ではありますが、毎月約26,000円不足している計算になります。
参照元:総務省|家計調査年報2022年|4 (高齢者のいる世帯)世帯主の就業状態別|高齢夫婦世帯(無職世帯)
夫婦に必要な老後資金は1,000万円が目安
ここまでの数値を用いて、高齢夫婦世帯(無職世帯)に必要な老後資金をシミュレーションすると以下のようになります。
毎月の生活費の不足分26,000円×12ヵ月=年間の赤字312,000円
年間の赤字312,000円×30年=936万円
仮に65歳で定年退職し、セカンドライフで過ごす期間が30年間だとすると、夫婦に必要な老後資金の目安は約1,000万円となります。
ただし、将来的に年金の支給額が減少したり、物価の上昇が続いたりすることがあれば、1,000万円では足りない可能性もあるでしょう。また、平均寿命を超えて長生きした場合も、必要な老後資金は増えることになります。
老後に必要なお金を調べてみよう

前述の金額はあくまでも目安です。実際にいくら必要になるかは家庭によって異なるため、次の手順で調べる必要があります。
- 受け取れる年金額を調査
- 老後の生活費を計算する
- シミュレーションする
各項目について詳しく見ていきましょう。
ステップ①受け取れる年金額を調査
年金収入だけでは不足する老後の生活費を準備するには、いくら年金を受け取れるかを把握することが重要です。具体的には、公的年金(国民年金・厚生年金)と私的年金(iDeCoなど)の年金額を調べる必要があります。
公的年金の受取額は、日本年金機構の「年金見込額試算」からシミュレーションができます。年金見込額試算を利用するには「ねんきんネット」への登録が必要です。登録方法は、「マイナポータルとの連携」「ユーザIDの取得」の2つがあります。
令和6年度の公的年金の受取額の例は以下のとおりです。
厚生年金(老齢基礎年金を含む夫婦2人分の標準的な年金額) | 月額230,483円 |
国民年金(老齢基礎年金:満額) | 月額68,000円 |
※厚生年金は平均的な収入(平均標準報酬43.9万円)で40年間就業した場合の給付水準
私的年金については、加入中の金融機関などに確認しましょう。
参照元:日本年金機構|「ねんきんネット」による年金見込額試算
ステップ②老後の生活費を計算する
年金見込額を把握できたら、老後の生活費がいくらかかるかを計算します。食費や光熱費など、支出項目別に毎月の生活費を改めて調べてみましょう。持ち家に住んでいる場合は、固定資産税も加える必要があります。
老後の生活費の目安として、総務省の「家計調査年報2022年」における高齢夫婦世帯(無職世帯)の消費支出の内訳を紹介します。
項目 | 月間の支出 |
---|---|
食料 | 68,078円 |
住居 | 15,791円 |
光熱・水道 | 22,574円 |
家具・家事用品 | 10,397円 |
被服及び履物 | 5,087円 |
保険医療 | 15,933円 |
交通・通信 | 29,748円 |
教養娯楽 | 21,806円 |
交際費 | 22,684円 |
その他(雑費、こづかいなど) | 27,344円 |
あくまでも平均額なので、自分の生活に合わせて金額を調整しましょう。上記のほかに、介護費や冠婚葬祭費、お墓購入費など、イレギュラーでかかるお金を考慮することも大切です。
参照元:総務省|家計調査年報2022年|4 (高齢者のいる世帯)世帯主の就業状態別|高齢夫婦世帯(無職世帯)
ステップ③シミュレーションする
最後に、老後資金がいくら必要かをシミュレーションしましょう。老後資金の金額の目安は、次の計算式で求められます。
必要な老後資金=(毎月の生活費-毎月の収入)×12ヵ月×老後の生活期間(年数)+その他の支出
<具体例>
- 毎月の生活費:27万円
- 毎月の収入:23万円(主に年金収入)
- 老後の生活期間:30年
- その他の支出:800万円(介護費、葬儀費用など)
必要な老後資金2,240万円=(27万円-23万円)×12ヵ月×30年+800万円
厚生労働省の「令和4年簡易生命表」によれば、平均寿命は男性81.05年、女性87.09年です。今後は平均寿命がさらに延びる可能性も考えられます。老後の生活期間は退職から10年・20年・30年生存する場合など、さまざまなパターンを想定してシミュレーションするといいでしょう。
公的年金の収入を調べるときは、先ほど紹介したねんきんネットの「年金見込試算」を活用すると便利です。今後の働き方や老齢年金を受け取る年齢など、詳細な条件を設定して年金見込額を試算できます。
参照元:日本年金機構|「ねんきんネット」による年金見込額試算
夫婦の老後資金を貯めるおすすめの方法5選

夫婦の老後資金を貯めるのにおすすめの方法は次の5つです。
- 投資信託
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
- NISA
- 個人年金保険
- 不動産投資
それぞれの方法について詳しく解説します。
投資信託
投資信託は、複数の投資家から集めた資金を1つにまとめ、専門家が株式や債券などで運用を行う金融商品です。運用で得られた利益は、保有口数に応じて投資家に分配されます。投資信託には次のような特徴があります。
- 少額から投資できる
- 運用を専門家に任せられる
- 分散投資によりリスク軽減が期待できる
投資信託は、100円程度の少額から投資を始められます。積立投資にも対応しているため、毎月の収入から無理のない金額を投資に回すことができます。運用は専門家に任せられるので、初心者の方でも始めやすいでしょう。
分散投資とは、複数の投資先に資金を分散することによってリスクの軽減を図る方法です。1つの銘柄だけに投資すると、その企業が倒産して株価が下落した場合に大きな損失が生じるかもしれません。投資信託はさまざまな資産・銘柄に投資を行うため、1つの銘柄で損失が発生しても、その他の銘柄の利益でカバーできる可能性があります。
一方で、投資信託は商品によって投資対象資産やリスクが変わってきます。また、保有中は信託報酬と呼ばれる運用管理費用もかかります。投資対象や運用コストを比較して、自分に合った商品を選ぶことが大切です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)とは、自分で決めた金額を毎月積み立て、その掛金を自分で運用する私的年金です。投資信託や定期預金などから運用商品を選択できます。一定の条件を満たす20歳以上65歳未満の方が加入でき、原則60歳以降に老齢給付金を受け取れます。
iDeCoのメリットは、税制メリットが充実していることです。掛金は全額所得控除の対象で、所得税や住民税の負担が軽減されます。また、投資の利益には通常約20%の税金がかかりますが、iDeCoなら非課税です。
iDeCoのデメリットは、60歳まで掛金を引き出せないことです。急にお金が必要になって困ることがないように、掛金は無理のない金額で設定する必要があります。また、投資信託で運用する場合は価格変動リスクがあるので、運用がうまくいけば年金額は増えますが、元本割れの可能性もあります。
iDeCoは、税金の負担を軽減しながら老後資金を準備したい方に向いているでしょう。
NISA
NISAは、投資の利益に税金がかからない「少額投資非課税制度」です。NISA口座で投資すれば、株式や投資信託などの運用益が非課税になります。
NISAは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つがあり、両枠は併用可能です。投資上限額はつみたて投資枠は年120万円、成長投資枠は年240万円で、両枠の合計で年360万円まで非課税で投資できます。iDeCoのような引出し制限はなく、いつでも売却して現金化できるのも特徴です。
NISAは対象商品に投資信託が含まれているため、投資信託の積立投資で資産を増やしていきたい方に向いているでしょう。ただし、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」はそれぞれ投資対象商品が決まっています。購入したい投資信託が、NISAの対象商品に含まれていない可能性もあるので注意しましょう。
個人年金保険
個人年金保険は、公的年金に上乗せする目的で加入する保険商品です。一定の年齢まで毎月保険料を払い込むと、その払込保険料を原資に将来年金を受け取れます。保険料の払込期間や年金の受取期間、保険料の運用方法などは商品によって異なります。
個人年金保険は毎月保険料を払うだけで、手間をかけずに老後資金を準備できるのがメリットです。
一方で、保険料を払えなくなって中途解約すると、元本割れの可能性があります。また、個人年金保険の多くは契約時点で将来の年金額が決まっています。そのため、インフレにより物価が上昇すると、年金額の価値は相対的に目減りする恐れがあります。
個人年金保険は、投資信託などの金融商品より保険商品を好む方に向いているでしょう。
不動産投資
不動産投資とは、アパートやマンションなどの不動産を貸し出して家賃収入を得る投資方法です。取得時よりも価格が上昇していれば、その不動産を売却することによって売買差益を得ることも可能です。
不動産投資は入居者がいれば毎月家賃が入ってくるため、収入を生活費に充当しやすいのがメリットです。首都圏など賃貸需要が見込めるエリアの物件であれば、長期にわたって安定した家賃収入が見込めるでしょう。費用負担は発生しますが、家賃回収などを管理会社に任せれば物件管理の負担は軽減できます。
ただし、不動産投資には空室リスクや家賃滞納リスクがあります。所有物件を賃貸に出しても、空室の場合は家賃を得られません。入居者がいたとしても、家賃を滞納されると収益性が低下してしまいます。家賃保証会社を利用するなどの対策が必要です。
不動産投資は、公的年金以外に毎月安定した収入を確保したい方に向いているでしょう。
夫婦の老後資金を「リースバック」で得る方法も

持ち家に暮らしている場合は、リースバックで夫婦の老後資金を得る方法もあります。ここでは、リースバックの仕組みとメリット、注意点を説明します。
リースバックの仕組みとメリット
リースバックとは、自宅を売却して現金化した後も同じ家に住み続けられるサービスです。所有している家をリースバック会社に売却後、そのリースバック会社と賃貸借契約を結んで毎月家賃を払うことにより、そのまま住み続けることができます。
高齢者にとっては、住環境を変えることなく、自宅の売却でまとまった資金が手に入るのがメリットです。借り入れとは異なり、資金の使い道に制限はないため、日常の生活費をはじめさまざまな費用に充てられます。引っ越しをせずに住み続けられるので、近所の目を気にする必要もありません。
また、リースバックは相続対策としても利用できます。不動産は簡単に分けられないため、相続人が複数人いる場合はトラブルの原因になることがあります。リースバックで自宅を売却すれば相続財産から外れるため、不動産に関する相続トラブルを避けられるでしょう。
リースバックを利用する際の注意点
リースバックを利用する際は、次の2つに注意する必要があります。
- 毎月家賃が発生する
- 自宅の名義が変わる
リースバックは自宅を売却した後もそのまま住み続けられますが、毎月家賃を払う必要があります。売却でまとまった資金を手に入れても、家賃の支払いが負担になる可能性があるため、資金計画を立てたうえで契約することが大切です。
また、リースバックで売却すると自宅の所有権はリースバック会社に移転します。将来自宅を子どもに相続させたいと考えている場合はデメリットとなるでしょう。誰にも相談せずに売却するとトラブルになる可能性があるため、家族の理解を得てから契約しましょう。
老後資金の確保はセゾンのリースバックにおまかせ!
老後資金を確保するために、リースバックでの自宅売却を検討している場合は、セゾンのリースバックがおすすめです。
リースバックでは、不動産に関する調査費用などが発生することがあります。しかし、セゾンのリースバックなら次の5つの費用が0円(無料)になります。
- 不動産に関する調査費用
- 事務手数料
- 礼金
- 家財保険費用
- 賃貸借契約の再契約手数料
賃貸住まいの場合、家財保険費用は借主負担が一般的ですが、セゾンのリースバックでは0円で必要な補償を確保できます。定期的に必要な更新手数料も不要です。
また、ご契約者限定サービスとして、「セコムのホームセキュリティ」など4つのサービスから1つを選べる特典も用意しています。利用料金は当社負担のため、無料で利用できます。
老後資金に不安があってリースバックを検討している方、リースバックについて疑問点や不明点がある方はお気軽にご相談ください。


おわりに
総務省の家計調査年報をもとにシミュレーションすると、高齢夫婦に必要な老後資金は1,000万円が目安です。あくまでも平均的な収入や生活費をもとに算出したものであり、実際に必要な金額は個人差があります。年金見込額や老後の生活費、その他に必要な支出を確認したうえで、老後資金がいくら必要かを試算してみましょう。
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