新NISAがはじまって1年、2024年7月には日経平均株価がはじめて4万2,000円台をつけるなど、世の中では貯蓄から投資の流れが加速しています。とはいえ、なにもわからないまま投資をはじめるのは危険です。
相談者の悩みに真摯に向き合い、老後まで見据えたマネープランを作成し助言を行うなど、お金の面で人生の伴走者となってくれる「ファイナンシャルプランナー(FP)」。現役FPである石川亜希子さんが、自身が資産運用をはじめたきっかけを交えながら、資産運用の仕組みとメリットについて紹介します。
貯金好きの“普通のワーママ”が、資産運用を始めたワケ
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私は、事務職として働くかたわらFP(ファイナンシャルプランナー)として活動しています。FP資格を保有しているものの金融機関などでの勤務経験はなく、投資歴も長くはありません。夫と中学生の子どもが2人おり、4人家族で都内に暮らす、どこにでもいるワーキングマザーです。
ただ、昔から「貯金」が得意なタイプでした。振り返ってみると、幼い頃からマメにお小遣い帳をつける子どもでしたし、サークルや委員会活動ではいつも会計担当。堅実な両親の性格に似たのかもしれません。
20代で預貯金約1,000万円も、「老後への漠然とした不安」が募った
社会人になってからも、先取りで毎月決まった額を貯蓄に回していました。年収は300万円台でしたが、実家暮らしだったことも大きく、預貯金は20代で約1,000万円に到達しました。とはいえ、海外旅行など自分の楽しみには惜しみなく使っていましたし、独身のうちはそれで問題ありませんでした。
その後、結婚・出産を経験。この頃から「どんなに計画的に貯金しても、これからかかってくる教育・住宅・老後という『人生の三大費用』には太刀打ちできないのではないか?」「自分が親からしてもらったことを、同じように我が子にもしてあげられるのか?」と、漠然とした不安を抱くようになりました。
そして、目的もなく貯めていた預貯金を有効活用したいと考えるようになったのです。
数ある資産運用のなかから、まずは「iDeCo」をチョイス
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数ある資産運用方法のなかで、私が最初に始めたのは「iDeCo(個人型確定拠出年金)」でした。というのも、当時、退職金制度のない会社に勤務しており、老後の資産を自力で用意する必要性を感じたからです。また、節税になるという面も魅力に感じました。
iDeCoは、公的年金(国民年金・厚生年金)とは別に、一定額を加入者自らが積み立て(=掛金を拠出し)、自らが運用することで資産を形成する「私的年金制度」です。老齢給付金として受け取ることが目的となっているため、原則60歳になるまで引き出すことができません。まさに“自分年金”といえます。
制度自体は知っていたものの、石橋を叩いて渡る性格もあってなかなか踏み切れずにいました。ただ、育児が少し楽になって自分自身に気持ちの余裕が出てきたこともあり、ようやく重い腰を上げました。これが、40歳のときです。
生まれて初めて証券口座を作り、iDeCoをスタート。これまでの貯金とは違い、口座に置いておくよりもはるかにスピーディに資産が増えていきます。
これを目の当たりにした私は、よりいっそう資産形成に興味を持ち、「つみたてNISA」、「個別株投資」と投資対象を広げていきました。
つみたてNISA(2024年以降は新NISA)では、世界株のインデックスファンドを中心に積み立てています。また、個別株については、四季報や経済ニュースなどを参考に、株価が上がったところで売却し、下がったところで購入。お小遣い程度の金額を元手に、ゲーム感覚で楽しんでいます。
資産配分現金100%だった私ですが、今では預貯金と預貯金以外(投資信託など)割合が50:50に。iDeCoの損益は現在+50%以上となっています。
ペースも方法も人それぞれ…投資を続けるうえで大切な「2つ」のこと
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投資を始めて数年が経ったいま、資産運用を続けるうえで大切だと感じたことが2つあります。
1つは、人の意見などに流されず、自分なりの投資スタイルや目的を決めることです。投資の目的は、年齢や収入、家族構成などの属性によって変わってきます。
わが家は、夫婦どちらも退職金制度がない企業に勤めているため、基本的には「老後資産の形成」を目的にしています。そのため、今すぐ増やしたい、というよりは、長期間かけてのんびり資産形成を行うスタイルです。
新NISAについても、毎月一定の金額を積み立てています。新NISAであれば、iDeCoとは異なり、必要なときには一部を売却することによってライフイベントの資金に充てることも可能です。
投資額を毎月の収入から捻出すると考えると、一見難しそうに思えるかもしれません。しかし、「預貯金を移動する」すなわち「お金の置き場所を変える」とイメージしてみると始めやすいのではないでしょうか。
とはいっても、なにより大切なのは「無理なく積み立てていくこと」です。自分にとってはどのくらいの金額が適当なのかを知るには「家計の可視化」が非常に役に立ちます。
“とりあえず節約”ではなく、まずは全体を見通し、なににどれくらい使っているか記録をつけて、収支を“見える化”することから始めるといいと思います。わが家もここから始めました。
もう1つは、情報を取りにいく姿勢です。
給与所得からの各種控除制度や雇用保険、社会保険から給付される給付金、住宅取得等資金の贈与に関する優遇措置に各種手当など、自ら情報を取りにいかないと得られないお金の情報は想像以上に多くあります。
年金や相続の制度もどんどん変わっており、受け身でいると、それだけで損をしてしまう時代になりました。
たとえば、わが家は今年、給湯器の交換をし、数十万円かかりました。しかし、なにかお得な制度はないかと調べてみたところ、申請可能な「省エネ補助金」があることがわかり、あとから数万円が戻ってきたのです。これも、調べて申請しなければ戻ってこないお金でした。
そういう意味でも、今は「自ら情報を取りにいく時代」といえます。
“受け身”の時代は終わった…“攻め”の姿勢で、楽しく資産形成を
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私が子どもの頃は、国民の所得も右肩上がりで銀行の金利も高く、誰もが普通に暮らしていくことが可能でした。しかし、時代が移ろい、今は普通に暮らすこと自体が贅沢になってしまっているのかもしれません。しかし、それは、“今までと同じような受け身の姿勢でいれば”、ということだと思います。
住宅ローンや子どもたちの教育費、自分たちの老後資金と、まだまだお金はかかりますが、資産運用と自ら情報を取りにいく姿勢で、悲観的になりすぎず前向きにとらえることができています。
つみたてNISAや個別株投資を始めた頃は、資産残高に一喜一憂していましたが、今ではすっかり慣れ、株価がかなり下がった日でも動揺しなくなりました。これも、昔の自分が見たら驚くことでしょう。
政府の後押しもあり、「新NISA」で初めて投資の世界に踏み出す人も多いでしょう。不安な気持ちもあると思いますが、誰でも最初は初心者ですし、「習うより慣れよ」といいます。過度に恐れず、少額からでも最初の1歩を踏み出すことが大切ではないでしょうか。
一部のネット証券ではクレジットカードで積立ができるため、積み立てることでポイントも貯まります。資産形成は「長期の運用」が原則です。貯めたポイントで旅行を楽しむなど、自分なりの楽しみを見つけながら、少しずつ資産を増やしてみてはいかがでしょうか。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。
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