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“待てば海路の日和あり”…気づいたら資産が増えている?「ほったらかし投資」のススメ【投資のプロが解説】

“待てば海路の日和あり”…気づいたら資産が増えている?「ほったらかし投資」のススメ【投資のプロが解説】

投資と聞くと「相場の動きを常にチェックしなければならない」といったイメージから、「忙しいし、今はいいかな…」と後回しにしている方もいるのではないでしょうか。そんな方に知ってほしいのが「ほったらかし投資」です。

証券会社でマーケットアナリストや先物ディーラーを経験した金融・投資ライターの山下耕太郎さんが「ほったらかし投資」の魅力と具体的な実践方法を解説します。

   

投資初心者におすすめの「ほったらかし投資」とは?

投資初心者におすすめの「ほったらかし投資」とは?

忙しい日々のなかで、「投資をしたいけど時間がない」「どう始めたらいいかわからない」と悩んでいる人は多いのではないでしょうか。そんな人に知ってほしいのが「ほったらかし投資」です。

日々の相場チェックや頻繁な売買判断をせずに済む投資手法を「ほったらかし投資」といいます。一度投資の仕組みを整えたら、あとはその仕組みに任せて長期的に資産を増やしていくスタイルで、特に投資初心者に適しています。

代表的な方法には、次のようなものがあります。

定期積立投資
 ……毎月決まった金額を、投資信託などに自動的に積み立てる方法
ロボアドバイザー
 ……AIが自動で資産配分やリバランスを行ってくれるサービス
インデックス投資
 ……市場全体の動きに連動する商品に長期投資する方法

ほったらかし投資は短期的な市場の変動に一喜一憂せず、長期的な視点で資産形成を目指す人に向いています。「時間」という最大の味方を活用し、複利の力で資産を着実に成長させるのが特徴です。

投資の基本は「長期・積立・分散」

ほったらかし投資の核となるのは、投資の基本である「長期・積立・分散」という3つの要素です。

長期投資は、市場の短期的な変動を乗り越え、経済成長の恩恵を受けるための重要な戦略。

まず、10年、20年といった長期間の運用を前提に考えることで、複利効果を最大限に生かすことができます。

また、定期的に一定額を投資する(=積み立てる)ことで、相場が高いときには少なく、安いときには多く購入することになるため、平均購入単価を抑えられるというメリットがあります。

さらに、イギリスの作家マーク・トウェインがのこした「卵は1つのカゴに盛るな」という格言のとおり、分散投資を行うことでリスクを軽減することができます。

「株式だけ」などと資産を集中させるのではなく、株式、債券、不動産、コモディティ(商品)など、投資対象を異なる資産に分散させることで、1つの資産価格が下落しても全体への影響を抑えることが可能です。

ほったらかし投資のメリット・デメリット

ほったらかし投資のメリット・デメリット

ほったらかし投資の大きな魅力は、少額からスタートできる点です。たとえば、投資信託なら1万円程度から始めることができ、なかには100円から投資できる商品もあります。まとまった資金がなくても始められるため、投資に対する心理的ハードルが低く、若いうちから資産形成を行うことが可能です。

たとえば給料日に一定額が引き落とされる設定にしておけば、無理なく継続できます。“先取り貯蓄”の感覚で投資に回すことで、生活に支障をきたさず着実に資産を積み上げられるでしょう。

銀行預金より高い利回りが期待できる

日本の銀行預金の金利は現在0.2%程度と低く、インフレ率(2025年4月の前年同月比は3.6%の上昇)を考えると実質的にはマイナスです。

※ 三菱UFJ銀行「円預金金利」、ゆうちょ銀行「金利一覧
※ 統計局ホームページ/消費者物価指数(CPI) 全国(最新の月次結果の概要)|消費者物価指数 全国2025年4月分

一方、ほったらかし投資で活用する投資信託や株式投資は、年率数%〜10%台の利回りを期待できる場合があります。

たとえば、年利5%で複利運用した場合、元本は約14年で2倍になります。長期間続けることで“雪だるま式”に資産が増えていく複利の力は、ほったらかし投資の最大の武器といえます。

※ 東証マネ部「複利効果がすぐわかる! 資産が2倍になる期間が瞬時に計算できる「72の法則」と「126の法則」」

初心者でも手軽に始められる

ほったらかし投資は、投資の専門知識がなくても始められます。投資信託を選べば、プロの運用者が銘柄選びや売買タイミングを判断してくれるのです。さらにロボアドバイザーを利用すれば、あなたのリスク許容度に合わせた最適なポートフォリオを自動で構築・運用してくれます。

「何を買えばいいのかわからない」「相場をチェックする時間がない」という人でも、安心して投資を始められるのがほったらかし投資の強みです。

“一獲千金”は狙えない…ほったらかし投資の注意点

このように、メリットの多いほったらかし投資ですが、いくつか注意すべき点もあります。

まず、ほったらかし投資で扱う株式や投資信託などは、価格変動があるため「元本割れ」のリスクがあります。市場が下落すれば、一時的に投資額を下回ることもあるでしょう。

ただし、長期的な視点で見れば、世界経済は成長を続けてきた歴史があります。短期的な変動に惑わされず長期保有することで、このリスクを軽減できるのです。

また、ほったらかし投資は短期間で大きな利益を上げるものではありません。一獲千金を狙うのではなく、時間をかけてコツコツと資産を育てていく方法です。

FXや暗号資産(仮想通貨)などの短期売買で大きなリターンを狙う投資とは異なり、リスクを抑えながら長期的に安定した成長を目指します。「急がば回れ」の精神で着実に資産を増やしていくことがほったらかし投資の本質なのです。

プロやAIにおまかせ…筆者おすすめの「ほったらかし投資」4選

プロやAIにおまかせ…筆者おすすめの「ほったらかし投資」4選

まず、ほったらかし投資の代表的な資産は投資信託です。投資信託は複数の投資家から集めた資金をプロが運用します。特に「インデックスファンド」と呼ばれる、市場全体の動きに連動する低コストの投資信託は、ほったらかし投資の定番といえるでしょう。

具体的には、「eMAXIS Slim 全世界株式」や「iFree S&P500」などの商品は、「信託報酬」と呼ばれる年間コストが低く、世界や米国の株式市場全体に投資できます。毎月の自動積立設定にすれば、あとは“ほったらかす”だけでOKです。

NISAのつみたて投資枠…非課税でコツコツ資産形成

NISAのつみたて投資枠は、年間120万円までの投資金額の運用益が非課税になる制度です。ただし投資対象は、金融庁が厳選した低コストで長期投資に向いた投資信託やETF(Exchange Traded Funds、証券取引所に上場し、株価指数などに代表される指標への連動を目指す投資信託)に限定されています。

毎月決まった金額を積み立てることで “ほったらかす”仕組みが自然と構築され、非課税で運用できるメリットは非常に大きいでしょう。税制優遇を活用して長期投資を行いたい人に最適です。

iDeCo…老後資金を節税しながら準備

「iDeCo(個人型確定拠出年金)」は老後資金を準備するための私的年金制度です。掛金が全額所得控除になり、運用益も非課税という大きな税制優遇があります。

60歳まで引き出せないという制約があるものの、逆にこれが“ほったらかし”を強制してくれるメリットに。年代や職業によって拠出限度額は異なりますが、節税しながら老後資金を着実に増やせる強力なツールといえるでしょう。

[図表2]iDecoとNISAの比較
[図表1]iDecoとNISAの比較
出典:厚生労働省|iDeCoとNISA
[図表2]iDeCoの受給開始年齢
[図表2]iDeCoの受給開始年齢
出典:iDeCo公式サイトよくあるご質問ランキング2.「給付はいつから受けられますか。」

ロボアドバイザー…AIにお任せの次世代投資

ロボアドバイザーは、AIが投資家のリスク許容度や目標に基づいて最適なポートフォリオを提案・運用するサービスです。初期設定後は自動でリバランスも行ってくれます。

リバランスとは、複数の資産に分散投資を行う際、相場の変動などにより変化した投資配分の比率を当初の目標に戻すことです。

たとえば、株式と債券をそれぞれ50%ずつ保有していた場合、株式の価格上昇によりその比率が60%に上昇したとしましょう。このままではリスクが高まる可能性があるため、株式の一部を売却し、債券を購入することで、再び50%ずつの比率に戻します。これがリバランスです。

ロボアドバイザーは、投資の知識や経験がなくても、プロフェッショナルレベルの資産運用が可能になる“究極のほったらかし投資”といえるでしょう。手数料は年率1%程度と若干高く設定されていますが、その分の価値は十分にありそうです。

ほったらかし投資は「時間の魔法」

ほったらかし投資は「時間の魔法」

アインシュタインは「複利は人類最大の発明である」と言ったとされますが、ほったらかし投資の長期投資によって得られる複利効果は、まさに「時間の魔法」といえるでしょう。

たとえば、月3万円を年利5%で30年間積み立てた場合、元本1,080万円に対して運用収益が1,417万円となり、最終的には2,497万円になります。この差額が複利の力によって生み出された“時間からのプレゼント”なのです

※ 金融庁「つみたてシミュレーター

忙しい現代人だからこそ、時間という味方を最大限に活用できるほったらかし投資は、効率的な資産形成の強力な武器になります。

将来の自分へのプレゼントとして、今日から「ほったらかし投資」を始めてみてはいかがでしょうか。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

山下 耕太郎(金融・投資ライター)

執筆者

金融・投資ライター

山下 耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社で営業・マーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。保有資格は証券外務員一種。

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