12月のボーナス、使い道は決まっていますか? ボーナスの使い道として、貯蓄やレジャー、趣味・娯楽などに次いで多いのが「投資」です。なかでも、資産を増やしなら企業からの“贈り物”を受け取ることができる「株主優待銘柄」は、個人投資家からの根強い人気を誇ります。そこで今回、12月に権利が確定する優待銘柄のうち、「最低10万円以内」で投資可能な銘柄5選を紹介します。
「株主優待制度」は日本独自の文化

株主優待制度とは、企業が自社の株を保有する株主に対し、自社の商品やサービスなどの「優待品」を贈る制度です。これは日本独自のサービスであり、起源は1890年代、山陽鉄道が資金調達の一環として、株主に汽車の無償乗車を提供したことにあるといわれています。
現在、上場企業の約3社に1社(2024年9月末時点で1,494社)がこの制度を導入、配当金とは別のかたちでリターンを得られることから、株式投資の楽しみのひとつとして、特に個人投資家から支持されています。

出所:日本証券業協会「株主優待の意義に関する研究会報告書(概要)―株主優待の意義について―」
優待品の内容は、食品や金券、割引クーポン券、カタログギフトなどさまざまです。例えば食品メーカーなら自社製品の詰め合わせ、航空会社なら運賃の割引券といったように、その会社ならではの個性が光る優待品が人気を集めています。
株主優待を受けるための注意点
株主優待を受けるには、「権利確定日」(割当基準日)に株主として登録されている必要があります。株式は買付から受け渡しまで2営業日かかるため、実際には権利確定日の2営業日前である「権利付最終日」までに株式を購入し、保有していなければなりません。
なお、権利付最終日を過ぎた「権利落ち日」以降に株式を売却しても、優待の権利は失われません。
下記のスケジュールを参考に、タイミングには十分注意しましょう。

出所:筆者作成
株主優待のメリット・デメリット

株主優待は、投資家と企業双方にとってメリットをもたらす一方、いくつかのデメリットも存在します。
メリットとしては、まず「投資を始めるきっかけとなる」ことでしょう。
株主優待は、投資初心者にとって株式投資の最初の入り口となるケースが多く、個人投資家が証券投資に関心を持った理由として「株主優待があることを知った」と回答した人は、「NISA」と並んで多く見られます。

出典:日本証券業協会「株主優待の意義に関する研究会報告書(概要)ー株主優待の意義についてー」
加えて、優待券を利用するために外出するなど、優待品を受け取ること自体が生活の質を高め、心身の健康に寄与するという副次的な効果も期待できます。
また、企業側にとっても、優待目当ての投資家は株価や業績が多少悪化しても株を手放しにくく、長期にわたって株を保有してくれる安定株主の確保につながるという利点があるのです。
さらに、株主優待を導入している企業は、株主数の増加、株価のボラティリティ(変動幅)の低下、PER(株価収益率)の上昇といった効果が確認されているという実証研究もあります。

出典:日本証券業協会「株主優待の意義に関する研究会報告書(概要)―株主優待の意義について―」
自社製品を優待品として提供することで、宣伝効果が生まれ、株主を顧客として取り込むことができれば、売上向上も期待できるでしょう。
一方、デメリットは「株価下落リスク」です。
業績悪化や機関投資家からの圧力などにより、企業が優待制度を廃止・改悪した場合、優待目的で保有していた個人投資家による売却が一斉に起こり、株価が急落する恐れがあります。特に優待制度を手厚くしている会社ほど、このリスクが高いでしょう。
また、企業側のコスト負担も無視できません。株主優待の実施には、優待品の準備や配送、梱包などで多額の費用がかかります。株主数が数万人単位になると、そのコストは莫大なものになり、費用負担の大きさが優待廃止を検討する理由となることもあるのです。
加えて、株主優待は個人投資家を優遇する制度であることから、特に外国人機関投資家などから「公平な利益還元に反する」として批判されることも少なくありません。
ただし、その目的の正当性(必要性)と手段の相当性が認められる範囲内であれば、会社法の株主平等原則に抵触しないと考えられています。
投資のプロが厳選!10万円以内で株主になれる5銘柄

ここからは、12月(ボーナス月)に権利確定し、かつ最低投資金額が10万円以内で投資可能な、注目の5銘柄をご紹介します(株価情報は執筆時点、2025年10月27日終値のデータに基づきます)。
1.楽天グループ〈4755〉
楽天グループ〈4755〉の最低投資金額は98,270円※1で、100株以上保有の場合、「楽天モバイル」の音声+データプラン(30GB/月)が1年間無料で提供されます※2。
楽天の各種サービスを日常的に利用している人にとって、モバイル回線を実質無料で利用できるのは、家計に直結する大きな魅力といえるでしょう。
楽天グループ株主様向け「楽天モバイル」特別ご優待
(「楽天モバイル」の音声+データ30GB/月プランを1年間無料にてご提供)
※1 2025年10月27日時点
※2 楽天グループ株式会社「株主優待制度」
2.ノバレーゼ〈9160〉
ウェディング事業などを展開するノバレーゼ。最低投資金額はわずか33,900円※1と、少額から投資が可能です。
同社では、100株以上を3年未満保有の場合、2,000円相当の特選ギフト(食品)と、レストランでのお食事代金20%割引優待券2枚が贈呈されます。さらに3年以上継続保有すると優待券の枚数が優遇される長期保有特典もあります※2。

出所:ノバレーゼ「株主・株式情報」
※1 2025年10月27日時点
※2 ノバレーゼ「株主・株式情報」
3.ヤーマン〈6630〉
美と健康をテーマとする技術開発を進めているヤーマン。同社では、自社直販ウェブサイトなどで使える優待割引券が提供されます。最低投資金額は78,700円※1。100株保有の場合、1年未満で5,000円相当の割引券を受け取れます。
特筆すべきは、長期保有優遇制度が充実している点です。5年以上保有すると優待額が13,000円相当までアップグレードされます。美容に関心のある個人投資家にとって、長期保有を通じて製品をお得に利用できる魅力的な銘柄です※2。

出所:ヤーマン「株主優待制度のご案内」
※1 2025年10月27日時点
※2 ヤーマン「株主優待制度のご案内」
4.ペッパーフードサービス〈3053〉
ステーキ専門チェーン「いきなり!ステーキ」を事業の柱とするペッパーフードサービス。株価は184.0円ですが、優待発生株数は500株からとなっており、最低投資金額は92,000円です※1。
同社は、500株以上で3,000円相当の自社商品またはお食事券が選択できます※2。日常生活で利用しやすく、使い勝手のいい優待といえるでしょう。

出所:ペッパーフードサービス「株主優待制度」
※1 2025年10月27日時点
※2 ペッパーフードサービス「株主優待制度」
5.G-FACTORY〈3474〉
飲食店の経営サポートのほか、うなぎ料理店『名代宇奈とと』を展開するG-FACTORY。最低投資金額は63,400円※1で、同社は100株以上保有する株主に対し、グループの国内直営店舗、ライセンス店舗、および取引先店舗で利用できる3,000円相当の食事券が進呈されます。
なお、この食事券は電子での発行が予定されており、利用後に残高がある場合は次回に利用できます※2。
※1 2025年10月27日時点
※2 G-FACTORY「株主様ご優待」
株主優待で“お得”に投資デビュー

株主優待制度は、配当や値上がり益とは別に、企業の商品やサービスを受け取れる魅力的な制度です。「貯蓄から投資へ」の流れを促進する重要な役割を担っており、株式投資の第一歩を踏み出すきっかけにもなっています。
今回紹介した12月権利確定銘柄は、いずれも10万円以内の少額から投資が可能であり、特にはじめて優待投資を行う人にとってアクセスしやすいラインナップではないでしょうか。
ただし、投資を行う際は、株主優待の「権利確定日(権利付最終日)」を確認し、リスクをおさえたうえで、余裕資金で行うことをおすすめします。
株主優待を上手に活用しながら、長期的に楽しく、豊かな投資生活を送るための一歩として、検討してみてはいかがでしょうか。