中小企業やスタートアップなど成長期にある企業にとって、資金調達は成長の要です。しかし、銀行融資やVC出資にはそれぞれ資金調達までのハードルやリスクがあり、資金調達方法に悩む経営者も多いでしょう。
こうしたなかで注目されるのが、売上に応じて返済する「RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)」という新たな選択肢です。
本記事では、税理士の視点からRBFの仕組みやメリット・デメリット、実際の活用事例までをわかりやすく解説します。
資金調達の可能性を広げる「RBF」とは?

中小企業や成長期にある企業にとって、「資金調達」は経営の“生命線”ともいえる重要な要素です。とはいえ現実には、銀行融資は実績が求められ、ベンチャーキャピタル(VC)による出資は株式の希薄化をともなうなど、実務上のハードルが高いのが現状です。
こうしたなか、従来型の資金調達手段の“すき間”を埋める新しい選択肢として注目されているのが、「RBF(Revenue Based Financing/売上連動型資金調達)」です。
将来の売上を見越して資金を調達し、取り決めた方式に従って返済していく仕組みで、銀行融資のように担保や保証人を必要とせず、また株式を発行して出資を受ける必要もないため、「第三の資金調達手段」として関心が高まっています。
法的には、将来発生する売上債権を譲渡する「将来債権譲渡契約」として構成されるのが一般的です。2020年の民法改正(第466条の6〜8)により将来債権譲渡が明文化され、日本でも制度的な裏付けが整いました。
RBFの特徴
RBFの最大の特徴は、返済や審査の基準が利益ではなく「売上」に置かれている点です。これにより、たとえ赤字であっても売上が一定水準に達していれば資金調達できる可能性があります。
また、RBFは売上や会計データをリアルタイムで把握できる環境を前提としているため、SaaSやECなど、売上データが安定して可視化されているビジネスとの相性が特に良い仕組みです。
こうしたデータドリブンな審査プロセスが導入されていることで、従来の融資とは異なる柔軟性とスピード感を持った資金調達が可能になります。
柔軟性が高い反面、導入・運用コストには要注意…RBFのメリット・デメリット

RBFには、いくつかのメリットがあります。まずは、経営権を維持できる点です。株式を発行せずに資金を調達できるため、出資による持株比率の希薄化を防ぐことができます。
成長資金を確保しながら経営判断の自由度を保てる点は、経営者にとっても大きな利点といえるでしょう。
また、担保や保証が不要である点も見逃せません。将来の売上をベースにした仕組みのため、個人保証や不動産担保が求められることがなく、資金調達にともなう心理的・手続き的な負担を大幅に軽減できます。
さらに、資金実行までのスピードが早い点も魅力のひとつです。売上データや会計情報をもとに審査が行われるため、銀行融資と比べて格段に迅速な資金供給が可能です。
加えて、資金の用途の柔軟性がある点もメリットです。運転資金や広告投資、採用活動、在庫仕入れなど、事業の成長に直結するさまざまな用途に幅広く活用することができます。
一方で、RBFにはデメリットも存在します。まず、コストが比較的高い点です。一般的な手数料(報酬率)は3〜15%程度で、短期資金としてはやや割高な傾向があります。
実質的に年利換算で20〜30%程度に達する場合もあり、資金の使途や期間に応じて慎重な検討が求められます。
また、モニタリング負担も無視できません。売上や会計データを継続的に共有する必要があるため、システム連携や情報管理の運用コストが発生します。
売上に応じて返済負担を調整できる「変動型RBF」の魅力

RBFの返済設計は、大きく「変動型」と「固定型」に分かれます。それぞれの構造と特徴は下記のとおりです。

出所:筆者作成
なかでも「変動型RBF」は、売上に応じて返済負担を調整できる柔軟な設計が特徴です。業績の波を吸収しつつキャッシュフローの安定を保ち、成長投資を継続できる点は、企業にとって極めて実務的かつ有効なメリットといえるでしょう。
変動型RBFの最大の利点は、「売上に連動した返済によって資金繰りが安定する」ことです。売上が減少した月は返済額も減るため、業績の変動を吸収しやすく、急激な資金ショートを防ぐことができます。
また、「事業成長に合わせて柔軟に返済できる」点も魅力です。売上が伸びれば返済もスムーズに進むため、「成長に応じて返す」という自然なキャッシュフロー構造が実現できます。
さらに、「経営判断の自由度が高まる」のも変動型特有のメリットです。固定型のように毎月一定額の返済が求められるわけではないため、必要なタイミングでマーケティングや採用、仕入れなどに資金を回しやすくなります。
一方で、売上が想定より低迷した場合、返済が長期化し資金拘束が続く可能性があります。「返済完了時期が読みにくい」点は、変動型のデメリットといえるでしょう。
また、売上が急増した場合は返済額も増えるため、「成長期における資金負担が一時的に重くなる」という側面もあります。
こうした点を踏まえ、導入前には事業の成長フェーズやキャッシュフローの見通しを慎重に検討することが重要です。
成長を止めずに資金調達…国内外のRBF導入事例

ここからは、実際にRBFを活用して資金調達を行った成功事例を紹介します。
国内:株式会社Yoii「Yoii Fuel」
日本で代表的なRBFサービスが、株式会社Yoiiが提供する「Yoii Fuel(ヨイ フューエル)」です。同社は将来の売上データをもとに、担保・保証なしで資金を実行できる仕組みを提供しており、審査から資金実行までおおむね2週間程度で実行が可能です※1。
シフト管理SaaS「らくしふ」を運営する株式会社クロスビットは、「Yoii Fuel」を活用して短期的な成長資金を確保しました。
VCからの出資を急がず、企業価値を高める準備期間の資金としてRBFを活用。開発や採用を止めることなく成長を続け、次の資金調達をよりよい条件で実施できる体制を整えることに成功しました※2。
海外:Capchase(米国)
米国では、SaaS企業向けのRBF事業者として「Capchase(キャップチェイス)」が知られています。
Capchaseは、企業の定期収益(ARR:Annual Recurring Revenue)をもとに、将来の売上を前払いで資金化するモデルを採用しています。
返済条件は事業の収益構造やキャッシュフローに応じて柔軟に設定されており、SaaS企業の成長フェーズに合わせた資金運用が可能です※3。
SNSマーケティングツールを提供するAudienseは、このCapchaseを通じて広告費や採用費を確保。株式による資金調達を急がず、成長投資を継続し、企業価値の向上に注力できました。
RBFの「迅速な資金調達」と「柔軟な返済設計」を活かした代表的な成功事例といえるでしょう※4。
スピーディな資金調達で、“スピーディな成長”を叶える
RBFは、出資のように経営権を手放すことなく、スピード感をもって資金を確保できる点が大きな魅力です。
特に変動型RBFは、売上に応じて返済負担を自然に調整できる柔軟な設計が特徴的です。
返済完了時期が読みにくいなどの課題はあるものの、「売上が上がったときに返す」「厳しいときは抑える」というシンプルな構造は、成長局面にある企業にとって資金繰りの柔軟性を高める有効な選択肢といえます。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。
〈出典〉
- 株式会社Yoii「Yoii Fuel 資金調達サービスページ」
(https://yoii.jp/lp/funding) - 株式会社Yoii「導入事例:株式会社クロスビット(らくしふ)」
(https://yoii.jp/case-studies/Xbit) - Capchase公式サイト「Revenue Based Financing for SaaS」
(https://www.capchase.com/) - Capchase Case Study「Audiense uses Capchase to accelerate growth (2022) 」(https://www.capchase.com/customers/audiense)