投資で得た利益が非課税になる「NISA」。2014年に制度が開始されて以来、利用者は増え続けており、2024年12月末時点では、日本人の約5人に1人が利用している計算です。
NISAは少額から投資を始めることができます。さらに年齢制限がないため、制度が続く限りは18歳以上なら誰でも、いつまででも運用可能です。もし、まだNISAを始めていない50代の方でも、遅いということは決してありません。まずはこの記事でNISAの基本をおさらいしましょう。
参照元:総務省統計局「人口推計(2024年(令和6年)11月確定値、2025年(令和7年)4月概算値)」P1
日本証券業協会「NISA口座の開設・利用状況(2024年12月末時点)【速報版】」P3
投資人口増の呼び水

NISAとは、少額投資非課税制度の略称で、その名のとおり非課税で投資できる制度です。2014年に運用開始し、2024年にはより使いやすい制度として改正されました。改正後の1年間でNISA口座を開設した方は1.2倍に増加、NISAでの投資額も3.3倍に増えるなど、制度の刷新を機に大きな広がりをみせています。
別の調査によれば、NISA口座を開設するまで、有価証券(株式や投資信託などのこと)を買ったことがなかったという方は全体の32.2%でした。NISAが投資初心者の呼び水になっていることもうかがえます。
ここ2〜3年の物価高を受けて、国民の投資意識が高まっているように感じます。「節約もしているけれど、それだけでは足りない」という気持ちから、投資を検討している方も少なくありません。
NISAが投資人口の増加に寄与した理由としては、税制上のメリットや社会的背景はもちろんのこと、以下にあげるようなNISA自体の使いやすさもあると考えられます。
- 月100円などの少額からスタートできる
- 毎月自動的に投資できる
- 金融庁指定の条件を満たした金融商品から選べる
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
参照元:日本証券業協会「個人投資家の証券投資に関する意識調査報告書(2024年)」
(理由1)月100円などの少額からスタートできる
NISA口座を開設する金融機関によっては、毎月100円の少額から投資できるため、初心者でも家計に無理なく、気軽に始められます。
ただし、投資額が少な過ぎると資産が増えるペースも遅くなってしまいます。少額での投資に慣れてきたら、余剰資金を運用に回すなどで投資額の上乗せも検討してみましょう。
(理由2)毎月自動的に投資できる
後述するNISAのつみたて投資枠では、最初に商品と毎月の投資額を設定するだけで、あとは毎月自動的に金融商品を購入できます。
相場を見て買いどきや売りどきを見極める必要がなく、ほったらかしで資産形成を進められる点も、初心者にとって始めやすい理由といえます。
(理由3)金融庁指定の条件を満たした金融商品から選べる
つみたて投資枠で選べる商品は、金融庁が指定する以下の条件などを満たしたものに限られます。
- 信託契約期間(投資信託の運用開始から運用終了日までの期間)が無期限または20年以上
- 毎月分配型ではない
- 販売手数料は0%、信託報酬は低水準 など
これらの条件に当てはまる、長期の積立・分散投資に適した投資信託などから投資先を選ぶことができます。
つみたて投資枠で選べる投資信託の数は全部で311本(2025年3月6日時点)。一般の投資家が取引できる投資信託の総数は約4,000本なので、ある程度選びやすくなっているといえます。
参照元:金融庁「つみたて投資枠対象商品届出一覧 つみたて投資枠対象商品届出一覧(運用会社別)」P1・5
無期限・非課税で自分にあった投資ができる

あらためて、NISAの制度についておさらいしておきましょう。
NISAは投資で得た利益が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託の売却など、投資の利益には20.315%の税金がかかります。しかし、NISA口座で購入した商品については課税の対象外となるため、利益が同額の場合、NISAを利用したほうが手取額が多くなるのです。非課税期間に制限はなく、NISAで保有中はずっと税金がかかりません。
「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という、使い方の異なる2つの投資枠がある点もNISAの大きな特徴です。

参照元:金融庁ウェブサイト
つみたて投資枠は、コツコツ投資額を増やしていく積立投資(毎月決まった額を、決まったタイミングで自動的に投資する手法)に特化した枠です。毎月10万円まで、年間で120万円まで投資できます。投資対象は前述のとおり、金融庁の指定した条件を満たした商品に限られます。
一方の成長投資枠は自由度の高い投資が可能な枠です。年間240万円までの範囲なら、積立投資だけでなく、任意のタイミングでまとまった金額を投資することもできます。投資対象も幅広く、株式やつみたて投資枠対象外の投資信託なども選べます。
2つの投資枠は併用可能で、両方合わせて最大1,800万円まで非課税で投資できます。なお、つみたて投資枠だけで1,800万円を使い切ることはできますが、成長投資枠は1,200万円が上限となっています。
初心者はタイミングに左右されない積立投資から取り組むのが基本です。自由に投資できる成長投資枠で積立投資を始めるのはもったいないともいえるので、まずはつみたて投資枠から使ってみては? 「もう少し投資額を増やしたい」「価格が下がっているから買い増ししたい」「すでにまとまった金額が手元にある」といったときに成長投資枠も活用して、資産形成のペースを加速できるといいですね。
老後資産の準備以外にも

非課税期間が無期限で長期投資に適したNISAは、老後資産の準備だけでなく、子どもの教育費や住宅購入、旅行といった各種ライフイベント用の資産形成にも向いています。他にも、ご自身の終活や両親の介護、実家の処分や墓じまいなども見据えておきたいところです。
NISAは1,800万円まで非課税で投資できますが、この非課税投資枠は保有資産を売却すると翌年以降、再度利用できるようになります。例えば、1,800万円を使い切っている状態で利益を除いて240万円分の資産を売った場合、翌年にまた240万円投資できるようになるのです。
そのため、子どもの教育費を引き出したら次は住宅購入に向けて、住宅を購入したら自分の老後に向けて、と何度も資産形成をやり直すこともできます。
ただし、仮に利益を除いた1,800万円分全額を売却したとしても、1年間で投資できるのはつみたて投資枠、成長投資枠を合わせた年間上限額である360万円までとなっています。
NISAで将来のお金を準備する場合、5年以内に使うお金は預貯金で、それより先に使う予定のお金をNISAで準備、と使い分けるといいでしょう。投資は長期にわたって行うと成績も安定する傾向にあります。直近で使う予定のあるお金は、リスクの低い方法で確保しておくと安心です。
おわりに
NISAは初心者でも投資を始めやすいように設計された制度といえます。制度が続く限り、恒久的に投資の利益が非課税となるため、今から始めても遅過ぎるということはありません。1日でも早くスタートすることが大切です。
まずは「少額から」「毎月自動で投資」でき、「条件を満たした商品から選べる」つみたて投資枠から活用して、ライフイベントの支出に備えましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。