「投資は早く始めた方が良い」とよく言われますが、50代、60代から始めても遅くないのか、疑問に思う方もいるかもしれません。投資における「時間」には、お金を入れる期間と、運用を続ける期間という2つの意味があります。積立投資ができるのは働いている間だけであっても、運用自体は長く続けられる方が多く、シニア層でも十分に時間を味方につけられます。
この記事では、複利効果をはじめとする長期投資のメリット、資産運用を長く続けるためのコツを紹介します。
時間を味方にして資産を育てる!「複利効果」のパワー

投資で得られる利益には「単利」と「複利」の2種類があります。単利は元本にのみ利息がつく仕組みですが、複利は元本だけでなく、利息にも利息がつく仕組みです。例えば、100万円を年利5%で運用した場合、単利では毎年50,000円ずつ増えていきますが、複利では1年目は50,000円、2年目は52,500円というように、雪だるま式に利益が増えていきます。
![[図表]単利と複利の違い](https://life.saisoncard.co.jp/wp-content/uploads/2025/07/59f58ba59013d9201fc6eb99a8e06e6c.png)
この複利効果は、運用期間が長くなればなるほど威力を発揮します。ここで、20年と30年の運用期間で比較してみましょう。毎月30,000円を年利4%で積み立てた場合、20年間では約1,100万円になりますが、30年間では約2,100万円と、10年の差で約1,000万円もの違いが生まれるのです。
![[図表]毎月30,000円を積み立て、年利4%で運用した場合の資産推移](https://life.saisoncard.co.jp/wp-content/uploads/2025/07/a2211cf664233b4404a4de5e3fbe1cc8.png)
このように、早く運用を始めれば始めるほど資産増加が期待でき、使えるお金も増える可能性が高まります。これは若い方だけではなく、50代、60代の方にも当てはまります。例えば、50歳から投資を始めても運用期間が30〜40年確保できれば、十分に複利効果を活かすことができるのです。
一方で、長期運用の場合は、運用中にかかる手数料にも注意が必要です。例えば、投資信託の場合、信託報酬が年0.5%の商品と年0.1%の商品では、30年間で数百万円の差が生まれることもあります。同じような資産に投資する商品であれば、できるだけ手数料の低い商品を選ぶようにしましょう。ただし、0.1%以下の手数料差は誤差の範囲内であり、手数料の低い商品が新たに登場するたびに、商品を乗り換える必要はありません。
商品選びの際は、信託報酬だけでなく実質コストの確認が最も重要です。投資信託運用報告書には、信託報酬以外の運用にかかる費用も含む、投資家が実質的に負担する手数料が記載されているため、購入前には確認するようにしましょう。運用会社の業績が安定しているかどうかも大事です。経営が不安定な会社の商品は、繰上償還(運用終了)のリスクがあります。
長期運用することで元本割れのリスクを低減できる

投資経験の少ない方のなかには、値動きによってお金が減ってしまうリスクを懸念している方もいるでしょう。実際に、NISAやiDeCoを利用した投資信託等への投資には必ず値動きのリスクがあります。ただし、長期運用することで元本割れのリスクを大幅に低減できます。名著として知られる『ウォール街のランダム・ウォーカー』(バートン・マルキール著/日本経済新聞)では、1950年以降のデータで、広く分散された株価指数の一例として、「S&P500」に15年以上長期投資したら元本割れしなかったという分析結果が紹介されています。


また、金融庁が発表した統計でも、積立・分散投資においては、保有期間5年では年率マイナス8%からプラス18%と大きなバラつきがある一方、保有期間20年間では年率2%から8%の範囲に収束し、元本割れをしていないという結果になっています。これは、大きな相場変動があっても20年という長い期間運用を継続すると元本割れせずに堅実に増やせる可能性が高いことを示しています。
元本割れせずに資産を増やしたいなら、少なくとも15年は運用を続けることが目安です。定年年齢の引き上げなどで60歳以降も働き続ける方は増えており、50代から始めても15年以上の投資期間を確保できる方は多くいます。仮に積立投資の期間が15年未満だったとしても、預貯金が十分にあるなど、他でリスクをカバーしつつ運用期間が確保できるなら問題ないでしょう。
目的に合わせて商品を選び、必要な時期に応じてキャッシュポジション(現金や預金の割合)を調整することも、シニア層向けの長期運用のコツです。短中期に必要なお金は、普通預金や定期預金、個人向け国債といった「無リスク資産」で貯めるようにしましょう。
投資をする際には、「投資」と「運用」の違いを理解することが重要です。投資はお金を入れることで、これは働いている間までという方が多いでしょう。一方、運用は寿命が尽きるまで続けられます。人生100年時代、50代、60代から投資を始めても、30〜40年の運用期間が確保できるという方は少なくないでしょう。
投資を長く続けるためのコツ

無理のない範囲で運用を続けられれば資産寿命が延び、老後の金銭的余裕が増えます。投資を長く続けるためには、いくつかのポイントをおさえておくことが大切です。
まず、相場の変動は必ず起こるものだと理解しておくことが重要です。直近では、2024年8月と2025年4月に予想外のタイミングで大きな下落が起こりました。大きな値動きに慣れていない方のなかには、焦って資産を売却した方や、積立を止めてしまった方もいます。しかし、これらの変動は自分のリスク許容度を確認する良い機会でもあります。損失を経験して初めて、自分が本当に耐えられるリスクの大きさがわかるのです。
次に、「いつまでに」「何のために」「どのくらい」お金が必要なのかを、あらかじめ長期的な目標として定めておきましょう。例えば「65歳までに住宅リフォーム資金500万円」「定年までに老後資金1,000万円」といった具体的な目標があると、投資のモチベーションも維持しやすくなりますし、いざお金を使うタイミングになっても心理的抵抗が少なくなります。
相場変動に惑わされないためにも、長期的な運用を前提とする場合には、こまめに相場を確認する必要はありません。年に1回程度運用成果を確認し、必要に応じて商品の見直しをする程度で十分です。ただし、実質コストや運用会社の状況、類似商品と比較した運用成果については定期的にチェックしましょう。
投資をしている方の多くが、自分のリスク許容度を高めに見積もる傾向にあります。余裕資金ではなく生活費までを投資にまわしたり、家計が赤字なのに無理をして投資をしてしまったりすると、いざというときに生活が成り立たなくなり、生活のために資産を売らざるを得ない状況になる可能性もあります。適宜、自身のリスク許容度を確認し、無理なく続けられる投資・運用を意識しましょう。
おわりに
投資で時間を味方につけるためには、複利効果と長期投資のメリットを理解することが大切です。50代、60代から始めても決して遅くありません。退職などに伴って新たに投資に回せるお金がなくなったとしても、運用は生涯続けられるため、十分に時間を活用することができます。無理のない範囲で長期的な視点を持ち、自分のリスク許容度に合った投資を続けることで、安心できる資産形成を目指しましょう。
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