更新日

初心者脱却の一歩目 予算を決めて個別株を買ってみよう

初心者脱却の一歩目 予算を決めて個別株を買ってみよう
岡村 友哉

監修者

岡村 友哉

2003年に日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)入社。株式や投資信託などの営業を経験した後、金融情報会社で株式担当アナリストに。
2010年に独立し、以降は経済専門チャンネルで、株式解説やキャスター業務を務める。数百社に及ぶ上場企業のトップへのインタビューを経験。経済番組のコメンテーターとして出演するほか、マネー誌やネット証券の動画、各種セミナー講師として幅広く活動している。
著書は「お金を10倍に増やす株の見つけ方(横浜タイガ出版)」など。

老後の資産形成を考えるうえで、選択肢の一つとなるのが「個別株投資」です。これは、複数の企業に分散して投資する「投資信託」とは異なり、自分で一つ一つの企業を選び、その企業の株式を購入するというスタイルです。個別株投資の魅力とリスクを紹介します。

個別株投資って何?

個別株投資って何?

個別株投資とは、特定の企業の株式を選んで売買することです。

購入した株価が上昇後に売却することで、その差分のキャピタルゲイン(売買差益)を得られます。また、会社が利益の一部を還元するかたちで配当金や株主優待を株主に送ることもあります

ただし、個別株投資は、特定の一社に投資するため、株価変動によって資産が大きく増減する可能性があります。企業業績や社会情勢の変化など、さまざまな要因で価格が上下するため、慎重な判断が必要です

[図表]株式投資のイメージ
[図表]株式投資のイメージ

個別株投資の魅力は、やはり「自分で選ぶ楽しさ」にあります

値上がりの期待ができる企業を自分で選び投資することで、ニュースや世の中の動きに関心が持てたり、市場全体の雰囲気を感じ取る感性や判断力が、少しずつ身についていきます。

これは思考のトレーニングにもなり、年齢を重ねても外の世界に意識を向け続ける手段として、良い刺激になります。

一方で、情報収集や判断力が求められる投資スタイルでもあります。リスクとリターンのバランスを考えながら、取り組むことをおすすめします

個別株投資の予算はどのくらい?

個別株投資の予算はどのくらい?

株式は通常、100株単位(いわゆる「単元株」)で売買されるのが基本です。例えば1株1,000円の企業であれば、100株を買うのに10万円が必要になります。銘柄によっては、さらに高額になることもあります。

そのため、個別株投資を始めるにあたり、まず「生活に影響のない範囲で」「ある程度の」資金を準備しましょう。退職金の一部や、使い道の決まっていない貯金などから、無理のない金額を投資にまわすとよいでしょう。

株価がゼロになることは滅多にありませんが、10%程度の値動きは珍しくありません。ビギナーの場合、さらに余裕を持ってたとえ株価が半分になったとしても、損失を受け止めて慌てずに済む程度の金額が一つの基準になります。

また大きなリターンを期待するのであれば、それなりの金額分、株式を購入する必要があります。ある程度まとまった金額を証券口座に入れておき、いつでも動かせる状態にしておくと安心です。

10万円以上の資金をすぐに用意するのが難しいという場合もあるかもしれません。その場合は「単元未満株(1株投資)」を活用する方法もあります。これはその名のとおり、1株から購入できる仕組みで、数千円程度から始めることが可能です。

ただし、単元株と単元未満株では株主としての権利や取引方法に違いがあるので注意しましょう。単元未満株は証券会社によってサービス名や内容が違うため、事前に確認が必要です。

[図表]単元株と単元未満株の違い(※証券会社による)
[図表]単元株と単元未満株の違い(※証券会社による)

個別株は「売りたいときに売れる」という流動性の高さも魅力です(売った日の2営業日後に現金化されます)。必要になったときに現金化しやすい資産である点は、大きなメリットと言えます。

単元未満株は、気軽に始められて値動きの感覚もつかめるので、経験を積むには良い方法です。ただ、長く続けていくことを考えると、単元株のほうが取引のしやすさやコスト面でメリットは大きいでしょう。

利益を得るために大切なのは成長しそうな企業選び

利益を得るために大切なのは成長しそうな企業選び

株式投資で利益を得るには、安く買い、高く売ることが基本です。売上や利益の増加に伴って株価が上昇しやすくなります。つまり、値上がりによる利益を狙うなら「これから成長していきそうな企業」を見つけることが、最も大切なポイントになります

どの企業の株式を買うか迷ったときは、身近なところから探してみましょう。日常的に目にする商品やサービスを提供している会社、自分が好きなブランドやよく使うアプリの運営元などがヒントになります。

また、テレビやネット、街中で話題になっている商品や、若い世代に人気のものにも注目してみましょう。売上が伸びそうだと感じるきっかけは、案外身近なところにあるかもしれません。企業の業績や株価など、いわゆる「数字」はあくまで結果です。

ヒット商品はまず消費者の間で生まれます。街を歩いたり、話題のお店に足を運んだりすることが、良い銘柄を見つける手がかりになることもあります

配当や株主優待を基準に株式を選ぶのも、一つの方法です。配当や株主優待は、企業が出した利益の一部を現金や商品で受け取れる制度のことで、株式を保有しているだけで年に一度または複数回受け取ることができます。

投資家に人気の株主優待を実施している企業は、注目度が高まり、株価の上昇につながることがあります。

ただし、配当や優待は企業の業績に左右されます。業績が悪化すれば、内容の縮小や廃止となることもあるため、継続的に業績の動向を確認することが大切です

企業の業績や決算情報、過去の株価の動き(チャート)は、「Yahoo!ファイナンス」や「IR BANK」といったサイトで確認できます。

株式を選ぶうえで欠かせないのが「流動性」です。これは、その株式がどれくらい活発に売買されているかを示すもので、流動性が高い株式ほどスムーズに売買が成立しやすくなります。

また、他人の推奨だけで株式を買うのは避けましょう。値上がりしそうな株式を、他人がわざわざ教えるメリットはほとんどありません

あまりに株価が安くなっている銘柄にも注意が必要です。安い理由があるかもしれません。業績の悪化や人気の低下など、何らかの要因で値下がりが続いている可能性があります。

同業他社と比較して「なぜこの株式だけ安いのか?」を冷静に考えることが、失敗を避けるカギになります。

注文方法は「成行」と「指値」の2種類

注文方法は「成行」と「指値」の2種類

購入する銘柄が決まったら注文をします。証券会社の口座を開設していれば、スマートフォンやパソコンから手軽に取引ができます。

注文方法には「成行注文」と「指値注文」の2種類があります。

成行注文は、価格を指定せずにその時点の市場価格で購入する方法です。すぐに取引が成立しやすいというメリットがありますが、値動きの激しいタイミングで使うと、思っていたより高い価格で買ってしまうこともあるため注意が必要です。

一方の指値注文は、「○○円で買いたい」とあらかじめ価格を決めて注文する方法です。例えば「今は1,500円だけど、1,400円になったら買いたい」と思った場合、1,400円で指値注文を出しておけば、その価格まで下がったときに自動で注文が成立します。

成行注文では、売りに出ている価格のなかでも高いものから約定してしまうため、安く買って高く売るという投資の基本を考えると、指値注文のほうがおすすめです。

価格が下がるのをじっくり待つくらいの気持ちで、焦らず取引することが大切です

なお、注文が成立することを「約定(やくじょう)」といいます。約定すると、証券会社からメールなどで通知が届き、購入した株は保有銘柄として一覧に表示されます。

証券会社によって売買にかかる手数料が異なります。

取引コストは、利益に直接関わってくる部分ですので、なるべく低い手数料の会社を選ぶことがポイントです

最近では、ネット証券を中心に、売買手数料が無料というケースも増えています。

例えば、1回の売買に1%の手数料がかかる場合、買って売るだけで合計2%のコストが発生します。1株1,000円の銘柄を100株(10万円分)購入し、値上がり益が出ないまま売却しただけで、2,000円の手数料を支払います。

手数料は一見すると小さな金額ですが、投資の成果を上げるにはこうしたコストをいかに抑えるかも重要なポイントです。

[図表]取引画面のイメージ(楽天証券・iSPEED)
[図表]取引画面のイメージ(楽天証券・iSPEED

おわりに

個別株投資は自分で考えて「買う・売る」の判断をすること自体に面白さがあり、その結果として予想が当たったときの達成感が、楽しみの一つではないでしょうか。

スーパーで野菜の値段を見て「今日は安いな」と感じるように、株価にも相場感覚が芽生えてくると、「この価格で買えたのはラッキーだった」と、売買の判断がより楽しめるようになります。

投資では、「自分で考える力」が何より大切です。

株価がどう動くかを100%予測するのは誰にもできませんが、自分なりの仮説を立てられるようになると、投資の見え方が大きく変わってきます

そうした力が備われば、リスクの高い話に振り回されることもなくなりますし、結果的に着実な資産形成につながるでしょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

よく読まれている記事

みんなに記事をシェアする