老後資金は多くの方にとっての心配事であり、高齢化が深刻化する日本にとって大きな課題でもあります。そんななか、金融業界では「プラチナNISA」という、高齢者を対象としたNISAの新制度がつくられるのではないかと言われています。
現段階でプラチナNISAについて予想されていることと、制度の鍵となる「毎月分配型投資信託」について解説していきます。
プラチナNISAってなに?

少額投資非課税制度であるNISAの利用者は、年々増加しています。そんななか、2025年の春ごろに自民党から金融庁へ、65歳以上を対象としたNISAの新制度創設が提言されたと報道されました。
公式な発表はまだされていないため、どのような制度になるかは未定ですが、各メディアなどでは、現行NISAでは対象外ながら高齢者からの人気が高い「毎月分配型投資信託」を対象商品に含んだ制度になると予想する声が多く出されています。
一方で、高齢者のみを対象とした新制度の創設ではなく、「年齢を条件に、大きなリスクを取れない高齢者に適した債券型商品もつみたて投資枠で選択できるようになるのでは」といった、制度のマイナーチェンジが現実的とする意見もあります。
運用しながら取り崩しを進める高齢者の需要に対して、どのような制度が作られるのか、今後の進展に注目です。
NISAの新制度をつくるのではなく、現行のNISAに「65歳以上の利用者は、毎月分配型商品を購入可能」といった新たな条件が追加されると予測する声もあります。
毎月分配型商品はシニア世代からの需要が高いので、購入できる仕組みが整備される可能性は大いにあるでしょう。
老後にありがたい分配金

プラチナNISAの対象商品になるのではと話題となっている毎月分配型投資信託は、その名のとおり分配金を毎月もらえる商品です。
通常の投資では、分配金に対して20.315%が課税されますが、プラチナNISAではこの分配金が非課税になります。
毎月受け取れる分配金は、年金とは別にもらえる老後の貴重な収入源です。そのため毎月分配型投資信託は強いニーズがあり、NISA非対応でありながら、安定した資金流入が続いている商品もあります。
![[図解]分配金の支払いイメージ](https://life.saisoncard.co.jp/wp-content/uploads/2025/12/ef550acad326780ef485796553eebdd4.jpg)
この商品を運用していると「年金+分配金で生活費補填」「医療費や介護費用が増えるなかで毎月収入がある安心感」といった、老後生活の安心につながる効果が期待できるでしょう。
年金受給は2ヵ月に一度です。現役世代のときは給与を毎月受け取ることが当たり前なので、ペースがつかめず上手く使える人は多くないと聞きます。
そのため、毎月収入が得られる毎月分配型投資信託は年金生活者にとって都合がよく、高い人気を誇っています。
毎月分配型投資信託の注意点

毎月分配型投資信託には注意点もあります。
商品の大きな特徴である分配金は、普通分配金と特別分配金の2種類に分類されます。普通分配金は商品の運用益から支払われますが、特別分配金は投資信託の元本を取り崩して支払われる点に違いがあります。
運用成果が芳しくない投資信託は、元本を取り崩して特別分配金を支払う必要が出てくるでしょう。
元本を取り崩せば分配金の支払いはできますが、ファンドの資産が減少してしまうため、目標とする投資方針を実現できなくなる可能性が出てきます。長期的な運用を考えると、不安が残る支払い方式といえるでしょう。
![[図解]普通分配金と特別分配金の違い](https://life.saisoncard.co.jp/wp-content/uploads/2025/12/d97cf7d56e22a141dafc188a03b38a12.jpg)
普通分配金は投資家にとって利益に当たるため課税対象ですが、特別分配金は非課税となります。元本を取り崩して支払われることから、投資家の「利益」ではないからです。
つまり「少額投資非課税制度」であるNISAで毎月分配型の投資信託を選択できるようになったとしても、元々非課税の特別分配金を受け取ることについて税制上のメリットはありません。
もう一点注意したいのは、インデックス型などの投資信託と比較して、コストが高い傾向にある点です。
金融機関によっては、毎月分配型投資信託の購入金額に1〜3%程度の購入時手数料がかかる場合があります。運用時に発生する信託報酬も年1.5〜2%と高めに設定されている傾向です。
毎月の分配金はありがたいですが、長期的な資産形成を目的とする投資という視点では、運用益を再投資して複利効果の恩恵を得られる「分配金なし」の商品に劣る点は理解しておきましょう。
毎月分配型は、特別分配金で元本を取り崩しているファンドがほとんどで、「資産形成」には全く向いていません。
そもそもNISAがつくられたのは、長期・積立・分散投資を通じて、若年層の資産形成を推進したいという国の意向です。毎月分配型が除外されたのは、NISAの方針に合致しなかったためです。
ただし、「毎月分配型だから選んではいけない」とは一概に言えません。老後の資産取り崩しのひとつとして、定期的に受け取る仕組みが商品として備わっているのは有用性が高いと考えています。
商品選びのコツ

商品選びでは、過去3年のリターンや資金流入、基準価額及び純資産総額の推移を確認して運用状況に問題がない商品か確認しましょう。基準価額及び純資産総額が下がり続けている商品は、運用が上手くいかず、資金の流出が続いていることを意味します。
プラチナNISAで購入できる商品ラインナップは、信託報酬の水準などに制限が設けられ、商品が厳選される可能性が見込まれますが、そのなかでも、できるだけコストがかからない商品を選ぶことが重要となります。
商品選びでは第一に見るべきは、信託報酬・実質コストが安いかどうか。また「普通分配金」が占める割合が高い商品がいいので運用パフォーマンスも重要です。
分配金の原資が「普通分配金」か「特別分配金」かの区別は、運用報告書に内訳が記載されているので一度確認してみましょう。
例えば「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」は、毎月分配型投資信託のなかでも人気が高い商品です。
米国の成長企業が投資対象に含まれており、運用成績が良好なため、あまり元本を取り崩すことなく普通分配金を支払えている実態があります。ただし、為替リスクがある点には注意が必要です。
※本記事で紹介しているファンドは仕組みを理解するための一例であり、特定商品の推奨や勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身で最新の情報やコスト・リスクを確認のうえ判断してください。
おわりに
プラチナNISAがどのような制度になるかを予想する意見は多くありますが、現状は公式発表がされていないため、詳細は未定です。いずれにせよ、高齢者の方にとっては大きな変化となる可能性が高いので、今後の動向に注目しておきましょう。
分配型投資信託は、現状NISA口座では投資ができません。投資を検討される方は、コストが高い傾向があること、多くが「特別分配金」として分配されている状況を踏まえたうえで判断しましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。