不動産担保ローンを利用するにあたり「親名義の不動産を担保にできるのだろうか?」と、疑問に感じている方も多いでしょう。結論として、親名義の不動産を担保として認めている金融機関がほとんどです。
しかし、ご自身の名義でない不動産ならではの注意点もあります。そこでこのコラムでは、親名義の不動産を担保にする際の注意点や手続きについてご紹介します。このコラムを読んでいただければ、トラブルを避けて資金を借りられるでしょう。
この記事を読んでわかること
不動産担保ローンとは、土地や建物などの不動産を担保にして資金を借りる金融商品。多くの金融機関では、親や兄弟などの「第三者所有の不動産」を担保として認めているため、親名義の不動産でもローンを組めるケースが多いです。しかし、親の不動産を担保にするには、契約書に親の署名・捺印が必要になるため、無断では進められません。親に内緒で勝手に審査を進めると後々トラブルになる恐れがあるため、必ず事前に同意を得ましょう。また、亡くなった親名義の不動産も、相続登記をすると担保として提供できます。ただし、相続発生後すぐにご自身の名義に変更できるわけではないため、手続きの流れを把握しておきましょう。

1.不動産担保ローンについて知ろう

ここでは不動産担保ローンについてご紹介します。
不動産担保ローンの仕組みや、担保として提供できる不動産の種類を知り、具体的な借入(金)の計画を立てましょう。
1-1.不動産担保ローンとは?
不動産担保ローンとは、土地や建物などの不動産を担保にして資金を借りる金融商品です。担保とは、返済不能になった場合に備えて、資金の貸し手(債権者)の損失を保証することです。
不動産担保ローンでは資金の貸し手である金融機関が不動産の価値を評価し、その価値に基づいて融資額を決定します。
個人が自宅や投資用物件を担保にしてローンを組む場合や、企業がオフィスビルを担保にして資金を調達する場合などが代表例です。
1-2.不動産担保ローンは親名義の不動産でも借りられる?
不動産担保ローンは親名義の不動産でも借りられるケースが多いローンです。
多くの金融機関では、親や兄弟などの「第三者所有の不動産」を担保として認めています。そのため、ご自身で所有している不動産がない場合は、親の土地や建物を担保にお金を借りられるのです。
また、企業の経営者の場合は役員が所有する不動産を担保にできる場合もあります。
2.不動産担保ローンを利用するメリット

不動産担保ローンを利用するメリットは以下のとおりです。
- 借り入れ可能金額が大きい
- 低金利で借りられる
- 長い期間借りられる
- お金の使い道を自由に選べる
上記のようなメリットが得られるのは、不動産という大きな安定資産を担保にするためです。金融機関側はローンの返済が滞った際に不動産を差し押さえて資金を回収できるため、融資リスクが低く、好条件で融資できます。
各メリットについて詳しくご紹介しましょう。
2-1.借り入れ可能金額が大きい
不動産担保ローンは借り入れ可能額が大きく、不動産の価値によっては億単位の借り入れが可能です。企業経営者など、事業資金に充てたい方にとっては、まとまった金額の融資を受けられる不動産担保ローンは魅力的でしょう。
金融機関によって融資の上限額が異なるため、各社の商品を比較検討することをおすすめします。
2-2.低金利で借りられる
不動産担保ローンは無担保の個人向けローンや法人向けローンよりも低金利で借りられる点が魅力です。
無担保のフリーローンやビジネスローンは、金利が10%を超えるケースも多いですが、不動産担保ローンの場合10%未満で借りられます。さらに、用途の制限があるローンの場合、2%台から借りられるものもあるため、金利の負担を下げたい方におすすめです。
2-3.長い期間借りられる
通常であれば、返済期間が長期になると金融機関側は資金回収リスクが高まると懸念します。しかし、不動産担保ローンは不動産を担保にしているため長期間の借り入れが可能です。
無担保ローンの場合は返済期間が5年〜10年以下に設定されているケースが一般的ですが、不動産担保ローンの場合は25年〜35年で設定されているケースが多いです。
返済期間が長いほど月々の返済額は抑えられるため、計画的な返済ができるでしょう。
2-4.お金の使い道を自由に選べる
住宅ローンや教育ローンは用途が定められており、生活費や事業費には充てられません。一方、不動産担保ローンは用途が定められていないケースが多く、目的に応じて使い分けが可能です。
親名義の不動産を担保にした場合も、生活費の補填や事業投資など、さまざまな使い道を選べます。
3.不動産担保ローンを利用するデメリット

不動産担保ローンにはメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
- 融資可否の決定までに時間を要する
- 事務手数料などの諸費用がかかる
- 所有する不動産の価値によっては融資が下りないことがある
- ローンが返済不能になると不動産を手放すことになる
それぞれについてご紹介しましょう。
3-1.融資可否の決定までに時間を要する
不動産担保ローンは融資審査に時間がかかる傾向にあります。
無担保ローンでは借り手の返済力の審査が終わり次第融資の結果が出ますが、不動産担保ローンでは不動産の審査も必要になるためです。
金融機関によっても異なりますが、ノンバンクであれば1週間、銀行であれば1ヵ月程度かかると考えましょう。
3-2.事務手数料などの諸費用がかかる
不動産担保ローンは契約時の手数料や諸費用が高い傾向にあります。所定の手続き以外に、不動産の審査費用や抵当権設定費用がかかるためです。
抵当権とは資金の借り手(債務者)が返済不能となった際に、不動産を差し押さえて資金を回収するための権利ですが、金融機関は不動産に抵当権を設定することで、万が一の際に資金を回収できるようにしています。
融資額が大きくなるほど抵当権設定費用も高くなるため、事前にどの程度の諸費用がかかるのかを確認しておきましょう。
3-3.所有する不動産の価値によっては融資が下りないことがある
不動産を担保にすると必ずローンを組めるというわけではありません。
担保にしたい不動産の価値が低い場合は、融資が下りないこともあります。例えば、アクセスが悪くて需要が見込めないエリアの土地や、違反建築物・再建築不可物件など遵法性に問題がある不動産などです。
不動産の価値次第でローンが組めなかったり、希望借入額から減額されたりする可能性があると考えましょう。
3-4.ローンが返済不能になると不動産を手放すことになる
不動産を担保にしてお金を借りている以上、返済不能になった際は不動産を手放さなければなりません。
不動産担保ローンでは、返済が滞った場合に金融機関が担保としている不動産を差し押さえる権利があります。これにより、滞納が続くと不動産が売却されることがあるのです。
不動産担保ローンを利用する際には、返済能力を十分に考慮したうえで無理のない返済計画を立てましょう。
4.親名義の不動産を担保にする際の注意点

不動産担保ローンのメリット・デメリットが分かったところで、親名義の不動産を担保にする際の注意点をご紹介しましょう。
- 親の同意を必ず得る
- 親に連帯保証人になってもらうケースもある
- 親が高齢の場合は判断能力などの審査が必要になる
- 金融機関によっては融資が認められないこともある
注意点を踏まえずに行動すると、融資審査が途中でストップしたり、親から不動産を担保にすることを断られたりする恐れがあります。
各注意点について詳しく見ていきましょう。
4-1.親の同意を必ず得る
親名義の不動産を担保にしてローンを組む際は、事前に親の同意を得てから進めることが大切です。親の不動産を担保にするには、契約書に親の署名・捺印が必要になるため、無断では進められません。親に内緒で勝手に審査を進めると、後々トラブルになる恐れがあります。
事前に相談を受けてから担保として提供するケースと、無断で審査を進められるケースとでは、親の気持ちも異なるでしょう。親の了承を得ていないことが判明すると手続きも止まってしまいます。必ず事前に了承を得ましょう。
4-2.親に連帯保証人になってもらうケースもある
親名義の不動産を担保にする際は、親が物上保証人となります。これは金融機関側が貸し倒れを避ける目的です。本来であれば不動産担保ローンで返済不能となった場合、このケースでは親名義の不動産を売却して資金を回収しますが、不動産の価値が低いなど、売却しても資金を回収できない見込みの場合は、連帯保証人を求められます。
連帯保証人にはリスクがあるため、親から連帯保証人となることを断られる可能性もあるでしょう。ノンバンクの不動産担保ローンでは連帯保証人が不要なケースもあるため、複数のローン商品をチェックするのがおすすめです。
4-3.親が高齢の場合は判断能力などの審査が必要になる
担保不動産を提供する親が高齢の場合、金融機関は契約の有効性を確認するために、判断能力の審査を求めることがあります。具体的には金融機関の担当者との面談や、医師による診断書の提出などです。
判断能力の審査が加わると融資実行までに時間がかかる可能性があるため、事前に金融機関の担当者と相談し、必要な手続きを確認しておきましょう。
4-4.金融機関によっては融資が認められないこともある
多くの金融機関では、親名義の不動産を担保にしてローンを組めます。しかし、なかには親名義の不動産を担保にすることを認めていない金融機関もあるため、事前に融資条件を確認しておきましょう。
5. 亡くなった親名義の不動産で融資してもらえる?

相続が発生して親の不動産を取得した、もしくはこれから取得する予定の方もいるでしょう。
ここからは、亡くなった親名義の不動産を担保にしてローンを組めるのかについてご紹介します。
5-1.相続登記が完了すると可能
亡くなった親名義の不動産は、相続登記をすると担保として提供可能です。相続登記とは、相続した不動産の名義人を変更する手続きです。しかし、相続発生後すぐにご自身の名義に変更できるわけではありません。
相続登記をするには相続人全員で遺産分割協議を行い、全員の同意を得る必要があります。相続人が多い場合、全員の同意を得るまでに時間がかかると考えましょう。
遺産分割協議を経て、不動産の相続人になった方が相続登記を行い、相続登記が完了すると、その不動産を担保としてローンを申し込めます。
5-2.親名義の不動産を担保にする場合の注意点
相続財産が相続税の基礎控除を超える場合は、相続税が課される点に注意しましょう。相続税を納めるだけの蓄えがあれば問題ありませんが、納税資金をローンから賄う場合は、相続税分の資金を残しておく必要があります。
なお、相続税の納税期限は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月以内」です。
6.共有名義の不動産についても知っておこう

不動産を相続すると、ご自身だけでなく複数人で共有する場合があります。
ここからは共有名義とは何か、共有名義の不動産を担保にする際の注意点についてご紹介します。
6-1.共有名義の不動産とは
共有名義の不動産とは、一つの不動産を親や兄弟、夫婦など複数人で所有している状態です。各所有者の所有割合を共有持分といいます。
例えば、父親から相続した不動産を法定相続分に従い母親と2人の兄弟で共有している場合、各人の共有持分は以下のとおりです。
- 母親:1/2
- 兄:1/4
- 弟:1/4
なお、夫婦で購入したマイホームなどは、原則として資金の負担割合で共有持分を定めます。
6-2.共有名義の不動産を担保にする場合の注意点
共有名義の不動産を担保にする際は、共有者の同意を取りましょう。不動産を担保にする際は、共有持分だけでなく不動産全体を担保にするケースが多く、ほかの共有者も連帯保証人になることを求められる可能性があります。
なぜなら、金融機関からすると第三者への売却が難しい共有持分だけでは、融資した資金を回収するのが困難であるためです。不動産の共有持分は自由に処分できますが、第三者への売却は需要が小さく、価格が著しく低くなってしまいます。
共有名義の不動産を担保にするには、共有者の同意を得なければならないためハードルが高いと考えましょう。
7.不動産担保ローンは「セゾンファンデックス」がおすすめ

不動産担保ローンを検討している方は、セゾンファンデックスの不動産担保ローンがおすすめです。
セゾンファンデックスの不動産担保ローンには、事業者向けローンとフリーローンがありますが、いずれも親族名義の不動産を担保にできます。
また、抵当権順位は問わないため、現在ローン返済中の不動産でも問題ありません。それぞれのローンの概要は以下の表を参考にしてください。
事業者向け不動産担保ローン | フリーローン(不動産担保) | |
対応エリア | 全国 (※一部対応できないエリアあり) | 全国 |
融資金額 | 100万円〜5億円 | 100万円〜3,000万円 |
融資利率 | ・変動金利:2.75%〜4.55%(2023年4月時点) ・固定金利:4.5%〜9.9% | 6.8〜9.9%(固定金利) |
返済期間 | 5年〜25年(60回〜300回) | 5年〜15年(60回〜180回) |
返済日 | 毎月4日に指定口座からの自動引落し (金融機関休業日の場合は翌営業日) | 毎月4日に指定口座からの自動引落し (金融機関休業日の場合は翌営業日) |
保証人 | 原則不要 | 原則不要 |
担保(抵当権設定) | 法人、代表者またはその親族が所有する不動産 ※担保権の順位は問いません。 | ・ご本人、ご親族が所有する不動産 ・ご本人とご親族が共同で所有する不動産 ※抵当権の順位は問いません。 ※対象となる不動産には、マンション・店舗・賃貸アパート・セカンドハウス・駐車場などが含まれます。 |
審査結果は最短3営業日でわかります。WEBから簡単に申し込めるため、ぜひご活用ください。
おわりに
多くの金融機関では、親や兄弟などの「第三者所有の不動産」を担保として認めているため、親名義の不動産でもローンを組めるケースが多いです。
しかし、親名義の不動産を担保にする際は、連帯保証人になることを求められる可能性もあるため、必ず事前に同意を得ましょう。同意を得ずに進めると審査が途中でストップする、親との関係性が悪くなるなどのトラブルが考えられます。
不動産担保ローンは金利が低く、まとまった金額を借りるための選択肢としておすすめです。このコラムの内容をもとに、親と相談しながら借り入れの準備を進めていきましょう。