借入金の返済や資金繰りに負担を感じている方のなかには、借り換えや追加融資を検討している方も多いのではないでしょうか。
このコラムでは、返済の負担を軽減する観点から借り換えと追加融資のどちらが良いかを詳しく解説します。
よく比較される「おまとめローン」との違いも解説するため、最後まで読んでいただければ借入金の返済負担を減らす最適な方法が分かるでしょう。
- 追加融資より借り換えの方が総返済額が少なくなる
- 複数社から借り入れがある場合は、おまとめローンで利息の負担や管理の手間を減らすのがおすすめ
- 借り換えの際は借り換え元の金融機関との関係が悪化するリスクがある
- 諸費用も含めて返済シミュレーションを行い、慎重に検討することが大切
借入金の返済負担軽減にはどんな手段がある?
借入金がある場合、返済の負担を軽減するには、以下4つの方法があります。
- 借り換え
- 追加融資
- 繰り上げ返済
- リスケジュール
順番に詳しく解説します。
借り換え
借り換えとは、借入金の返済残高が残った状態で新たに別の融資を受け、元の借入金を一括で返済することを指します。
借り換えのメリットは、より良い条件の融資に切り替えられる点があげられます。
例えば、金利の低いローンに切り替えれば、月々の返済額や総支払額が少なくなり返済の負担を軽減可能です。
事業の資金繰りが悪化して支払いを少しでも抑えたい場合や、契約した当初よりも金利の低い住宅ローン商品を見つけた場合などは、借り換えを検討してみましょう。
追加融資
追加融資とは、借入金の返済残高が残った状態で追加して資金を借り入れることです。
例えば、融資を受けた後に事業の業績が悪化したり、想定外の支出が増える事態が起こったりした場合は、追加融資を受けて事業の運転資金にすることで資金繰りを改善できる可能性があります。
また、追加融資により事業拡大に必要なタイミングで資金を調達できれば、機会損失を防げるでしょう。追加融資は、初めて融資を受ける場合に比べて審査期間が短いのが特徴です。
追加融資を必要とする正当な理由と将来返済できる見込みがあることを示せれば、1ヵ月以内に融資を受けられるケースが多いです。
繰り上げ返済
繰り上げ返済とは、返済残高の一部を前倒しで返済することです。返済を早めることで利息の支払額を減らせるでしょう。
繰り上げ返済には以下の2種類があります。
返済額軽減型の繰り上げ返済 | 前倒しで返済した分、以降の月々の返済額が減る返済期間は変わらない |
返済期間短縮型の繰り上げ返済 | 前倒しで返済した分、残りの返済期間が短縮される月々の返済額は変わらない |
返済額軽減型では月々の返済額が少なくなるため、返済負担が軽減したことを実感しやすいでしょう。返済期間短縮型では月々の返済額は変わりませんが、当初よりも早く返済が終わります。
どちらも支払い利息を減らせますが、一般的に返済期間短縮型の方が総返済額が少なくなる傾向です。手元の資金に余裕がある場合は、繰り上げ返済を検討してみましょう。ただし、住宅ローンの場合は住宅ローン減税制度のメリットが減るため、繰り上げ返済をしない方が良いケースもあります。
住宅ローン減税制度とは、年末時の住宅ローンの残高に応じて所得税の負担が減る制度です。繰り上げ返済によりローン残高が減れば減税効果が小さくなり、残りの返済期間が10年未満になると減税制度そのものを利用できなくなります。
繰り上げ返済の利息の軽減効果と比べて、どちらを優先した方が良いかを確認しておきましょう。
また、金融機関は利息を収益源としているため、本来受け取れる金利が減る繰り上げ返済はあまり歓迎されません。新たな融資を受けにくくなるリスクもあるため、繰り上げ返済を申し入れるかどうかは慎重に検討することをおすすめします。
リスケジュール
リスケジュールとは、借入金の返済が困難な場合に金融機関に交渉し、返済計画を変更することです。金融機関の了承を得られれば、月々の返済額や返済期日を調整して支払いの負担を軽減できます。
ただし、リスケジュールを申し入れる際は、返済が難しい理由を説明する書類や今後返済できる見込みがあることが分かる書類を提出する必要があり、手間がかかるでしょう。
また、一時的には返済の負担が減りますが、元金の返済が遅れるため総返済額は増えるケースが多いです。
さらに、リスケジュールを申し入れることで金融機関からの信用が落ち、新たに借り入れする際に金利を引き上げられるか、融資そのものを受け付けてもらえない可能性もあります。
リスケジュールは、ほかに解決方法が見つからない場合の最終手段として検討することをおすすめします。
追加融資と借り換えはどちらがおすすめ?
前章で紹介した借入金の返済負担を減らす方法のなかで、リスクが少ないのは追加融資と借り換えの2つです。
追加融資と借り換えではどちらがよりおすすめなのか、本章で詳しく解説します。
借り換えの方が返済負担を軽減できる
返済負担の軽減効果を考えると、追加融資より借り換えの方がおすすめです。例えば、追加で500万円の資金が必要な場合で比較してみましょう。
元の借入金に500万円を加えて借り換えた場合の返済シミュレーション結果は、以下のとおりです。
借り換え前 | 借り換え後 | |
返済残高 | 2,000万円 | 2,500万円 |
金利 | 2.5% | 1.3% |
返済期間 | 15年 | 20年 |
月々の返済額 | 133,357円 | 118,350円 |
総返済額 | 24,004,340円 (利息:4,004,340円) | 28,404,025円 (利息:3,404,025円) |
一方、500万円の追加融資を受けた場合の返済シミュレーション結果は、以下のようになります。
借入額 | 500万円 |
金利 | 1.3% |
返済期間 | 20年 |
月々の返済額 | 23,670円 |
総返済額 | 5,680,687円 (利息:680,687円) |
元の借入金の返済と合わせると、追加融資を受けた後の月々の返済額は157,027円、総返済額は29,685,027円です。
追加融資よりも全体的に金利を低くできる借り換えの方が、月々の返済額は約39,000円、総返済額は128万円ほど負担が軽いことが分かります。
住宅ローン返済中だと追加融資を受けにくい
住宅ローンの場合は、追加融資そのものを受けられない可能性が高いでしょう。住宅ローンは、住宅の取得に必要な資金としてあらかじめ使用用途と利用額を明確に定めて融資を受けるためです。
融資額を増やす行為は目的から外れてしまうため、金融機関の多くは追加融資を受け付けていません。
リフォームや増改築などで追加資金が必要な場合は、新たにリフォームローンを組むか、リフォーム費用を組み入れて借り換える必要があります。この場合、借り換えの方が返済費用を抑えられるでしょう。
おまとめローンと借り換えの違いは?
ローンの返済負担を軽減するには、おまとめローンを利用する方法もあります。本章では、おまとめローンと借り換えの違いを詳しく解説しましょう。
【おまとめローン】複数のローンを一本化できる
おまとめローンとは、名前のとおり複数のローンを一本化できる金融商品です。一つの金融機関から新たに借り入れた資金を使い、利用中のローンを一括返済します。
おまとめローンのメリットは以下の2点。
- 返済の支払い処理や期日の管理の手間を削減できる
- 金利の低いおまとめローンに乗り換えれば利息の負担を軽減できる
複数のローンを利用する場合は引き落とし口座や引き落とし日を個別に管理する必要があり、入金忘れなどが起こる可能性が高いです。
返済が遅れると遅延損害金などのペナルティを課される恐れがあるため、おまとめローンで管理しやすくなるメリットは大きいでしょう。
ただし、おまとめローンの返済中は追加融資ができない点に注意が必要です。おまとめローンは借入金の完済を目的としているためです。
おまとめローンを組んだ金融機関とは別の金融機関から新たに借り入れできる場合もありますが、審査で厳しく評価されるケースが多いでしょう。
【借り換え】ほかのローン会社に借り換えられる
おまとめローンでは複数社のローンを一つの金融機関のローンに一本化するのに対し、借り換えは一つのローンを他社のローンに変更することを指します。
おまとめローンは「A社、B社、C社のローンをD社のローンに一本化」、借り換えは「A社のローンをB社のローンへ変更」と、イメージしましょう。
どちらも金利の低いローンへ乗り換えることで返済負担を軽減する点は同じですが、おまとめローンは2社以上から融資を受けている方に向けた金融商品です。
借り換えを行う時に気をつけることは?
借り換えを行う時は、以下の3点に気をつけましょう。
- 借り換えには諸費用がかかる
- 借り換え元の銀行との関係が悪化する可能性がある
- 借り換え先の条件によって返済負担が増えることもある
それぞれ詳しく解説します。
借り換えには諸費用がかかる
ローンの借り換えには諸費用がかかる点に注意しましょう。
借り換えの際は、元の借入先の金融機関に支払う手数料と新しく融資を受ける金融機関に支払う手数料の両方がかかります。
諸費用の主な内訳は以下のとおりです。
内訳 | 費用の相場 |
元の借入金の全額繰り上げ返済手数料 | 10,000円〜30,000円 |
抵当権抹消登記の費用 (住宅ローンなどで担保の設定を解除するための費用) | 10,000円〜20,000円 |
新たに借り入れるローンの事務手数料 | 借入金額の2.2% |
保証料 (保証会社に支払う手数料) | 無料〜50,000円 (金利に上乗せする場合が多い) |
印紙税 (ローン契約書を作成する際に課される税金) | 10,000円〜20,000円 |
抵当権設定登記の費用 (住宅ローンなどで担保を設定するための費用) | 借入金額の0.4% |
借り換えの諸費用だけでもまとまった出費になるため、返済の軽減効果と比較してから借り換えるかを決めましょう。
借り換え元の銀行との関係が悪化する可能性がある
他行のローンへ借り換えることで、借り換え元の銀行との関係が悪化する恐れも。
ローンの利息が銀行の収益源であることに加え、住宅ローンなどの残高が銀行の経営状況を示す指標になっており、銀行にとってローンの解約は好ましくないためです。
ローンの残高が多いと、多数の顧客が安心して借り入れできる優良な銀行だとアピールでき、そのため銀行によっては融資開始から数年間は借り換えできないよう定めている場合もあります。
借り換えを繰り返す顧客は銀行から警戒されて新たな融資を受けにくくなるリスクがあるため、借り換え前に慎重に検討しましょう。
借り換え先の条件によって返済負担が増えることもある
借り換え先のローンの条件によっては、借り換え前よりも返済負担が増える可能性があります。例えば、金利が低くても極端に返済期間が長ければ、総返済額が増えるケースが多いです。
また、ローン残高が少ない場合は、利息の軽減効果よりも借り換えにかかる諸費用の負担の方が大きく、借り換えによるメリットを得られません。
早期に完済しようと返済期間を短く設定したために、月々の返済に無理が生じるケースもあります。
借り換えの際は返済シミュレーションを行い、負担を減らしつつ無理なく最後まで続けられる返済計画を立てましょう。
融資の借り換え先は?
融資を借り換える際は、以下の4つを利用できます。
- 銀行(地銀・都銀・信金)
- 日本政策金融公庫
- 信用保証協会
- ノンバンク
それぞれの特徴とメリット・デメリットを見ていきましょう。
銀行(地銀・都銀・信金)
銀行は個人向けの住宅ローンから事業者専用のビジネスローンまで、幅広い金融商品を取り扱っています。融資の借り換え先として広く知られている利用者の多い金融機関。
すでに銀行から融資を受けている場合は、同じ銀行の別の金融商品に借り換えるか、他行の金融商品へ借り換えるかの2パターンの借り換え方法があります。
他行へ借り換える場合は、借り換え元の銀行を利用しにくくなる点を考慮し、慎重に借り換え先の銀行を選びましょう。
また、銀行の場合は借り換えではなくカードローンを利用するという選択肢もあります。
カードローンとは、あらかじめ借入限度額が設定され、限度額の範囲であればいつでも自由に借り入れできる融資サービス。
住宅ローンなどに比べて借入限度額が小さく金利も比較的高いですが、一度審査がおりればコンビニやATMで手軽に資金を借りられます。
短期的な資金繰りに困った場合などに利用を検討してみましょう。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、民間の融資を受けにくい事業者に貸付を行う公的な金融機関です。
中小企業や小規模事業者は信用力が低く、銀行などからまとまった金額の融資を受けるのが困難な場合が多いため、日本政策金融公庫の融資制度が主な資金調達の手段になります。
日本政策金融公庫から融資を受けている場合は、公庫融資借換特例制度を利用して日本政策金融公庫の別の融資へ借り換えられる可能性も。
公庫融資借換特例制度とは、自然災害などの外的な要因で資金繰りが困難になった場合に、返済中の融資を貸付条件が緩和された融資に借り換えられる制度です。
制度を利用するには個別の状況や事業の見通しなどの審査を受ける必要があるため、借り換えたい方は日本政策金融公庫の窓口で相談しましょう。
なお、銀行などの民間の金融機関の融資から日本政策金融公庫へは借り換えできません。
信用保証協会
信用保証協会とは、融資を受ける際の保証を提供する公的機関です。中小企業や小規模事業者は金融機関から融資を受けにくいですが、信用保証協会の保証をつけることで融資を受けやすくなります。
信用保証協会の保証付きの融資を利用している場合は、信用保証協会の保証がついた融資に限り借り換えが可能。
信用保証協会を介さず金融機関から直接受けた融資(プロパー融資)との間での借り換えはできないため注意しましょう。
なお、信用保証協会の保証つきという条件を満たしていれば、複数の融資を一本化したり借り換えの際に融資額を上乗せしたりすることも可能です。
保証付き融資の借り換えについては各自治体の信用保証協会が独自に条件を定めているため、借り換えを申し込む前に信用保証協会へ詳細を確認しておきましょう。
ノンバンク
ノンバンクとは、預金機能がなく融資のみを取り扱う金融機関です。代表的なものには消費者金融やローン会社が挙げられます。
ノンバンクは銀行などに比べて融資を受けやすい点が特徴。
銀行で融資を受けにくい顧客を対象にしているため審査の基準が低く、消費者金融の場合は即日融資を受けることも可能です。
返済期限が迫っているなど急いで資金を調達したい場合は、ノンバンクでの借り入れが適しているでしょう。
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おわりに
借入金の返済負担を軽減する方法には、借り換えと追加融資がありますが、借入条件が同じであれば借り換えの方が総返済額が少なくなるためおすすめです。
特に、住宅ローンは追加融資を受けにくいため、リフォームや増改築をする場合は追加で必要な資金を組み入れて金利の低いローンに借り換えると良いでしょう。
複数社から融資を受けている場合は、おまとめローンで一本化して管理しやすくする方法も有効です。