住宅ローンの負担が大変な場合、家を売って引っ越す以外にも対処法はあります。そのひとつがリースバックです。簡単にいうと専門の会社に家を買い取ってもらい、同時に賃貸借契約を結んで自宅に住み続ける契約を指します。
ただし、特殊な方法であり、あまり知られていないため、インターネットで検索すると「やばい」というワードを目にする機会もあるでしょう。今回の記事では、リースバックは本当に「やばい」のか、そう言われている理由と、トラブルを回避するための方法について解説します。
この記事を読んでわかること
- リースバックとは不動産を売却と同時に賃貸借契約を結んで住み続ける契約のこと
- 契約の認識齟齬からトラブルに発展することがあり、そのことから「やばい」と指摘する声も
- トラブルの内容自体は契約内容の確認や下調べで予防が可能なケースが多い
- 信頼できるリースバック会社に依頼し、担当者と綿密なコミュニケーションを取りながら進めることが重要
リースバックはなぜ「やばい」と言われるの?
リースバックに対しては「やばい」など、ネガティブな意見も一定数存在します。そもそもなぜ「やばい」と言われるのか、理由として以下の3つを解説しましょう。
【原因その1】悪徳業者の疑いがかけられるケースも存在する
リースバック会社の中には、悪徳とは言わないまでも、契約時に十分な説明を担当者がしなかったといったことから、結果的にトラブルになるケースも存在します。
国民生活センターには、以下のようなリースバックに関する事例・相談が寄せられています。
4年前、所有していたマンションを売って、そのまま賃貸でそこに住み続けられる契約をした。売却金額は1千万円で、家賃の月額は9万5千円。当時の月収は、夫と私の年金で25万円以上あったが、しばらくして夫が亡くなり、年金が減って家賃の支払いが遅れるようになった。本日集金人がやってきて催促された。事情を話すと「払わないなら出て行ってもらう」と言われた。(70歳代)
このようなトラブルに巻き込まれた方やご家族が「リースバックはやばい」とSNSなどで発信することもあるでしょう。
リースバックを利用する際は「どんな契約内容なのか」を理解したうえで進めるのが重要です。以下の特徴に当てはまるリースバック会社は、担当者の力量不足もしくは説明が不十分とも言えるので、利用しないほうが無難です。
- 質問に対する回答が明確ではない
- 契約書の内容が不明瞭
- デメリットや注意点に触れずメリットばかりを強調する
- 契約締結を急がせる
【原因その2】仕組みが複雑でトラブルが起きやすい
前述したように、リースバックの仕組みが複雑でわかりにくいため、理解しないで契約するとトラブルになりがちです。そのため「トラブルが起きやすい=やばい」というイメージがついた側面もあります。
リースバックを検討する際は、下図のように基本的な仕組みだけでもまずは理解しましょう。
また、わからないことがあれば、わかるまで質問するのも重要です。前述したように、説明をあまりしてくれない会社を使うのはなるべく避けましょう。
【原因その3】リースバック会社によって見積もりや条件に差がある
リースバック会社によって見積もりや条件に差がある点も、不安材料につながっています。そもそも、リースバックも不動産売買の一種である以上、同じ物件でもリースバック会社によって売約価格や賃料に差があるのは当然です。
ご自身の納得がいく条件で契約を結べるに越したことはありませんが、中にはそうはいかないケースも発生します。そして納得のいく条件で契約を結べなかった方が「リースバックはやばい?」といったネガティブな印象を持つかもしれません。
リースバックの仕組みをおさらい
リースバックとは一言でいうと「家を売却してそのまま賃貸で住み続ける」ことです。正確には「セール・アンド・リースバック」といいます。
リースバックのメリットは以下のとおりです。
- 引っ越しの必要がない
- 短期間で現金を調達できる
- 売却で得た資金の使い道は自由
リースバックでは一度家を手放すものの、同時にリースバック会社と賃貸借契約を結ぶため引っ越しをせずに住み続けることができます。また、リースバック会社に買い取ってもらうため短期間で現金を調達できるうえに、売却で得られた資金の使い道に制限はありません。
一方、以下のデメリットもあります。
- 通常の売買に比べ買取価格は安くなる
- 家賃を支払えなくなったら引っ越しを余儀なくされる
- 契約内容次第では更新できず引っ越しをする必要がある
また、家賃を支払えなくなったら最終的には引っ越しを余儀なくされます。
さらに、締結した賃貸借契約が定期借家契約だった場合、契約が再更新できず退去しなくてはいけないこともあるため注意しましょう。
押さえておきたいリースバックのトラブル事例
リースバック自体、法的に何ら問題はないものの、トラブルが起きているのも事実です。ここではリースバックのトラブル事例として、以下の6つを紹介します。
- 周辺相場より家賃が高い
- 家の買戻しができなかった
- 家を転売され、不動産の所有者が変わった
- 契約時にかかる諸費用を高額請求された
- 修繕費を所有者と住人のどちらが支払うかもめた
- 契約を更新できなかった
周辺相場より家賃が高い
リースバックの賃料は、周辺相場より高くなることが多いです。リースバックの賃料は、売却価格とリースバック会社が想定する利回りを勘案して決定されます。
また、住宅ローンが残っている状態で家を売ることになる場合、住宅ローンを完済し、抵当権抹消登記を行う必要があります。つまり、リースバック会社からの視点では、住宅ローンが完済できるだけの売却価格を提示しなくてはいけません。
その売却価格で買い取っても利益を出せるようにする必要がある以上、家賃も高く設定されると考えましょう。
家の買戻しができなかった
リースバックの契約締結に当たって、将来的に家を買戻しできる条項が盛り込まれていることがあります。しかし、買戻せると思っていたのに、買戻しができなかった場合はトラブルになりがちです。
トラブルが起きる原因として以下の3つが考えられます。
- 自宅を買戻す際の価格が想定以上に高かった
- 契約時に買戻しに関する条件が記載されていなかった
- オーナーチェンジで買戻しができなくなった
不動産の所有者が変わり、契約変更を迫られた
リースバック会社が家を転売し、不動産の所有者が変わることがあります。この場合、新しい所有者が家賃を値上げしたり、賃貸借契約の更新を拒否したりといったトラブルが起きがちです。
契約時にかかる諸費用を高額請求された
リースバックも不動産売買の一形態であるため、契約時には、印紙代や抵当権抹消手続き費用がかかります。また、担当者の交通費や書類郵送費などの諸経費も含めて請求しているリースバック会社もあるようです。
不透明な名目で高額の費用を請求されることもあるため、注意しましょう。
修繕費を所有者と住人のどちらが支払うかもめた
修繕費を所有者と賃借人のどちらが支払うかでもめたというトラブルも、リースバックでは起きがちです。リースバックでは、契約後も元所有者が賃借人としてそのまま住み続けるため、もともとの建物の不具合や傷などを把握しにくくなっています。
売買する前に両者でしっかりと立会い、確認した状態を重要事項説明書等に残しておくようにしましょう。
契約を更新できなかった
リースバックにあたって家を借りる際、契約の結び方によっては更新できず、引っ越しを余儀なくされることも考えられます。
家を借りる契約=賃貸借契約には普通借家契約と定期借家契約の2種類がありますが、このうち「定期借家契約」を締結した場合、更新ができないこともあるので気を付けましょう。
普通借家契約 | 定期借家契約 | |
契約の更新 | 貸主が希望すれば原則として契約は更新される (貸主が更新を拒む場合には正当事由が必要) | 更新はない (期間満了により契約は終了する) |
期間の定めのない契約 | 認められる | 認められない 期間(期限)を確定する必要がある |
1年未満の契約 | 認められない (期間の定めのない契約とみなされる) | 認められる 1年未満の契約も有効 |
リースバックで安心するための契約書チェック項目
トラブル事例で紹介したケースの多くは、契約書を確認していれば防げることがほとんどです。ここでは、トラブルを防ぐために確認すべき契約書の内容について解説します。
売却価格について
リースバックを利用する際は、リースバック会社が提示してきた家の売却価格が適正かを判断しましょう。そのためには、複数のリースバック会社に相談し、見積もりを取るのが効果的です。「だいだい、いくらぐらいで売れるのか」を客観的に判断できます。
極端に高かったり、逆に安かったりする場合は「なぜその価格なのか」根拠を聞くようにしましょう。
明確かつ納得がいく根拠を示してくれれば問題ありませんが、うやむやにされた場合は、そのリースバック会社は使わないほうが賢明です。
賃貸借契約の内容と契約期間について
賃貸借契約の内容と契約期間についても確認しておきましょう。前述したとおり、契約には普通借家契約と定期借家契約があります。
家にずっと住み続けたいなら前者を、ゆくゆくは転居してご家族と同居する予定があるなら後者を選びましょう。目的に応じて契約形態を使い分けるのが重要です。
なお、定期借家契約を結んだ場合、原則として契約期間中の解約はできません。ただし、やむを得ない事情があれば解約できる可能性があります。実際に解約できるかどうかはリースバック会社の判断にもよるので、早めに相談しましょう。
買戻しの期間や価格について
将来的に家を買戻したい場合は、必ず契約書で書面上に買戻しの有無や各種条件を盛り込みましょう。口約束で決めたのでは、後々口論になりがちです。契約を締結する前に担当者に希望を伝え、正式な契約書を作成する前に一度見せてもらうのも効果的です。
さらに万全を期すためには、買戻特約の登記をしておくのも効果的です。法的に強い証拠能力を有するため、万が一、リースバックした家が転売されたときは、買戻しの主張ができるようになります。
契約書確認以外で事前に対策しておきたい4つのポイント
リースバックのトラブルを回避するためには、事前の対策も重要です。以下のポイントを押さえておくことで契約後のトラブルも防げるので、詳しく解説します。
家族と話し合い。同意を得ておく
リースバックの契約期間中にご自身に万が一のことがあった場合、ご家族が借主としての立場を引き継ぐことになります。
賃貸借契約上の賃借人が死亡した場合、賃借人としての地位は相続によって相続人に承継されるためです。当然、相続人となったご家族には賃料の支払義務が生じます。複数人の相続人がいる場合は、各人が法定相続分に応じて賃料を支払わなくてはいけません。
また、リースバックは家に住み続けられるものの、所有権は第三者(リースバック会社)に移転することになります。ご家族が思い入れのある家を手放したくないと考えていた場合、勝手に進めてしまうとトラブルになります。
まずは話し合いをし、リースバックを使うことに対して同意を得ておきましょう。
家賃を支払い続けられるか生活資金のプランをしっかり立てておく
リースバックにより住宅ローンの支払いからは解放されますが、家賃は住み続ける限り支払わなくてはいけません。金額によっては途中で支払いが難しくなり、引っ越しを余儀なくされることもあります。
家賃を支払い続けるためには、事前に生活資金のプランをしっかりと立てておきましょう。
自宅を通常売却した場合の価格を把握しておく
自宅を通常の不動産売買で、売却した場合(通常売却)の価格も把握しておきましょう。リースバックでの買取価格は、だいたい通常売却した場合の70%~90%程度となっています。リースバック会社が提示してきた価格がこの水準に収まっていれば、ひとまず妥当な値段と考えられるでしょう。
ただし、前提として通常売却した場合の価格がわからないと、妥当かどうかもわかりません。事前に無料の査定サイトなどを活用して、通常売却した際の相場を調べておきましょう。
信頼のできる大手のリースバック会社を選ぶ
リースバックを依頼するなら、信頼ができる大手のリースバック会社を選びましょう。リースバックは小規模の会社が行っていることもあります。しかし、長い間関係が続く相手方でもある以上、信頼性と資金力が担保されていることがトラブル回避のためにも重要です。
セゾンのリースバックは事務手数料や調査費用は無料のため、少ない負担でご利用いただけます。また、契約者の特典としてホームセキュリティやハウスクリーニングなどのサービスのうち、お好きなものひとつを無料でご利用可能です。各種提携サービスのご紹介や暮らしを豊かにする優待サービスもご用意しています。
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おわりに
リースバックは住み慣れた家に住み続けられ、住宅ローンの支払いの負担も軽減できる便利な方法です。しかし、まだまだ十分に認知されていない取引であるうえに、リースバック会社の対応いかんによっては不快な思いをするかもしれないので注意しましょう。
リースバックを検討する際は、まずご家族で話し合ってから、信頼できるリースバック会社を選ぶのが重要です。十分な下調べをしたうえで「やって良かった」と思えるよう、進めていきましょう。