資産形成の一環としてアパートを一棟買いする形で不動産投資をする方がいます。そして、その一室に自分で住むことを考えている方がいてもおかしくありませんが、理論上可能でも現実的にはあまりおすすめできません。投資用物件とマイホームを同時に手に入れたいなら、賃貸併用物件を入手しましょう。今回の記事では、賃貸併用物件とは何か説明しつつ、入手する上での注意点について解説します。
(本記事は2024年5月17日時点の情報です)
- 投資用アパートを一棟買いし、その一部に自分が住むこと自体は理論上可能だが、実際は金融機関からの許可が下りない、入居者とのトラブルが起きうるなどの関係から避けたほうが良い
- 不動産投資とマイホームの入手を両立したいなら賃貸併用物件を入手することが考えられる
- 賃貸併用物件を入手するには、新築するか、中古物件をリノベーションすることが考えられる
- 中古物件をリノベーションするなら適したローンを選ぶこと
一棟買いしたアパートに自分も住む2つの方法
結論からいうと、一棟買いしたアパートに自分も住むことは可能です。具体的な方法として以下の2つが考えられます。
賃貸併用住宅の自宅部分に住む
1つ目の方法は、アパートを自宅部分と賃貸用部分に分ける「賃貸併用住宅」として、自宅部分に住むことです。条件に合致すれば住宅ローンや住宅ローン控除が使えますが、設計に制限が加わるうえに建築費も高くなるという欠点があります。
投資用アパートの一部屋を自宅とする
2つ目の方法は、一棟買いした投資用アパートの一室に入居することです。入居者が決まるまで自分が住めば、保守管理や入居者対応がしやすいというメリットがあります。ただし、オーナーと同じ建物に住みたくないと敬遠されたり、入居者とトラブルを起こしたりなどのリスクも多い点に注意が必要です。
投資用アパートの一室に住むことは理論上可能だが、実際にはおすすめしない2つの理由
実際のところ、投資用アパートの一室に住むのはおすすめできません。おすすめできない理由として、以下の2つを解説します。
不動産投資ローンで購入する場合は入居できない場合がある
1つ目の理由は「不動産投資ローンで購入する場合は入居できない場合がある」ことです。不動産投資として金融機関から融資を受ける場合、あくまでも投資を前提にお金を借りるため、原則オーナーは入居できません。
金融機関によっては許可を取れば入居できる可能性もありますが、オーナーが住む分の賃貸収入が減るので容認されにくいのが実情です。
自宅になる部屋は減価償却できなくなる
2つ目の理由は「自宅になる部屋は減価償却できなくなる」です。投資用不動産を購入した場合、その購入価格を耐用年数に渡って減価償却費として計上できます。
このため、実際にかかった必要経費よりも会計上の必要経費が大きくなるため、利益が減ることから節税することが可能です。
しかし、自宅になる部屋は減価償却できなくなる分、節税効果も薄れます。
賃貸併用住宅に住むメリットと経営のデメリット
賃貸併用住宅とは、戸建て住宅の一部にアパート形式の賃貸住宅を足した建物のことです。自宅を確保しつつ一部を人に貸すという形で不動産投資ができるため注目されています。賃貸併用住宅に住むメリットと経営のデメリットについて解説しましょう。
【メリット①】自宅と収益物件がまとめて手に入る
1つ目のメリットは「自宅と収益物件がまとめて手に入る」ことです。住宅ローンを組んで賃貸併用住宅を建てる場合、建物の50%以上を自宅として使い、残りの部分を収益物件として使うことになります。
一般的に、アパート・マンション経営において達成すべき実質利回りは5%程度と言われています。実質利回りとは、不動産投資から得られる年間の純利益(家賃収入から諸経費を引いた額)を物件の取得価格で割った数値のことです。例えば、2,000万円で購入した物件から年間100万円の純利益が得られる場合、実質利回りは5%(100万円÷2,000万円×100)となります。
賃貸併用住宅は建物の半分以上がマイホームであることを考えると、4%程度の実質利回りを達成できれば十分でしょう。これは、自宅として使用する部分があるため、純粋な投資用物件よりも収益性の基準を少し下げても良いということを意味します。
【メリット②】賃貸部分も含めて住宅ローンが利用できる可能性がある
2つ目のメリットは「賃貸部分も含めて住宅ローンが利用できる可能性がある」ことです。前提として、一般的な投資用物件を建てるのに住宅ローンは使えません。
しかし、賃貸併用住宅の場合、居住スペースが50%以上あれば住宅ローンが利用できるケースが多くなっています。住宅ローンは不動産ローンに比べ金利が低いため、返済の負担が和らげられるのも大きなメリットです。
【メリット③】住宅ローン控除などさまざまな税金対策ができる
3つ目のメリットは「住宅ローン控除などさまざまな税金対策ができる」です。賃貸併用住宅の経営により、さまざまな税金対策を講じることができるので、その一例を紹介します。
必要経費の計上 | 賃貸部分に使う設備や建築費の減価償却、ローン利息、不動産取得税・固定資産税などの税金、管理会社への手数料を経費として計上できる |
住宅ローン控除 | 住宅ローンを使って住宅を新築・取得または増改築した場合、年末ローン残高の0.7%を所得税および住民税から最大13年間控除できる |
小規模宅地の特例 | 住宅1戸当たり200 ㎡以下の小規模住宅用地の場合、固定資産税評価額が1/6になる |
相続税評価額の減額 | 相続が発生した際、賃貸住宅については居住用の住宅と比べ評価額が減額されるので節税になる |
小規模宅地の特例
小規模宅地の特例とは、相続税や固定資産税の計算において、一定の条件を満たす小規模な宅地の評価額を減額する制度です。賃貸併用住宅の場合、以下のように適用されます。
固定資産税における特例
住宅1戸当たり200㎡以下の小規模住宅用地の場合、固定資産税評価額が1/6になります。例えば、評価額600万円の土地であれば、100万円として計算されます。
3相続税における特例
貸付事業用宅地としては最大400㎡まで、評価額の80%減額が適用されます。例えば、市場価値1億円の400㎡の賃貸併用住宅の土地を相続する場合、相続税の計算上は2,000万円として扱われます。
この特例により、賃貸併用住宅所有者は固定資産税や相続税の負担を大幅に軽減できる可能性があります。ただし、適用には様々な条件があるため、詳細は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
【デメリット①】通常の賃貸物件よりも収益は下がる
一方、デメリットのひとつが「通常の賃貸物件よりも収益が下がる」ことです。半分以上を自宅として使う以上、その分の賃料収入は入ってこないため収益も少なくなります。
【デメリット②】入居者とトラブルになる可能性がある
他にデメリットとして指摘されるのが「入居者とトラブルになる可能性がある」ことです。入居者との距離が近いので、生活音や生活態度が気になるなどの理由でトラブルも起きやすくなります。
また「大家さんの近くに住むのは嫌だ」と距離が近いことを懸念され、空室のリスクも通常より高くなる点に注意が必要です。
【デメリット③】売却のタイミングが難しい
「売却のタイミングが難しい」ことにも注意しなくてはいけません。一般的な投資用不動産であれば、収益が下がってきたら売却し、損失拡大を防げます。しかし、賃貸併用住宅は自宅として使っている性質上、収益が下がった、売却したいとなってもなかなか手放しにくいのも事実です。
賃貸併用住宅の経営に失敗しないためのポイント
賃貸併用住宅はマイホームであり、投資用物件でもある特殊な建物であるため、経営として成功させることを目指す必要があります。経営に失敗しないためのポイントとして、以下の4点について解説します。
エリアの賃貸ニーズを調査する
1点目は「エリアの賃貸ニーズを調査する」ことです。 そもそも賃貸住宅としてニーズのあるエリアか調査しておかないと、入居者が見つからないという事態に陥ります。以下の条件が整っていれば賃貸ニーズは見込めますが、より正確な情報はハウスメーカーや建築会社、不動産会社の担当者に聞いてみましょう。
- 近くに会社、学校などがある
- 駅前・駅近である
- 近隣にスーパー、コンビニ、ドラッグストア、病院などがある
収益を考え自宅の専有面積を決める
2つ目は「収益を考え自宅の専有面積を決める」ことです。前述したように、住宅ローンを使う場合、自宅の専有面積50%以上が必要になります。
「自宅50%、賃貸50%」とすれば収益を最大化できますが、土地の広さ次第ではこの割合にこだわってしまうと居住スペースが手狭になるかもしれません。実際にマイホームに住む家族の意見も聞きながら決めましょう。
プライバシーに配慮した設計にする
3つ目は「プライバシーに配慮した設計にする」ことです。賃貸併用住宅はプライバシーに関してトラブルが起きやすいので、しっかり配慮しなくてはいけません。具体的な工夫として考えられるものをいくつか紹介します。
- 賃貸スペースに接するようクローゼットや階段を配置する
- 外付け階段は自宅スペースの寝室から離れた場所に設置する
- 自宅側に二重サッシを設置する
- 間仕切り壁の遮音性を高める
- 窓の位置、大きさを工夫する
- 自宅スペースと賃貸スペースの玄関を離す
- 自宅スペース直通エレベーターを設置する
将来的な活用方法も考えておく
4つ目は「将来的な活用方法も考えておく」ことです。 賃貸部分はローンの支払いが滞らない限り、賃貸目的以外の使い方でも問題ありません。将来子どもが社会人になったり、結婚したりした場合はそこに住むなどの方法で活用することも検討できます。
信頼のおける管理会社を探す
5つ目は「信頼のおける管理会社を探す」ことです。すぐ近くに住んでいるのだからと管理業務を自分でやろうとする方もいますが、あまりおすすめできません。こまごまとした仕事が多いうえに、対応を間違えると入居者とのトラブルにもつながるためです。トラブルを避けるためにも、信頼できる管理会社に任せたほうが良いでしょう。
賃貸併用物件を手に入れる方法とそのコスト比較
賃貸併用物件を手に入れる方法として、「アパートを新築する」ことと「中古アパートをリノベーションする」ことが考えられます。それぞれの方法について、コストを中心に詳しく比較してみましょう。
アパートを新築する
新築の場合、以下のようなコスト構成が考えられます。
- 4世帯向け賃貸併用住宅の場合(自宅部分60㎡、賃貸部分各25㎡×3室)
- 概算総額:2,500万円~3,000万円
- 内訳:
- 土地代:約1,000万円~1,500万円(立地により大きく変動)
- 建築費:約1,500万円~1,800万円
- その他諸経費:約100万円~200万円
メリット
- 最新の設備や間取りを自由に設計できる
- 建物の状態が良いため、当面大きな修繕費用がかからない
デメリット
- 初期投資額が大きい
- 建築に時間がかかる
中古アパートをリノベーションする
中古リノベーションの場合、以下のようなコスト構成が考えられます:
- 築30年の4世帯向け中古アパートの場合
- 概算総額:1,500万円~2,000万円
- 内訳:
- 物件購入費:約1,000万円
- リノベーション費用:約500万円~1,000万円(物件の状態により変動)
メリット
- 初期投資額を抑えられる
- 物件探しから入居までの期間が比較的短い
デメリット
- 予想外の追加修繕が必要になる可能性がある
- 間取りの変更に制限がある場合がある
このように、新築と中古リノベーションでは、コストだけでなくメリット・デメリットも大きく異なります。新築の場合、総額で2,500万円~3,000万円程度かかるのに対し、中古リノベーションなら1,500万円~2,000万円程度で済む可能性があります。ただし、中古物件の状態によってはリノベーション費用が想定以上にかかる場合もあるため、事前の調査と慎重な検討が必要です。
予算や希望する間取り、入居までの時間的余裕などを考慮し、自身の状況に最適な方法を選択することが重要です。
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賃貸併用物件をリノベーションする場合、セゾンファンデックスのリフォームローン(不動産担保)がおすすめです。このローンの特徴を紹介します。
- 住宅ローン返済中でも利用可能
- 投資用不動産のリフォームにも対応
- 借入可能額が高額(最大1億円)
- 金利は市場平均より低め
- 借り換えによる借入も可能
このように、すでに住宅ローンを組んでいる場合でも活用でき、投資用不動産tにも対応しているので、賃貸併用物件のリフォームに最適です。低金利で高額の資金を調達できるというメリットもあります。
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おわりに
投資用アパートを一棟買いし、その一部に自分が住むこと自体は理論上可能ですが、金融機関から断られたり、入居者とのトラブルにつながったりなどの弊害があるのでおすすめできません。投資をしつつ自宅として使いたい場合、賃貸併用住宅を入手するのが現実的な選択肢といえます。ただしこの場合、プライバシーに配慮しつつ、家族が快適に暮らせるようデザインや賃貸住宅に回す割合を考える必要があるでしょう。不動産会社やハウスメーカー、建築会社とも相談しながらプランニングするのをおすすめいたします。