不動産投資を始めたのはいいものの、当初思い描いていたものとはだいぶかけ離れ、思うように収益を上げることができず撤退してしまったという話をよく耳にします。このコラムでは不動産投資を始める前に、まず事前に理解しておくべきポイントについて解説していきます。事前にポイントを押さえ、想定外の事態になることを未然に防いでいきましょう。
不動産投資は余剰資金で始める
不動産投資に限った話ではありませんが、まず不動産投資を始めるうえで一番大切なことは、余剰資金で始めるようにしましょう。例えば貯金が1,000万円あるからと全額すべてを不動産投資につぎ込むことは、大きなリスクを伴いますのでおすすめできません。
その貯金の中には、当然ながら生活費、自動車や住宅の購入、またお子様の教育費などに充てるべき分もあると思います。突然のケガや病気で本業からの収入が途絶えてしまうこともあるかもしれません。
どんな投資にも必ずリスクは存在します。絶対に儲かるというような甘い気持ちを持たず、計画的に考えて行動することが大切です。もし失敗したときに生活に困窮する事態にならないように、最初は余剰資金の一部で小さくスタートするのが良いでしょう。
経験を積み、物件の運営が軌道に乗って資金に余裕が出てきたら、そこから次の投資先を検討するというように、徐々に投資額を増やしていくことをおすすめします。
不動産投資は長期投資が基本
不動産投資をはじめ、投資ではすぐに大きな利益が出ることはほとんどありません。最初は家賃収入が主な収入源となるため、利益の出方は細く長くとなります。不動産会社の中には短期で売買を繰り返し、大きな利益を得ている企業もありますが、個人が行う不動産投資は家賃収入からの利益をメインで考えていく方が望ましいでしょう。
毎月数万円の利益が安定して入ってくることが不動産投資の魅力のひとつです。すぐに大きな利益は狙わず、購入した物件からの利益を最大化することを目標とし、長期に運営を続けていくことをおすすめします。
ローンを利用していれば損失額はさらに大きくなる!?
ローンを利用することで、自己資金を超えて投資できることが不動産投資の魅力のひとつですが、ローンを利用して不動産投資を行い赤字になる場合には注意が必要です。自己資金だけで行う場合に比べて、損失額が大きくなる傾向にあります。
ローンを利用して不動産投資で赤字というのは下記のような状態ではないでしょうか。
例1)家賃収入よりも返済額が負担になるほど多い場合
毎月の家賃収入が10万円にもかかわらず、ローンの返済額が13万円ある。投資をして利益を得るつもりが、毎月3万円の出費となってしまい、普段の生活に支障をきたしてしまう。
例2)売却をしたらローンの返済額に満たず、自己資金で補填した場合
3,000万円の物件を500万円の自己資金と、2,500万円のローンで購入。
売却した値段が2,000万円だった。
自己資金の500万円を失っただけでなく、500万円追加で返済することになった。
例1)については、毎月の支出がプラスであることに越したことはないのですが、実は一概に損しているというわけではありません。それは、売却時に月々のマイナス分の合計をカバーするほどの高額で不動産を売却できた場合は、収支全体としてはプラスになります。また、ローンで購入しているケースになりますので、まとまった資金がある場合には、繰上返済などを行うことで、利息を軽減することもできます。加えて、自己資本から見た利回りは、高いことになります。
不動産投資のリスクとは?
ここからは不動産投資に関する具体的なリスクについてみていきたいと思います。主なリスクは下記のようなものが挙げられます。ここではそれぞれのリスクとそれに対する対処法(リスクを軽減する方法)もあわせてご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
・経済リスク要因
①不動産価格・賃料下落リスク
②災害リスク
・個別リスク要因
①不動産価格・賃料下落リスク
②家賃滞納リスク
③空室リスク
④災害・事故リスク
⑤修繕費増大リスク
経済リスク要因
経済リスク要因とは、個別不動産に関係がないリスクです。例えば、コロナウイルス感染拡大により、東京に住む方が少なくなり家賃や不動産価格が下落した、大震災によって不動産が倒壊したといったリスクが考えられます。
①不動産価格・賃料下落リスク
1つ目の価格・賃料の下落リスクについては、回避することが難しいところです。不動産ファンドや不動産会社といった巨大な資金を使って投資を行う企業は、地域や用途を分散することでリスク回避をしますが、一個人投資家の資金では、なかなか複数の地域に投資をするといったことは難しいのが実情です。1つのリスクとして受け入れることが必要な点かもしれません。
②災害リスク
2つ目の災害リスクについては、保険という回避方法があります。火災・水害・地震保険といったものです。どれも災害により不動産が倒壊した、修繕が発生したといった際に保険金を受け取ることができます。ただ、毎月保険料はかかりますので、毎月の収支との相談にはなります。火災・水害については保険料も高額ではないため、保険に加入していることが一般的ですが、地震保険は火災・水害に比べ高額になりますので、加入していない投資家の方が多いかもしれません。
個別リスク要因
個別リスク要因とは、不動産特有の事由によりリスクが発生するものをいいます。例えば、隣に新しいマンションができたため、賃料が下がってしまった。入居者からの家賃入金がなく、ローンの返済だけをしなければいけなくなった。といったことが挙げられます。
①不動産価格・賃料下落リスク
こちらは上記にあげた、隣にマンションが新しく建ったからといった理由で値段が下がるリスクを指します。このリスクに関しては、購入前の事前調査でリスクを限定させることはできます。
マンションを購入するのであれば、どのような入居者に貸すことを想定しているのか、その入居者にとって魅力的なマンションなのかどうかといった視点でみることで、価格下落リスクを抑制することは可能です。
大学生向きマンションであれば、大学からの距離、コンビニやスーパー、駅との距離、競合となりそうなマンションとの家賃の相違といったことが参考になるのではないでしょうか。
②家賃滞納リスク
家賃滞納リスクとは、入居者が家賃を支払ってくれないリスクを指します。家賃滞納リスクについては、連帯保証人の必須化、家賃滞納保険への加入といったことがリスク回避の方法となります。
連帯保証人に連絡をして入金を促すといったことも、一個人投資家にとってはなかなか手間と時間がかかり難しい方法となりますので、自然人の連帯保証ではなく、家賃保証会社の保証を必須(入居者が保証料を負担する)とする方が望ましいでしょう。
③空室リスク
空室リスクとは、入居者が見つからず空室期間が長引き、収入を得ることができないことを指します。こちらについては、不動産価格・賃料下落リスクでお話しした、購入前の十分な調査で一定のリスクを軽減することが可能です。また、空室が長引く前に家賃や敷金・礼金といった入居条件を引き下げることで、早めに入居者を獲得するといったことも対策の1つに挙げられます。
実はこの空室リスクが不動産投資で利益を得ることができるかどうかのポイントとなっています。多くの不動産投資家はこの点に、力を入れて運営をしています。入居者が見つからないときは、条件を変更することだけでなく、内覧時にオーナーの人柄が見えるお手紙を置いておいたりと、ちょっとした気遣いで改善するポイントであったりもします。
④災害・事故リスク
個別リスク要因の災害リスクは、購入した不動産(お部屋)だけが火事になってしまうといったことを指します。こちらは火災保険に入ることで、カバーできるリスクとなります。
事故リスクとは、孤独死や自殺といった事件が、その不動産の中で起こることを指します。こちらについても数は多くないですが、事故をカバーする保険及び家賃保証会社のオプション保証として、提供されているものもありますので、検討してみても良いかもしれません。
⑤修繕費増大リスク
こちらは購入後の修繕費が想定よりも多くかかってしまい、得た家賃を超えて出費が発生してしまうといったリスクを指します。こちらは不動産や建築の知識がないとなかなか難しいところではあるのですが、主な設備の修繕履歴を購入する前に確認することで回避することが可能です。また、そのような知識をお持ちでない方は、新築物件から投資を始めてみるのも良いかもしれません。
マンションの1室であれば、管理組合で保管している修繕履歴と修繕積立金の残額を確認します。マンションでは10年、15年、20年といった節目を目途に大規模修繕を行います。主な大規模修繕には、外壁補修、給排水設備補修、屋上防水補修といったものがあります。修繕を計画的に行っていれば問題なし、修繕が行われていない場合には、修繕積立金が十分に貯まっているか確認するといった手順となります。
おわりに
今回は不動産投資の初心者が気をつけるポイントとして、リスクを理解すること、またそのリスクの回避方法について解説してきました。不動産投資においては、リスクを十分に理解し、購入前の事前調査を行い保証・保険等の回避策をとることで投資成功の可能性が高まります。リスクをゼロまで下げることはできませんが、リスクを認識しておくことだけでも、何かが発生してしまった時の次の判断・行動も早くなるでしょう。
なお、セゾンファンデックスでは、不動産投資用のローンを用意しています。