金融機関からの融資を受ける際に、担保として不動産を提供することがあります。
そして提供した担保には、「抵当権」や「根抵当権」が設定されます。根抵当権は、抵当権とは異なる特徴を持っており、抵当権は知っているけれど、根抵当権についてはよく知らないという方もおられるのではないでしょうか。
今回は「抵当権」そして「根抵当権」について解説します。一般に知られている抵当権との違いや抹消手続きなど、要点をおさえて詳しく説明しますので、ぜひ参考にしてください。
1.根抵当権・抵当権とは?
まず、根抵当権、抵当権とはどのようなものなのかを理解しておく必要があります。
・根抵当権とは
根抵当権は民法398条の2に規定されているとおり、設定する際に「債権の範囲」と「上限金額(極度額)」を定める点が特徴で、融資を行う側(債権者)が設定します。融資を受ける側(債務者)は設定した上限金額と債権の範囲内で、何度でも借り入れおよび返済が可能なため、企業が事業資金を調達する際などに設定するケースが多くみられます。
・抵当権とは
抵当権は、企業などから融資を受ける際に担保を提供するケースにおいて、その担保に設定されるものです。設定者は融資を行った側(債権者)になります。
返済がスムーズに行われている場合は、債務者は担保として提供したものを自由に利用できますが、返済が滞った時などには、債権者が優先的に担保を活用して金銭化し、融資額の回収を行えます。
この権利を抵当権といいます。抵当権には第1抵当権、第2抵当権など順位がつくこともあり、順位が若いほうから優先的に担保を債権回収の目的に利用できます。
2.根抵当権と抵当権の違いは?根抵当権のメリットについて
では、根抵当権と抵当権の違いはどのような点なのでしょうか。また、根抵当権を設定するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
・担保となる債権の扱い
根抵当権と抵当権の一番の違いは、根抵当権は担保の対象となる債権を限定せず、設定した極度額の範囲内で何度も借り入れできる点です。抵当権の場合は、対象となる債権(借入金)が特定され、設定の際にはその詳細が記載されます。
しかし、根抵当権の場合、極度額を4,000万円、債権の範囲を金銭消費貸借契約とした場合、4,000万円の範囲内で金銭消費貸借契約に基づく融資を何度でも受けられます。この点は根抵当権を設定するメリットといえます。
・当事者の合意がなければ完済後に消滅しない
抵当権は対象となる債権(借入金)の返済が終了すれば、消滅します。そのため、債権者は抵当の抹消書類を債務者に提出しなければなりません。債務者はそれを持って、抵当権の抹消登記を行うのです。
しかし、根抵当権の場合は、1つの債権(借入金)の返済が終了しても、また追加で融資をする可能性があることから、1つの債権の返済が完了したとしても、債権者側は根抵当権をそのまま残しておくことができます。つまり、根抵当権は債権者側の判断だけで抹消することはできず、債権者そして債務者双方の合意があって初めて抹消することができるのです。
・優先弁済の範囲が異なる
優先弁済とは、複数の債権者が債務者の特定の財産を基に弁済を受ける際、ほかの債権者よりも優先して債務の弁済を受けられることで、抵当権の場合、優先弁済の範囲が最後の2年間分の利息および損害金と決められています。一方、根抵当権の場合は期限は特に制限されず、極度額の上限まで優先弁済を受けられる点が異なっています。
・連帯債務者は認められない(元本確定前)
抵当権は連帯債務者を付けることができますが、根抵当権の場合は元本確定前には連帯債務者を付けられません。支払額も時期も決まっていないため、連帯債務者を付けることが難しいというのがその理由です。
・登記にかかる金銭面・時間的コストの有無
登記にかかる金銭や時間については、根抵当権のほうが優位です。融資の都度登記が必要となる抵当権と比べ、根抵当権は一度の登記で完了するため、登記にかかるコストや時間を削減することができるのです。これは根抵当権のメリットといえるでしょう。
3.根抵当権の登記について
抵当権と同様に、根抵当権を主張するためには登記を行う必要があります。
・根抵当権登記の必要書類
まず、根抵当権登記を行うには、以下の書類をそろえなければなりません。
(1)根抵当権設定契約書
(2)登記済権利証(登記識別情報)
(3)不動産所有者の印鑑証明書
(4)根抵当権者の資格証明書
その他、司法書士に依頼するためには委任状が必要です。また法人の場合は法人登記簿謄本が必要になりますので、準備しておきましょう。
・登記にかかる費用
根抵当権の登録免許税は「極度額×0.4%」です。例えば極度額が4,000万円であれば、登録免許税は160,000円です。さらに、登記を司法書士に依頼するなら、司法書士に対する報酬が別途必要になります。
4.根抵当権で把握すべきポイント
・根抵当権の抹消登記手続きは煩雑で面倒
上記のように、根抵当権は抵当権と異なり、自動的に消滅する事はありません。そのため、抹消手続きが煩雑で面倒であることを覚えておきましょう。
・根抵当権を抹消しないと売却できない
根抵当権は借入金を完済しても、債権者が合意しない限り抹消することはできません。しかし、根抵当権が設定されたままにしておくと、いざ売却しようと思っても買い手側が、根抵当権が設定されていることを理由に買い取りを拒む可能性もあります。そのため、根抵当権が設定されている不動産を売却する際には、事前に根抵当権を抹消しなければなりません。
5.根抵当権を抹消するやり方
根抵当権の抹消は以下の流れで行います。
・残債や査定価格を銀行などに確認し、抹消の交渉を行う
不動産を売却し、その代金で残債の返済を考えているなら、対象の不動産の残債や査定価格を調べ、売却代金が残債を上回っていることを確認します。そして、債権者である金融機関と交渉を行います。金融機関はすぐに応じてくれない可能性があり、根気よく交渉を行う必要があります。
・交渉締結後に元本を確定する
金融機関との交渉が進んだら、元本を確定します。なぜなら、根抵当権は何度でも融資を受けられるという特性上、元本が確定していないからです。逆に元本が確定されれば抵当権と同じ扱いになります。
・必要書類をそろえて、法務局にて抹消登記を行う
元本が確定されたら、必要書類をそろえ、法務局にて抹消登記を行います。抹消登記は自身でも行えますが、不安な場合は司法書士などに依頼しましょう。
おわりに
根抵当権は、基本的に事業資金の融資を受ける場面で不動産を担保として提出する際に利用されるものです。根抵当権は抵当権と異なる性質を持っているため、メリットとデメリットをきちんと理解したうえで利用する必要があります。
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