企業が事業資金を調達する方法は金融機関からの融資だけではありません。自社が保有している不動産を活用し、事業資金を調達する方法もあります。
いわゆる「不動産担保ローン」といわれるものですが、使い方によっては非常に効率の良い資金調達方法になり得ます。
今回は不動産を活用することの目的や重要性に触れながら、不動産担保ローンを含めたメリットやデメリットについて解説します。
中小企業における不動産活用の目的と重要性
中小企業が自社の不動産を活用する方法としては、賃貸経営や売却といったイメージが強いかもしれません。しかし、経営に不動産を活用するなら、もっと戦略的な活用方法を考える必要があります。
不動産を活用する目的
中小企業が不動産を活用する際には、不動産の購入や売却、不動産投資や担保としての活用などがあり、このような活用方法をとることで企業価値を高めることにつながります。
企業が保有する不動産の活用において、「CRE戦略」という言葉を用いることがあります。CREとは、Corporate Real Estate、すなわち企業不動産を指します。
CRE戦略とは、企業が保有する不動産を企業価値の向上の観点と戦略的な視野に基づいて、不動産の効率を大きく高めていこうとする考え方です。
不動産を活用することの重要性
不動産の戦略的活用方法としては、本業での利用や賃貸経営、不動産取引や不動産投資によって利益を得る方法があります。
さらに資金調達の必要に迫られた際には、保有している不動産を担保にして資金を確保し、新規事業への投資に利用するといった方法もあります。
中小企業は一般的に経営者と企業の資産の区別があいまいなため、区別をはっきりさせたうえで企業が保有する不動産の活用方法を考えることが大切です。また、不動産を活用することで、事業承継の際に有利になることもあります。
このようなことからも、中小企業が自社の不動産を有効活用することは非常に重要なことだといえます。
不動産活用のメリット
中小企業が不動産を活用することによって、以下のメリットが享受できます。
資金調達力がアップする
資金調達の際、自社の不動産を担保にして融資を受ける方法があります。
不動産を担保にすることで、無担保ローンよりも審査に通りやすく、また無担保ローンよりも多くの金額を借りられる可能性があります。
ただし、不動産担保ローンを利用する場合は、担保となる不動産に融資を行うに値するだけの価値がなければなりませんし、もちろん企業の返済能力も問われます。
まだ抵当権が付いていない不動産なら、金融機関の担保評価も高くなり、融資が受けやすくなります。
不動産収益の上昇
企業経営には波があります。そのため、常に新しい事業の展開を考えていなければなりません。
しかし、それとは別に、保有している不動産を賃貸に出し、賃料収入としての軸を作っておけば、売り上げが減少したときや新しい事業への進出の際でも、安定収入として役に立ちます。
もちろん、不動産賃貸経営がうまく軌道に乗れば、その事業を拡大することを考えても良いでしょう。
経営の柔軟性・スピードの確保
企業が生き残っていくためには、ビジネスチャンスを逃さないことがポイントです。そのためには、必要なときに必要な資金を調達できる手段があることが大切です。
通常の銀行融資は審査に時間がかかり、融資実行を待っているうちにビジネスチャンスを逃してしまうことも考えられます。そのようなときに自社の不動産を担保にして融資を受けることで、通常よりも早く資金を調達でき、ビジネスチャンスを逃すこともなくなるでしょう。
不動産を上手に活用することは、経営の柔軟性やスピードを確保することにつながるのです。
経営上のリスク管理
不動産収益の上昇の箇所で説明したとおり、不動産は安定収入を確保する役目も持っています。また、不動産担保ローンを利用するに当たって、不動産の担保評価が高ければ、その分資金力に余裕があることになりますので、経営が困難な状態に陥ったとしてもしばらくの間は耐えることができます。
このように、不動産の活用が経営上のリスク管理に役立つ点もメリットです。
事業承継問題の解決
事業承継の際に、経営者である親の株式を子どもが譲り受けるケースも考えられます。その場合、贈与税や相続税の納税の不安が出てくることもあります。
その対策として、株式などの金融資産の割合を少なくし、その分不動産の割合を多くすることにより、納税対策にもなります。
ただし、事業承継における資産の評価は専門的な知識が必要なため、税理士などの専門家に相談し、アドバイスをもらうようにしましょう。
企業ブランドの確立
その企業が持つブランドは、他社との比較のために独自性が確立されている必要があります。そして、競合他社にはない魅力を伝えることで、多くのお客様に選ばれる企業となり、成長するわけです。もちろん、企業が成長することにより、競争力も向上することにつながります。
例えば特殊な構造で家を建てるハウスメーカーなら、自社で建てたオフィスで構造そのものに触れて、その感触を実感してもらえます。
この考え方はお客様に対してだけではなく、従業員に向けることもできます。自社保有の福利厚生施設を改築して一般の方にも使ってもらえるようにすることで、世間の認知度も高まりますし、地域に貢献しているという意識を従業員に持ってもらうこともできます。
過度のアピールは逆効果になることもありますが、適切なタイミングで行うことによって、より良い企業ブランドの確立につながることを意識しておくことも大切です。
従業員満足度がアップする
企業が保有している不動産を自社ビルにすることで、自由に改装ができ、働きやすい環境を作ることができます。また、保有不動産を社宅に利用するなど福利厚生面を充実させることで、従業員の満足度が上がることが期待できます。
社宅として利用している不動産が不要になった場合は、売却することもできますし、資金調達が必要になったときの保険として取っておく方法もあります。
不動産活用のデメリット
不動産の活用にはメリットだけでなくデメリットもあります。
購入や売却する際に、相応の時間と手間が必要
不動産の取引は売り手と買い手のニーズが一致することはもちろん、価格交渉の話し合いから不動産売買契約、そして登記手続きなど多くの手間がかかります。
維持管理コストや固定資産税がかかる
保有している不動産が多ければ、その分、不動産の維持管理コストや固定資産税を負担しなければなりません。
空室や災害といったリスクがある
賃貸に出す場合は空室リスクの対策を考えなければなりませんし、災害にあった際のリスクも考え、火災保険や地震保険への加入が必要です。
不動産担保ローンを活用した事業資金調達のメリットとデメリット
事業資金の調達に不動産担保ローンを利用することのメリット、デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
メリット
無担保ローンと比べ、借入金額が大きく、余裕を持った資金調達が可能です。また低金利で返済期間の長い融資が受けられる点もメリットでしょう。
担保となる不動産があるため、連帯保証人が不要になる点もメリットといえそうです。
デメリット
不動産担保ローンの審査では、担保評価だけではなく返済能力があるかどうかも問われます。したがって、経営状況を良くしておくことも必要です。さらに、担保とする不動産の評価も問題になります。すでに抵当権が付いている不動産だと、担保評価が低くなるばかりでなく、場合によっては担保として認められない可能性もあります。
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また、物件の売却手続きが簡単で、最短2週間で契約が可能な点も好評を得ています。
まとめ
不動産担保ローンは、無担保での銀行からの融資とは異なり、資金使途が幅広いという特徴があります。そのため、税金の支払いに充てることもできます。また、現在利用している融資を不動産担保ローンに借り換えることで、資金繰りの改善につながった例もあります。
事業の資金調達の有効手段としての不動産の活用に今一度目を向け、戦略的な活用方法を見いだしてみましょう。