日本政策金融公庫やほかの金融機関から融資を受けていて返済中だとしても、追加融資を申し込むことは可能です。しかし、追加融資の申し込みをしても、その融資が受けられないこともあります。ここではそれら金融機関の追加融資が受けられない場合の対処法についてもご紹介します。
追加融資とは
追加融資とは、金融機関などからすでに融資を受けている事業者が、再び融資を受けることです。すでに借り入れを行い返済中であっても、以下のような、さまざまなケースなどで追加融資が必要になることが考えられます。
- 事業拡大を見込んで追加の資金が必要なとき
- 売上や利益の低下に伴い運転資金の確保が必要なとき(売上が増加した場合でも売上金回収までの資金が必要になる場合もある)
- 顧客や仕入れ先との関係で支払い条件や回収条件といった取引条件が大きく変わったとき
日本政策金融公庫で追加融資を受けるには
日本政策金融公庫は中小企業・小規模事業者の資金調達を支援する重要な役割を担っています。すでに融資を受けていて返済中であっても、追加融資を申し込むことは可能です。ここでは、追加融資を受けるための条件や審査のポイントについて詳しく説明します。
追加融資の基本条件
- 最初の融資から原則として6ヶ月以上経過していること
- 既存の融資の返済が滞りなく行われていること
- 事業計画が妥当で、返済能力が認められること
審査のポイント
- 返済実績
- 過去1年間で3回以上の遅延がないこと
- 約定通りの返済が継続されていること
- 財務状況
- 直近の決算で原則として黒字であること
- 債務超過でないこと(自己資本比率がプラスであること)
- 事業計画の妥当性
- 追加融資の使途が明確で、事業の発展に寄与すること
- 返済計画が現実的であり、返済原資が明確であること
- 業界動向
- 事業を取り巻く環境や将来性が考慮されること
具体的な審査例
例1: E社(製造業、追加融資可能)
- 条件:最初の融資から1年経過、遅延なく返済
- 財務:直近決算で売上高8,000万円、営業利益400万円
- 目的:生産設備の増強のため1,500万円の追加融資を申込
- 判断:業績好調と明確な資金使途から融資可能と判断
例2: F社(小売業、追加融資要検討)
- 条件:最初の融資から8ヶ月経過、1回の返済遅延あり
- 財務:直近決算で売上高3,000万円、営業利益50万円
- 目的:運転資金として500万円の追加融資を申込
- 判断:返済遺跡の改善と具体的な事業改善計画の提出が必要
追加融資を受けやすくするためのポイント
- 日々の返済を確実に行い、良好な返済実績を築く
- 決算書や事業計画書を適切に作成し、事業の将来性を明確に示す
- 資金使途を具体的に説明し、事業発展との関連性を明確にする
- 必要に応じて担保や保証人の追加を検討する
日本政策金融公庫の追加融資は、一般の銀行よりも柔軟な対応が期待できますが、審査は慎重に行われます。自社の状況を客観的に分析し、必要に応じて事前に日本政策金融公庫の窓口に相談することをお勧めします。
銀行などで追加融資を受けるには
民間の銀行で追加融資を受けるには、日本政策金融公庫よりも厳しい審査基準をクリアする必要があります。以下に、銀行での追加融資の特徴と審査のポイント、具体例を詳しく説明します。
銀行の追加融資の特徴
- 金利:一般的に日本政策金融公庫より高め(年1.5%〜5%程度)
- 融資額:担保や業績に応じて柔軟(数百万円〜数億円)
- 返済期間:運転資金で1〜7年、設備資金で1〜20年程度
審査のポイント
- 業績と財務状況
- 直近3期分の決算書を重視
- 売上高、利益率、キャッシュフローの推移
- 自己資本比率(20%以上が望ましい)
- 返済能力
- 既存の借入金の返済状況
- 追加融資後の借入金返済比率(30%以下が目安)
- 事業計画の妥当性
- 追加融資の使途と必要性
- 返済計画の実現可能性
- 担保・保証人
- 不動産担保や株式など
- 経営者の個人保証
- 取引実績
- 当該銀行との取引期間や預金残高
具体的な審査例
例1: C社(製造業、追加融資可能)
- 業績:直近3期連続で増収増益、営業利益率5%
- 財務:自己資本比率25%、借入金返済比率20%
- 追加融資の目的:新規設備導入(5,000万円)
- 担保:工場の土地・建物
- 取引実績:メインバンクとして10年の取引歴
→ 良好な業績と財務状況、明確な資金使途から融資可能と判断
例2: D社(小売業、追加融資困難)
- 業績:直近2期連続で減収、前期は赤字
- 財務:自己資本比率10%、借入金返済比率35%
- 追加融資の目的:運転資金(2,000万円)
- 担保:なし
- 取引実績:2年の取引歴、平均預金残高低調
→ 業績不振と財務状況の悪化から、追加融資は困難と判断
銀行での追加融資を成功させるためのポイント
- 事前準備:決算書の整備、事業計画書の作成
- コミュニケーション:普段からの銀行担当者との良好な関係構築
- 情報開示:財務状況や事業の将来性について積極的に説明
- 担保の準備:可能な限り担保を用意し、融資のハードルを下げる
- タイミング:業績が好調なうちに融資枠を確保しておく
銀行での追加融資は、事業の成長や安定運営に重要な役割を果たします。しかし、審査基準は厳格であり、慎重な準備と計画が必要です。自社の状況を客観的に分析し、必要に応じて専門家(税理士や中小企業診断士など)のアドバイスを受けることも検討しましょう。
日本政策金融公庫などで追加融資が受けられない場合
ここでは、日本政策金融公庫などで追加融資が受けられないといったような状況でも、資金を調達できる可能性のある手段を紹介します。
不動産担保ローンによる資金調達
不動産担保ローンとは、不動産を担保にして融資を受けるローンです。一般的には、不動産の担保価値と借り主の返済能力によって融資限度額が決定されます。無担保ローンと比べ、金利が低い、融資額が大きい、返済期間を長くできる、といったメリットがあります。
例えば、「セゾンファンデックスの事業者向け不動産担保ローン」は不動産を担保に入れることで融資を受ける事業者向けのローンです。
一般の銀行とは異なる審査基準のため、赤字決算であったり返済を繰り延べしていたり、創業から間もない、といったようなほかの銀行では取り扱いが難しい状況にも対応しています。
また、不動産担保力を重視していることから、ほかの金融機関では取り扱わない2番抵当の担保不動産や親族が所有している不動産でも相談可能となっています。返済期間も最長25年の設定ができます。長期返済により無理のない返済計画を立てることが可能です。
このようなことからセゾンファンデックスの事業者向け不動産担保ローンでは、日本政策金融公庫や一般の銀行の融資よりも、柔軟な対応を受けることが可能といえるでしょう。
先順位含め借り換えることが可能
不動産を担保とした融資では、1つの不動産に複数の抵当権を登記することで、複数からの借り入れも可能となります。登記上の「先順位」とは、担保となっている不動産に対し登記された抵当権の順番が先になっているものです。
もし、ローン返済が滞り、担保不動産を売却してその代金でローンを回収するような場合は、先順位の抵当権を持つ債権者から優先して返済されます。
例えば、自宅を担保に事業資金を調達したい場合などもあるかと思います。しかし、自宅に住宅ローンが残っているような場合、その先順位にある住宅ローンの抵当権を考慮した場合、2番抵当では十分な資金調達ができない場合もあります。
おわりに
起業時における融資では、ビジネスとしての実績がなく、融資の際の審査では事業計画の内容が重視されます。起業後間もない時期は実績が不十分なことも多いことから、基本的には起業後すぐの追加融資は難しいと考えておく必要があります。
そのため、予定どおりにビジネスが進まないことも見越して余裕を持った事業計画を立てるようにしましょう。一方で、起業した後はビジネス実績が重視されるようになるでしょう。
業績が悪化して資金繰りに問題が生じているような場合は、日本政策金融公庫や一般の銀行では追加融資を断られる可能性もあります。そのようなときには、先に紹介した不動産担保ローンの活用を検討するのもよいでしょう。
いずれにせよ、追加融資が必要となる状況になったら、早めに相談することが大切です。