先進医療特約の必要性を考える際は、先進医療の定義や治療を受ける際にかかる費用を知っておくことが大切です。実際に、先進医療を受けた方のデータなども参考にしながら、特約を付加すべきか検討してみましょう。
このコラムでは、先進医療特約の必要性について解説します。
先進医療とは?基礎知識をおさらいしよう
先進医療特約の必要性を考えるためには、前提として先進医療の仕組みを理解することが重要です。先進医療とは、簡単にいうと「公的医療保険が適用されない高度な医療技術」です。
種類によっては高額な費用が発生するため、まずは、いくらかかるのかを知っておきましょう。ここでは、先進医療の定義や実施される病気の種類などを解説します。
先進医療の定義や実施される病気など
先進医療の定義は「厚生労働省に認定された高度な医療技術のうち、公的医療保険の対象外のもの」です。以下のような病気の治療を行う際に、先進医療が実施されることがあります。(2022年3月1日現在)
ただし、先進医療として認められる技術は定期的に見直され、追加・削除が随時行われています。
- がん
- 子宮腺筋症
- 家族性アルツハイマー病 など
医療技術の種類ごとに提供できる医療機関が決められているため、どの病院でも先進医療を受けられるわけではありません。なお、先進医療を受けられるのは、「自ら先進医療を希望していること」「先進医療の必要性を医師が認めていること」の2つを満たす必要があります。
それでは、実際にどれくらいの方が先進医療を受けているのかを見てみましょう。中央社会保険医療協議会のデータによると、がん治療に関する「陽子線治療」と「重粒子線治療」の年間実施件数は、合計1,968件でした(対象期間:2020年7月1日〜2021年6月30日)。
厚生労働省が公表しているがんの患者数は178万2,000人のため、先進医療を受けるのは全体のうち0.11%程度であり、これは約900人に1人の割合になります。
参照元:厚生労働省 中央社会保険医療協議会「令和3年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」
先進医療にかかる費用と自己負担の割合
ここでは、中央社会保険医療協議会のデータを参考にして、主な先進医療にかかる費用の平均額をご紹介します。
技術名 | 技術料の平均額(1件あたり) |
陽子線治療 | 2,649,978円 |
重粒子線治療 | 3,186,609円 |
家族性アルツハイマー病の遺伝子診断 | 30,000円 |
先進医療を受ける際にかかる費用には公的医療保険が適用されません。つまり、技術料の全額が自己負担となります。上記を見ても分かるとおり、技術料の平均額は技術内容によって幅があるため、時として高額な技術料の支払いが発生する可能性があります。
先進医療の申請から実施までの流れ
新しい医療技術が先進医療として認められるまでの流れは以下のとおりです。
- 保険医療機関から先進医療会議の事務局への申請
- 先進医療会議での審議
- 先進医療として認定
- 先進医療の実施
認定を受けたあとも、各医療機関からの報告をもとに技術的・社会的妥当性が再度評価されます。そのうえで、「保険診療の対象とするか」「先進医療として継続するか」などが検討されています。
先進医療と自由診療・混合診療の違い
先進医療の基本を押さえたら、自由診療や混合診療についても理解しておきましょう。自由診療も先進医療と同じく、保険適用外の医療を指します。ただし、先進医療が厚生労働省の認可を受けているのに対し、自由診療は先進医療として認められていません。
混合診療とは、保険診療と自由診療を併用して受けることです。混合診療は原則として禁止されていますが、例外として評価療養や選定療養は保険診療との併用が可能です。先進医療は評価療養に含まれるため、保険診療と共通するもの(診察・検査・投薬など)は公的医療保険が適用されます。
先進医療特約は先進医療の技術料に対する備え
先進医療を受ける必要が生じた場合、種類によっては技術料の負担が大きくなります。「先進医療特約」は、そのような経済的リスクをカバーできる仕組みです。
万が一の際の高額な費用負担を抑えられるように、付加できる保険の種類や保障を受けるための条件を正しく理解しておきましょう。ここでは、基本的な知識を分かりやすく解説します。
先進医療特約は医療保険やがん保険に付加できる
そもそも特約とは、保険の基礎となる主契約とは異なる性質をもち、希望する場合にオプションで追加するものです。特約を付加すると、主契約ではカバーできない部分の保障を確保できます。
主契約とセットで扱うのが基本のため、満期や解約によって主契約が消滅した場合は、特約も消滅すると覚えておきましょう。
先進医療特約を付加できるのは、医療保険やがん保険です。月々数百円程度の保険料を支払うことで、実際に発生した費用の実費などが所定の範囲内で保障されます。
- 医療保険:病気やケガを負った際の治療費などカバーできる保険
- がん保険:がん治療にかかる費用負担の軽減に特化した保険
条件を満たした場合に医療費が保障される
医療費の保障を受けるためには、以下の2つの条件を満たさなければいけません。
- 治療を受けた時点で先進医療に該当していること
- 所定の保障範囲に該当していること
上述のとおり、先進医療として扱われる医療技術の種類は変動するのが特徴で、定期的な見直しによって追加されたり、削除されたりします。特約を付加する時点では該当する種類であっても、治療を受ける際に除外されているものに対しては保障を受けられません。
また、どこまでを保障対象とするかは保険商品によってさまざまです。例として、がん保険に付加した場合の保障内容は、がんに関する医療技術のみに限定されるケースがほとんどです。保険のしおりや、保険約款等でどこまでの技術が保障対象として入っているかあらかじめ確認をしましょう。
先進医療特約は付加すべき?必要性を考えてみよう
ここでは、先進医療を受けた方の合計人数や費用の総額などから、先進医療特約の必要性を考えてみましょう。中央社会保険医療協議会の調査によると、2020年7月1日〜2021年6月30日の1年間で先進医療を受けた方の合計人数は5,843人です。
同年に実施された先進医療費用の総額(保険外併用療養費も含む)は約103億円で、一人あたりの平均額は約176万円です。ただし、特に費用が高額な陽子線治療や重粒子線治療を受ける場合は、300万円を超える技術料が発生することもあります。
実際に先進医療を受ける可能性は高くないものの、もし先進医療が必要になれば、数百万円以上を支払わなければいけなくなるかもしれません。
その点、先進医療特約を付加すれば、月々数百円を支払うことで高額な技術料の負担をカバーできます。もしもの事態に備えて保障を確保したいなら、先進医療特約を付加することは有効な選択肢といえるでしょう。
参照元:厚生労働省 中央社会保険医療協議会「令和3年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」
先進医療特約を付加する際のポイント4つ
先進医療特約には、保障範囲や「実損払い」などの細かいルールが多数あります。先進医療の費用に備えて先進医療特約を付加するなら、以下のポイントを知っておくことが大切です。
- 上限金額や保障範囲、直接払いの有無を確認する
- 希望に合わせて更新型か終身型かを検討する
- 「実損払い」が多いことを理解しておく
- 先進医療特約の重複に注意する
ここでは、先進医療特約を付加する際の4つのポイントを詳しく解説します。
上限金額や保障範囲、直接払いの有無を確認する
一般的に、先進医療特約で保障される金額には上限が設定されています。先進医療特約を付加する場合は上限金額を確認し、高額な技術料の負担をカバーできるかを検討しましょう。なお、上限金額はひとつの病気に対するものではなく、通算でカウントされます。
先進医療特約は医療保険やがん保険に付加できますが、どちらを選択するかによって保障範囲が異なります。医療保険の先進医療特約は、すべての先進医療を対象としているのが基本です。一方で、がん保険に付加した場合は、がんに関する先進医療しか保障していないのが一般的です。
先進医療特約を付加する際は、医療機関への直接払いに対応しているかもチェックしましょう。直接払いを利用できれば、医療費を窓口で立て替える必要がないため、一時的にまとまったお金を用意せずに済みます。
ただし、保険会社によっては特定の医療機関でしか直接払いを利用できないこともあるので注意しましょう。
希望に合わせて更新型か終身型かを検討する
先進医療特約の主な種類は、更新型と終身型の2つです。前者は一定期間ごとに保険料の再計算が行われるタイプ、後者は保障内容や保険料が変わらず、保障が一生涯続くタイプです。それぞれの特徴を踏まえて、どちらのタイプが自身の希望に合うかを検討しましょう。
例えば、保障を定期的に見直したい方は更新型を、保険料の値上がりを避けたい方は終身型を選ぶのが良いでしょう。なお、主契約が終身型でも、先進医療特約は更新型となっているケースがあるため、契約内容をチェックしておくことが重要です。
「実損払い」が多いことを理解しておく
先進医療特約の付加を検討するなら「実損払い」が多いことを理解しておきましょう。実損払いとは、実際にかかった費用が上限の範囲内で支払われる仕組みです。
これに対し、決まった金額が支払われる仕組みは「定額払い」といいます。先進医療特約を付加した場合、あらかじめ決まった金額を受け取れるのではなく、実際に受けた先進医療の技術料に相当する分のみが支払われると覚えておきましょう。
先進医療特約の重複に注意する
場合によっては、先進医療特約を複数の主契約に付加することが可能です。ただし、特約を重複して付加した場合に給付金が支給されるかどうかは、保険会社によって対応が異なります。複数の主契約に特約を付加したい場合は、支給の有無について確認しておきましょう。
なお、医療保険とがん保険のどちらに特約を付加するか迷った際は、医療保険を選択するのが良いでしょう。医療保険の先進医療特約は、がんを含む先進医療が対象のため、医療保険だけで先進医療のリスクをカバーできるでしょう。
保険に加入中の方が先進医療に備える方法
現在保険に加入していて先進医療特約を付加していない方でも、以下の3つの方法であれば先進医療に備えられます。
- 加入中の保険に先進医療特約を付加する
- 加入中の保険を解約し、別の保険に先進医療特約を付加して新規加入する
- 加入中の保険を継続したまま、先進医療特約を付加した保険に追加で加入する
保険商品によっては、加入中の保険にあとから先進医療特約を付加できることがあります。ただし、過去に契約した保険の先進医療特約は、給付金の通算支給限度額が低く設定されていることがあり、保障内容が不足することも考えられるでしょう。加入中の保険に先進医療特約を付加する場合は、充分な保障が得られるかどうかをよく検討してください。
保険に加入してからあまり年数が経っていない場合は、加入中の保険を解約し、別の保険に先進医療特約を付加して新規加入するのも選択肢のひとつです。加入時の年齢と大きな差がなければ、極端に保険料が上がる心配がありません。
ただし、加入してから何年も経っている場合は、保険を切り替えることで保険料の負担が大きくなる可能性があります。主契約が充実しているのであれば、先進医療特約のためだけに保険を切り替えるのは賢明な判断とはいえません。
加入中の保険を継続したまま先進医療に備えるなら、先進医療特約を付加した保険に追加で加入する方法もあります。その際は、保険料の負担が大きくならないように、主契約の保障内容を最小限に抑えましょう。
先進医療特約を付加する保険商品の選び方に迷った場合は、「保険@SAISON CARD」を利用するのがおすすめです。「保険@SAISON CARD」には複数の医療保険やがん保険を紹介しており、それぞれの商品を比較検討する際に役立ちます。
インターネットから見積もりや資料請求も行えるため、保険選びがスムーズに進むでしょう。先進医療特約の付加を考えているなら、ぜひ「保険@SAISON CARD」で適切な商品を探してみてください。
おわりに
先進医療特約を付加しておくと、先進医療が必要になった際の経済的リスクをカバーできます。先進医療の技術料には幅があり、種類によっては高額な費用が発生します。
特約に対して支払う保険料は月々数百円程度のため、万が一の際の経済的リスクに備える手段としては有効な選択肢といえるでしょう。
実際に先進医療を受けた方のデータや、種類ごとの技術料の平均額などを参考にしながら、特約を付加すべきか検討してみてください。