投資信託は種類が多いため、商品選びに迷う方も多いのではないでしょうか。そのようなとき、分配金の有無が投資信託を選ぶ際のポイントになるかもしれません。一見すると、分配金が多い投資信託の方が良く見えてしまうのは事実ですが、必ずしも分配金が多い方が良いのかというとそうでもない場合も多いです。
このコラムでは、投資信託や投資信託の分配金等に関して解説しています。ご自身の状況やスタイルに合った投資信託を選ぶ参考に、ぜひ最後までご覧ください。
投資信託の分配金の仕組み
投資信託の分配金は、投資信託の運営会社から投資信託を保有している投資家に支払われます。投資信託への投資に興味がある方は、まず分配金の仕組みを理解しましょう。
分配金とは?
分配金とは、投資家から集めたお金を運用した運用益(利益)を原資として投資家に支払われるお金のことです。分配金は決算ごとに支払われ、運用益の状況によって金額は変わります。
投資信託の分配金については、注意すべき点が2つあります。1つ目は、決算の時期は投資信託によって異なる点です。決算は毎月行われるものもあれば、年1回や年2回など、商品によってさまざまです。2つ目は、毎月分配型などの投資信託を除いて、分配金は必ずしも支払われるわけではないという点です。分配金は投資信託の運用状況に応じて支払われるため、収益状況によっては支払われないケースも発生します。
分配金と配当金の違い
分配金と配当金の違いは、支払いを行う主体です。分配金は、投資信託の運用益などの分配原資から運用会社が投資家へ支払うお金のことです。一方で、配当金は株式を発行した企業が利益を上げた際に、利益の一部を株主に支払うお金のことを表します。
分配金の種類と税金の関係
分配金は主に普通分配金と特別分配金(元本払戻金)の2種類があります。普通分配金は課税されますが、特別分配金は非課税です。なお、元本とは株や債券、投資信託などの投資商品を購入する際に必要になるお金のことで、元手と呼ばれることもあります。
普通分配金
普通分配金が支払われた場合、通常は課税されます。しかし、非課税制度である、つみたてNISAやiDeCoなどを活用することで、より多くの分配金を受け取ることが可能になります。
・普通分配金とは?
普通分配金は、運用益(利益)から支払われるお金のことです。投資信託には価格があり、その価格のことを「基準価額」と呼びます。決算日に、収益分配後の基準価額が個別元本を上回っている場合、収益分配金はすべて課税扱いの普通分配金になります。
・普通分配金は課税される
普通分配金は利益から支払われる分配金のため、配当所得として課税されます。配当所得には、合計で税率20.315%が課税されます。税率の内訳は15.315%の所得税および復興特別所得税と5%の住民税(地方税)です。
参照元:No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)|国税庁
・つみたてNISAとiDeCoの活用で、普通分配金は非課税になる
普通分配金は課税対象ですが、つみたてNISAやiDeCoを活用することで非課税にできます。例えば、つみたてNISAでは、投資信託から受け取る分配金や運用益が非課税になります。非課税投資の限度額は年間最大40万円で、非課税で保有できる期間は投資を開始した年から20年間です。
iDeCoもつみたてNISAと同様に、投資信託から受け取る分配金や運用益に課される税金が免除になります。さらに、掛金の全額が所得控除の対象になり、受け取りの際にも税制優遇を受けられます。つみたてNISA、iDeCoのどちらを活用するにしても、本来は分配金に対して20.315%課される税金が非課税になります。まだ使用されていない方は、ぜひ活用することをおすすめします。
つみたてNISAについて詳しくはこちらもご覧ください。
関連記事:つみたてNISA(積立NISA)の仕組みとは?運用のメリットや失敗しないための対策も解説
iDeCoについて詳しくはこちらもご覧ください。
関連記事:iDeCoの上手な始め方|メリットとデメリットについても解説!
特別分配金(元本払戻金)
普通分配金のほかにも特別分配金(元本払戻金)がありますが、こちらは非課税の分配金です。特別分配金の仕組みについても、きちんと理解しておくと良いでしょう。
・特別分配金(元本払戻金)とは?
特別分配金は、基準価額が個別元本を下回った状態で支払われる分配金のことです。預かった元本の一部を払い戻しに当たります。収益分配後の基準価額が個別元本を下回っている場合、下回っている部分が非課税扱いの特別分配金(元本払戻金)となります。
例えば、基準価額も個別元本も1万円で、その際に1,000円が分配金として支払われた場合、分配金支払い後(収益分配後)の基準価額は9,000円になります。そしてこの1,000円は元本の一部払い戻しとみなされ、利益には当たりません。このような利益に当たらない分配金のことを、特別分配金(または元本払戻金)と呼びます。
・特別分配金(元本払戻金)は非課税
資産運用において、課税対象は利益の部分です。特別分配金は元本の一部を払い戻す分配金のため、利益ではありません。そのため、特別分配金は非課税となります。
分配金があることのメリット・デメリット
投資信託には、分配金がある「分配型(または受取型)」と分配金がない「再投資型」があります。それぞれの特徴を理解することで、ご自身に合う投資信託を見つけやすくなるでしょう。
分配金があることのメリット
分配金がある投資信託のメリットは、資産を運用しながら分配金という形で定期的に投資の成果を実感できる点です。生活費と分配金を合わせることで、日々の生活にゆとりができるでしょう。さらに、運用状況によっては、投資信託の基準価額の上昇も期待できます。
分配金があることのデメリット
分配金がある投資信託のデメリットとしては、運用益を分配金として支払ってしまうため、複利効果を得にくい点です。複利効果とは、分配金や運用益などの利益を元本に加えて再投資することにより、利益が利益を生んで大きくなっていく効果のことを指します。複利での運用は時間を味方にできるため、長期的な運用で大きな力を発揮します。
しかし、分配金がある投資信託は、利益を分配金という形で支払ってしまうため、元本の再投資が行われず、分配金を手動で再投資に回さない限り、複利効果は得られません。
分配金がないことのメリット・デメリット
分配金がある分配型の投資信託に対し、分配金がない「再投資型」という投資信託もあります。再投資型にもメリットとデメリットがありますので、投資する前に知っておくと良いでしょう。
分配金がないことのメリット
分配金のない投資信託のメリットは、複利効果を得やすいことです。分配金がないと、一見すると損をしているように感じるかもしれません。しかし、これは分配金として支払う分の資金をすべて再投資に回しているため、そのように見えているだけです。
再投資型の投資信託では、分配金に相当する金額を同じ投資信託の購入資金に充てることで、投資信託の口数を自動で増やせます。投資信託の口数が増えることで、最終的に大きな利益を得ることができるでしょう。
また、再投資型の投資信託の仕組みは、運用益など利益の一部を自動で再投資するというものです。自動で再投資することにより追加購入で取得した分に対しては、基本的には新たな購入手数料等は発生しません。手数料がかからず元本に上乗せできるため、より投資効率を高められます。
複利について詳しくはこちらの記事「投資の神様も愛した複利とは?複利の効果を得るためのポイントとおすすめの投資信託を紹介」もご覧ください。
分配金がないことのデメリット
分配金のない投資信託は分配金の受け取りもなく、満期(もしくは解約する)まで出金できません。そのため、投資をしている実感が湧きにくいという点がデメリットです。また、再投資型は投資が順調な時は、複利効果により利益が出やすい投資信託です。しかし、市況が落ち込んでいると売却をしても利益が出ない場合もあります。この点もデメリットになるでしょう。
分配金についての注意点
投資信託を保有している投資家には分配金が支払われますが、その分配金について注意点が2つあります。
分配金は変動する
分配金は、投資による運用益などの分配原資から、運用会社が投資家に対して支払うお金です。つまり、分配金は投資信託の運用成果の一部を受け取ることになります。
そのため、運用成績によっては分配金が増減します。分配金の支払金額は常に一定ではなく、場合によっては支払われないこともあるでしょう。毎月分配型の投資信託のように、運用成績にかかわらず分配金が支払われる契約の投資信託もあります。投資信託の契約内容によって大きく異なりますので、契約内容をよく確認しましょう。
分配金が多い投資信託が必ずしも良いわけではない
分配金が多い投資信託は、運用成績が良く見えるものです。しかし、分配金が多い投資信託の運用成績が、必ずしも良いとは限りません。投資信託は、分配金を支払うことで「純資産総額」が減少します。資産が減ると、複利効果が得られにくくなり、結果的に投資信託の価格である「基準価額」は下落します。
投資では投資額が多いほど利益を出しやすくなり、投資額が少ないと利益が出にくくなります。分配金が多い投資信託が必ずしも良いといえない理由は、分配金が多い分、純資産総額が減少しやすくなるからです。
分配金の有無による投資信託の使い分けについて
分配金のある「分配型」と分配金のない「再投資型」の違いが分かったところで、どちらがより自分に向いているのか確認しましょう。
分配型がおすすめの方
定期的に現金収入を得たい方は、分配金が支払われる分配型がおすすめです。生活費と分配金を合わせることで、日々の生活に余裕ができて安心感は高まります。また、ちょっとした買い物をする際にも、分配金を活用できるかもしれません。
長期的な資産運用の場合、分配型の投資信託は複利効果が得にくいというデメリットがありますが、目的が長期的な資産運用でなければ問題ないでしょう。
再投資型がおすすめの方
長期的な運用を考えている方は、再投資型がおすすめです。再投資型は定期的に分配金を受け取る代わりに、運用益を再投資することで複利効果を期待できます。複利は運用する期間が長ければ長いほど、その効果を発揮しやすくなります。投資環境にもよりますが、分配金を受け取るより大きな利益を手にすることも可能でしょう。長期的な運用を考えている方は、再投資型の選択がおすすめです。
おわりに
このコラムでは、投資信託の分配金の仕組みや分配金の有無によるメリット・デメリットなどについて解説しました。ご自身の投資の運用方針によって、おすすめの投資信託が異なることがお分かりいただけたと思います。
分配金を活用して日々の生活にゆとりを持たせたい方におすすめの投資信託は「分配型」です。一方で、長期的な資産運用でより資産を増やしたい方には「再投資型」の投資信託がおすすめです。
いずれにしても、投資を始めることで得られるメリットはたくさんあります。投資信託は毎日100円から積み立てることもでき、税制面で有利になるつみたてNISAやiDeCoの利用も可能です。まずは少額からでも、投資信託の購入を始めてみてはいかがでしょうか。