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時価総額とは?変動する理由や時価総額経営のメリット・デメリットを解説

時価総額とは?変動する理由や時価総額経営のメリット・デメリットを解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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企業の価値を決める要素として「時価総額」の概念を押さえておくことで、より正しく企業価値を把握できます。時価総額を把握することで、転職活動時に企業の将来性を把握したり、自分で投資を行う際にリスクを減らせるなど、多くの面でメリットがあります。

このコラムでは、時価総額の概要やメリット、活用方法などを解説するので参考にしてみてください。

時価総額とは

「時価総額」とは、企業の価値・規模・将来性を判断する指標のことです。具体的な数値は、以下の計算式で求められます。

時価総額=現在の企業株価×発行済み株式数

時価総額によって企業価値を判断できるため、以下のようなシーンで活用されます。

  • 企業の買収検討時に、時価総額によって購入金額を決める
  • 時価総額をもとに将来性を考え、投資可否を検討する
  • 転職活動時に時価総額をチェックし、企業の安定性や将来性を確認する

時価総額と企業の価値の関係性

企業価値の判断指標として、株価も参考になります。しかし、株価が高くても発行済株式数が少なければ時価総額は小さくなるため、株価だけで企業価値を判断することはできません。例えば、一株の価格が同じ「1万円」だとしても、発行済株式数によって時価総額は大きく異なります。

  • A社:一株1万円×発行済株式数1,000株=時価総額1,000万円
  • B社:一株1万円×発行済株式数10,000株=時価総額10,000万円

上記の例では、B社のほうが市場における企業価値が高いと判断できます。

大手企業と新興企業の時価総額の違い

大手企業は多くの市場で高いシェアを持ち、収益性、財務状況が安定している傾向にあります。企業としての成熟度が高い分、時価総額も高くなるのが一般的です。

一方、新興企業は成熟度が低い分、信頼性や安定性が伴っていない傾向にあります。先行投資の拡大などによって業績が赤字の企業も多く、比較的低い時価総額で取引されるのが一般的です。

日本企業の時価総額ランキング

2024年9月20日時点における、日本企業の時価総額ランキング上位20社は、以下のとおりです。

順位企業名時価総額(単位:百万円)
1トヨタ41,730,356
2三菱UFJフィナンシャル・グループ18,340,007
3日立17,127,487
4キーエンス16,932,118
5ソニーグループ16,762,717
6リクルートホールディングス15,267,637
7ファーストリテイリング15,188,686
8NTT13,573,492
9ソフトバンクグループ12,571,399
10三菱商事12,376,162
11伊藤忠商事12,192,554
12三井住友フィナンシャルグループ12,026,072
13信越化学工業11,864,027
14中外製薬11,583,818
15東京エレクトロン11,451,242
16東京海上ホールディングス10,519,004
17KDDI10,509,903
18任天堂10,053,159
19第一三共9,635,871
20ソフトバンク9,409,503

(参照元:MINKABU

1位はトヨタ自動車、続いて三菱UFJフィナンシャル・グループ、日立、キーエンスと名だたる大企業が並んでいます。続いて、世界の時価総額ランキングも見てみましょう。。

世界の企業の時価総額ランキング

2024年9月20日時点における、世界の企業時価総額ランキング上位20社は以下のとおりです。

順位企業名国名時価総額(単位:兆ドル)
1アップルアメリカ3.48
2マイクロソフトアメリカ3.261
3エヌビディアアメリカ2.891
4アルファベットアメリカ2.003
5アマゾン・ドット・コムアメリカ1.993
6サウジアラムコサウジアラビア1.744
7メタ・プラットフォームズアメリカ1.414
8バークシャー・ハサウェイアメリカ0.986
9イーライリリーアメリカ0.869
10ブロードコムアメリカ0.781
11テスラアメリカ0.779
12台湾積体重路制造台湾0.761
13ウォルマートアメリカ0.627
14JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーアメリカ0.598
15ノボノルディスクデンマーク0.581
16ビザアメリカ0.563
17ユナイテッドヘルス・グループアメリカ0.532
18エクソンモービルアメリカ0.515
19オラクルアメリカ0.464
20マスターカードアメリカ0.455

(参照元:TradingView

世界の時価総額トップ20に日本企業は入っておらず、46位に初めてトヨタ自動車がランクインしています。1989年にはトップ50に日本企業が32社ランクインしていましたが、現在ではアメリカの企業がメインです。直近35年ほどで、日本企業は時価総額ランキングで世界に後れを取っていることが分かります。

時価総額が高くなることのメリット

時価総額が高くなることのメリット

時価総額が高くなることで、企業の信頼度が向上したり、人材の確保がしやすくなったりと、いくつかのメリットがあります。

企業の信頼度が向上する

一般的に、時価総額が高い企業は多くの市場で高いシェアを持ち、ブランド価値や顧客満足度も高い傾向にあります。そのため、収益性や財務状況も安定している傾向にあり、多くの純資産を有していることから、企業の信頼度が向上します。

企業の信頼度が向上すると、株式を通じた資金調達を効率的に行えることに加え、金融機関からの融資を受けやすくなるので、経営状況の更なる安定につながるでしょう。

人材の確保がしやすくなる

一般的に、求職者は企業価値や将来性、安定性などを考慮して就職先を選ぶ傾向にあります。時価総額が高い企業は認知度も高く、将来性、安定性のある企業と判断されやすいため、人材の確保がしやすくなります。

企業規模や財務状況の安定は、従業員に対する投資に繋がり、手厚い福利厚生や充実した研修制度を整えやすくなります。スキルアップを支援し、働きやすい環境を提供することで、優秀な人材を引き寄せ、定着率を高める効果も期待できます。

結果として、企業はより成長を加速させるための好循環を生み出すことが可能となるでしょう。

M&Aにおける優位性を得られる

時価総額が高い企業は他の企業や市場からの信頼度が高く、資金調達や交渉において信用力が増すため、M&Aにおいて優位性を得られます。また、買収対象会社の取締役会の同意を得ないまま仕掛けられる買収(敵対的買収)などに対し、防衛策を講じやすくなる点もメリットです。

例えば、自社株買いによって株価を上昇させて買収コストを引き上げたりなど、買収を断念させることが可能となります。

時価総額が変動する要因

時価総額が変動する要因

前述のとおり、時価総額は「株価×発行済株式数」で計算されます。したがって、時価総額が変動する要因は「株価の変動」と「発行済株式数の増減」となります。株価が変動する主な要因や、発行済み株式数が増減するケースについて確認しましょう。

株価の変動

株価は買い手と売り手のバランスで決まります。このバランスが変化する要因はさまざまですが、大きく分けてその会社自体の「個別要因」と「市場全体の要因」の2つがあります。

主な個別要因は、企業の業績動向です。一般的に、企業の業績が良くなれば株価が上昇する要因となり、反対に業績が悪くなると株価が下落する要因となります。また、M&Aや株式分割、増資などによって株式の価値が変わり、株価が変動するケースもあります。

市場全体の要因としては、景気動向、金利、外国為替といった経済的な要因や、政局、地政学的リスクといった経済外的な要因が挙げられます。また、需給動向など市場内部の要因によって株価が変動するケースもあります。

発行済株式数の増減

発行済株式数が増減する主な要因として、以下のようなものが挙げられます。

  • 自己株式の取得・消却
  • 株式併合
  • 増資
  • 株式分割

企業が過去に発行した自己株式の取得・消却を行うと、発行済株式数が減少します。1株当たりの利益や価値が向上するため、株価が上昇する要因にもなります。また、複数の株式を1株に統合する「株式併合」によっても発行済株式数は減少しますが、理論上は資産価値に影響しません。

一方、増資は新株を発行して投資家から資金を集めるのが一般的であり、その場合は発行済株式数が増加します。増資を行うと1株当たりの価値が低下するため、株価が下落する要因となります。また、1株を複数の株式に分割する「株式分割」も発行済株式数が増加する要因です。

時価総額経営のメリット

時価総額経営のメリット

「時価総額経営」とは、株価上昇を最優先に掲げる経営手法のことです。時価総額経営では、「事業を成長させる」という基本方針に加え、以下の方法も実施して積極的に株価上昇を狙います。

  • M&A
  • 不採算事業の譲渡
  • ファンド投資

時価総額経営には、以下のようなメリットがあります。

  • 株価上昇で株主への還元が大きくなる

時価総額経営では株価上昇を最優先するため、株主還元を積極的に行う傾向にあります。株主への配当金が増額すれば、株式の買い増しなども期待できるため、さらなる時価総額の増大が期待できるでしょう。

  • M&Aにより企業価値が増える

M&Aでは将来性のある企業を積極的に吸収するため、自社の成長性も向上できます。成長性の向上が見込めれば株価は上がりやすいため、結果的に時価総額の増加にも繋がります。

時価総額経営のデメリット

一方で、時価総額経営には以下のようなデメリットもあります。

  • 財務リスクの懸念増加がある
  • 外部要因に株価が大きく影響される

時価総額経営では、M&Aや自社株買いなどを駆使することで企業価値を高められます。しかし、いずれも巨額の現金が動く施策のため、失敗した際の財務リスクは大きいです。

財務リスク懸念の具体例としては、航空機メーカー「ボーイング社」の事例が挙げられます。ボーイング社は、株価上昇を狙って自社株買いや配当金の増額を行いましたが、同時期に新型コロナウイルスが流行したこともあり、業績は最終赤字となりました。資本を取り崩し過ぎた結果、債務超過に陥っています。

自社株買いやM&Aにより、ある程度株価や発行株式数はコントロールできますが、完全ではありません。政治状況や経済状況、災害や合併先の不祥事のような外部要因が、時価総額に影響を与えるケースもあります。

時価総額の投資への活用方法

時価総額の投資への活用方法

時価総額経営をしている企業は、株主にとっても利益が大きいため、投資先として検討している方もいるでしょう。

時価総額が高い企業は利益や純資産が多い傾向にあり、倒産リスクが低く信頼性が高いと判断しやすいです。倒産リスクが低い企業は資金調達時にも有利なため、今後の成長が期待できる投資先といえます。

ただし、外部要因にも左右されるため「時価総額が高い企業に投資すべき」というわけではありません。先述のボーイング社のような事例も存在します。場合によっては、時価総額の低い企業が革新的な製品を開発して、株価が急上昇する可能性もあります。

時価総額は多くの要因で変動するため、一概に現時点での企業価値が高い企業にのみ投資するのではなく、将来的な成長を期待できる企業にも投資するなど、リスク分散を実施することが必要です。

普通株以外の影響も加味して企業価値を把握する

正しい企業価値の把握には、新株発行や優先株の影響も加味しなければなりません。優先株とは普通株よりも多くの配当を得たり、残余財産(企業倒産時に残っている財産)を優先的に得たりできる株のことです。

上記の優先株の存在や、新株発行による株価の相対的な価値減少など、普通株以外の時価総額も合わせて計算することで、正しい企業情報を把握できます。

時価総額を用いたマーケット分析

時価総額は、マーケット分析を行う際に活用することもできます。例えば全体の時価総額に占める各企業の時価総額の割合を見ることで、その企業の業界での位置づけや市場からの評価などを知ることが可能です。

また、市場全体の動向がその企業の株価にどれほどの影響を与えているのかを知ることもできるため、マーケットの動きを考慮した上で投資判断を行えます。

時価総額だけではなく業界トレンドの把握も

時価総額は企業の業績だけでなく、業界のトレンドにも左右されます。例えばAIやIoTなどの革新的な技術が浸透すると、その業界に属する企業の株価が上昇し、時価総額も上昇するケースがあります。

一方、企業の不祥事などによって業界全体が危機に陥ると、その業界に属する企業の時価総額が減少する可能性があります。したがって、時価総額だけではなく業界全体の動向も把握することが大切です。

おわりに

時価総額は、計算式に数値を当てはめれば求められます。時価総額を把握することで企業の価値を正しく判断でき、投資の可否判断を実施したり、転職活動時の判断材料にしたりすることが可能です。時価総額は大きな金額を動かす投資家だけではなく、多くの方々にとってメリットをもたらす知識だといえます。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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