貯金額が1,000万円を超えたら「今やっておくべきことは何なのか」「今後どのように資産運用すればいいのか」といった疑問がわいてきて、お悩みの方も多いのではないでしょうか。
実は、貯金額が1,000万円を超えると、預金保険制度の保護対象外になることやインフレによる資産価値の低下リスクに直面するのです。これらの課題に対応するため、適切な資産管理と運用戦略の見直しが必要となります。
そこで本記事では貯金額が1,000万円を超えた方に向けて、以下の内容について解説します。
- 1,000万円を超えた際の注意点と直面するリスク
- すぐにやるべき具体的な行動指針
- 活用すべき非課税制度と金融商品
- 1,000万円以上の貯金に関する統計データ
この記事を読むことで、資産のリスク管理と効果的な資産運用方法を学べます。大切な資産を守り、さらに増やしていきたい方はぜひ最後までお読みください。
貯金1,000万円を超えたら要注意!直面する3つのリスクとは
貯金が1,000万円を超えると、満足感とともに新たな課題が発生します。大切な資産を守るために、以下3つのリスクがあることを押さえておきましょう。
- 預金保険制度(ペイオフ)の保護対象外になるリスク
- インフレで資産価値が下がってしまうリスク
- 低金利でお金が増えないリスク
ひとつずつ解説していくので、ぜひ参考にしてください。
預金保険制度(ペイオフ)の保護対象外になるリスク
預金額が1,000万円を超えると、金融機関が破綻した際に全額保護されない可能性が出てきます。
元本1,000万円までは「預金保険制度(ペイオフ)」により、1金融機関につき元本1,000万円までとその利息が保護されますが、これを超える部分には保証がありません。金融機関が万一破綻した場合、超過分は返還されないことがあるので注意が必要です。
対象となる金融機関は、日本国内に本店がある銀行や信用金庫、信用組合、労働金庫などです。ただし、該当する金融機関に預けていても、外貨預金は保護対象外なので注意しましょう。
この機会に、手持ちの金融商品が保護対象かどうかチェックされることをおすすめします。
インフレで資産価値が下がってしまうリスク
インフレはお金の価値を下げ、実質的に「使えるお金」を減少させます。
日本銀行の「経済・物価情勢の展望(2024年7月)」によると、消費者物価は2026年度まで年約2%上昇すると予想されています。つまり、当面は毎年2%ずつお金の価値が目減りしていく可能性があるのです。
仮に、2%のインフレが10年間続いたとしましょう。現金1,000万円の実質的な価値は、約820万円に目減りしてしまうことになります。
資産価値を1,000万円のまま維持するには、インフレに負けない資産運用が不可欠です。
低金利でお金が増えないリスク
2024年現在、長く続いてきた超低金利時代はようやく脱却の兆しが見えてきました。とはいえ、まだ普通預金の金利は0.1%程度です。
もし、1,000万円を10年間の定期預金に預けたとしても、利息は税引き後24万円程度です(金利0.3%で10年間、単利で運用した場合)。
仮に2%のインフレが10年間続いた場合、実質価値は預金金利を考慮しても、1,000万円が約844万円に目減りすることになります。
資産を効果的に増やすには、リスクとリターンのバランスを考慮しつつ、投資信託や株式など、より高い収益が期待できる金融商品の活用を検討する必要があるでしょう。
貯金が1,000万円を超えたら銀行から電話がかかってくるって本当?
貯金が1,000万円を超えると、銀行から連絡が来ることがあります。この連絡の内容は、一般の銀行とゆうちょ銀行で異なります。それぞれのケースを詳しく見ていきましょう。
銀行の場合
預金残高が1,000万円を超える顧客には、銀行から電話がかかってくることがあります。しかし、その大半は営業目的です。表向きは預金保険制度の保護対象外になることを伝える内容ですが、実際は富裕層向けのセールスであることがほとんどです。
銀行は顧客に対して金融商品の情報を提供し、個々の状況に合わせた資産運用方法をアドバイスしてくれるでしょう。しかし、銀行の提案が必ずしも顧客にとって最適とは限らないため、慎重に検討する必要があります。
なお、この連絡は電話だけでなく、ダイレクトメールで行われることもあります。
ゆうちょ銀行の場合
ゆうちょ銀行では、通常貯金と定期性貯金にそれぞれ1,300万円の預け入れ限度額が設定されています。この限度額を超過した場合、ゆうちょ銀行から書面で通知が届くことがあります。
通知を受け取ったら、超過分の払い戻し手続きを行わなければなりません。もし通知を放置した場合は、ゆうちょ銀行側で自動的に手続きが行われ、貯金払戻証書(ゆうちょ銀行で現金化できる証書)が送られてきます。
このようなゆうちょ銀行からの連絡は、主に預け入れ限度額の管理が目的です。そのため、通知自体はセールス色の強い内容ではありません。
ただし、窓口で手続きを行う際には、担当者から資産運用に関する提案を受ける可能性があります。その場合は安易に契約せず、慎重に対応しましょう。提案された商品について自分で調べ、内容を理解したうえで判断することが大切です。
貯金1,000万円を超えたらすぐにやるべき7つのこと
貯金が1,000万円を超えたら、資産を「守る」と「増やす」の2つを同時並行で行う必要があります。ここでは、すぐにやるべきこととして、以下の7つを紹介します。
- 負債があれば返済を検討する
- 複数の金融機関に分散して預ける
- 生活防衛資金を確保する
- 近い将来必要になる資金を確保する
- 資産運用の知識を身に付ける
- 短期・中期・長期の資金計画を立てる
- 余裕資金で投資を始める
これらを実践することで、より安全で効果的な資産管理ができるようになるでしょう。ぜひ参考にしてみてください。
負債があれば返済する
貯金が1,000万円を超えたら、まずは負債の返済を検討しましょう。ローンやクレジットカードのリボ払いがある場合、繰り上げ返済を行うことにより、利息を大幅に削減できるからです。
ただし、住宅ローンや奨学金など低金利の長期負債は、一括返済よりも投資に回す方が有利な場合もあります。金利を確認してどちらが適切か慎重に判断しましょう。
複数の金融機関に分散して預ける
1金融機関で1,000万円を超える預金がある場合は、資産保護のために資金を複数の金融機関に分散させましょう。預金保険制度では、ひとつの金融機関につき元本1,000万円までしか保護されないので、銀行が破綻したときのリスクを最小限に抑えるためです。
資金を分散させておけば、万一金融機関が破綻した場合でも、全額保護される可能性が高まります。ただし、複数の口座を管理する手間が増える点には注意しましょう。
生活防衛資金を確保する
予期せぬ出来事に備えて、生活防衛資金を確保しておくことも重要です。生活防衛資金とは、病気や失業などで一時的に収入が途絶えても、当面の生活を維持できるように貯めておく資金のことです。
この資金は原則として手を付けず、すぐに引き出せる普通預金や定期預金に置いておくと安心です。生活防衛資金の適切な金額については諸説ありますが、最低でも生活費の約3〜6ヵ月分は準備しておきましょう。
十分な生活防衛資金があると、心にゆとりを持って資産運用に取り組めます。
近い将来必要になる資金を確保する
生活防衛資金とは別に、近い将来に使う予定のあるお金も確保しておきましょう。具体的には、以下のような支出予定がないか確認してみてください。
- 子どもの教育費
- マイホーム購入の頭金
- 家のリフォーム費用
- 車の買い替え費用
- 家電製品の買い替え費用
- 家族旅行の資金
必要な金額は家族構成やライフスタイルによって異なります。いつ、どのような出費予定があるのかライフプランを立てて考えてみましょう。
資産運用の知識を身に付ける
貯金が1,000万円を超えたら、お金の増やし方を学ぶ絶好のチャンスです。資産運用の基本的な知識を身に付けると、攻めと守りのバランスが良い運用が可能になります。
具体的には、以下について学んでみることをおすすめします。
- リスクとリターンの関係
- 分散投資の重要性
- 長期投資のメリット
- 経済動向
- 各種金融商品の特徴
書籍やセミナー、オンライン講座などを活用して、じっくりと学んでいきましょう。
短期・中期・長期の資金計画を立てる
資産を効率よく運用するために、短期・中期・長期と期間別に運用計画を立てることをおすすめします。
以下の表は、運用計画を立てる際のヒントとして参考にしてください。
運用期間 | 用途例 | 金融商品例 | ポイント |
---|---|---|---|
短期(1年以内) | 旅行資金、家電の購入費用など | 普通預金、定期預金 | 流動性と安全性を重視 |
中期(1~5年) | 住宅購入、子どもの教育資金など | 銀行預金または債券比率の高いバランス型投資信託 | 安全性と収益性のバランスを取る |
長期(5年以上) | 老後資金など | 株式やREITの比率が高いバランス型投資信託 | 収益性を重視 |
この表のように、運用可能な期間に合わせて安全性や収益性を考慮した金融商品を選びましょう。その際は、自分のリスク許容度を見極めて適切に資産配分することが大切です。
リスク許容度については、全国銀行協会が提供しているリスク許容度診断テストを活用するのもひとつの方法です。運用計画を立てることで、より効果的な資産運用が期待できるでしょう。
余裕資金で投資を始める
資産配分が決まったら、いよいよ投資を始めます。ただし、投資をする際は以下の5つのリスクを理解しておきましょう。
- 株価変動リスク:株式の価格の変動により、投資価値が下がる可能性
- 信用リスク:企業や国が債務不履行に陥り、投資元本が失われる可能性
- 流動性リスク:資産をすぐに売却できず、必要なときに現金に変えられないリスク
- 金利変動リスク:金利変動による債券価格への影響
- 為替変動リスク:為替レートの変動により外貨建て資産の価値が変動する可能性
投資初心者の方はこれらのリスクを考慮しながら、少額から始めて徐々に経験を積んでいくことをおすすめします。
貯金が1,000万円を超えても追加で税金はかからない
税金は、貯金が1,000万円を超えても追加で徴収されることはありません。金額に関わらず、利息や配当金、譲渡益に対して20.315%の税金が課されます。
20.315%の内訳は以下のとおりです。
- 所得税および復興特別所得税15.315%
- 住民税5%
預貯金の利息にかかる税金は源泉分離課税が採用されるので、受け取り時にはすでに源泉徴収されています。そのため、確定申告をして自分自身で税金を納める必要はありません。
その他、株式の売却益や投資信託の分配金、配当金などは、総合課税または申告分離課税となり、確定申告が必要かどうかはケースバイケースです。
貯金1,000万円を超えたら利用必須!2つの非課税制度
ここでは、資産運用に役立つ2つの非課税制度を紹介します。
- NISA(少額投資非課税制度)
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
この2つは、貯金が1,000万円に満たなくても、ぜひ利用しておきたい制度です。まだ利用していない方は、ぜひ参考にしてください。
NISA(少額投資非課税制度)
資産運用を始めるなら、まずNISAの利用を検討しましょう。NISAとは、株式や投資信託などの運用益にかかる税金が非課税になる制度です。「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2種類あり、主な特徴は以下のとおりです。
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
---|---|---|
年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
非課税保有限度額(総額) | 1,800万円 | |
投資対象 | 長期分散投資に適した一定の投資信託 | 上場株式、投資信託(一部を除く)など |
「つみたて投資枠」と「成長投資枠」は併用可能なので、1,000万円を超える資産がある方は、年間投資枠の範囲内で計画的に運用しましょう。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
老後の資金づくりを考えるならiDeCoの活用がおすすめです。iDeCoは、現役時代に積み立てた資金を60歳以降に受け取る、自分仕様の年金制度です。iDeCoのメリット・デメリットは以下のとおり。
【メリット】
- 掛金は全額が所得控除の対象になるため、現役時代の税負担が軽減される
- 運用益はすべて非課税、再投資で複利効果がアップ
- 受け取り時も税制優遇あり
- 受け取り時は一時金として引き出すことも可能
【デメリット】
- 原則60歳まで引き出せない
- 口座開設時や運用時に手数料がかかる
- 人によって最適な受け取り方法が異なる
iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、無理のない範囲で始めましょう。
なお、投資は元本割れのリスクを伴います。リスクについて十分理解したうえで取り組みましょう。
貯金が1,000万円を超えた方におすすめ!5つの金融商品
ここでは、貯金が1,000万円を超えた方におすすめの金融商品を5つ紹介します。
- 投資信託
- 株式
- 金
- 外貨預金
- 貯蓄型保険
ここを読んでどの商品が自分に向いているのか、考えてみましょう。
投資信託
投資信託は、投資家から集めたお金をひとつの大きな資金にして、運用の専門家が債券や株式などに投資・運用する商品のことです。投資によって得られた利益は、投資家に還元されます。
主なメリット | 主なデメリット |
---|---|
・少額から運用できる ・分散投資できるのでリスクが軽減できる ・初心者でも始めやすい | ・運用成績は市場の動向に左右される ・手数料が高い商品もある |
株式
株式投資とは、企業の株式を購入して、その企業の部分的な所有者になることです。株式市場を通じて取引され、企業の業績や市場の動向に応じて価格が変動します。投資家は企業の現在と未来の価値に投資し、運用成果の獲得を目指します。
主なメリット | 主なデメリット |
---|---|
・値上がり益を期待できる ・株主優待や配当金が得られる場合がある ・会社の意思決定に関われる | ・価格変動が大きく元本割れのリスクが高い ・投資した会社が経営破綻する可能性がある ・個別株の知識や情報収集が必要となる ・売買相手がおらず、取引が成立しない場合がある |
金
金は古くから、国際的な通貨としての役割を果たしてきました。現代の主な投資方法は、以下のとおりです。
- 現物取引:金地金、金貨
- 金関連の金融商品:純金積立、金投資信託、金ETFなど
金投資は、売却時に複数の課税パターンがあるため注意しましょう。
主なメリット | 主なデメリット |
---|---|
・インフレに強い ・世界的に需要がある | ・利息や配当がなく、価格変動リスクがある ・保管コストが発生するケースがある |
外貨預金
外貨預金は、外国の通貨で預金する資産運用方法です。「外貨定期預金」が主流ですが「外貨普通預金」や「外貨建ての通知預金」といった商品もあります。
主なメリット | 主なデメリット |
---|---|
・円安時に為替差益を得られる ・金利が日本より高い国が多い | ・円高になると元本割れする恐れがある ・手数料がかかる |
貯蓄型保険
貯蓄型保険は、保険機能と貯蓄機能を組み合わせた金融商品です。掛け捨て型の保険とは異なり、満期時や解約時にお金を受け取れるのが特徴です。
より貯蓄性を高めたい方向けとしては、外貨建てや株式などの運用結果で保険金額が変わる「変額保険」があります。変額保険は、大きなリターンを期待できますが、リターンに比例しリスクも高いので、内容をしっかり理解してから購入しましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
・貯蓄と保障を同時に行えるため、万一の際に保障を得られる ・生命保険料控除が受けられる | ・手数料が高く、途中解約すると元本割れする可能性がある ・投資商品としてのリターンは低いことが多い |
知っておきたい!貯金1,000万円に関する2つの統計データ
貯金が1,000万円を超えた方の実態を知ることは、ご自身の資産管理の参考になります。ここでは年代別と年収別に分けて、1,000万円以上の金融資産を持っている方々に関する2つの統計データを紹介します。
【年代別】1,000万円以上の金融資産を持っている方の割合
金融資産を1,000万円以上持っている方の割合は、単身世帯で21.9%、2人以上世帯で31.2%です。
年代別に見ると、以下のとおりです。
年代 | 単身世帯 | 2人以上世帯 |
---|---|---|
20代 | 1.6% | 4.1% |
30代 | 16.4% | 15.1% |
40代 | 17.0% | 22.7% |
50代 | 22.7% | 29.7% |
60代 | 34.2% | 42.2% |
70代 | 39.4% | 43.9% |
家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]および[二人以上世帯調査](令和5年)より作成
上の表を見ると、年齢が上がるにつれて1,000万円以上を保有している割合が増加していることがわかります。しかしながら、50~70代の半数以上が数百万円の金融資産しか持っていない現状は、超高齢化社会の大きな課題だといえるでしょう。
【年収別】1,000万円以上の金融資産を持っている方の割合
次に、年収別で1,000万円以上持っている方の割合を見てみましょう。
単身世帯 | 2人以上世帯 | |
---|---|---|
収入なし | 8.0% | 3.2% |
300万円未満 | 18.9% | 16.3% |
300~500万円未満 | 23.0% | 27.4% |
500~750万円未満 | 43.1% | 31.0% |
750~1,000万円未満 | 72.3% | 45.1% |
1,000~1,200万円未満 | 36.4% | 58.3% |
1,200万円以上 | 54.5% | 61.3% |
家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]および[二人以上世帯調査](令和5年)より作成
2人以上世帯については、年収が上がるにつれて、1,000万円以上の金融資産を持つ割合も増加しています。一方で、単身世帯の割合を見てみると、必ずしも年収と比例しているわけではないようです。
おわりに
1,000万円を超えるお金をただ銀行に預けているだけでは、万一銀行が破綻した場合、一部のお金が戻ってこない恐れがあります。また、インフレでお金の価値が下がるリスクも見逃せません。
この機会に、銀行預金以外の資産運用方法も考えてみてはいかがでしょうか。資産運用はなるべく早く始めるのが吉です。今すぐ行動することで、より安定した豊かな未来へ近づけるでしょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。