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FIREとは?従来の早期リタイアとの違いや実現方法もチェック

FIREとは?従来の早期リタイアとの違いや実現方法もチェック
セゾンのくらし大研究 編集部

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セゾンのくらし大研究 編集部

豊かなくらしに必要な「お金」「健康」「家族」に関する困りごとや悩みごとを解決するために役立つ情報を、編集部メンバーが選りすぐってお届けします。

新たなライフスタイルとして注目されている「FIRE」。資産運用の運用益をベースに経済的自立を果たし、早期リタイアを目指すライフスタイルです。

この記事では、FIREの概要や従来の早期リタイアとの違い、実現方法について詳しくご紹介します。老後の生活に対するさまざまな考えを知りたい方は、ぜひご覧ください。

FIRE とは?どのようなライフスタイル?

FIREは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字をとった言葉で、日本語では「経済的自立と早期リタイア」を意味します。資産運用収益で生活費を賄い、早期リタイアの達成を目指します。

FIREの経済的自立とは?

FIREにおける経済的自立は、資産運用収益で生活費を賄うことができる状態を指します。

収入の一部を株式や投資信託などの金融商品に投資し、コツコツと運用してFIREを目指すイメージです。節約と資産運用が実践できれば、誰にでもFIREを達成できる可能性があります。

FIREの経済的自立とは?

FIREでは、経済的自立を果たして早期リタイアを目指していきます。この経済的自立とは、資産運用による運用益によって生活すること。

収入の一部を株や投資信託などの金融商品に変え、コツコツと運用してFIREを目指すイメージです。そのため、節約と資産運用が実践できれば、誰にでもFIREを達成できるチャンスがあります。

従来の早期リタイアとの違いは?

以前から、定年退職を待たずに会社を辞める早期リタイアの考え方は存在していました。しかし、従来の早期リタイアとFIREでは前提が異なります。

従来の早期リタイアの場合は、仕事を辞める前に、生活に困らないだけの資産を蓄えておくことが前提とされていました。

ビジネスで成功した方や遺産相続で資産を得た方などが選ぶケースが多く、一生生活していくのに十分な資産が必要です。

一方、FIREは資産運用収益をベースに生活するため、莫大な資産がなくてもリタイア可能です。また、従来の早期リタイアは40代~50代を中心とするのに対し、FIREは20代~30代の若い世代でも実現可能とされています。

FIREの分類

資産運用による経済的自立を実現し、早期リタイアを達成するFIREには、主に4つの種類があります。ここからは、それぞれのFIREの特徴について見ていきましょう。

Fat FIRE(ファット ファイア)

「Fat FIRE(ファット ファイア)」は、資産運用収益のみで高い生活水準を維持できる状態です。完全にリタイアして豊かな生活を保ちながら、株主の配当金や不動産収入などで暮らしていける方向けのFIREです。

Lean FIRE(リーン ファイア)

「Lean FIRE(リーン ファイア)」は、資産運用収益のみで生活費を賄いますが、倹約が前提です。そのため、生活を切り詰めながらもリタイアしたい方に向いています。

Coast FIRE(コースト ファイア)

「Coast FIRE(コースト ファイア)」は、資産運用収益で生活を支えつつ、好きな仕事をしながら収入を得るライフスタイルです。経済的な自立を果たしながらも、社会とのつながりを維持したい方向けのFIREです。

Barista FIRE(バリスタ ファイア)

「Barista FIRE(バリスタ ファイア)」は、資産運用収益と労働収入を得て生活するスタイルで「サイドFIRE」とも呼ばれます。資産運用収益で不足する生活費を補うために少し働くことで、必要な資産を抑えられるので、最も実現しやすいFIREです

FIREを実現するためにやるべきこと

2.FIREを実現するためにやるべきこと

FIREを達成して自由な生活を手に入れるためには、いくつか知っておくべきポイントがあります。ここでは、FIREの実現に欠かせない要素について解説します。

不労所得が生活費を上回るようにする

FIREを達成するためには、株式投資や不動産投資などの資産運用で不労所得を増やし、生活費以上の収入を得る必要があります。

目指すFIREのタイプによって目標金額は異なりますが、生活費の大部分を資産運用収益で賄えることが重要です。

必要な金額は「4%ルール」で計算する

FIREを目指す際に覚えておきたいのが「4%ルール」です。これはアメリカの株式市場の経験則から生まれたルールで、投資元本の4%以内で年間の生活費をまかなえれば、資産が目減りせずに長期間生活できるとされています。

例えば、1億円の元本がある場合、年間の支出を400万円以内に抑えれば、翌年も同額の資産で生活できる計算になります。

4%ルールをもとに自分の資産と年間支出を照らし合わせると、FIREの達成可能性が見えてきます。

年間支出の25倍の資産を用意する

4%ルールをベースに、年間の生活費からFIREを達成するために必要な資産を算出していくのが次の計算式です。

年間の生活費×25=FIREに必要な資産

この式で表されているように、年間支出の25倍の金額が、FIREを達成するために必要な資産といわれています

例えば、年間の生活費が300万円であれば「300万円×25=7,500万円」がFIREに必要な資産額です。生活費を基準に必要な資産を算出することで具体的な目標額がわかり、資産形成の計画が立てやすくなります。

FIRE実現に向けて生活費を抑える方法

  • 家計収支を把握し、節約できそうな費目を探す
  • 毎月かかる固定費を削減できれば、1年間で大きな金額を節約できる可能性があります
    例えば、通信費の削減(スマホのプラン見直し等)、サブスクリプションサービスの解約、保険の見直し、水道・電気・ガスの節約、住居費の見直しなど
  • 日用品や生活用品の見直し、ポイント還元率が高いカードを使うなど、無理なく続けられるものから取り組む

FIREを実現するには、生活費を抑える工夫が必要です。まずはご自身の家計収支を把握し、節約可能な項目を特定しましょう。特に、毎月支払う固定費を削減できれば、年間を通じて大きな節約効果が期待できます。

例えば、通信費の削減は効果的な方法のひとつです。スマートフォンのプランを見直したり、不要なサブスクリプションサービスを解約したりすることで、無駄な支出を減らせます。また、保険の契約内容を再確認し、本当に必要な保障に絞ることで支出を抑えられる可能性があります。

水道光熱費についても、節電や節水といった日常的な工夫を取り入れることで無駄を減らせるでしょう。さらに、家賃が比較的安価な物件への引っ越しや住宅ローンの借り換えなどにより、住居費を見直すことも重要なポイントです。

家計の中で特に大きな割合を占める食費については、外食を減らして自炊を心がけることで大幅に節約できます。冷蔵庫の中身をこまめに確認し、計画的に使い切って食品ロスを防ぐことも大切です。

また、日用品や生活用品の購入費を抑えるためには、セール時などにまとめ買いするのが有効です。さらに、ポイント還元率の高いクレジットカードを日常の買い物で利用することで、節約が習慣化されるでしょう。同グループの銀行口座や決済アプリを連携させることで、ポイント還元率を高められる場合もあります。

生活費をどの程度に抑えるかは家庭ごとのライフスタイルによりますが、例えば年間200万円に抑えたい場合、毎月の目安は約166,000円となります。この目標を踏まえたうえで「4%ルール」を活用し、将来必要となる資産額を計画的に設定することが大切です。

FIREを実現するためのステップ

3.FIREを実現するためのステップ

ここからは、FIREを実現するためのステップを具体的に見ていきましょう。

【ステップ1】年間生活費を算出する

まずは、年間生活費を算出していきます。この際、できるだけ正確に毎月の支出を把握することで、FIRE達成に必要な目標金額をより現実的に設定できます。具体的には、以下のような項目について毎月の支出額を算出してみましょう。

生活費の主な項目
固定費住宅費、水道光熱費、通信費、保険料、車両費、学費、税金、教育費、交通費、小遣い など
変動費食費、日用品費、医療費、被服費、美容費、交際費、娯楽費、雑費 など

固定費は毎月ほぼ一定で発生する支出、変動費は月ごとに金額が変わる支出です。これらの支出が毎月どの程度かかっているかを把握しましょう。

【ステップ2】FIREに必要な金額を計算する

次に、年間生活費からFIRE達成に必要な資産額を計算します。計算式は前述のとおり「年間の生活費×25=FIREに必要な資産」です。ステップ1で算出した年間生活費をもとに、目標資産額を計算しましょう。

例えば、総務省の「家計調査報告(2024年11月8日公表)」によると、ふたり以上の世帯における平均消費支出は287,963円とされています。

これを月額30万円として計算すると、年間で約360万円の生活費が必要になります。こうした平均的な家庭がFIREを達成するために必要な資産額は、以下の計算式で算出できます。

360万円×25=9,000万円

この計算から、平均的な家庭でFIREを達成するために必要な資産運用額は、9,000万円となります。

参照元:統計局ホームページ/家計調査報告 ―月・四半期・年―

【ステップ3】必要金額を用意できるように投資をスタート

ステップ2でFIREに必要な資産額がわかりましたが、これを労働収入だけで貯めるのは難しいと感じる方もいるかもしれません。

FIREは労働収入だけではなく、資産運用で資産を増やしていくことが前提です。そのため、資産運用で効率的に目標額を目指しましょう。

特に、株式や投資信託などへの投資で得た運用益を再投資することで「複利効果」を得られます。そのため、元本がある程度増えると再投資できる運用益も増える可能性があり、その場合は効率的に資産を増やせます。

また、近年は少額から資産運用を始められるため、まとまったお金がなくても気軽にスタートできます。

FIREのメリット・デメリット

4.FIREのメリット・デメリット

ここからは、FIREのメリット・デメリットについて見ていきましょう。

FIREのメリットとは?

FIREの主なメリットとして、以下の3つが挙げられます。

節約と貯蓄が身に付く

FIREを達成するためには、一定の資産を築く必要があります。その過程で生活費の見直しや節約を行うことで、支出を管理するスキルが身につき、マネーリテラシーが向上する方も多いでしょう。

一見窮屈に感じるかもしれませんが、こうした習慣が身に付くことで、結果的に支出を上手くコントロールできるようになる可能性があります。

働く・働かないを自由に選択できる

働き方に柔軟性が生まれることも、FIREのメリットです。働かないという選択だけでなく、好きなときに好きな仕事だけをできるようになります。

自分のライフスタイルや価値観に合わせた働き方を選びやすくなるのが、FIREの魅力といえるでしょう。

いつでも好きな場所で暮らすことができる

FIREを達成すると、居住地を自由に選べます。住む場所を決める際に通勤のしやすさを考慮する必要がなくなるため、好きな場所に住めます。固定費を見直したい方にとっても、住む場所を自由に選べることは大きなメリットです。

FIREのデメリットとは?

FIREを目指す際は、以下のデメリットも理解しておきましょう。

ビジネスのキャリアが止まってしまう

FIRE達成後に仕事から離れることで、キャリアの積み重ねができなくなる可能性があります。仮にFIRE後に資産が不足し、再就職を目指す場合、仕事から離れていたブランクがマイナスに評価されることもあります。

こうしたリスクを軽減するには、FIRE後も新たなスキルを身に付けるなどの工夫が必要です。

急な出費があった場合に対応が難しい

FIREを達成後、病気や事故など予期せぬ出来事で急な出費が発生する場合があり、蓄えた資産だけで生活するのが難しくなる可能性があります。

また、仕事を辞めたことで社会とのつながりがなくなり、孤独感から精神的な負担を感じるケースもあります。こうしたリスクを軽減するために、金銭面や体調面の備えも意識することが大切です。年4%の運用益が維持できる保証はない

前述した「4%ルール」はアメリカの株式市場に基づく経験則ですが、年4%の運用益を安定して得られる保証はありません。

仮に運用益が年2~3%低下した場合には、資産を維持するための補填が必要になるかもしれません。FIREを目指す際は、こうしたリスクを考慮しておくことが大切です。

FIREを目指すなら「積立投資」がおすすめ

積立投資は、株式や投資信託などの金融商品を毎月一定額ずつ継続的に購入する投資方法です。定期的に一定額を投資することで購入価格を平準化し、価格変動の影響を抑える「ドルコスト平均法」の効果が期待できます。また、長期間にわたり積み立てを続けることで、複利効果を得られる点も積立投資の大きな魅力です。

複利とは、利子が元本に加算され、その合計額にさらに利子がつく仕組みを指します。例えば、1,000万円を年利3%で20年間運用した場合、複利を活用した場合の資産額は約1,806万円です。一方、単利で運用した場合は1,600万円にとどまり、複利との差額は200万円以上となります(税金等は考慮していません)。

さらに、NISA(少額投資非課税制度)を活用することで運用益が非課税となり、より効率的な資産形成が可能です。NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの非課税枠があり、それぞれ年間120万円、240万円まで非課税で投資できます。なお、つみたて投資枠では「投資信託」への積立投資が可能で、成長投資枠では株式や投資信託、ETFなどに一括投資または積立投資が可能です。

積立投資でFIREを目指す場合、まずは目標とする資産額を計算する必要があります。「【ステップ2】FIREに必要な金額を計算する」で示したように、平均的な家庭の目標資産額は約9,000万円とされています。

例えば、20年間で9,000万円を準備する場合、年利3%なら毎月約27万円、年利5%なら毎月約22万円の積み立てが必要です。このように、積立期間や運用利回りに応じて必要な積立額は異なりますが、FIREを実現するのは容易ではありません。そのため、生活費を削減して目標額を引き下げるなど、ご自身の収入やライフスタイルに合わせた計画を立てることが重要です。

参考:金融庁「つみたてシミュレーター」、「NISAを知る」、「資産形成シミュレーター

FIRE実現が難しい場合はサイドFIREの選択肢もある 

FIREについて知っていくと「これだけの資産を確保できるのだろうか」と感じる方もいるでしょう。しかし、資産確保に不安があっても、FIRE後の自由なライフスタイルに興味を持つ方は少なくないはずです。

そのような方には「サイドFIRE」という選択肢を検討してみるのがおすすめです。

サイドFIREとは?

サイドFIREとは、資産運用収益を生活費の大部分に充てつつ、一定の労働収入を得ていくスタイルのFIREです。運用益を主な収入源としながらも、副業などの仕事で補うことで、完全なFIREと比べて必要資産額が少なくて済むのが特徴です。

例えば、生活費が年間300万円かかる場合、FIREとサイドFIREそれぞれの必要資産額は次のように異なります。

<労働収入を得ないFIRE(Fat FIRE・Lean FIRE)>

300万円×25(倍)=7,500万円

<労働収入を得るサイドFIRE(月の労働収入:50,000円(年間60万円)の場合)>

(300万円-60万円)×25=6,000万円

<労働収入を得るサイドFIRE(月の労働収入:100,000円(年間120万円)の場合>

(300万円-120万円)×25=4,500万円

月数万円~数十万円の労働収入があるだけで、目標資産額が現実的な金額に近づきやすいのがサイドFIREの魅力です。

資産運用以外の収入が必要

サイドFIREを達成するためには、資産運用をしながら、別の収入源を確保していく必要があります。現在の勤務先での仕事を継続する方法もありますし、そこまで本格的でなくても、自宅でできる仕事やパートタイムの仕事をするのも選択肢のひとつです。長期間安定して得られる収入源を確保することがポイントになるでしょう。

おわりに 

FIREは、資産運用収益をもとに早期リタイアを目指す新しいライフスタイルとして、さまざまな世代から注目されています。実現するためにはいくつかの壁もありますが、達成できれば時間や場所に縛られない自由な生活を送れます。

誰にでも達成できるチャンスはあるため、興味をもった方はご自身の生活スタイルに合うFIREを目指してみてはいかがでしょうか。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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