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離婚する際、夫婦の年金はどう分けるのか?年金分割制度について解説します。

離婚する際、夫婦の年金はどう分けるのか?年金分割制度について解説します。
セゾンのくらし大研究 編集部

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離婚することになった場合、心配事のひとつとして、離婚後の生活を送るための蓄えについてではないでしょうか。事前にある程度のお金を用意しておかないと困窮して満足な生活が送れなくなる危険性があります。

年金分割の手続きは、そのような心配事を回避する手段のひとつとして考えられるでしょう。離婚後の生活に負担をかけないための手段である年金分割とは、いったいどのような制度なのでしょうか。

今回のこのコラムでは、年金分割の詳細や手続き方法、年金分割を申請する際の注意点などについて、詳しく解説していきます。

1.年金分割って何?

そもそも年金分割とは、どういった内容の制度なのでしょうか。その詳細などについて以下より説明しましょう。

1-1.年金分割とは

年金分割とは、婚姻期間中の保険料納付額に応じて厚生年金記録を分割して、それぞれの年金とすることができる制度です。夫婦が過去に支払った厚生年金保険料をそれぞれに分割する制度ともいえるでしょう。この制度は昔からあるわけではなく、実施されたのは2007年になります。

それ以前に問題になっていた、専業主婦が離婚したときの年金水準の低さを改善するために、2002年に法律が改正されて、2007年から年金分割が実施されることになりました。

この制度の導入により、夫の収入で支払っていた保険料の一部を配偶者も支払ったものとみなして、夫婦それぞれの将来における年金額が決まる運びとなりました。

夫が仕事に専念できるのは、専業主婦が家事・育児をしっかりと行ってサポートしているからこそ成り立ちます。そのため実労働で収入を得ていない主婦も、保険料を共同で納めているという解釈に変更となりました。

つまり、専業主婦であっても、離婚時に夫婦生活を送っていた間に納めていた保険料の何割か(多くて最大半分)を受け取る権利があり、離婚時に手続きを行うことができます。

1-2.財産分与との違い

年金分割と似たような制度に、財産分与があります。財産分与とは、夫婦間で築いた財産を離婚時に夫婦ふたりで分割する制度です。なかには、年金分割と財産分与は同じもので、財産分与のなかに含まれていると考えている方もいるかもしれませんが別の制度です。

実際に、かつては離婚後の年金に関しては、明確な指摘がなかったために財産分与の一要素という判断がされていました。しかし、2002年に年金に関する法律改正によって、2007年金分割の制度が施行されたことにより、年金分割は財産分与とは別の制度として扱われることになったのです。

そのため、離婚時に夫婦間で財産分与の話し合いを行う際、年金分割についても確認するのが望ましいでしょう。

1-3.年金分割の対象は厚生年金のみ

年金分割の対象となっている年金は、厚生年金のみです。国民年金(基礎年金)は対象となっていません。また、2015年以前にあった共済年金も現在は厚生年金に統一されたので、旧共済年金も対象となっています。

2.年金分割の種類

年金分割には「合意分割」「3号分割」の2種類があります。この2つはどのような違いがあるのでしょうか。以下より、合意分割、3号分割の詳細について解説します。

2-1.合意分割

合意分割とは、夫婦の話し合いによる合意で分割割合を決定する方法です。夫婦ふたりの話し合いで合意できれば問題ありませんが、それでも合意に達しなかった場合は、裁判で分割方法を決定します。この分割方法だと、分割される割合は0.5が上限です。

2-2.3号分割

合意分割のように夫婦ふたりの合意がなくても成立できるのが、3号分割です。厚生年金保険の給付記録が必須なのは合意分割と同じですが、それに加えて、3号分割には以下の条件を満たす必要があります。

・2008年4月1日以降、離婚あるいは内縁関係の解消が成立している

・上記年月日以降、一方が第3号被保険者(20〜60歳対象)の期間がある

第3号被保険者とは、第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の主婦や主夫が対象です。つまり、具体的な収入がない専業主婦(主夫)でも、この分割方法なら請求する権利が得られるのです。この分割方法の割合は一律0.5となっています。

2-3.合意分割と3号分割の両方を使った請求

3号分割の対象は2008年4月以降なので、それ以前に結婚している方は2008年4月以前の期間を合意分割で請求する必要があります。

3.年金分割の手続き

では、年金分割を行うにはどのような手順を踏めば良いのでしょうか。合意分割、3号分割それぞれの方法を解説します。

3-1.話し合いでの合意分割

合意分割において夫婦間の話し合いで済む場合、以下の手順で分割を行います。

①「年金分割のための情報通知書」の入手

まずは年金情報が記載されている「年金分割のための情報通知書」を入手する必要があります。この通知書は、年金分割のための情報提供請求書を作成して、それを年金事務所に提出することで入手可能です。情報提供請求書は日本年金機構のWebサイト内にある以下のリンク先でダウンロードできます。年金分割のための情報提供請求書はこちら

情報提供請求書には年金の個人番号、戸籍謄本の情報などを記載しなくてはいけないので、それらがわかる書類をあらかじめ用意しておきましょう。作成した情報提供請求書を年金事務所に提出すれば、後日、年金情報通知書が届きます。

②話し合い

年金分割のための情報通知書が届いたら、それをもとに夫婦ふたりの分割割合について話し合います。お互いに合意に達したら、その証拠である公正証書を作成してお互いのサインを記入すれば、合意成立です。

3-2.調停での合意分割

夫婦間の話し合いが合意に達しないで決裂してしまった場合、裁判所の調停に移行するケースもあります。調停はどのような手順で行うのでしょうか。

①必要書類の準備、提出

調停の場合、年金分割のための情報通知書、夫婦の戸籍標本に加えて、調停の申立書も準備しないといけません。申立書は最高裁判所Webサイトからダウンロード可能です。年金分割の割合を定める調停の申立書はこちら

申立先は、相手方住所を管轄する家庭裁判所になります。また申立てには収入印紙(1,200円)、郵便切手(800円)も必要です。

②調停による話し合い

申立をすると調停期日が決定されて、調停委員会による​​話し合いが行われます。調停は1回で済む場合もあれば2回目以降と続くケースもあり、合意が確認できれば調停は終了です。

3-3.裁判での合意分割

もし調停による話し合いも合意に達しないで決裂した場合、最終手段として家庭裁判所での審判に持ち込む方法もあります。裁判官が双方の主張を聞いたうえで公平な審判を下す流れです。この方法は、調停での話し合いを得たうえで行われるので、いきなり裁判に持ち込むのは不可能となっています。

裁判を行う際の手順は以下のとおりです。

①申立に必要な書類の準備および提出

準備する書類は、調停のときと同様の書類である申立書、年金分割のための情報通知書、夫婦の戸籍標本で、これらを家庭裁判所に提出して申立てをしましょう。

②審判

裁判も、調停と同様に、相手方住所を管轄する家庭裁判所で行われる仕組みです。審判の流れは次のようになります。

調停終了後に審判期日の決定→期日に審判開始→夫婦は決定事項に従い分割という流れです。

以上、合意分割は3種類がありますが、どれも分割が決定したあと、年金事務所に行って年金分割の手続きをする必要があり、この手続きをしないと年金分割は成立しません。

3-4.3号分割の場合

3号分割の場合、夫婦のうち一方が決める権限があるので、夫婦ふたりの合意を得る必要はありません。

分割手続きは、第3号被保険者に該当する専業主婦(主夫)が、年金事務所に請求手続きを行います。これだけで夫(妻)の了解なく強制的に年金記録は2分の1に分割される仕組みです。

年金事務所にて手続きをする際は、年金手帳、戸籍標本を持参しないといけません。合意分割のように情報通知書の入手および提出する必要がないので、合意分割よりは手間がかからず、手続きが完了します。

ただし、年金手帳や戸籍標本の提出がないと3号分割は成立しないので、しっかりと準備する必要があります。

4.年金分割の注意点

年金分割の種類や種類ごとの手続きについて解説しましたが、年金分割にはいくつかの注意点があります。その注意するべき点を事前に知っておくと年金分割はよりスムーズに進められるでしょう。では、年金分割の注意点とは何か、以下より解説します。

4-1.自営業は対象外

年金というとすべての年金が対象と思っている方もいるでしょうが、年金分割は、会社員の厚生年金、公務員や私立学校の職員における旧共済保険の報酬比例部分が対象となっています。したがって、厚生年金や旧共済保険のない自営業や個人事業主、フリーランスは、対象外です。

また対象となる期間は結婚してから離婚する期間となります。この場合、結婚期間が長ければ長いほど分割することで得られるものが多いですが、結婚してすぐ離婚した場合、婚姻期間が短いので、年金分割を請求したとしても多くはありません。

4-2.財産分与だけで納得してはいけない

「年金分割の一連の手続きが面倒だから」「早く離婚して別居生活をスタートさせたいから」という思いで、財産分与だけ済ませて年金分割を行わないケースもあるといわれています。

ですが、年金は老後の生活を支える重要な収入源のひとつです。離婚時は財産分与だけで満足せずに、年金分割の手続きもしっかりと行いましょう。

4-3.請求期限を確認しよう

年金分割の手続きには期限があり、離婚が成立した翌日から2年以内となっています。また離婚後に相手が死亡した場合、その日から1ヵ月以内が請求期限です。期限がありますので、なるべく早く手続きを済ませておきましょう。 

おわりに

離婚を考える際、一番の不安は離婚をしたあとの生活基盤をどうしていくかではないでしょうか。離婚をする前にしっかりと今後について検討するのが望ましいでしょう。年金においては、年金分割を活用するのもひとつの選択肢ではないでしょうか。

年金分割について、しっかりとその仕組みや種類、手続き方法を知っておくことが大事です。

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