株式投資は日中しか取引ができないのではないか、と考えている方も少なくないのではないでしょうか?実は、夜間でも株式投資の取引ができる「PTS取引」というものがあります。
「時間がとれる夜間に株式の取引ができたら良いのに…」
「昼間は仕事をしていて忙しいため株式市場に張り付いていられない…」
と考えている方も多くいるかもしれません。
PTS取引は『夜間取引』とも呼ばれ、証券取引所を介さずに株式投資の取引ができるシステムです。
本コラムではPTS取引についてメリット・デメリットも合わせてわかりやすく解説していきます。
1.PTS取引とは?
「PTS」とは「Proprietary Trading System」の略称で、日本語では「私設取引システム」と訳されます。証券取引所を介さず、現物取引だけではなく信用取引も行うことができる電子取引システムで証券会社が独自に開いている取引所です。
1998年からPTSが導入されるまでは、証券会社は上場株式の注文を必ず証券取引所につなぐことが義務とされていました。当初は夜間取引のみだったこともあり、「PTS=夜間取引」と認識されている方も多いかと思いますが、現在ではほぼ1日中開いているため「時間外取引」という認識に変わってきています。
株式の取引は、通常、証券取引所経由で行われるため、取引所が開いている時間帯でしか取引ができません。午前は9時〜11時30分(前場)、1時間のお昼休憩を挟んで午後は12時30分〜15時(後場)となり、15時になるとその日の取引は終了となります。
そのため、会社員の方は日中の仕事と重なってしまうとともに、日本時間の夜に海外市場で大きな動きがあった場合に取引を行うことが難しい状況にありました。
そこで、証券取引所に代わり、時間外取引の仲介をするために生まれたシステムがPTSです。PTS取引では8時20分〜16時00分まで、そして夜間取引として16時30分〜23時59分まで売買取引ができます。普通の株式取引では難しかった取引所の昼休みや決算発表後の15時以降も取引が可能です。
※PTS取引で売買できる時間、夜間取引ができない証券会社などはPTS取引を取り扱っている証券会社によって異なりますのでご注意ください。
2.PTS取引のメリット
PTS取引は大きく5つのメリットが挙げられます。
通常の取引時間外に取引が可能
PTS取引を活用すれば、通常の株式取引ではできない時間帯でもリアルタイムに取引ができる点が大きな特徴です。
証券会社にもよりますが、PTS取引では以下の時間帯で売買取引が可能となります。
デイタイム・セッション:8時20分〜16時00分まで
ナイトタイム・セッション:16時30分〜23時59分まで
(※証券会社によりナイトタイム・セッションは17時30分〜23時59分までの場合もあり)
昼間にお仕事をしていてなかなか時間が取れなかった方や、学校があるという方は日中にまとまった時間を確保することが難しい方が多いでしょう。そういった方々でもPTS取引を利用すれば、空いた時間を活用して取引が可能となります。
時間外取引ができるのは、PTS取引の大きなメリットのひとつであるといえます。
呼値の単位が細かい
株式を売買する場合には、一般的に100株単位で売買単位が統一されています。1株の株価によって売買する際の価格の刻み幅が決まっているのですが、これを「呼値」と呼びます。
東京証券取引所などの取引所取引と比べると、PTS取引では呼値の10分の1〜1,000分の1といったより細かい売買注文が可能です。(TOPIX100構成銘柄である場合を除きます)
取引所取引に比べて、より思い通りの取引ができるのも魅力のひとつです。
売買手数料が安い
取引所取引よりも、売買手数料を安く設定している証券会社もあります。通常の時間に取引を行うよりも安くなるのがPTS取引のメリットです。
PTSを利用した方が取引所取引よりも有利になることがあることを覚えておくと良いでしょう。
信用取引が可能
信用取引とは、担保として預けた資産の最大約3.3倍までの額で大きなレバレッジをかけながら取引することです。
PTS取引でも信用取引が行えることで、自己資金が少なくても始めやすい点はメリットといえるでしょう。しかし、大きな利益を狙える分リスクもありますので注意が必要です。
信用取引についての基礎知識はこちらのコラムをぜひ合わせてご覧ください。
重要指標が発表された後にすぐ対応できる
PTS取引を利用すれば、取引時間外に起きたニュースや決算情報が出た際にすぐに対応することができます。重要指標が発表されたあとにもすぐに取引をすることも可能です。
夕方〜朝に取引ができることで、急な情報にも対応できるのはメリットといえるでしょう。
3.PTS取引のデメリット
PTS取引には多くのメリットがありますが、一方でデメリットもいくつか存在します。
流動性が低い
PTS取引は全ての証券会社で取り扱っているわけではなく、PTS市場では取引参加者がまだまだ少ないという特徴もあります。
そのため、証券取引所に比べると、取引量が少ないため流通している証券の数が少なく、注文を入れたとしても取引が成立しないこともあるので注意が必要です。特に夜間取引の場合はその傾向が多くなります。
また、PTS取引はあくまでも私設取引システムのみでの取引のため、PTS市場のみの気配情報を見ると値が大きく飛んでいる場合も多くあります。15時以降の時間外取引では気配情報をきちんと確認した上で注文を出す必要があるのです。注文したいと思っていた価格と売買価格の大きなズレには注意してください。
注文方法が少ない
株式の注文方法には、「成り行き」「逆指値」などいろいろあるのに比べて、PTS取引では指値注文のみとなります。
前述したように参加者が少ないこともあり、なかなか希望する価格での取引が成立しづらくなったり、取引量が少ないと約定できないケースもあります。
非対応の銘柄がある
PTS取引では東証1部・2部、東証プライム市場・スタンダード市場・グロース市場、JASDAQに上場している銘柄が取引可能となります。しかし、現状では外国株・ETFは対応銘柄は少ないです。
地方取引所のみで上場している銘柄には対応していないことも多くなっています。しかし、これからPTS取引での取扱銘柄が増えていく可能性はあるため、今のうちに口座開設だけでもしておくのはいいでしょう。
おわりに
PTS取引は、メイン市場がクローズしたあとの時間外でも取引できるということもあり、昼間は働いていてなかなか取引を行うことができないという方に最適なサービスです。
本コラムを参考に、メリット・デメリットをしっかり理解した上でご自身の資産運用の手段のひとつとして取り入れてみてはいかがでしょうか。
少しでも今回の内容が参考になりましたら幸いです。
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