保険についてもっと知ろう(その3)

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保険についてもっと知ろう(その3)

保険についてもっと知ろう」の前2回分はお読みいただけましたでしょうか。保険証券や契約のしおり(約款)といった保険の契約をすることによって交付された書類についてご認識いただいた上で、さらに理解を深めるためにこのコラムを読み進めていただけたらと思います。

1.保険とは

いきなりですが、これから保険に関していくつか質問をしていきます。ここで大事なのは、すぐに先に進んで答えを読むのではなく、まずご自身で答えを考えてみることです。それによって、ここでご説明することへの理解が深まると思います。 では、1つ目の質問です。そもそも、保険とは何なのでしょうか。あなたは説明できますか?

私が持っている辞書(三省堂の新明解国語辞典)では以下のように説明されています。

偶然の事故によって生じる損害を補償するために契約者に支払う金銭を定め、これに対し、あらかじめ一定の金銭を払い込む制度

また、保険法という保険契約に関する法律では、保険契約を以下のように定義しています。

当事者の一方が一定の事由が生じたことを条件として財産上の給付(生命保険契約及び傷害疾病定額保険契約にあっては、金銭の支払いに限る。以下「保険給付」という。)を行うことを約し、相手方がこれに対して当該一定の事由の発生の可能性に応じたものとして保険料(共済掛金を含む。以下同じ。)を支払うことを約する契約をいう

この定義を分かり易く説明すると保険契約とは以下になります。

保険契約とは

  • A.リスクが発生した場合に当事者の一方が金銭(=保険金)を支払う
  • B.もう一方の当事者がリスクの発生の可能性に応じて金銭(=保険料)を支払う
  • C.AとBをお互いに約束する

 私たちは生きている限り、困った事態に遭遇する可能性(=リスク)があります。経済的なリスクへの対応としては、自身でそのリスクを補填する(自己資金で賄う)、リスクとなることを行わない、リスクを他者に移転する、という3つが考えられますが、保険は3番目にあたるものです。遭遇するであろうさまざまな(経済的)リスクについて、それが起こった時に備え、経済的保障という選択肢を用意し、経済的保障を得るために、リスクの発生の可能性に応じた保険料を支払うのが保険ということです。

2.加入している保険の数

 2.加入している保険の数

 さて、次の質問です。あなたはいくつの保険に加入していますか?

給与所得者の人であれば、年末調整の保険料控除申告欄に記入した保険を思い出しながら数を数え、「○個」とお答えになられるかもしれません。それはある意味では正解ですが、ここでの質問の意図としてそれは正解ではありません。「どういうこと?」と思われる人が多いかと思いますのでご説明します。

給与所得者の人であれば、給与明細を見てください。毎月の手取り額しか普段見ていないという人がいらっしゃるかもしれませんので、この機会によく見られることをおすすめします。給与明細は大きくは「勤怠」、「支給」、「控除」の3つの項目に分類されます。このうち、「控除」の欄、すなわち給与から天引きされるものの欄を見ると「○○保険」と記載されたものを見つけられると思います。これらは一般に「社会保険」といわれる公的保険です(ただし「団体保険」は除きます)。

公的保険とは、国や地方自治体といった公的機関が運営する保険です。日本国憲法第25条1項には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定されています。社会科の授業で習ったことを思い出された方もいらっしゃるかと思いますが、この条文の精神の元、国民に最低限度の生活を保障するために、リスクに備えるものとして公的機関が運営しているのです。逆にいうと、公的保険(社会保険)だけではさまざまなリスクに備えることができないため、公的保険では充分ではない部分を補うのが民間保険といえます。

公的保険には5つの種類があります。健康保険、年金、介護保険、労災保険、雇用保険です。いずれも強制加入ですが、働き方や年齢などそれぞれの状況に応じて加入する保険や受けられる給付内容は異なります。例えば事業主や役員は「労働者」ではないため「労災保険」の対象ではありませんし、自営業者は雇用されていませんので「雇用保険」の対象ではありません。

少し意地悪な質問でしたが、ここで意図したことは、「保険」というと民間の保険会社が運営している民間保険のことと考えがちですが、保険には公的保険もあることを認識していただきたいということです。給与所得者以外の人は、預金通帳または貯金通帳(さまざまな費用などが引き落としされる口座の通帳)を見てください。「お取引内容」という欄に、保険会社名以外で公的保険としてご説明したもののうち何が記載されているか(どういうものが引き落とされているのか)確認してください。

 「あなたの資産、大丈夫ですか?」と題した一連のコラムの中で、「現状把握」、「目的地」、そして「リスク管理」が資産形成をするにあたり大事だということをご説明しましたが、この「現状把握」の「支出」という部分においては公的保険のことにも目を向ける必要があります。いくら支払っているかということと同時に、その支払いによってどのようなリスク対策がなされているかということを認識するということです。例えば、先程「事業主や役員は『労災保険』の対象ではない」とご説明しましたが、事業主や役員の立場にある人は仕事中や通勤中に事故や災害などに巻き込まれた場合労災保険が適用されないというリスクがあることが分かります。したがって、民間保険でこのリスクをカバーする必要がある、ということが認識できるのです。

3.共済

さて、突然ですが、「共済」という言葉を見たり聞いたりされたことはありますでしょうか。このコラムをお読みくださる人の中には、「共済」に加入している、という人もいらっしゃるかと思います。

それでは質問です。

  • 「共済」とは何でしょうか?
  • 「保険」と同じものでしょうか?(同じでないとすると何が違うのでしょうか?)

2つ目の質問をご覧になられて、「保険と共済って違うの?」と思われた人もいらっしゃるのではないでしょうか。共済に加入している給与所得者の人であれば、年末調整の保険控除申請欄に加入している共済を記入されるでしょうから、このように思われるのも理解できます。以下「共済」についてご説明します。

3-1.共済とは

そもそも「共済」とはどういう意味でしょうか。辞書で引いて意味を確認してみてください。私が持っている辞書(三省堂の「新明解国語辞典」)では、「ある団体に属する人たちが互いに利益を受けるためにお金を出し合って何かをすること」と解説されています。

共済を運営するのは協同組合です。生協(生活協同組合)という言葉を見たり聞いたりされたことはあるかと思いますが、この生協は協同組合の一種です。協同組合とは、共通の目的をもった人たちが、その目的を達成するために組織した相互扶助組織のことをいいます。

すなわち、

共済とは

  • 偶然に発生する事故によって生じる損失に備えて相互扶助組織(=協同組合)の組合員が金銭を出し合い
  • その資金によって事故が発生した際に金銭を給付する事業

が協同組合保険であり、このことを一般的には「共済」と呼んでいます。都道府県民共済、こくみん共済coop(=全国労働者共済生活協同組合連合会。全労済)、コープ共済連、JA共済は4大共済といわれています。

3-2.共済と保険との違い

3-1の説明では、共済と保険の違いは分かりにくいと思いますので、共済の特徴をご紹介します。これにより保険との違いがお分かりいただけると思います。

 ・加入条件

共済に加入するには組合員になる必要があります。組合員になるには出資金を出す必要があり、都道府県民共済の場合は200円です。また、共催により加入できる条件があります。例えば都民共済に加入できる条件は、東京都内に在住または勤務していることです。つまり、共済は特定の資格を持つものに限定して提供される保険、ということです(ただし、協同組合によっては一定の範囲で資格保有者以外にも加入を認めています)。これが保険との相違点になります。

 ・団体の特性

保険の場合の「保険料」にあたるものを共済では「掛金」と呼びます。共済は、加入者(=組合員)にできるだけ負担が掛からないようにサービスが提供されるため、掛金は保険に比べ一般的に安く設定されており、掛金は一律の場合が多いです(保険の場合は例えば年齢によって保険料の設定が異なります)。また、毎年度の決算において余剰金が生じた場合は、余剰金が還元されます(還元された余剰金のことを「割戻金」といいます)。

掛金が安いことの裏返しとして、保障金額は保険に比べて少ないですし、掛金が一律であることの裏返しとして保障設定の自由度が低く手厚い保障を付けられない(カスタマイズしづらい)ということも挙げられます。

・制度

共済の運営主体である協同組合のうちJA共済は農業協同組合法に基づくもので農林水産省が監督官庁、他の3つの共済は消費生活協同組合法に基づくもので厚生労働省が監督官庁です。一方(民間)保険は保険業法に基づくもので金融庁が監督官庁となります。

おわりに

分かっているようで意外と分かっていないということは色々ありますが、保険もその1つだと思います。考えてみれば、人生においてトータル的にはそれなりの金額を支払っていることになるにもかかわらず、その実態をよく知らないのは保険くらいではないでしょうか。ご自身が支払っているものについて知る、という点でもしっかり保険について学んでいただけたら幸いです。

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