ウクライナ情勢が予想外に長引いている影響や、円安、アメリカの金利上昇などで、株価は急落したり持ち直したりして、投資家が一喜一憂する状況が続いています。そもそもこの2年間はコロナショックで株価がずっと不安定でした。
株が安い今こそ、一獲千金を夢見て「投資を始めるチャンスだ」という方もいますが、実際はどうなのでしょうか?今回は、不安定な時期の投資との付き合い方についてお話しします。
1.私の黒歴史
最初に、株価が安いときに飛びつくとどうなるのか、私の実体験をお話しします。2009年にJALが倒産すると騒がれていたとき、株価は何と1株9円にまで下がっていました。あのような大企業で数円なんて、ビックリしました!
他の投資家さんも大勢買っていたので、「これは歴史上、すごく貴重な経験なんだろうな」と私は迷わず5,000株買いました。
株価は10円になったり11円になったり、大きく変動していました。最初は数万円単位の利益を生んでいたので、つい調子に乗ってどんどん買い足してしまったのです。私は仕事でJALの飛行機をよく利用していたので、「こんなに大きな会社がつぶれるわけない」と信じていました。
ところが、忘れもしない2010年1月19日、JALが会社更生法を申請したという報道が流れたのです。慌てて証券会社の自身の口座を見ると、マイナス100万円の文字が出ていました……。JALの銘柄もサイトから消えていました。
あまりのことに、私は何が起こったか分かりませんでした。株券で買っているわけではないので、「株が紙切れになる」という実感が湧かなかったのです。超大企業でも上場廃止になることはあるのだと、この時身をもって知りました。
一度で懲りずに、私はその後も同じような失敗を何度か繰り返してしまっています。
これは株価が安かった例ではないのですが、大塚家具のお家騒動があったときに一時的に株価が急激に上がって、それに便乗する投資家が増えました。私も、「これはパフォーマンスじゃないかな。この一族はこれに便乗して、自社の株価を上げようとしてるんじゃないかな」と推測して、その流れに乗ってしまったのです。
そうしたら、あれよあれよと下がって何十分の一になってしまいました。
もう売ろうと思った時には、時すでに遅し。実際に、新宿の大塚家具に何回も足を運んで、創業者の娘さんの久美子社長や店内の様子を見たりしたのですが、元の株価に回復するのは厳しいと判断して手放すことにしました。このときも100万円ぐらいの損失を出しました。
さらに、エアバックのタカタもアメリカで事故が起きて、リコールが始まった時期に買いました。エアバッグがないと車は走らないし、タカタのシェアは大きかったので、持ち直すか、別の会社が助けてくれるだろうと思っていました。ところが、株価は再生するどころか再起不能な状態になって、泣く泣く損切りしました。
この3つに共通するのは、「ハッピーマネーのセオリーに当てはまらないことをしてしまった」ということです。好きでも何でもない会社の株を買ってしまった。ファンダメンタルやテクニカル(相場を分析する時の2つの方法)をしっかり分析せず、コツコツ投資どころかギャンブルのような賭けをしてしまった――それだと幸せになれないのだと、投資の神様が教えてくれたのかもしれません。
2.株の初心者は今こそ要注意の時期
2020年の3月はコロナショックで世界中がパニックになり、株価が暴落した時期です。実は、このころは世界的に証券会社の新規の口座開設数が増えました。リーマンショックの後にもこの現象はあったようで、「株が安い今こそ始めよう」と思う個人投資家が多いようですね。
株式投資は安く買って、株価が上がったところで売れば利益が出るというシンプルな投資です。その基本に沿って考えると、株価が暴落している時こそ「買い時」だということになります。株価の底値を経験することはなかなかないですし、株価がちょっとでも上がったタイミングで売ったら利益は出るので、株の初心者でも利益を出しやすい時期かもしれません。
ただ、「ハッピーマネー」をモットーにしている私としては、背中を押すのをためらいます。
自身では底値のつもりでも、そこからさらに下がる場合もあります。上がり始めて「まだまだ行ける!」と思っていたら急に暴落するかもしれません。市場が不安定な時期は投資に慣れている人でも読みきれないので、メンタルに自信がある人以外は様子見をしていた方が良いのかな、と思います。
もし今のタイミングで株を始めたいのなら、「試しに少しだけやってみる」程度で抑えておくのをおすすめします。それでうまくいったら、少しずつ投資金額を増やしていけば良いと思います。
3.株価は世界的に上がり続けている
私が株式投資を始めた2005年は好景気でした。小泉純一郎政権で郵政民営化が決まった年で、日本が変わるという期待感で世の中が元気だった記憶があります。当時の日経平均株価は1万6000円台。それが2006年には1万8,000円台まで値上がりしたので、初心者がスタートするのにちょうど良いタイミングだったのです。
私が初めて買ったのは東京ドームの株ですが、何もしなくても1ヵ月後には利益が出ていました。それから投資額を増やして順調に利益を出していたのですが、2007年にサブプライムショック、2008年にリーマンショックが起きてガクンと下がりました。グングン落ちていく株価を見ながら、「どうしよう」と青くなるばかり。売るタイミングを逃して、塩漬けにするしかありませんでした……。
でも、このとき売らなかったのが結果的には吉と出て、5年後に株価が上がったタイミングで売って、利益を出すことができました。だから良かったのですが、経験がないまま株価暴落のタイミングで始めていたら、どうなっていたかは分かりません。
「それなら、いつ始めたら良いの?」と思う方もいるかもしれませんね。私が今まで株をやってきた感覚として、5、6年に一度ぐらいのペースで「●●ショック」が起きて株価は大きく下がりますが、その後復活します。リーマンショックの年の日経平均株価は一時7,000円台まで落ちましたが、翌年には10,000円台まで回復しています。
また、世界の株式は一時的に落ち込んでも、その後に落ち込む前以上に値上がりし、成長し続けています。日本も経済成長が20年間止まっているといわれているものの、今は2000年よりも株価ははるかに上がっています。ですので、基本的に株価は上がっているということです。株はずっと動いています。投資はいつでも始められるので、慌てずに世の中が落ち着いてきた段階でスタートしても、「ハッピーマネー」を実現できるのではないでしょうか。
4.投資は「休み時間」が大切
株式投資の世界には、「売るべし 買うべし 休むべし」という格言があります。
「売り」と「買い」で株式投資は成り立ちますが、時には「休む」ことも大事だという意味です。ウォール街の「疑わしいときは何もするな」というのも同じ意味の格言です。投資の経験を積めば積むほど、この「休む」が一番大事で、でも一番実行するのが難しいことだな、と感じるようになりました。
株価が落ちていくのを見ると、「何とかしなきゃ」とどうしても焦ってしまいます。それに、自身が持っていない銘柄の株価が大きく動いているのを見ると、「今が買いかも?」とつい欲が出てしまう。それを堪えて「何もしない」のが、自分を守ることになる場合があるのです。
だから、私は今のような不安定な時期は、もちろん暴落を機に仕込む銘柄もありますが、あまり細かく株価をチェックしないようにしています。自身が持っている銘柄の株価をさっと確認するぐらいで、すぐに証券会社のアプリを閉じてしまいます。
予期せぬ事態が発生するなどして情勢があまりにも不安定なときは、無理に取引せずにいったん休みましょう。その間は株の勉強をする時間にあてて、ご自身の資産を守るためのスキルアップの時間として有効活用することをおすすめします。
世の中の状況に関わらず、ひとつの売買が終わったら一歩下がって世間の流れをゆっくり眺める時間を取るのも、「ハッピーマネー」を続けるコツの一つ。その間に心身のコンディションや投資資金を整えて次の機会に備えましょう。
5.不安定な時期の過ごし方を見つけましょう
実は、私はコロナショックが起きたばかりのころ、リーマンショックのときにオロオロして何もしないまま終わってしまったのが悔しくて、ちょっとだけナンピン買いをしました。
前回も少しお話ししましたが、ナンピン買いは持っている銘柄の株価が下がったときに売らずに、買い増しをすることです。そうすると持っている株の数が増え、取得した銘柄の単価の平均値が下がるので、株価が上がって来てから売れば、ナンピン買いする前よりも利益が出る可能性があります。それは、こういう不安定な時期の乗り切り方の練習を兼ねて試してみました。ただ、今は個別の銘柄をいじるのは少なくして、投資信託やETF(株価などの指数と連動した投資信託)などの選択肢を考えるようになりました(これは改めてお話しします)。
私は投資が趣味であり、仕事の一部でもあるので、あれこれ試してみています。でも、2・3年塩漬けにするつもりで投資から一切離れてみるのも、上手な付き合い方だと思います。
おわりに
コロナショックでも、「まさか」と思っていた企業が倒産するケースが相次ぎました。だから、本当に企業の動向は素人では読めません。世の中の情報に振り回されず、不安定な時期こそ冷静になりましょう。
投資は好調なときもあれば、不調なときもあるものです。人生も株も、常に山あり谷ありです。不調なときほど、どうすればうまくいくのか、次はどうすれば良いのか? など、とても身に付く時期です。その時々の過ごし方をご自身なりに見つけられれば、長く人生を支えてくれるパートナーになってくれるでしょう。
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