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【そのリフォームちょっと待った!】親の家を子がリフォームする場合の注意点、対策を解説

北岡 修一(東京メトロポリタン税理法人グループ代表/税理士)

監修者

東京メトロポリタン税理法人グループ代表/税理士

北岡 修一

西新宿にオフィスを構え、法人顧問の他、相続・相続税対策、事業承継、不動産に関する税務等に力を入れている。グループの不動産コンサル会社と連携し、具体的な対策から税務まで一貫したサービスを行っている。

1.親の家を子がリフォームして同居する

親の家を子がリフォームして同居する

親の老後の面倒や相続税対策を考えて、実家に戻って親と同居しようということは、よくあることですね。

親が持つ家に同居することにより、その敷地については相続税の計算の際に小規模宅地特例を使うことができるようになります。この小規模宅地特例は、親の居住用宅地について330㎡まで80%もの評価減をすることができます。

たとえば5,000万円の評価額の土地であれば、4,000万円が評価減され、1,000万円の評価額となります。その分、相続税も大幅に減らすことができます。

ただ、親と同居するには家が老朽化し過ぎている、狭くて使い勝手が悪い、居住部分を別々に分けたいなど、リフォームや増改築をしなければ住めないケースも多いと思います。

その場合、親に十分な現預金があれば、親が費用を出すことにより相続税対策にもなりますが、親に資金がない場合や、資金があっても子が自分たちの住む部分は自分が費用を出したい、というケースもあるでしょう。

このように、親の家のリフォーム費用を子が出す場合、何もしなければ税務上は、子が親にその資金を贈与したことになります。あくまでその建物は親の所有物であるため、それに対するリフォーム費用は親が負担すべきものです。

それを子が負担したために、贈与となってしまい贈与税がかかってきます。何とも理不尽な気もしますが、理屈からいえばそうなりますね。

では、そうならないようにするためには、どうしたらよいのか、以下解説していきます。

2.リフォーム前に親から子に建物(持分)を移す

リフォーム前に親から子に建物(持分)を移す

親の建物であるために、子が負担するリフォーム費用が贈与になるのであるから、リフォームをする前に、子に建物の全部または一部(持分)を移してしまえば良いのです。そのための方法としては、譲渡または贈与が考えられます。

譲渡の場合は、時価で行うことが原則となります。ただし、固定資産税評価額で親から子に譲渡した場合でも、贈与税が発生することはありませんので、それも可能です。古い建物であれば固定資産税評価額はかなり低くなっているはずです。

子がリフォーム費用をすべて負担するのであれば、建物のすべてを子に移した方がやりやすくなります。親が建物の一部を所有していれば、やはり子から親への贈与の問題が生じるからです。

なお、親は建物の譲渡をするわけですから、譲渡所得税の対象になります。ただし、建物の譲渡価格は未償却残高以下ですることが多いですので、譲渡所得税が発生することはないでしょう。譲渡所得税が発生しないように譲渡価格を決めれば良いのです。

また、親の建物を子に贈与する方法もあります。通常の贈与(暦年課税)の場合は、110万円までは贈与税がかかりません。贈与は110万円の非課税枠内にして、それを超える部分は譲渡する、という方法もありますね。贈与の場合の建物の価格は、固定資産税評価額によることになります。

さらには、相続時精算課税を使って子に建物を贈与する方法もあります。相続時精算課税は2,500万円まで贈与税なしで親から子に贈与することができます。ただし、贈与した財産は相続時に相続財産に加算して、相続税で精算する必要があります。

子が負担するリフォーム費用について、住宅ローンを利用する場合には、子が建物の全部または一部を持っている必要があります。他の人が所有する建物に住宅ローンを使うことはできないからです。したがって、住宅ローンを使うような場合には、リフォーム前に建物の所有権を移転しておく必要があるわけです。

3.リフォーム後に親から子に建物(持分)を移す

リフォーム後に親から子に建物(持分)を移す

リフォーム前に親から子に建物の全部または一部を移さない場合は、リフォーム後に移す方法もあります。それは建物の価格(未償却残高)と、リフォーム費用の金額を勘案して、どのくらいの持分を親から子に移したら良いかを計算して、その持分を移す方法です。

 具体例で計算してみましょう。

<例>

 ①家の建築費   3,000万円(親が建てた)
 ②減価償却費   2,000万円(たとえば、耐用年数30年で、20年経過した)
 ③未償却残高   1,000万円(①-②=その時点の価格)
 ④リフォーム費用 1,000万円(子が負担する)
 ⑤子に移転する持分 ④1,000万円÷(③1,000万円+④1,000万円)= 50%

親が所有する自宅建物のリフォーム前の価格は、③の1,000万円です。その建物に子が、④リフォーム費用1,000万円を負担します。③と④を合わせると2,000万円となり、それがリフォーム後の建物の価格ということになります。そのうち子は④の1,000万円を負担していますので、ちょうど50%となり、その持分を親から子に移せば良いことになります。

この場合、親は子に建物を移すことになり、税務上は、建物の譲渡となります。では、この場合の譲渡所得はどうなるのでしょうか?上記の例で譲渡所得を計算してみましょう。

 ①譲渡収入  500万円(子が負担してくれたリフォーム費用1,000万円×持分50%)
 ②取得費   500万円(建物の未償却残高1,000万円×譲渡した持分50%)
 ③譲渡所得   0円(①-②)

子が負担したリフォーム費用1,000万円のうち50%の500万円は、本来、親が出すべきものです。親は建物の持分50%を所有しているからです。この親が出すべき金額を、建物の持分50%を引渡すことにより弁済している、という考え方になります。したがって、この場合の登記原因は「代物弁済」ということになります。

少しややこしい、わかりにくい手続きかも知れませんが、このように費用の負担と所有権の移転を明確にしておくことにより、税務上も問題なく、子が親の建物のリフォーム費用を負担することができることになります。

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