事実婚の子どもの親権はどちらにある?父親が親権を持つ方法や3つの留意点を解説

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事実婚の子どもの親権はどちらにある?父親が親権を持つ方法や3つの留意点を解説

事実婚の夫婦に産まれた子どもの親権は、出生時には母親にあります。所定の手続きを経れば父親でも持てますが、父親が親権を持つための手続きや考え方は複雑です。「認知すれば親権を持てる?」「子どもの苗字はどうなる?」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

そこでこのコラムでは、以下の内容について分かりやすく解説します。

  • 親権とは何か
  • 事実婚の子どもの親権はなぜ母親にあるのか
  • 事実婚で父親が親権を持つための手順
  • 事実婚の親権に関する注意点

ぜひ参考にしてください。

1.親権とは子どもを監護・教育する権利義務

民法820条で「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」と規定されています。親権は「子どもを育児する権利と義務」と理解しておくと良いでしょう。そのほか法律で定められている親権の主な内容(民法820条~833条)は、以下の表のとおりです。

居所の指定(民法821条) 子どもが住む場所を決められる
懲戒(民法822条) 子どもに監護及び教育の範囲内で戒めの制裁を与えられる
職業の許可(民法823条) 子どもが仕事に就くことを許可、制限できる
財産の管理及び代表(民法824条) 子どもの財産を管理し、契約行為の代理人となれる

参照元:e-Govポータル 民法 第四編 親族 第四章 親権 第二節 親権の効力

婚姻関係のある夫婦の場合、子どもの親権は父母両者にあります。一方で、婚姻関係のない事実婚の夫婦は、父母どちらか一方しか親権が持てません。このことから、事実婚の夫婦は実際には共に育児をしていたとしても、法律上はいずれか一方にしか「子どもの教育や住まいなどを決める権利や義務」はありません。

仮に事実婚を解消することになった場合には、親権をどちらが持っているかということが、さらに重要になります。

親権のあり方については民法818条に規定されており、父母が共に親権を持つことを「共同親権」、父母のどちらか一方が親権を持つことを「単独親権」といいます。外国では、事実婚夫婦の共同親権を認めている国が多いため、日本においても親権のあり方について議論されているのです。

2.事実婚の子どもの親権は母親にある

事実婚の場合、親権は母親にあります。なぜなら、子どもを出産した事実から、母子が親子であると認められるからです。親権を持つ大前提には、父母と子どもの間に法的な親子関係が求められます。婚姻関係のある父母と違い、事実婚の父母が子どもと法律上の親子になるためには「認知」という手続きが必要です。

認知については、民法779条において「非嫡出子は父母が認知できる」と規定されています。「非嫡出子」とは、婚姻関係のない夫婦から産まれた子どものことです。逆に婚姻関係のある夫婦から産まれた子どもを「嫡出子」といいます。非嫡出子であっても認知をすることで、血縁関係のある実親子関係であることを、法的に認めてもらうことができるのです。

民法の規定によれば、父母どちらも、子どもと法律上の親子関係を結ぶためには認知が必要です。しかし、最高裁判所の判例(昭和37年4月27日民集16巻7号1247頁)により、母親は分娩の事実から親子関係があることを確認できるため、認知の必要がないとされています。そのため、子どもと親子関係があるのは母親だけです。父親は認知の手続きをしない限り、子どもとの間に父子関係はなく親権も発生しません。

3.事実婚で父親が親権を持つ手順

母親とは異なり、父親が親権を持つためには、法律的な手続きや父母間での同意が必要となります。ここでは、必要な2つの手順を説明します。

3-1.子どもを認知する

まず、父親と子どもが親子であることを、法律上の手続きで認めてもらわなければなりません。分娩の事実から親子関係が認められている母親とは違い、父親は「認知」の手続きが必要です。父親が自らの意思で子どもを認知するためには、以下の3つの方法があります。

  • 胎児認知
  • 認知届による任意認知
  • 遺言書による任意認知    

参照元:認知の方法 | 認知の種類と手続き方法「弁護士法人エース」

1)胎児認知

胎児認知とは、子どもの出生前に、母親の本籍地の市区町村役場に認知届を提出する方法です。届出には母親の同意が必要で、子どもの出生届が受理されたのちに、戸籍が書き換えられます。父親の健康状態等から、出生後に認知ができない場合に備えた方法です。

2)認知届による任意認知

子どもの出生後に、父親の本籍地または子どもの本籍地の市区町村役場に、認知届を提出する方法です。認知に母親の同意は必要ありません。子どもが成人している場合は、本人の同意が必要です。

3)遺言書による任意認知

父親が遺言書に認知の意思を残し、死亡後に遺言執行者が認知届を、母親の本籍地の市区町村役場に提出する方法です。子どもが未成年の場合、本人の同意は必要ありません。しかし胎児の場合は母親の同意、成人している場合は子どもの同意が必要です。

認知の方法には、母親や子どもの希望に反し父親が認知しない場合に、裁判所を通して認知を求める「強制認知」といわれる方法もあります。

参照元:e-Govポータル 民法 第四編親族・第三章親子・第一節 実子 第七百八十一条

3-2.父母で協議し父親を親権者と定める

次に、親権者として父親を指定する手続きが必要です。事実婚では、父母が共に親権を持つ「共同親権」は認められていません。父親を親権者に指定することは、同時に母親を親権者から外すことを意味します。このため、親権者を決めるための協議が必要です。親権者指定に関しては、民法第819条第4項にて規定されています。

協議で合意ができない場合、家庭裁判所に親権者変更調停の申立てができます。調停とは、家庭裁判所の調停委員(弁護士など)が両者の意見を聞いて、協議する場のことです。調停でも解決できない場合は、裁判官から結論を出してもらう審判で決着をつけます。

協議や調停の結果、父親を親権者に指定する場合、親権者変更届を父親の本籍地または所在地の市区町村に提出します。

4.事実婚の親権に関する3つのポイント

事実婚の親権に関して留意しておくべき点を3つ説明します。特に苗字や親権の取得によって生まれる権利義務については充分に理解しておくべきでしょう。

4-1.親権は子どもの戸籍にのみ記載される

父親が親権者となった場合、その事実は子どもの戸籍にのみ記載されます。親権者である父親の戸籍には記載されません。出生時、子どもは母親の戸籍に入っています。父親が親権者になったとしても、子どもが母親の戸籍に入っていることに変わりはありません。このため、父親の戸籍には、子どもの氏名が記載されていないのです。

父親がより親権者であることをはっきり示すために子どもの戸籍を変えたい場合は、子どもの戸籍の変更手続きをします。戸籍の変更は「子の氏の変更許可申立」を家庭裁判所に提出し、子どもの本籍地または父親の所在地の市区町村に届け出ることにより可能です。

4-2.親権と子どもの苗字には関係がない

子どもの苗字は、父親が親権者になったとしても、母親の氏のままです。事実婚によって産まれた子どもは、母親の戸籍に入っています。父親が親権を取得しても、子どもの戸籍が移ることはありません。

事実婚であっても、子どもが父母両者と同居している場合は、子どもの苗字が母親の氏であったとしても違和感はないでしょう。しかし、もし事実婚を解消することになった場合、子どもは親権者である父親と同居することになります。その際には、苗字を父親と同じにするために、戸籍を移すことも必要になるでしょう。

4-3.親権がなくても認知すれば扶養義務・相続関係は生じる

父親が子どもを認知している場合、親権がなくても扶養や相続に関する権利義務が発生します。父子両者の戸籍に親子関係が明記され、親権の有無にかかわらず、法律上の親子関係は成立しているためです。扶養義務と相続権の具体的な内容は、以下の表をご確認ください。

扶養義務 子どもに対しての扶養義務は特に「生活保持義務」といい、扶養者である親と同じ水準の生活を保証する義務のこと。
相続権 子どもは親の遺産を相続する権利がある。認知された子どもであっても相続順位は1位。

1)扶養義務

子どもに対する扶養義務は、特に強いものであると認識しておく必要があります。扶養義務は、一般に「生活保持義務」と「生活扶助義務」の2つに分けられます。生活扶助義務は、兄弟姉妹や成人した子どもに対する義務で、扶助義務者の余力の範囲で扶助をするものです。一方、生活保持義務は、より強い義務で扶養義務者と同水準の生活を保証しなければなりません。

もし事実婚が解消された場合でも、親権を持つ母親は父親に養育費を要求できます。このようなケースは、婚姻関係を持つ夫婦が離婚した場合と同様です。親権の有無とは関係なく、認知は法律婚の夫婦と同じ権利と義務が発生すると認識しておくべきでしょう。

2)相続権

相続権は、事実婚の場合は特に注意が必要です。婚姻関係のない妻または夫は、相続人になれないからです。このため事実婚の夫妻が他に婚姻関係や子どもを持たない場合、相続割合は認知した子どもが100%となります。認知された子どもであることにより、相続において不利になることもありません。

おわりに

事実婚の子どもの親権は母親にあります。父親が子どもの親権を持つためには、子どもと法的な親子関係を結ぶための「認知」と、親権を父親にするための「父母の協議」が必要です。事実婚の場合、父母両方が親権を持つことは認められていません。そのため、子どもの出生時に親権を持つ母親から、父親に移す手続きが必要になるのです。

また認知をすれば、親権がなくても父親と子どもの間には法的な親子関係が成立します。そのため、扶養や相続などの権利義務が発生する点も、しっかり押さえておきましょう。