2020年初頭から世界中で新型コロナウイルス感染症が大流行しました。その際、中小企業・小規模事業者に対してさまざまな支援策が講じられましたが、今回紹介するコロナ融資もそのひとつです。これ自体は支援策として一定の効果がありましたが、一方で返済に不安を感じる事業者も出てきています。
このコラムでは、コロナ融資が返済できない場合にどうすべきか、放置した場合に起きることも合わせて詳しく解説します。
- 帝国データバンクの調査によれば、コロナ融資の借入企業の約1割が返済に不安を感じている
- 通常の融資と同様、コロナ融資も返済できないと最終的には財産が差し押さえられる
- コロナ融資が返済できない場合は、追加融資を受けたりなど相応の対策を早めに講じるべき
- まずは返済に行き詰まらないよう、普段から資金繰りを意識した経営を行うことが大切
コロナ融資とは?
コロナ融資とは、新型コロナウイルス感染拡大の流行による中小企業・小規模事業者への支援策として打ち出された無担保で利用できる貸付制度です。政府が日本政策金融公庫や商工中金および各民間金融機関へ利子補給を行い、3年間にわたって実質的な利払いをゼロにするという特徴があります。
コロナ融資自体は支援策として一定の効果がありましたが、長引くコロナ禍と最近の物価高騰もあり、返済が重荷になるという新たな問題も出てきました。帝国データバンク「新型コロナ関連融資に関する企業の意識調査」(2023年8月)によれば、8割超の企業がすでに返済を開始している一方、借入企業の12.2%が「返済に不安」と回答しています。
コロナ融資の返済ができない場合に起こる4つのこと
万が一、コロナ融資の返済ができなかった場合は、以下の4つのことが起こりますので、時系列でみていきましょう。
【コロナ融資の返済ができなかった場合に起こる4つのこと】
- 督促状が送付される
- 損害遅延金が発生する
- 一括返済になる可能性がある
- 財産が差し押さえられる
督促状が送付される
返済をスタートしたものの資金不足などを理由に返済しない場合、翌営業日または翌々営業日に担当者から督促の電話が入ります。電話があっても無視した(何もできなかった)場合、数日中に督促状が郵便で送られてくるはずです。
督促状に法的な拘束力はないため、無視したとしてもそれだけで財産の差し押さえなど法的手段が取られるわけではありません。ただし、督促状を送っても何の応答もなかったり、返済もされなかったりした場合、金融機関から催告書が送られてきます。
そして、消滅時効の完成を猶予させるために、その後は内容証明郵便が送付されてきます。催告書が送られてきた後は、法的手段に移行すると考えましょう。
損害遅延金が発生する
コロナ融資も、個人でお金を借りる場合と同様、返済日に遅れると遅延損害金が発生します。つまり、本来の返済額に上乗せして、遅れたことに対する罰金=遅延利息を支払わなくてはいけません。
遅延損害金の利率は借入先によって異なりますが、日本政策金融公庫の場合は年8.7%です(令和5年4月1日から令和6年3月31日までの貸付けの場合)。例えば、100万円の返済を1年間滞納すると、8万7,000円が遅延損害金としてかかります。
一括返済になる可能性がある
督促状や催告書を送ってもコロナ融資が返済されない状況が続いた場合、残債・利息・遅延損害金の一括返済が求められます。これは、「期限の利益」を喪失するためです。
本来、お金を借りていた(融資を受けていた)としても、契約で定められた期限までは返済する必要がありません。これを期限の利益といい、借金の分割返済が可能である根拠でもあります(民法136条の1第1項)。
しかし、延滞などの契約違反があった場合、期限の利益は喪失してしまいます。そうすると、分割返済ができなくなるため一括返済を求められる仕組みです。
財産が差し押さえられる
支払督促が送付され、一括返済を求められても何もしなかった(できなかった)場合、最終的には財産が差し押さえられます。仮執行宣言付支払督促の申立てがなされるためです。
これが債務者に送達されてから2週間以内に異議の申し立てがなかった場合、確定判決と同一の効力を有するようになります。つまり、強制執行ができるようになり、財産の差し押さえに至るという流れです。
ただし、債務者が所定の期間内に異議申立てをすれば、裁判官が改めて債権者の請求を認めるかの審理に入ります。言い分がある場合は、意義申立ても視野に入れて動きましょう。
コロナ融資が返済できない場合の6つの対処法
コロナ融資が返済できない場合、他の方法で資金調達をするなど、相応の対処が必要です。ここでは、現実的な対処法を6つご紹介します。
【コロナ融資が返済できない場合の6つの対処法】
- 追加融資を受ける
- 融資以外で資金を集める
- 資本性借入金へ乗り換える
- リスケジュールを行う
- 債務整理を実施する
- 法人破産する
追加融資を受ける
現在の借入に加え、追加で融資を受けることができれば、手元の資金は増やせます。ただし、すでにコロナ融資の返済ができなくなっている以上、審査に通らない可能性は往々にしてあるので注意が必要です。
また、毎月の返済額が増えるため、延滞をするリスクもその分上がります。将来の特定の時期にまとまった入金があるなど、現在のコロナ融資分も含め返済できる見込みが立つかを踏まえて、融資を受けられないか交渉しましょう。
銀行から追加融資を受けたい場合は、下記の記事も合わせてチェックしてください。
融資以外で資金を集める
クラウドファンディングやファクタリングなど、融資以外の方法で資金調達をすることも検討しましょう。
クラウドファンディングとは、インターネット上のプラットフォームを通じて資金を募る調達方法です。返済の義務があるか、リターン(返礼品)があるかどうかによって融資型・購入型・寄付型に分類できます。
例えば、赤字だったり、融資の返済ができなかったりしても利用できる可能性はあります。ただし、プロジェクト自体に魅力がないとなかなか資金が集められず、プロジェクトが成立したらプラットフォーム運営企業に手数料を払わないといけないので注意が必要です。
(買取)ファクタリングとは、取引先への売掛金などの売掛債権を専門の会社(ファクタリング会社、ファクター)に売却して資金調達をする方法です。契約に関与する当事者の数により2社間ファクタリングと3社間ファクタリングに分類できます。
ファクタリングは、売掛債権があれば、自社が赤字だったり、融資の返済が滞っていたりしても利用できる余地があるのが大きな強みです。ただし、売掛債権の回収可能性が薄いと判断された場合は使えない点に注意しましょう。
ファクタリングについてさらに詳しく知りたい場合は、下記の記事も合わせてチェックしてください。
資本性借入金へ乗り換える
資本性借入金とは、銀行などの金融機関が財務状況を判断する際に、負債ではなく十分な資本性が認められる借入金のことです。
金融機関の融資審査においては自己資本として扱われるため、追加融資を受けやすいのが大きなメリットです。また、資本性借入金は長期の「期限一括償還」が基本なので、毎月返済を行う必要がありません。
一方でデメリットもあります。一般的な事業融資と比べた場合、利息は高くなりがちです。これには、資本性借入金が金融機関にとって回収可能性の低い商品であるという事情が関係しています。
また、手元資金に余裕ができたとしても、元金を分割払いで減らすことはできません。返済時に多額のキャッシュが流出するため、一気に資金繰りが悪化する可能性が出てくるので注意が必要です。
リスケジュールを行う
リスケジュールとは、借金の返済が苦しいとき、債権者に返済金額や方法の見直しをしてもらうことです。もともとは「計画を変更する」「予定や日程を組みなおす」という意味の言葉ですが、金融機関との関係では「一定期間約定返済額を減額する」などの返済条件変更を意味する言葉として使われます。
リスケジュールの大きなメリットは、資金繰りが楽になり、より不利な条件で新規借入をしなくて済むことです。一方、リスケジュールをする時点ですでに資金繰りに問題が生じている可能性があります。その原因を解決しない限り、リスケジュールは単なる延命措置に過ぎません。資金繰りが悪化している原因を突き止め、その原因に対する対策を講じないと、いずれは資金ショートなどより深刻な事態に発展するでしょう。
債務整理を実施する
債務整理とは、債務の減額・免除・支払い期間の調整などで借金問題を解決する方法です。法人の場合、以下のいずれかの方法で債務整理を行います。
民事再生 | 裁判所へ申立てをし、利害関係者の同意のもとで債務を一部免除してもらい会社の再建を目指す。 |
会社更生 | 裁判所へ申立てをし、利害関係者の同意のもとで債務を一部免除してもらい会社の再建を目指すことは民事再生と同じだが、株式会社のみが利用できる。 |
私的整理 | 裁判所を通さず、債権者と交渉して借金の減額を目指す。より細かくは任意交渉による私的整理と準則型私的整理にわけられる。 |
特別清算 | 会社法で規定されている株式会社を対象とした決算型の倒産手続き。会社とともに再建を消滅させるのが基本だが、より細かくは協定型・和解型にわけられる。 |
法人破産 | (後述) |
法人破産する
法人の廃業により、個人に借入金の返済が求められるような場合には、法人破産を検討する必要があります。つまり、裁判所が選任した破産管財人が法人の財産を処分し、債権者に配当する手続きです。財産が残っていたらすべて換価(現金化)したうえで債権者に対し平等に分配し、最終的には法人格自体が消滅します。
債務の負担を免れることができることに加え、取り立てからも解放されるのが大きなメリットです。ただし、法人格自体が消滅する以上事業の継続はできません。従業員も全員解雇することになります。
会社の経営者が法人の債務の連帯保証人になっている場合には、法人破産だけでなく、経営者の個人破産も必要になる点にも注意が必要です。
資金繰り表で借入金と財務状況をしっかり把握することが返済に大切
コロナ融資を含め、融資を受けても途中で返済に行き詰まる原因のひとつに、資金繰りの見積もりの甘さが挙げられます。
返済に行き詰まらないためには、現在の財務状況と借入金の状況を正確に把握することが大切です。過去の実績から資金繰り表を作成することで、無理のない返済計画を実現しましょう。また、手元資金が不足する可能性が出てきた時点で融資やそれ以外の方法を使い、資金繰りを改善することも重要です。
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おわりに
コロナ融資は、いわゆるコロナ禍において、中小企業・小規模事業者への支援策として大事な役割を担いました。多くの債務者が返済を開始できている一方、返済に不安を抱えている方もいるかもしれません。その場合に重要なのは「早めに次の一手を講じること」です。返済ができない状態を放置すると、最終的には財産が差し押さえられるなどさらに状況が悪化します。金融機関や税理士などの専門家とも相談し、対策を講じましょう。