信用保証協会とは、中小企業・小規模事業者の資金調達を円滑にするための公的機関です。同協会の保証付き融資を利用すれば、銀行などの金融機関が単独で行う融資(プロパー融資)に比べると資金調達がしやすくなっています。ただし、100%審査に通過できるとは限らず、断られることもあるので注意が必要です。
このコラムでは、断られる理由を踏まえつつ、信用保証協会の審査に通過するための対策について詳しく解説します。
- 信用保証協会はあくまで保証を行う機関であり、審査~融資~返済までを担当する銀行とは異なる
- 信用保証協会に融資を断られる理由は「返済できそうにないと判断されたから」
- 信用保証協会で融資を受けやすくするには「返済の見込みがある」ことを客観的に示すことが重要
- 信用保証付き融資の利用が難しい場合は、不動産担保ローンなど別の資金調達法も検討する
信用保証協会に融資を断られる理由で考えられるもの
信用保証協会に融資を断られるのには、相応の理由があるためです。審査落ちしても理由が開示されるわけではありませんが、考えられる理由をご紹介します。
【信用保証協会に融資を断られる理由】
- 業績が悪い
- 資金の使途が明確化できていない
- 自己資金が足りない
- 事業計画がずさんで返済能力が見込めない
- そもそも保証対象外の業種である
業績が悪い
わかりやすい理由として挙げられるのが「業績が悪い」ことです。売上高に対して利益が非常に少ない、もしくは赤字になっている場合、返済能力も乏しいと考えられます。返済能力が不安視される、つまり「貸しても返済できなくなる」と判断されるため、審査落ちになるでしょう。
資金の使途が明確化できていない
資金の使途が明確化できていない場合も、審査落ちの理由になるので注意が必要です。
事業資金を貸すために融資を行う以上、本当に事業に使われるのか確認できなくてはいけません。資金の使途があいまいだと、単に事業主の個人的な理由で借りる可能性が否定できないため、審査において不利に働きます。
自己資金が足りない
自己資金が足りない場合も、審査においては明らかなマイナス要因になります。事業の準備を計画的に進めていないと判断されるからです。
実務的にも、「一定額以上の自己資金があること」が信用保証の申し込みにあたっての条件のひとつに掲げられているケースが多いので、注意しましょう。
事業計画がずさんで返済能力が見込めない
事業計画がずさんで返済能力が見込めない場合も、融資を断られる可能性が非常に高いです。
例えば、事業計画書に記載する「損益計画」の「売上高」欄に、根拠のない大雑把な金額を記入していた場合などがこれに該当します。事業計画書を作成したら、税理士など専門的な知識を有する第三者にチェックしてもらうと良いでしょう。
そもそも保証対象外の業種である
営もうとするビジネスが、保証対象外の業種だった場合、審査落ちの対象になります。
例えば、東京信用保証協会の場合、以下の業種は保証対象外です。
- 農林・漁業
- 風営法第2条第5項に規定する性風俗関連特殊営業
- 金融業(一部金融業を除く)
- 学校法人
- 宗教法人
- 非営利団体(NPO法人を除く)
- LLP(有限責任事業組合)
- その他支援が難しいと判断した業態
営む事業が保証対象外ではないか、事前に確認してください。
信用保証協会で融資を受けやすくするための対策方法
信用保証協会で融資を受けやすくするためには、さまざまな工夫が必要です。ぜひ取り入れていただきたい工夫として、以下の3点をご紹介します。
【信用保証協会で融資を受けやすくするための対策方法】
- 保証資格に該当しているか確認する
- 高精度な事業計画書や返済計画書を作成する
- 申込書類をしっかりと用意しておく
保証資格に該当しているか確認する
大前提として、「自社が保証資格に該当しているか=申し込みができる条件を満たしているか」を確認しましょう。保証資格に該当していたとしても審査に必ず通過できるわけではありませんが、該当していなければそもそも利用できません。
まずは最寄りの信用保証協会に問い合わせて、保証資格を確認しましょう。主に、以下の点について個々の信用保証協会が条件を設けています。
- 企業規模
- 業種
- 所在・業歴
- 許認可等
高精度な事業計画書や返済計画書を作成する
事業計画書や返済計画書を作成する際は、可能な限り精度を高めましょう。融資を受けることで事業が好転することを具体的な数値とともに示せれば、保証を断られる可能性は軽減するからです。
具体的には、以下の点に注意して作成してください。
- 経営理念に注力する
- 実現できる目標を設定する
- 理解しやすくまとめる
- 熱意を伝える
会社の将来性や熱意をアピールする資料としても有効です。
申し込み書類をしっかりと用意しておく
申し込み書類はしっかり用意しておきましょう。個々の信用保証協会によっても多少の差はありますが、一般的に必要とされる書類は以下のとおりです。
- 信用保証委託申込書
- 申込人(企業)概要
- 保証人等明細書
- 個人情報の取扱いに関する同意書
- 履歴事項全部証明書(商業登記簿謄本)※法人の場合のみ
- 申込人・連帯保証人・物上保証人等の印鑑証明書
- 納税証明書
- 確定申告書等
- 試算表
- その他必要と判断した書類
また、手続きをする際に本人確認書類(運転免許証、健康保険証、パスポートなど)の提示を求められることがあるので、念のために持参しましょう。
銀行と信用保証協会の違いとは
ここで、銀行と信用保証協会の違いについて触れておきましょう。
信用保証協会は、あくまで「保証」を行うだけの機関です。つまり、何らかの理由で債務者(お金を借りた側)が返済できなくなった場合、代わりに債権者(お金を貸した側)に支払いを行います。
これに対し、銀行は融資可否の判断をするための審査から融資の実行、回収まですべての過程を担当します。
なお、銀行が行う融資には、「信用保証付き融資」と「プロパー融資」があります。
信用保証付き融資は、信用保証協会が保証を行うことを条件に行う融資です。融資を受けたものの、債務者が何らかの理由で返済ができなくなった場合、一度信用保証協会が銀行に返済を行います(代位返済)。そのあとは、債務者は信用保証協会に返済する仕組みです。
一方、プロパー融資は信用保証協会の保証を付けずに行う融資です。債務者にとっては有利な条件で借りられますが、銀行にとっては回収ができないリスクが高まるため、審査も厳しくなります。
信用保証協会の仕組み
信用保証協会の保証を受けて銀行から融資をする場合の基本的な仕組みは、以下のとおりです。
【信用保証協会の仕組み】
- 債務者は信用保証協会に保証を申し込む
- 信用保証協会は事業内容・経営計画を精査し、保証の可否を判断する
- 保証が可能と判断されれば、銀行が融資を実行する
- 債務者は返済条件に基づき銀行に返済を行う
- 万が一返済ができなくなった場合は信用保証協会が代わりに銀行へ返済を行う
- 債務者は銀行の代わりに信用保証協会に返済を行う
信用保証協会に関するよくある質問
これまで信用保証付き融資を使ったことがなければ、そもそも何から手を付ければ良いかわからないかもしれません。ここでは、信用保証協会に関するよくある質問として、以下の3つをご紹介します。
【信用保証協会に関するよくある質問】
- 信用保証協会を利用したいのですがどこに申し込めばいいですか?
- 信用保証協会の審査はどのくらいの期間かかる?
- 信用保証協会の役割は?
信用保証協会を利用したいのですがどこに申し込めばいいですか?
事業を営んでいる都道府県(市)内の信用保証協会または金融機関が相談窓口となります。例えば、東京都で事業を営んでいる場合、東京信用保証協会に相談しましょう。もちろん、銀行や信用金庫・信用組合などで相談しても構いません。
信用保証協会の審査はどのくらいの期間かかる?
信用保証協会融資の審査期間はおおよそ2〜4週間程度となっています。ただし、申込者の状況や窓口の混雑具合にもよるので、4週間過ぎても連絡がなければ審査状況を確認してみましょう。
信用保証協会の役割は?
信用保証協会の役割は、 中小企業等の資金調達の円滑化にあります。
中小企業や小規模事業者は、大企業に比べると経営リスクが大きいため、銀行をはじめとした金融機関からの資金調達が難しいのが実情です。しかし、信用保証協会が保証することにより、金融機関も回収の可能性を高められるため、融資もしやすくなります。債務者からの融資返済が滞った際に、信用保証協会が代位弁済してくれるからです。
なお、信用保証付き融資を利用する際は、借入金額・期間に応じた保証料を債務者が負担しなくてはなりません。
信用保証協会から融資を受けられなければ別の金融機関へご相談を
信用保証付き融資は、中小企業・小規模事業者であっても比較的審査に通過しやすくなっています。しかし、100%審査に通るわけではないので、否決されることもあるかもしれません。万が一、信用保証付き融資の審査に通過できなかった場合は、別の金融機関に相談したり、他の方法で資金調達をしたりすることも検討しましょう。
例えば、不動産担保ローンを使えば、事業用の不動産の担保価値に応じて融資が受けられるので、審査に通る可能性も出てきます。
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おわりに
信用保証協会は、中小企業・小規模事業者など資金調達が難しい立場にある事業者の強い味方です。ただし、「融資しても返済できない」と判断された場合は審査に通らない点に注意しましょう。信用保証協会の役割を知った上で、適切な準備をして審査に臨むことをおすすめします。