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相続でよくある失敗事例!原因と対策を知ってそなえよう

相続でよくある失敗事例!原因と対策を知ってそなえよう
セゾンのくらし大研究 編集部

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相続では、「遺産分割協議がスムーズに進まない」「相続財産を見落とした」といったトラブルをよく耳にします。こうした事態を回避するには、どうすればいいのでしょうか。この記事では、相続対策で失敗しないための方法を具体的な事例を交えて詳しく紹介していきます。
(本記事は2024年7月24日時点の情報です)

この記事を読んでわかること
  • 疎遠にしている相続人とは、どのように遺産分割協議を進めればいいのか。
  • 自分が住んでいる家が相続財産の場合、どのように遺産を配分すればいいのか。
  • 遺産調査で失敗しないためには、どのような調査をすればいいのか。
  • 相続放棄で気をつけるべきポイントは何か。
相続手続きサポート
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生前対策不足による失敗事例

生前対策不足による失敗事例

相続対策は、被相続人(故人)の存命中に対策を講じておくことが非常に重要です。被相続人の死後に思わぬトラブルが発生して遺産分割が容易に進まないことがあるためです。生前対策不足によって、具体的にどのような事態が発生するのか紹介していきましょう。

【ケース1】遺産分割協議が進まない

遺産分割協議は、すべての法定相続人の合意が必要です。日常的に相続人同士が疎遠な関係であったり、被相続人が亡くなった後で想定外の相続人が判明した場合に連絡がとれず遺産分割協議が進まないことがあります。判断能力の低下した相続人がいる場合にも遺産分割協議は難しくなります。

具体例

相続人と連絡がとれない、とりにくいことなどが原因で遺産分割協議が進まない具体例としては、次のようなことが考えられます。

  • 被相続人である夫が妻以外の女性ともうけた隠し子(非嫡出子)が名乗り出た
  • 前妻との間に子どもがいた
  • 家出して長く所在が不明なままの息子がいる
  • 娘は海外に住んでいてなかなか連絡が取れない
  • 認知症と診断された相続人がいる

対策

  • 認知されているのであれば隠し子であっても実子と同じ権利を有します。心情的には複雑ですが、対等な立場で話し合うことで、スムーズに遺産分割協議を進めることができるかもしれません。しかし、長い歳月の間に不満が蓄積していたことで、協議が合意に至らないケースは少なくありません。その場合は、まずは弁護士などの専門家を介してやりとりを行い、それでも決着がつかなければ家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
  • 前妻との間の子どもは、実子と同じ権利を有します。疎遠な関係である場合には、親の世代の方に間に入っていただき遺産分割を進めるのがよいでしょう。
  • 長く所在不明の相続人がいる場合は、家庭裁判所に申立てをおこない、不在者財産管理人を選任してもらいます。不在者財産管理人に遺産分割協議に参加してもらうことで、相続手続きを進めることができます。
  • 海外在住の相続人については、必ずしも日本に帰国して協議する必要はありません。個別に協議を進めて、最終的には遺産分割協議書への署名によって合意の意思を確認します。
  • 相続人が認知症になり、自身の判断能力を欠く場合は、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任してもらい手続きを進めることになります。

相続人は誰なのか、相続順位、どこに住んでいるのかなどを生前に整理しておくことが大切です。もし、関係が複雑な相続人、所在不明の相続人や高齢の相続人がいる場合には、司法書士などの専門家に早めに相談することも検討しましょう。

【ケース2】実家に住み続けることができなくなった

主たる遺産が土地や建物に限られ、相続人のひとりが居住している場合、そのまま住み続けるためには、他の相続人に渡す現金を用意しなければなりません。用意できない場合には、家を売却し現金化して遺産分割をすることになります。

具体例

主たる遺産が土地や建物で預貯金などが少ない場合、相続トラブルになることがあります。不動産を売却することで平等に遺産を分割するのであれば問題はありませんが、そこに居住している相続人がいる場合です。

子ども2人が相続人で不動産が2,000万円で売却できた場合、それぞれ1,000万円ずつ相続し問題は生じません。しかし、その家に相続人のひとりが居住していた場合には、簡単に売却するわけにはいきません。

居住する相続人がその不動産を相続したい場合には、他の相続人に、相続相当額1,000万円に見合った代償金を支払うことになります。これを代償分割といいます。

資金力がない場合は代償分割をすることができないので、家や土地を売却せざるを得なくなり、家に住み続けることができなくなります。

対策

相続でトラブルになりやすいのは、遺産のほとんどが不動産のみの場合です。すべての相続人が納得しているのであれば、現在住んでいる相続人が全てを相続することも可能です。被相続人が亡くなってから慌てて話し合うのではなく、生前から家族で話し合いの機会を設けるよう心がけてください。また、遺言書により誰が家を相続するのか、他の相続人へのメッセージとともに明記しておくことも有効な対策です。

また、自分の住む家や土地が相続財産である場合は、不動産の価値を調べ、代償分割を実行できるだけの資金を用意しておきましょう。

遺産調査に関する失敗事例

遺産調査に関する失敗事例

遺産分割協議を進めるためには、被相続人の遺産を正確に把握しなければなりません。遺産分割調査をおざなりに行うと、相続できるはずの財産を失ったり、相続税の申告漏れを指摘されたりして、大きな損をすることがあります。

【ケース1】遺産を把握しきれずに損をした

遺産は、身の回りにある現金だけでなく、預金口座や上場株式、不動産など相続人が容易に気づけないものがあります。これらの遺産を見落としたまま相続手続きを完了させてしまうと、大事な資産が永遠に埋もれてしまい損をすることがあります。

具体例

金融機関に調査依頼をすれば、その銀行ではすべての支店の口座を調べられます。しかし、他の金融機関の口座まで調べてくれるわけではありません。そのため、預金の調査をするには、被相続人が生前取引していた金融機関を調べる必要があります。

親とは長く疎遠な状況であったため、相続人である子どもは日常の様子がわからず、年金振込と光熱費の引落し先である銀行だけ相続手続きをした。もしかすると他の金融機関との取引もあったかもしれないが忙しくて対応できないままになってしまった。

対策

預貯金:預金通帳やキャッシュカードなどを探します。ネット銀行の場合にはパソコンやスマートフォンのアプリなどから取引のある金融機関が分かるでしょう。預貯金の見落としを避けるためには、専門家に依頼して取引の可能性のある銀行、信用金庫等に、現存照会・全店照会する方法が確実です。

  • 保険:保険証券を探しましょう。ネット完結型の保険の場合、証券が手元に無い場合もありますので、アプリや閲覧履歴などを確認しましょう。
  • 株式・投資:口座のある証券会社を探します。預金通帳やキャッシュカードを確認しましょう。ネット証券の場合には、アプリや閲覧履歴などで確認しましょう。上場株式などは、専門家に依頼して証券保管振替機構に開示請求も可能です。

こうした調査をおざなりにしていると、相続税の申告をした後で、申告漏れを指摘され、税務署からペナルティを科せられることがあるので注意が必要です。

まずは、預貯金口座、株式、保険などについては、生前に一覧を作成し、家族が困らないようにしておくことが重要です。

【ケース2】借金を把握しきれずに負債を背負うことになった

遺産調査では、借金の有無を確実に調べることが重要です。借金の存在を見落としてしまうと、被相続人の負債を背負うことにもなりかねません。

具体例

遺産はプラスの財産ばかりでなく、借金などのマイナスの財産もあります。借金の確認はしっかり行っておかないと、遺産を相続するつもりが、反対に多額の負債を背負うことになります。

相続財産は、地方にある築年数も経過した実家と100万円ほどの現金だったので相続税申告は不要と判断し、実家の名義変更以外は何もしなかった。その後、空き家になった実家に半年ぶりに行ってみると貸金業者からの督促状があり、負債があったことが判明したが既に相続放棄の期限は経過しており負債を背負うことになってしまった。

対策

被相続人の借金の状況が不明な場合は、次の3つの信用情報機関に開示請求を行う方法が有効です。

  1. CIC
  2. 日本信用情報機構(JICC)
  3. 全国銀行個人信用情報センター

借金の存在が判明し、プラスの遺産よりもマイナスの遺産が大きい場合は、相続放棄が有効です。遺産放棄したい場合は、相続の開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所に相続放棄の手続きを行う必要があります。

預貯金だけでなく、家や車のローン、その他負債についても一覧表にしておくことが重要です。相続人が相続放棄を検討する際に、期限内に手続きをすすめることができるでしょう。

相続放棄に関する失敗事例

相続放棄に関する失敗事例

他の相続人に遺産を譲ることを意図して相続放棄をすることがあります。しかし、相続放棄のルールをよく理解していないと、想定外の人物が遺産を相続することがあるので注意が必要です。どのような事情から相続放棄で失敗してしまうのか紹介していきましょう。

【ケース1】意図に反して故人の配偶者に遺産をすべて渡せなかった

父親が亡くなったので、母親に遺産をすべて渡そうと、子どもたち全員が相続放棄をしました。ところが、相続関係を調査することなく相続放棄をしてしまうと、予期せぬ人物が相続人となり、遺産を分割せざるを得ない事態になることがあるのです。なぜそのようなことになるのでしょうか。

具体例(法定相続人の範囲を把握していなかった事例)

法定相続人は、配偶者と血族です。配偶者は必ず法定相続人になりますが、血族は次の優先順位で決まります。

  • 第1順位……子ども
  • 第2順位……両親等の直系尊属
  • 第3順位……兄弟姉妹および代襲相続人

第1順位の子どもが相続放棄をした場合、相続上は子どもがいないものとして扱われ、第2順位の者が法定相続人になります。第2順位の者が死亡していた場合は、第3順位の者が法定相続人です。

父親の両親は既に死亡しているが、父親の兄弟が存命中であれば、子どもが全員相続放棄をした場合、父親の兄弟が法定相続人となります。つまり、母親だけが全ての財産を相続するのではなく、母親と父親の兄弟が相続することになります。

法定相続人の範囲を把握しないまま、安易に相続放棄をしてしまうと、想定外の人物に法定相続分を渡すことになるのです。

対策

故人の思いを実現するには、遺言書が最も確実な方法です。遺言は法定相続よりも優先されます。しかし、多くの方が遺言書を準備していないのが現実です。母親に全遺産を渡すには、遺産分割協議によって配分を決める方法が有効です。子どもの配分をゼロとすることで、すべての遺産は母親のものになります。

遺産分割協議で配分をゼロにしても相続放棄をしたことにはなりませんから、他の者が法定相続人になることはありません。

【ケース2】相続放棄の熟慮期間を過ぎてしまった

相続放棄を選択した方が望ましいのは、被相続人に多額の借金があり、遺産がマイナスになるケースです。

相続人は、相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内に相続放棄をしなければなりません。この期間を熟慮期間といいます。親の死後に借金の存在が分かり、慌てて相続放棄をしても、熟慮期間を過ぎていたら、相続放棄は認められず、その借金を相続人が負担することになります。

具体例

被相続人に借金があることが推測されるときは、早急に調査を進める必要があります。結論を先延ばしにしたまま漫然と過ごしていると、熟慮期間が過ぎてしまい、親の借金を引き継ぐことになります。

親に借金があるらしいと叔母からは聞いていたが、契約書などの具体的なものは見当たらなかった。相続財産として50万円の預金があったので、相続放棄することを迷ったままで日にちだけが過ぎていった。気が付けば、既に3カ月は経過し相続放棄ができなくなってしまった。

その後、クレジット会社から督促状が届き100万円近くの借金があることが判明した。

対策

熟慮期間は、相続の開始があったことを知ったときから3カ月です。

つまり、次の2つの要件が満たされたときが開始点になります。

①被相続人の死亡を知ったとき
②自分が相続人であることを知ったとき

日頃、疎遠にしていた親が亡くなった場合、死亡した日から相当の日数が経過してから、警察などからその事実を知らされることがあります。貸金業者からの突然の返済請求で、初めて親の死亡を知ったケースであれば、熟慮期間内であり相続放棄をすることは可能です。

相続財産の調査を行っても、状況が複雑であれば、熟慮期間内に相続財産の調査が完了しないことがあります。その場合、相続の利害関係人の申し立てにより、家庭裁判所の審判を得ることで、熟慮期間を延長することができます。

相続税に関する失敗事例

相続税に関する失敗事例

相続税には納税期限があります。相続税は遺産の一部から納めればよいと考えがちですが、実際には、現金の調達ができずに期限までに納められないケースは少なくありません。また、遺産分割協議がスムーズに進まず、相続できないまま納税期限を迎えてしまうこともあります。

相続税に関する失敗事例について紹介していきましょう。

【ケース1】相続税が高額で払えない

相続税が高額になり、納税期限までに納められないことがあります。高額の遺産を相続したはずなのに、なぜ相続税が納められなくなるのでしょうか。

相続財産が基礎控除を超えた場合には相続税を納付する義務があります。基礎控除は次の計算で求めます。

■基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

法定相続人の数によって基礎控除は決まります。人数ごとの基礎控除は次のとおりです。

法定相続人の数基礎控除
1名3,600万円
2名4,200万円
3名4,800万円
4名5,400万円
5名6,000万円

相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内と定められています。原則として期限までに現金で納付しなければなりません。

基礎控除を大きく超える遺産を相続した場合に、高額の相続税を納めることになります。しかし、遺産が不動産中心だと、現金が不足して相続税が納められない事態にもなりかねません。

具体例

相続税は、原則現金で納めなければならないため、不動産や貴金属などが中心で、現金化できる遺産が少ないと相続税が大きな負担となります。相続した現金が不足する場合は、自分の預金を切り崩すことになります。

都内の戸建て住宅を相続し、評価額は2億円でした。相続人は子ども1人なので基礎控除額は3,600万円、相続税率は2億円までは40%なので6,560万円を支払わなければなりません。

不動産を売却して支払うつもりですが、急ぐと価格が下がると聞き相続税の支払期日に間に合うか心配です。

対策

相続税対策として、日頃から資金を蓄えておく必要があります。資金調達が難しい場合には、生前に家を売却することも検討しましょう。家を売ってもそのまま賃貸で住み続けられるリースバックの利用もおすすめです。

【ケース2】相続税を自分の資産から払うことになった

相続税の納付期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内です。この期限は長いようで、思いの外とても短く感じることがあります。相続人が二人兄弟で、半分に分けることで合意できると考えていた場合でも、なかなか合意に至らず、自分の資産を切り崩して相続税を納付した事例があります。

具体例

遺産分割協議では、被相続人への介護の貢献度や生前贈与の有無がトラブルの原因になることがあります。遺産分割協議で合意しないと、遺産である預貯金の払い戻しができないため、仕方なく自分の資産から相続税の納付をすることになった。

対策

当事者間で遺産分割協議をスムーズに進めることが困難な場合は、専門家を入れて冷静に話し合いができる環境を整える方法が有効です。

また、生前に遺言書を作成することも有効です。介護でお世話になった方への感謝として相続割合を増やすなどトラブルにならないように準備しましょう。

相続手続きをスムーズに進めたいなら専門家に相談するのもひとつの手

相続手続きをスムーズに進めたいなら専門家に相談するのもひとつの手∟基本的には遺言書によって生前対策しておくのが有効。

遺産分割を最もスムーズに進めるには、遺言書によるものが最も確実です。しかし、現実には多くの相続で、遺言書が存在しません。その場合、遺産相続に関して書類取集・作成、相続財産の調査、名義変更や解約など、やるべきことが山積されてしまいます。

遺産分割協議やそれに関連する事務処理が困難だとお考えの方は、専門家に依頼する方法がおすすめです。

セゾンの相続では、相続手続きに強い司法書士と提携しているため、信頼できる専門家との無料相談や最適なプランの提案を受けることができます。「セゾンの相続 相続手続きサポート」にご相談ください。

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おわりに 

相続対策は、思いの外時間を要することがあります。できる限り被相続人が元気なうちから、遺産の配分を決めておくことが、遺産分割協議を進めるうえで非常に重要です。遺産調査で見落としがないよう、被相続人が取引をしている銀行や不動産についても、予め把握しておきましょう。

相続放棄をすると、想定外の方が相続人になることがあります。遺産がマイナスでない場合は、相続放棄をするよりも遺産分割協議でゼロ配分の意思表示をした方が、想定する人物に遺産を渡すことが可能になります。

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