現代の労働市場では、人手不足が深刻な課題となっています。ご自身がいる業界が人手不足なのか、その原因がどこにあるのか気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、最新のデータを基に日本のさまざまな業界での人手不足の実態やその要因、さらには具体的な対策について解説します。経営者や採用担当者の方はもちろん、労働市場のトレンドに敏感な方も、ぜひ参考にしてください。
(本記事は2024年9月6日時点の情報です)
- 最新データに基づく日本の人手不足割合は正社員で50%超え
- 具体的な人手不足が顕著な業界は旅館・ホテルがトップ、情報サービス、建設と続く
- 人手不足解消を解決するには、職場環境や業務効率の見直し、採用層の再検討も必要
2023年最新データからみる日本の人手不足割合は?
帝国データバンクが2023年10月に実施した「人手不足に対する企業の動向調査」によると、人手不足の状況は正社員と非正規社員で異なる傾向が見られます。
【正社員の人手不足】
正社員の人手不足企業の割合は52.1%に達しています。業界別に見ると、以下のような結果となっています。
- 旅館・ホテル:75.6%
- 情報サービス:72.9%
- 建設:69.5%
- メンテナンス・警備・検査:69.5%
これらを含め、8業種で6割以上の企業が正社員の人手不足を感じています。
【非正規社員の人手不足】
一方、非正規社員の人手不足企業の割合は30.9%となっています。業界別では以下のような結果が報告されています。
- 飲食店:82.0%
- 旅館・ホテル:73.5%
- 人材派遣・紹介:64.2%
非正規社員の人手不足は、小売・サービス業を中心に個人向け業種で顕著となっています。
このデータから、正社員と非正規社員の人手不足の状況には違いがあり、業界によってその傾向も異なることがわかります。
【最新】人手不足の業界は?
ここでは、最新のデータに基づき、人手不足が顕著な業界について解説します。
旅館・ホテル業界
旅館・ホテル業界では本格的なアフターコロナによるインバウンドの増加や観光需要の拡大に伴い、人材の確保が深刻な課題となっています。観光業の回復により、旅館・ホテルの運営に必要なスタッフの確保が難しくなっています。
原因として、長時間労働や休みが取りにくいといった労働環境、低賃金などが挙げられており、それに伴い離職率も高いといわれています。
厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概況」によると、ホテル業界の離職率は25.6%と全業界の中でも高い割合を占めています。また、旅館・ホテル業界は基本的に24時間営業であり、こうした業界特有の慣習が従業員の負担となっているケースも多いようです。
情報サービス業界
情報サービス業界では、業界全体としてITエンジニアの不足が深刻化しています。コロナ禍で顕在化したDX需要が未だ衰えず、急速なデジタル化と技術の進歩により、高度な専門知識を持つエンジニアの需要が急増しました。これに対抗するだけの資格や経験を持つエンジニアの確保が難しく、企業は競争激化の中で優秀な人材の獲得に苦しんでいます。
原因として、急速なIT人材の需要に対する供給が追いついていないことや、最新技術の習得が困難になっていることが挙げられます。
日本では、中小企業のIT化が遅れているといわれていますが、中小企業でもIT化を推進している企業は年々増えており、IT人材の需要も伸びています。また、すでにIT化を行った企業でも導入したシステムが問題なく作動するように保守・運用が欠かせません。
さらに、IT技術は日々進化しています。最新技術は特に専門性が高く、知識やスキルの習得に時間がかかるので、即現場で活躍できる最新技術を使えるエンジニアは不足する傾向にあるわけです。
建設業界
働き方改革関連法案により、建設業界では2024年4月から時間外労働の上限規制が適用される見通しとなっています。
これが、「2024年問題」です。実現すれば、すでに深刻な人手不足が一層悪化する可能性があります。建設プロジェクトにおける時間の制約が厳しさを増す中、労働力の確保が難しくなり、業界全体に影響を及ぼすことも予想されます。
人手不足の原因として、働き手の高齢化が進んでいる点や給与水準が比較的低い点、建設業の需要が拡大している点などが挙げられます。
建設業では、高所などで作業することに対する危険な印象や長時間労働という印象から、若者の新規雇用が課題です。また、一般的な月給制ではなく日給制としている企業も多く、悪天候時の作業停止などにより、その日の給与が変動してしまうなど収入が安定しない点も、新規雇用が拡大しない原因といわれています。
飲食業界
飲食業界では、人手不足のためやむを得ず閉店してしまう店舗も多いです。近年では通常営業に伴う人手不足に加え、コロナ禍で一般的になったテイクアウト・フードデリバリーに要する新たな人材不足も課題となっています。
飲食業界で人手不足が起こっている原因として、賃金が低い点や休憩時間が確約されていない点、十分な研修がなされない点などが挙げられます。
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、産業別月給が最も高い業界は男性が「金融・保険業」の約430,000円、女性が「情報通信業」の約320,000円なのに対し、「宿泊業・飲食サービス業」は男女ともに最も低い約210,000円と報告されています。賃金の上昇率も緩やかであり、経験を積んでも賃金の大幅な向上は難しいという点も人手不足に拍車をかけているといえます。
医療・介護・福祉業界
医療・介護・福祉業界は慢性的に人手不足だといわれています。2021年8月の有効求人倍率は「医師・薬剤師等」は2.55倍、看護師を含む「保健医療サービス」は2.73倍、「介護サービス」は3.05倍となっており、平均の有効求人倍率が1.07倍と非常に高い倍率です。
医療従事者や介護士の採用が困難になっているのは、高齢化社会による需要の増加に加え、働き方改革の推進や厳しい労働環境も原因だといわれています。高齢者の増加により必然的に医療や介護ニーズが高まるからです。今後も高齢者の割合は増え続けていくと予想されており、人手が足りない状況は続く可能性が高いといえそうです。
また、厳しい労働環境も人手不足の一因であるといわれています。医療・介護現場では夜勤があり勤務が不規則であったり、休日出勤がある場合もあり、これらが負担となることが多い状況です。
運送業界
運送業界では運転手の募集は増加している一方で、求職者は少ないのが現状です。また、運送業界においても「2024年問題」が注目されています。時間外労働の上限が規制されれば、働くほど稼げる仕事として運送業を選んだ運転手が運送業から離れてしまうことで起こる人手不足が、物流の滞りを引き起こす可能性があります。需要が供給を上回る中、企業はドライバーの採用と労働条件の改善を図る必要があります。
運送業界が人手不足となっている原因として、以下の点が挙げられます。
- 労働時間の問題:運送業務は長時間労働になりやすい傾向があります。特に長距離輸送を担当するドライバーは、長時間の運転や不規則な勤務時間を強いられることが多く、ワークライフバランスの確保が難しくなっています。一方で、宅配や地域密着型の配送など比較的短距離の業務もありますが、こちらも時間的制約や荷物の量によってはハードワークとなる可能性があります。
- 女性の進出が遅れている点:運送業界は依然として男性が多数を占めています。東京都生活文化スポーツ局の調査によると、運送業界の女性比率は21%と低い水準にとどまっています。この状況は、潜在的な労働力の活用が十分でないことを示しています。
- 安全面の懸念:交通事故の危険性はドライバーとして働く上で避けられない課題です。実際に運送業の業務中事故も毎年発生しており、このような危険が伴うというイメージが、新規就業者の確保を難しくしている一因となっています。
- 技術の進歩への対応:自動運転技術やIoTの発展により、運送業界も大きな変革期を迎えています。これらの新技術に対応できる人材の確保と育成も、業界の課題となっています。
これらの課題に対処するため、運送業界では労働環境の改善、女性やシニア層の積極的な採用、安全教育の充実、そして新技術への適応支援など、多角的なアプローチが求められています。また、業務の効率化や配送ルートの最適化など、テクノロジーを活用した働き方改革も進められています。
こうした取り組みを通じて、運送業界の魅力を高め、多様な人材を惹きつけることが、人手不足解消への道筋となるでしょう。
人手不足が起こりやすい業界の共通点
人手不足が顕著になりやすい業界にはいくつかの共通点が見受けられます。これらは労働市場全体において共通の課題であり、人手不足の緩和を目指すために把握しておくことが大切です。
【人手不足が起こりやすい業界の共通点】
- 離職率が高い
- 需要に対して働き手が少ない
- 給与水準が低い
離職率が高い
人手不足が起こりやすい業界の共通点のひとつが、離職率が高いことです。労働者の働く意欲が低い状態が続くと、離職してしまうことが多々あります。そうすると、企業は新しい人材の確保に追われ、人手不足が生じやすくなるわけです。
離職率の高さは、労働環境や待遇の改善が求められているサインともいえるでしょう。
需要に対して働き手が少ない
業界全体の需要に対して働き手が少ないと、人手不足が発生しやすくなります。
例えば、急激な需要増加や新しい技術の導入により、既存の労働力が需要に対応しきれないケースも多いです。また、業界特有の資格やスキルを持つ人材が限られている場合も、需要に対して適切な人材の確保が難しくなるでしょう。
給与水準が低い
給与水準が低い業界では、優れた人材を確保するのは難しいのが実情です。低い給与水準では、経験豊富で高いスキルを持つ労働者を引き留めることは難しく、これにより需要に対する適切な人材を確保することができなくなります。
また、給与が労働者の生活水準や労働へのモチベーションに合致していない場合、離職率が上昇する傾向も見られます。
人手不足の原因は?
前述のとおり、人手不足の原因は多岐にわたります。ここでは、主な原因を2つ見ていきましょう。
少子高齢化による生産年齢人口の減少傾向
日本の少子高齢化が進む中、生産年齢人口の減少は人手不足の一因です。労働市場において、人口減少に伴い働き手が減少する中で企業は適切な人材を確保するのが難しくなります。
この傾向はさまざまな業界に影響を与えていると考えられるでしょう。
企業と求職者のニーズが合わない
雇用形態や働き方のニーズが多様化している中、企業と求職者のニーズが合わないことも人手不足を招く要因です。ニーズが合わなければミスマッチが発生します。求職者が希望する条件や働き方に企業が適切に対応できない場合、人材確保が難しくなるでしょう。
そのため、企業には柔軟性を持った雇用形態や働き方の提供が求められます。
人手不足を解消するために何ができる?今すぐできる3つの対策
深刻な人材不足に対して、どのように対策していけば良いのでしょうか。ここでは、効果的な対策を3つご紹介します。
職場環境や人事制度を見直す
まず、職場環境と人事制度を見直し、働きやすい環境づくりを進めることが重要です。
従業員が仕事に満足し、定着しやすい環境を整えることで人材流出の減少を期待できるでしょう。柔軟な働き方やワークライフバランスの尊重、キャリア支援など従業員のさまざまなニーズに対応する人事制度の改善も効果的です。
業務の効率化を進める
次に、業務の効率化を進めることで、少ない人数でより多くの業務を遂行できるようにするのも効果的です。業務プロセスの見直しや技術の導入により工数や経費の削減を実現し、限られたリソースを最大限に活用することができます。
これにより、同じ人数でも業務量を増やすことができ、人手不足に柔軟かつ効果的に対応することが可能です。
女性やシニア層の採用を検討する
多様な人材の活用が、人手不足の解消に効果的です。女性やシニア層など、これまで活用されてこなかった層の採用を積極的に検討してみてください。
女性やシニア層を採用するために働き方の柔軟性を高め、短時間勤務ができる環境を整備することが重要です。これにより、キャリアを持ちながら働くことができる女性や、シニア世代の経験豊富な人材を取り込むことが可能となるでしょう。
これらの対策を組み合わせることで、人手不足の課題に対処し、効果的な人材確保を図ることが可能です。同時に、従業員のモチベーション向上や働きやすい環境の整備を通じて、組織全体の発展を促進することが期待されます。
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おわりに
人手不足が深刻な時代において、効果的な採用活動は企業の成長に欠かせません。人手不足を解消するための対策について把握し、効果的な採用につなげましょう。求人広告費や採用コストに困っている場合は、不動産担保ローンを検討するのもひとつの方法です。