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遺贈寄付の手続きをわかりやすく解説|遺言書作成のポイントや相談先も紹介

遺贈寄付の手続きをわかりやすく解説|遺言書作成のポイントや相談先も紹介
セゾンのくらし大研究 編集部

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少子高齢化でおひとりさまが増える中、「自分が亡くなった後の財産は社会のために役立てたい」と考える方は増えています。しかし、遺贈寄付への関心が高まる一方で、手続きや寄付先が分からないという方が多いのではないでしょうか。この記事では、遺贈寄付の手続きについて解説します。注意点や相談先も紹介しますので、人生の集大成として社会貢献を考えている方はもちろん、相続で揉めたくないと考えている方もぜひ参考にしてください。

この記事を読んでわかること
  • 相続人がいない遺産は国庫に帰属するが、遺贈寄付ならば自分の意思で自分の財産の使い道を決めておくことができる。
  • 遺贈寄付は社会貢献になるだけでなく、節税のメリットもある。
  • 寄付先、遺言執行者を決定し、適正に遺言書を作成・保管することで、遺贈寄付は亡くなった後に実行される。
  • 遺贈寄付は特定遺贈を選び、不動産は現金化して寄付することがおすすめ。遺留分にも注意が必要。
遺言サポート
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遺贈寄付の基礎知識

遺贈寄付の基礎知識

遺言によって財産の一部またはすべてを譲り渡すことを「遺贈」と言い、相続人以外の特定の法人や団体に遺贈することを「遺贈寄付」と言います。遺贈寄付は、遺産を公共法人やNPO法人、学校法人などに寄付し、役立ててもらうことができるため、人生最期の社会貢献と言えます。

遺贈寄付には相続税を抑えるメリットがあります。公益を目的とする事業を行う法人へ遺贈寄付した財産には相続税がかからないためです。また、亡くなった被相続人の所得税を納税する準確定申告の際、遺贈寄付は寄付金控除の対象とすることができます。そのため、所得税の節税にもつながります。

原則として、相続人がいない遺産は国庫に帰属します。しかし、遺贈寄付ならば、自分の残した財産の使い道を自分の意思で決めることができます。現在、未婚や子どもを持たない高齢者も増加していることから、遺贈が注目を集めています。

遺贈寄付の手続きの流れ【6ステップ】

遺贈寄付の手続きの流れ【6ステップ】

では、遺贈寄付を実行するには、具体的に何をどう手続きしたらいいのでしょうか。ここでは遺贈寄付を行う場合の流れを6つのステップで解説します。

遺贈寄付先を検討する

まずは、気になる団体の資料を取り寄せて情報収集し、遺贈寄付先を検討します。パンフレットや活動報告書から、その団体のポリシーや特徴を確認しましょう。直接、団体の窓口に相談したり、セミナーに参加したりする方法もあります。

その際、自分の人生を振り返ってみることも大切です。これまで関わってきた団体や影響を受けた経験や人物、支援したい分野や地域など、心から共感し支援したいと思える寄付先を慎重に選定するようにしましょう。

専門家に相談する

専門家に相談するのもおすすめです。遺贈寄付の相談ができる専門家には、弁護士、司法書士、税理士、行政書士などがいます。

遺贈寄付には注意点もあり、遺言書でどの財産をどのような割合で遺贈するかを決める際は、専門家のサポートを受けることをおすすめします。法的に効力のある遺言書作成や確実な遺言執行の点でも、専門家に任せると安心です。遺贈寄付の注意点については後ほど解説します。

遺贈寄付先を決定する

可能ならば、遺贈寄付先を決定する前にボランティア活動やイベントなどに参加して、実際に候補先を確認することをおすすめします。時間や体力に余裕がない場合は、少額の寄付などで感触を探るのもひとつの方法です。コンタクトを取ることで、資料だけでは分からなかった団体との相性を肌で感じることができます。

大切な財産を有意義に役立てるためにも、遺贈寄付先は慎重に検討しましょう。

遺言執行者を選定する

次に遺言執行者を選定します。確実な遺贈寄付の実現には、遺言執行者を誰にするかが重要になります。

遺言執行者とは、遺言内容を実現するために必要な一切の行為をする権利義務を持つ方のことです。遺言書の中で指定し、遺言者そのものの代理人とも言えます。

遺言執行者は、未成年者や破産者に該当しなければ誰でもなれます。そのため、親族など身近な方を指定することも可能です。しかし、遺言の執行には専門的な手続きが含まれることが多く、時間も手間もかかります。中立的な立場で執行してもらえる弁護士などのプロに任せた方が安心です。

遺言書を作成・保管する

遺贈寄付先や遺産の種類や割合、遺言執行者を決めたら、遺言書に自分の意思を残します。

遺言書には自分で手書きして作成する「自筆証書遺言」と、公証役場で公証人に作成してもらう「公正証書遺言」の2種類があります。自筆証書遺言は費用がかからず簡単に作成できますが、法的な不備があると無効になってしまいます。そのため、遺言書の作成は専門家にサポートしてもらうか、公正証書遺言で残すのがおすすめです。

また、作成した遺言書は紛失や隠匿・偽造を防止するためにもしっかり保管することが重要です。その点においても、公証役場で保管される公正証書遺言は紛失などの恐れがなく、法的にも信頼性が高いです。

なお、自筆証書遺言を選択した場合は、法務省が実施している「自筆証書遺言書保管制度」を使用しましょう。

自筆証書遺言書保管制度は、2020年7月から開始されている制度で、作成した自筆証書遺言を法務局に預け保管してもらうことができます。紛失の恐れはもちろん、相続人などの利害関係者による遺言書の破棄や隠匿、改ざんも防ぐことができます。さらに、相続開始後の家庭裁判所における検認も不要となります。

遺言が執行される・遺贈寄付が実現する

遺言者が亡くなった後、その連絡を受けた遺言執行者によって遺贈寄付が実現されます。

まず連絡を受けた遺言執行者は相続人や受遺者に対して遺言を開示し、遺贈の承認または放棄を確認します。その上で、名義変更や換金、受遺団体への財産引き渡しなど、遺言書の内容に沿って手続きを進めていきます。

遺贈寄付が実現すると、寄付を受け取った団体から遺言執行者へ領収書が送付されます。

遺贈寄付手続きを成功させるための注意点

遺贈寄付手続きを成功させるための注意点

このように自分の意思で遺産の使い道を決めることができ、社会貢献や節税のメリットも感じられる遺贈寄付ですが、不動産や税金の申告、遺贈方法などの注意点もあります。ここでは遺贈寄付の注意点を確認しましょう。

遺留分を超えない

遺贈寄付をするためには遺言書を作成しますが、その際、法定相続人の「遺留分」を侵害しないよう注意しましょう。

相続財産には、一定の法定相続人の生活保障を図るなどの観点から遺留分が決まっています。遺留分とは、遺言の内容に関わらず取得できる最低限の取り分のことで、兄弟姉妹以外の法定相続人に保証されている権利です。遺留分で保証されている割合は、原則として法定相続分の2分の1(相続人が直系尊属のみの場合は法定相続分の3分の1)です。

遺留分の権利は、生活保障の観点から遺言の効力を上回ります。そのため、遺留分を侵害された相続人は多く財産を受け取った相手方に、遺留分の侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます。つまり、遺留分を超えて遺贈寄付してしまうと、相続人が寄付先の団体に「遺留分侵害請求」を実行するリスクが発生するのです。

せっかくの寄付がトラブルの元にならないよう、遺言書を作成する際は、遺留分に十分配慮することが大切です。また、生前から遺贈寄付の意思を家族など周りの方に伝えておくことも有効です。

現物資産のまま寄付しない

不動産や株式などは現物物資のまま遺贈しないようにしましょう。不動産や株式などを現物物資のまま遺贈すると、寄付ではなく「譲渡」とみなされ「譲渡所得税(みなし譲渡所得税)」がかかる可能性があるからです。

みなし譲渡所得税とは、取得時と寄付時の差額分に対して課税される税金のことです。不動産や株式などは、取得時よりも価額が高くなっている場合があり、この差額分に対してみなし譲渡所得税がかかります。譲渡所得税は、相続人が相続開始後4ヶ月以内に準確定申告をして納税しなければなりません。

なお、みなし譲渡所得税は、公益法人等への寄付であれば非課税になる特例があります。しかし、非課税と認められる要件や申請は複雑で、相続人に負担がかかります。

不動産や株式など現物資産を寄付する場合は、遺言執行者が現金化した上で遺贈する「清算型遺贈」にすることがポイントです。

特別遺贈を選択する

遺贈には包括遺贈・特定遺贈の2種類の方法があります。

  • 包括遺贈…遺産全体に対して割合を指定する方法。例)財産の3分の1をA団体へ
  • 特定遺贈…具体的な財産を指定する方法。例)不動産をAさん、現金1,000万円をB団体へ

遺贈寄付をする場合は、できるだけ特定遺贈を選択しましょう。すべての遺産には負債も含まれるため、包括遺贈を選択すると借金など負の財産も遺贈されることになるからです。また、包括遺贈を受け取る受遺者(受遺法人)は相続人と同等の権利義務を負うため、寄付先も相続人の遺産分割協議へ参加する必要性が出てきます。

そのため、包括遺贈自体を受け付けていない団体もあります。もし包括遺贈となる場合は、遺言書作成前に寄付先へ確認し相談することが重要です。

遺贈寄付・手続きに関するQ&A

遺贈寄付・手続きに関するQ&A

遺贈寄付先にはどのような団体がある?

知名度の高い遺贈寄付先として下記があります。

他にもさまざまな公益法人や自治体、NPO法人、学校法人などがあります。遺贈寄付先は、国際協力や自然保護、医療の他、教育や芸術・文化など、社会貢献したい分野で考えるのもひとつの方法です。

地方自治体への遺贈寄付は、故郷や思い入れのある地域の町づくりに役立ててもらうことができます。自治体は消滅する心配がありませんので、安心して遺産を渡せる寄付先でもあります。

遺贈寄付の相談先は専門家以外にもある?

遺贈寄付を相談できる専門家に弁護士などの士業がいますが、専門家以外にも相談先はあります。

銀行や公益団体でも相談窓口が設置されていますし、日本財団、遺贈寄付サポートセンターや民間サービスを利用する方法もあります。

銀行の中には、公益法人、NPO法人、学校法人、国立大学法人など提携している遺贈寄付先一覧を公表しているところもあります。提携先事務局へ遺贈を申し入れると、銀行が相談窓口として紹介され、相談や遺言書の作成から執行までサポートを受けることができます。

また、遺贈寄付を推進している公益法人や民間サービスには、寄付先の選定から相談に乗ってくれるところもあります。士業などの専門家に相談するのは敷居が高いと感じている方は、こうした相談先を利用する方法もあります。

遺贈寄付の他に相続人以外に財産を残す方法は?

遺贈寄付の他に相続人以外に財産を残す方法としては、「死因贈与」があります。

死因贈与とは、贈与者が亡くなった時に効力が生じる贈与のことです。遺贈寄付との大きな違いは、生前に贈与者と受贈者が結んだ契約に基づいた贈与であることです。

つまり、受贈者の合意があるという点です。遺贈寄付は遺言書による寄付のため、受遺者が放棄することもできます。しかし、死因贈与は合意に基づく契約のため、確実に財産を渡せることがメリットです。

他にも遺贈寄付との違いは、死因贈与は口頭でも成立することです。厳格な遺言書の作成を必要としない点で遺贈と比べて手軽と言えます。ただし、口約束はトラブルになりかねませんので、契約書は必ず作成することをおすすめします。また、高齢者の不安や弱みにつけ込んで高額の死因贈与契約を結ぼうとする団体にも注意が必要です。

遺贈寄付を実現させる遺言書作成の相談は「セゾンの相続」へ

遺贈寄付を実現させる遺言書作成の相談は「セゾンの相続」へ

ここまで遺贈寄付について解説してきました。遺贈寄付を実現させるには、法的に有効な遺言書を作成することがポイントとなります。遺言書はご自分でも作成できますが、形式や遺留分などの注意点もありますので、専門家と相談しながら進めると安心です。

セゾンの相続 遺言サポート」では、信頼できる専門家との無料相談や最適なプランの提案を受けることができます。遺言に強い司法書士と連携して、生前対策から相続後の手続きまで幅広く対応してくれます。確実な遺贈寄付の実現とスムーズな相続を考えている方は、ぜひ相談してみてはいかがでしょうか。

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おわりに

一生懸命築き上げてきた大切な財産を社会に役立てる遺贈寄付は、未来への贈り物であり、自分の「生きた証」となります。遺贈寄付のポイントは、信頼できる寄付先の選択と、法的に有効な遺言書の作成です。なお、遺贈寄付の方法や遺留分への配慮などいくつかの注意点がありますので、専門家のサポートを受けることも大切です。より良い社会づくりのために財産を有効に使い、未来へつないでいきましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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