更新日
公開日

年金だけでは暮らせない…貴重な老後の収入を増やす「シルバー人材センター」という選択肢【社労士が解説】

年金だけでは暮らせない…貴重な老後の収入を増やす「シルバー人材センター」という選択肢【社労士が解説】
角村 俊一

執筆者

角村FP社労士事務所 代表、CFP

角村 俊一

明治大学法学部卒。地方公務員(杉並区役所)を経て独立開業。充実した老後の生活設計に向けた情報発信や取組支援、高齢者が安心して働くことができる職場環境整備など、誰もが安心して暮らしてゆける超高齢社会の実現に向け活動中。 社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP)、1級FP技能士、証券外務員二種、行政書士、ITパスポート、介護職員初任者研修、福祉用具専門相談員、介護予防指導士、認知症介助士、福祉住環境コーディネーター2級、食品衛生責任者、健康管理士、健康管理能力検定1級、健康経営アドバイザー、メンタルヘルス・マネジメントⅡ種、墓地管理士、海洋散骨アドバイザーなど50個近い資格を持つ。

人生100年時代というワードが定着した昨今。平均寿命が延び、長生きできるようになったことは喜ばしい限りです。しかし、いいことばかりではありません。

「健康」「孤独」「お金」が老後の3大不安といわれるなか、老後の貴重な生活資金である年金への不安は増すばかり。不安を軽減するためには、年金以外に収入を得る手段を知っておくことが大切です。

ここでは、その手段のひとつである「シルバー人材センター」について詳しく解説します。

データでみる老後の年金額

データでみる老後の年金額

会社員と自営業者の年金格差

厚生労働省「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号)※の老齢給付受給者の平均年金月額は、併給される老齢基礎年金の額を含めて144,982円。一方、自営業者など、国民年金の老齢年金受給者の平均年金月額は56,428円です。会社員と比べると、年金額に大きな差があることがわかります。

※厚生年金保険(第1号)とは、厚生年金保険の被保険者のうち、民間の事業所に使用される方

自分の年金見込額を知る

老後生活を考えるには、まずは自分の年金見込額を知ることが重要です。上記の金額はあくまでも平均値ですから、以下のツールを活用して自分の年金見込額を調べてみましょう。

  • 日本年金機構の「ねんきん定期便」
  • 日本年金機構の「ねんきんネット」
  • 厚生労働省の「公的年金シミュレーター」

老後生活の収支を把握しよう

老後生活の収支を把握しよう

老後2,000万円問題が騒がれたのは令和元年6月でした。金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書において、「高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円となって」おり、「収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20 年で約 1,300 万円、30 年で約 2,000 万円の取崩しが必要になる」とされたことに始まります。

平均的な1ヵ月の生活費と年金収入

総務省「家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)における1ヵ月の消費支出は250,959円、非消費支出は31,538円です(合計282,497円)。年金等の実収入は244,580円なので、37,917円の不足が生じます。

厚生労働省「令和6年度の年金額改定について」では、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む老齢年金額は月額230,483円となっており、こちらを参考にすると収入と支出の差は52,014円です。

おおよその生活費を把握する

ただし、生命保険文化センターが実施した調査では、夫婦2人で老後生活を送るうえで必要と考える最低日常生活費は月額で平均23.2万円という結果でした。ぜいたくな生活を望まなければ、平均的な老齢年金額で賄える数字となっており、老後生活の収支は世帯ごとに大きく異なると考えられます。

ぜひ一度、夫婦の年金見込額を確認するとともに、今の生活水準から1ヵ月の生活費を試算して大体の収支を把握しておきましょう。

老後も収入を得る手段を知っておく

老後生活の収支を確認する際、年金の支給額は物価の上昇に追いつかない仕組みとなっていることに注意してください。年金収入は低く、生活費は高く見積もることが重要です。そして、収支がマイナスになる場合には、年金以外に収入を得る手段を知っておくと安心できます。

シルバー人材センターとは

シルバー人材センターとは

年金だけでの生活が苦しければ、老後も働き続けるという選択肢があります。自営業であれば、年齢に関係なく働くことができますし、人手不足が深刻な今、65歳以降も働くことができる会社も増えています。シルバー人材センターも候補のひとつになるでしょう。

シルバー人材センターの概要

シルバー人材センターは、「高年齢者が働くことを通じて生きがいを得るとともに、 地域社会の活性化に貢献する組織」(公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会HP)です。原則として市区町村単位に置かれており、運営は都道府県知事の指定を受けた社団法人が担っています。

その枠組みは、シルバー人材センターが家庭や事業所、官公庁等から仕事を引き受け、シルバー人材センターに加入している会員(定年退職者などの高年齢者)がその希望や能力に応じて就業するというもの。「シルバー人材センター事業年度統計」によると、令和4年度においては、全国に1,340団体、会員数は681,739人となっています。

シルバー人材センターでの主な仕事

シルバー人材センターでの仕事は、地域社会に密着した「臨時的かつ短期的な業務」(おおむね月10日程度以内)または「軽易な業務」(おおむね週20時間を超えないことが目安)です。

主な仕事の例は以下の通りです。

除草作業、植木剪定、ペンキ塗り、チラシ・ビラ配り、家事(料理・洗濯・掃除)援助、工場作業、小売店などの品出し作業やカート整理、建物管理(ビル、アパート・マンション管理など)、駐車場・駐輪場管理、屋内外の清掃・作業、会場設営(机や椅子・テント)、農作業(種まき、水やり、収穫など)、調理補助、高齢者介助など

シルバー人材センターへの入会方法

シルバー人材センターに入会するには、次の条件を満たすことが必要です。詳細は、近くのシルバー人材センターに確認してみましょう。

  • 原則60歳以上の健康で働く意欲のある方
  • シルバー人材センターの趣旨に賛同していただいた方
  • 入会説明を受け、入会申込書を提出した方(理事会の入会承認が必要です)
  • 定められた会費を納入していただける方

(出典:公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会HP

働いた場合の収入は?

シルバー人材センターで働く場合、希望する仕事が常にあるわけではなく、一定した収入が保障されるわけでもありません。同協会HPによると、全国平均で月に8~10日程度働くと月額3~5万円ほどの収入になります。

ある程度の収入を得るには、やりたい仕事だけではなく、希望しない仕事や経験のない仕事にもチャレンジしてみる気持ちが必要です。

先にみた統計等では、年金と生活費の差が約3~5万円ですから、シルバー人材センターでの収入で差額を埋めることができます。夫婦ともにシルバー人材センターで働くことで、より多くの収入も見込めるでしょう。

働く際の注意点

シルバー人材センターで働くうえで覚えておきたいのは、センターとの契約は「雇用契約」ではないということ。

就業は基本的に「請負又は委任契約」なので、会社員のように労働者としての保護を受けることができないのです。たとえば、仕事中にけがをしても労災保険が使えませんし、仕事を辞めた場合でも雇用保険からの失業給付はありません。

ただし、シルバー人材センターでは民間の損害保険に加入しているので、就業中にけがをした場合や、就業場所までの往復途上でけがをした場合などに一定の補償を受けられることがあります。シルバー人材センターで働く際には、保険の内容を必ず説明してもらいましょう。

そのほかに知っておくべきこと

仕事の報酬は「配分金」として支払われます。「雇用契約」ではないので「賃金」にはならず、最低賃金法が適用されません。

また、「配分金」は給与所得ではなく雑所得となるため、その額が一定額を超えた場合には確定申告が必要です。なお、在職老齢年金の対象にならないので、年金が減額されることはありません。

シルバー人材センターだけじゃない…老後に収入を得る「さらなる選択肢」

シルバー人材センターだけじゃない…老後に収入を得る「さらなる選択肢」

最近では「ネットで探す単発バイト」も注目されているようです。

ネットで探す単発バイト

今、話題のTimee(タイミー)では、家から近い仕事や在宅での仕事を手軽に探すことができるため、スキマ時間を活用して収入を得ることができます。Timeeで働く場合は、一般的なアルバイトやパートと同じく「雇用契約」なので、労働基準法や最低賃金法などの適用があり、労災保険を使うことも可能です。

ただし、単発的な仕事となるため、雇用保険の加入要件は満たさない場合がほとんどでしょう。Timeeのウェブサイトには、「タイミーを通じてお仕事をされる場合は、雇用保険の適応はございません。各種税金や保険の発生しない範囲内でサービスを提供しております」と書かれています。

働く形式契約関係労働諸法令雇用保険労災保険
Timee雇用契約適用あり加入なし適用あり
シルバー人材センター請負又は委任契約適用なし加入なし適用なし

まとめ

一般に、65歳を過ぎてから現役時代と同じようにフルタイムで働くことは、体力的にも精神的にも厳しいでしょう。月に数万円程度の収入を目指す年金世代の働き方として、シルバー人材センターでの就業も検討する価値はあるといえます。

会社からの細かい指揮命令に従う義務がある「雇用契約」とは異なり、シルバー人材センターでの仕事は「請負又は委任契約」なので、依頼された仕事をある程度の裁量を持ちながら行うことができます。雇用されて働くよりも自主性を重視した働き方ができる点は、見逃せないポイントです。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

よく読まれている記事

みんなに記事をシェアする

ライフイベントから探す

お悩みから探す

執筆者・監修者一覧

執筆者・監修者一覧

セミナー情報

公式SNS

おすすめコンテンツの最新情報をいち早くお届けします。みなさんからのたくさんのフォローお待ちしています。