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人件費は売上の何パーセントが適正?人件費率とは何か・割合・計算方法を解説

人件費は売上の何パーセントが適正?人件費率とは何か・割合・計算方法を解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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企業において不可欠なコストのひとつが給与などの人件費です。売上高に対する人件費の割合のことを売上高人件費率といいますが、何パーセントが望ましいのかは業種によっても異なるため一概には言えません。ただし、あまりに高過ぎるなら改善の余地がありそうです。

この記事では、「売上の割に人件費が高い」とお悩みの事業者様に向けて、売上高人件費率の水準と改善する方法を解説します。

(本記事は2024年10月9日時点の情報です)

この記事を読んでわかること
  • 人件費は売上の何パーセントが適正かは、業種によって異なる
  • 売上の人件費に対する割合のことを売上高人件費率というが、業種の平均値から大きく乖離している場合は改善が必要
  • 改善策は売上を上げるか、人件費を下げるかのアプローチが必要
  • 人件費を下げるためには人員削減だけではなく、従業員のスキルアップやITツールの活用など設備投資も大切
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人件費は売上の何パーセントが適正か

人件費は売上の何パーセントが適正か

売上高に対する人件費の割合のことを、「売上高人件費率」といいます。「売上高÷人件費×100%」という式で算出することが可能です。

ここでは、中小企業庁による「中小企業実態基本調査 令和4年確報(令和3年度決算実績)」の数値を用いて、業種ごとの売上高人件費率を調べてみました。結果をまとめたのが以下の表です。

業種売上高人件費率
建設業9.1%
製造業7.8%
情報通信業19.6%
運輸業10.6%
卸売業6.3%
小売業12.4%
不動産業10.4%
専門・技術サービス業21.4%
飲食サービス業(宿泊業を含む)34.5%
生活関連サービス業(娯楽業を含む)15.0%
その他サービス業21.7%

参照元:e-Stat|中小企業実態基本調査

業種によっても売上高人件費率の平均値は大きく異なります。個々の企業によって事情は異なるため、平均値から多少乖離していることは考えられますが、あまりにかけ離れている場合は、その原因を探りましょう。

人件費率とは

人件費率とは

人件費率とは、売上高に対し人件費がどれだけかかっているかを見るための指標です。経営指標としてみた場合、以下の2つのことがわかります。

  • 事業における人件費の割合は適切か
  • 従業員へ十分な還元ができているか(不足していないか)

人件費および人件費率が適切なレベルにあれば、従業員の満足度を高めつつ、企業の持続可能性も確保できます。ただし、人件費率が高過ぎると企業の経営を圧迫する可能性があります。

逆に、人件費および人件費率が低過ぎると、コストは抑えられますが、従業員の不満につながるので注意が必要です。従業員が不満を溜め込んだ結果、モチベーションが低下し、商品やサービスの質の低下につながることは十分にあり得ます。離職率も上がり、結果として会社の評判も落ちるという悪循環にも陥りかねません。

そのため、企業の規模や業種、経営状況に応じたバランスの取れた人件費率を維持することが重要です。人件費および人件費率を調整する際は、変更によるメリットとデメリットを慎重に勘案し、適切に対処しましょう。

人件費の内訳

人件費の内訳

人件費の代表例は給与ですが、実際はそれ以外にもさまざまな費用が含まれます。

以下、人件費に含まれるものの代表例をまとめました。

人件費に含まれるもの内容
給与手当一般の従業員に対して支払う基本給や時間外手当、家族手当などの各種手当
賞与夏季・冬季など特定の期間に支払われる追加の賃金。ボーナスと呼ばれることもある
役員報酬株主総会で決定され経営陣(税務上の「役員」に該当する者)に支払われる報酬
退職一時金や退職年金の引当金従業員の退職金や年金の支払いに備えて計上する引当金
法定福利費社会保険料や労働保険料の企業負担分
福利厚生費慶弔金(従業員やその家族への結婚祝いや香典など)や社員旅行などのレクリエーション活動費
その他現物支給する通勤定期券代や社宅の費用

人件費を計算する指標

人件費を計算する指標

人件費を計算する指標として、以下の2種類が挙げられます。

  • 売上高人件費率
  • 労働分配率

売上高人件費率は売上高に対する人件費の割合を示すのに対し、労働分配率とは付加価値額に対する人件費の割合を示すものです。純粋な利益を基準として算出するという点で、売上高を基準にして算出する売上高人件費率とは異なります。

ここでは、それぞれの指標について、わかることや計算方法を含めて詳しく解説します。

売上高人件費率

売上高人件費比率とは、売上高に対する人件費の割合のことです。給与が従業員に支払われているか、人件費が企業の経営を圧迫していないかを見るための指標として使われます。

この指標が高いほど、経営における人件費の負担が大きくなっているといえるでしょう。人件費が上がっても売上高がそのままなら、売上高人件費率は大きくなるので注意が必要です。

また、人件費は従前と変わらなくても売上高が減っていれば売上高人件費比率は高くなります。

【計算方法】

売上高人件費比率は、以下の式で算出できます。

売上高人件費率= 人件費÷売上×100

例えば、1カ月の人件費が300万円、売上が3,000万円の場合、売上高人件費率は10%(=300万円÷3,000万円×100)になります。

労働分配率

労働分配率とは、付加価値額に対する人件費が占める割合のことです。付加価値額とは、企業が生み出した価値の総額を指し、売上高から原材料費や外注費などの中間投入額を差し引いた金額です。

付加価値額は以下の要素で構成されます。

  1. 人件費(給与、賞与、福利厚生費など)
  2. 営業利益
  3. 金融費用(支払利息など)
  4. 減価償却費
  5. 租税公課

例えば、ある企業の年間売上高が1億円で、原材料費や外注費などの中間投入額が6,000万円だった場合、付加価値額は4,000万円(1億円 – 6,000万円)となります。

労働分配率が高い場合、付加価値額に対して人件費がかかり過ぎており、経営を圧迫していると指摘できます。逆に低い場合は、付加価値額に対して従業員が足りず、過重労働に陥っている状態です。

なお、労働分配率の目安は産業によっても異なります。ここでは、経済産業省の調査による産業別の労働分配率の平均を見ていきましょう。

産業労働分配率
製造業46.6%
卸売業43.8%
小売業49.1%

参照元:経済産業省|2023年経済産業省企業活動基本調査(2022年度実績)

労働分配率は、以下の式で算出できます。

労働分配率=人件費÷付加価値額×100

例えば、人件費の合計が600万円、付加価値額が2,000万円だった場合、労働分配率は「600万円÷2,000万円×100=30%」になります。

付加価値額を理解することで、企業が実際に生み出している価値と、その分配状況をより正確に把握することができます。そのため、労働分配率は単に人件費の高低だけでなく、企業の生産性や収益性も考慮した指標として重要な意味を持ちます。

人件費率を適正にする方法

人件費率を適正にする方法

売上高人件費率は、「売上高÷人件費×100%」という式で計算されます。そのため、適正にするためには分母を増やすか、分子を減らすかしなければなりません。つまり、以下のいずれかの方法を採ることになります。

  • 売上高を上げる
  • 人件費を減らす

それぞれの方法について、具体的に何をすれば良いのか詳しく解説します。

売上高を上げる

売上高人件費率が高い場合、人件費がかかっている割に売上が思うように上がっていない状況だと指摘できます。そのため、人件費が同じ水準で推移すれば、売上高を上げることで売上高人件費率は下がっていくでしょう。

売上高が思うように上がっていないなら、まずは現状のデータを把握したうえで、何が原因となっているのか突き止める必要があります。そのうえで、改善計画を立て、具体的にやるべきことを洗い出しましょう。

例えば、商品自体は問題なく売れていても、従業員の業務量が多過ぎて業務が滞り、人件費がかさんでいる場合は、セールや特売を行うのではなく、業務の見直しが必要です。

【売上高を上げる方法】

具体的に売上高を上げるためにできることは、以下のとおりです。

  • 自社独自の商品・製品・サービスを開発するなど「独自性」を打ち出す
  • アンケートやモニターを使い顧客の意見を収集してみる
  • 顧客のニーズに合わせて商品・製品・サービスの仕様を見直す
  • 従業員の接遇の質を向上させる
  • 自社の商品・製品・サービスの複数回利用者に特典を用意する
  • セール、特売を行う
  • 既存顧客に新規顧客を紹介してもらう
  • 業務の見直しをし、非効率な部分を是正する

人件費を減らす

売上を一定とした場合、人件費を減らせば売上高人件費率は下がります。ただし、人件費を減らすのは慎重に行わなくてはなりません。人件費を減らし過ぎてしまうと従業員のモチベーション低下につながるためです。

また、雇う人員を減らす形で人件費を減らす場合、業務量が変わらなければ残った従業員だけで進めなくてはならず、過重労働に陥る可能性もあります。

「何かを減らす」ことを前提にした人件費の削減だけでなく、業務効率をアップさせて時間外労働を減らしたり、労働環境を改善して人材の採用・教育にかかる費用を減らしたりする方法も有効です。

【人件費を減らす方法】

  • 従業員への研修・講習、マニュアルの構築・見直しなど業務効率および労働生産性をアップさせる
  • 業務フローを見える化し、不要な業務・作業がないかを洗い出して見直す
  • 経費精算システムなどITシステムやツールを導入する
  • 業務の一部を専門業者への外注やクラウドツールによる自動化で代替する

事業者向け不動産担保ローンの検討も

事業者向け不動産担保ローンの検討も

人件費率を適正にするためには、人件費を合理的な形で減らすことが欠かせません。そのためには、従業員が快適に働ける環境を整え離職率を下げること、ITツールやクラウドツールの導入、業務の一部の外注化も有効です。

しかし、これらの施策を講じるためには、ある程度まとまった資金が必要です。資金調達の手段として活用していただきたいのが、「セゾンファンデックス 事業者向け不動産担保ローン」です。例えば、倉庫などの不動産を担保に事業資金の融資を行います。

不動産担保力を重視した審査を行っており、属性・債務状況などの理由から銀行で難しいケースにもご対応が可能です。また、ご自身だけでなく、ご家族やご親族がお持ちの不動産を担保として提供していただくこともできます。

最短3営業日でのスピード審査を行うため、お急ぎの場合も安心です。お申し込みはWEBまたはお電話にて受け付けておりますので、まずは一度お問い合わせください。

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おわりに

売上高人件費率が売上の何パーセントであれば適正なのかは、業種によって大きく異なります。まずは、属する業種での平均値から大きく乖離していないか確認しましょう。大きく乖離している場合は原因を突き止め、なるべく早く解消することが重要です。

また、売上を増やすにしても人件費を減らすにしても、ある程度の投資が必要です。投資するための資金がない場合は、不動産担保ローンを使って資金調達することも視野に入れましょう。

【貸付条件一覧】セゾンファンデックス

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