相続の手続きを専門家に依頼することによって、スムーズな手続きを行うことができます。特に司法書士は相続に関する基本的な手続きを依頼することができます。この記事は、実際に相続が発生した方だけではなく、生前対策で相続に関する手続きを考えている方にもおすすめです。また、相続手続きで司法書士が対応できる内容や、司法書士に依頼をするメリットとデメリット、司法書士の探し方などを知ることができます。
- 司法書士には、相続放棄申述書の作成の依頼や遺産分割協議書の作成、不動産の相続登記、遺言の作成など、相続手続きに関する幅広い内容を依頼することができる。
- 司法書士に依頼することで、相続手続きをスムーズに進められ、相続人側の負担が軽減されるなどのメリットがある。
- 一方、費用が掛かること、また相続税や家庭内の紛争など、司法書士には対応できない業務もあるなどのデメリットがある。
- 評判のいい司法書士の探し方としては、司法書士会が開催する無料相談会に参加をしたり、WEBサイトで検索して問い合わせるなどの方法がある。
相続手続きで司法書士が対応できる内容は?
司法書士には、相続についてさまざまな手続きを依頼することができます。
相続人調査
相続人調査とは、発生した相続において、誰が相続人であるかを調べることです。相続人調査は相続の際に最初に行う手続きです。親族内であれば相続人が誰であるかは把握できているケースがほとんどでしょう。しかし、銀行や法務局、税務署など、第三者に対して相続人だと証明する必要があります。
そこで、亡くなった方の相続人の関係を客観的に証明できる戸籍が必要になります。戸籍の証明書は、それぞれの戸籍ごとに、本籍のある市区町村に請求します。戸籍謄本は戸籍のある自治体でしか取得できませんが、令和6年3月1日から、本人、配偶者、直系尊属(父母、祖父母など)、直系卑属(子、孫など)の戸籍の証明書(戸籍謄本等)については、本籍地以外の市区町村の窓口でも請求できるようになりました。(コンピュータ化されていない一部の戸除籍を除く)
しかし個別の状況によっては戸籍を何十通も集めなければならず、大変な作業となります。司法書士に依頼することで、戸籍取得の代行を依頼することができます。
相続方法の選択、相続財産調査
相続人は次の3つのうちどれかの相続方法を選択することができます。相続方法によっては、家庭裁判所に申し立て手続きが必要になります。また、遺産分割協議書の作成など相続に関する書類の作成などを依頼することができます。
- 単純承認
- 限定承認
- 相続放棄
「単純承認」
相続人が被相続人(亡くなった方)の土地の所有権等の権利や銀行の預貯金や有価証券など、借金も含めすべての財産を受け継ぎます。
「限定承認」
被相続人の債務がどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合等に、相続人が相続によって得た財産の範囲で被相続人の債務の負担も受け継ぎます。債務が受け取った財産より多い場合でも、受け取った財産以上の支払いは不要です。反対に、債務を完済し財産が残った場合には、残った財産を受け取ることができます。
「相続放棄」
相続人が被相続人の権利や義務、債務を含む全ての財産を一切引き継ぎません。
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月の熟慮期間内にに、単純承認、限定承認又は相続放棄のいづれかを決めなければなりません。限定承認や相続放棄については、家庭裁判所への申し立てが必要です。3ヵ月を経過すると自動的に単純承認したとみなされ、限定承認や相続放棄はできません。
しかし、この熟慮期間内に相続人が相続財産の状況を調査しても、なお、単純承認、限定承認又は相続放棄のいずれをするかを決定できない場合には、家庭裁判所への申立てにより、この3ヵ月の熟慮期間を伸長することができます。
相続財産が複数の金融機関や市町村に存在している場合、調査に時間や手間がかかってしまう可能性があります。その場合は、司法書士への調査依頼を検討しましょう。
また、相続放棄や限定承認の申し立て手続き、法定相続情報証明制度の利用のサポート、遺産分割協議書の作成、不動産登記など、司法書士へ依頼することで手続きがスムーズに進むでしょう。
不動産の相続登記に関する手続き
被相続人が不動産を所持していた場合、名義を被相続人から相続人に変更する相続登記を行うことが2024年(令和6年)4月から義務化されるようになりました。登記の代理人として申請を行えるのは司法書士と弁護士だけです。特に司法書士は登記の専門家であり安心して依頼することができます。
また、不動産登記は法務局でご自分で手続きすることも可能ですが、司法書士に相続登記を依頼することによって、時間や手間を省くことができ、不動産の登記を正確に行うことができるなどのメリットがあります。被相続人の遺産の中に不動産が含まれる場合は、司法書士に依頼することをおすすめします。
遺言に関する手続き
遺言書は、被相続人(故人)がご自分の意思で、ご自分の財産を誰にどのように渡したいかを定めるものです。生前世話になった方に相続の際に御礼がしたい、あるいはお孫さんに財産を渡したいというように、法定相続人以外にも遺言書により財産を渡すことができます。遺言書が無い場合には、法定相続分で配分されます。
司法書士には遺言に関する手続きも依頼できます。不動産の遺贈や相続を内容とする遺言書は、法務局または地方法務局に提出する書類に当たるため、司法書士に依頼すると良いでしょう。
遺言を残すメリットは二つあります。ひとつは遺産分割協議を行わなくてもよいので、調停や裁判になるリスクが少なくなります。もうひとつは、遺言は被相続人の最終意思を尊重する制度なので、被相続人自身の意志で遺産を誰にどのように配分するかを自由に定めることができることです。
ただし、遺言書にはさまざまな種類があり、書き方を間違えてしまうと無効になるケースもあります。司法書士には、遺言書の作成や遺言執行者への就任や業務遂行など、遺言に関する各種の業務を依頼することができます。
生前対策(家族信託、成年後見)
他にも司法書士に生前対策について相談することもできます。例えば家族信託では、契約書の作成などの一連の手続きの対応ができます。また、成年後見の申し立てなども業務範囲に含まれます。
弁護士・税理士・行政書士とは何が違う?
相続について対応できる士業には、司法書士以外にも行政書士・弁護士・税理士などがあります。それぞれの対応業務を一覧表にまとめました。
相続について対応できる各士業の対応業務内容
弁護士 | 司法書士 | 税理士 | 行政書士 | |
---|---|---|---|---|
法定相続人調査 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
相続財産調査 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
相続放棄の申立 | 〇 | △ ※3 | ✕ | ✕ |
遺言検認の申立 | 〇 | △ | ✕ ※3 | ✕ |
遺産分割協議書の作成 | 〇 | △ | △ ※4 | △ ※4 |
相続税の申告 | △ | ✕ ※1 | 〇 | ✕ |
不動産の名義変更 | △ | 〇 ※2 | ✕ | ✕ |
預貯金の解約払戻し | 〇 | 〇 | △ | 〇 |
有価証券の名義変更 | 〇 | 〇 | △ | 〇 |
自動車の名義変更 | ✕ | ✕ | ✕ | 〇 |
相続人間の紛争解決 | 〇 | △ ※5 | ✕ | ✕ |
※1 国税局長に税理士業務を行う旨の通知をした弁護士は可能
※2 司法書士に任せることが多い
※3 代理申請はできない
※4 事案によって異なる。遺産分割協議での代理交渉、遺産分割協議書の作成は弁護士のみ可能
※5 認定司法書士に限り、140万円以下の遺留分侵害請求に関する対応等は可能
参考記事:相続会議│相続の専門家の種類とできること、できないこと一覧表つきで解説
相続手続きを司法書士に依頼するメリット・デメリット
次に、相続手続きを司法書士に依頼するメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。
司法書士に依頼するメリット
司法書士に依頼するメリットとして、以下があります。
- 基本的な相続手続きが任せられる
- 相続人の負担が軽減される
基本的な相続手続きが任せられる
司法書士なら相続人の調査や相続財産の調査、遺産分割協議書の作成など、相続に関する基本的な業務はすべて対応できます。また、家族信託や成年後見などの生前対策にも対応しています。
相続人の負担が軽減される
相続手続きには、相続財産の調査や戸籍謄本の取り寄せなど手間と時間がかかる業務が多いため、司法書士に依頼することで相続人の負担が軽減されたり、手続き中での予想外の状況にも対応してくれたりとスムーズに手続きが進められます。
司法書士に依頼するデメリット
司法書士に依頼するデメリットとしては、次が挙げられます。
- 費用が発生する
- 相続手続き中に紛争に発展すると対応できない
費用が発生する
司法書士に依頼をすると、当然ながら費用が発生します。事務所ごとに料金も異なり、依頼内容が多くなればその分費用がかかります。相続財産の金額によって費用が高くなる場合もあります。しかし一般的に弁護士に依頼するよりは費用はかからないといわれています。
相続人自身で相続の手続きをすることも可能です。司法書士に支払う金額と手続きにかかる時間や手間を天秤にかけて依頼を検討すると良いでしょう。
相続手続き中に紛争に発展すると対応できない
相続手続き中に相続人同士でもめた場合、交渉は司法書士にはできないため弁護士の領域になります。弁護士にも依頼をすることになると司法書士と弁護士の両方に費用を払わなければなりません。
相続手続きの状況によっては司法書士がすべて対応できない場合があることを覚えておきましょう。
相続相談ができる!評判の良い司法書士の探し方
相続関連の手続きが得意な司法書士の探し方は、以下の通りです。
司法書士会が開催する無料相談会に参加する
直接会って確かめたいという方は司法書士会が開催する無料相談会に参加するのが良いでしょう。すべての都道府県に設置されている日本司法書士連合会のサービスの中に法律相談センターがあり、そこでは無料で誰でも相談をすることができます。司法書士側からアクションを起こしてくれるため、自身からアクションを起こしづらい方でもおすすめです。
メリットは、47都道府県すべてに法律相談センターがあり、実際に依頼するかどうかをその場で決める必要がないので、気軽に安心して相談できること、また無料であることが挙げられます。
デメリットは、時間の制約があることです。事前に聞きたいことや資料を準備しないと聞きたいことが聞けずに終わってしまう可能性があります。また、司法書士といってもそれぞれの普段の業務や得意な分野には違いがあります。どの司法書士が担当になるかわからないため、必ずしも相続の専門の司法書士に当たるわけではありません。さらに、相談に行くまで担当の司法書士の人柄もわからないというデメリットもあります。
利用経験のある知人から紹介してもらう
相続相談の利用経験がある知人がいれば、その方から紹介してもらうというのも司法書士を選ぶ際のひとつの方法です。
メリットは、多くの場合、人柄がよいことです。紹介してくれた方は、相続相談を利用し、ある程度は司法書士の人柄を理解しているので、紹介された方の人柄がよいことが多いものです。
デメリットとしては、自分が相談したいことと、司法書士の専門分野が違っていたという場合があります。また、紹介してもらった手前、断りにくいといったデメリットもあります。
WEBサイトで検索して問い合わせる
司法書士の専門性や人柄、無料で受けられる相談センターの有無も大切ですが、それよりも重要なことは司法書士に相続の手続きを依頼した場合にかかる費用なのではないでしょうか。依頼費用や司法書士の専門性、またそれぞれのサービス内容の説明が記載されているのが、それぞれの司法書士事務所のWEBサイトです。
メリットとしては、お手持ちのスマートフォンやパソコン等から検索できるので、簡単に、じっくりと調べられること、また、司法書士の得意分野がわかること、また、事前に依頼料金が確認できることが挙げられます。
デメリットは、自分でWEBサイトに検索する必要があること、問い合わせをするのに勇気がいることが挙げられます。
事務所に直接電話する
相性の良さを確認するためにもまずはお近くの司法書士事務所や気になっている司法書士事務所に電話で問い合わせ、会話してみましょう。どれだけ評判の良い司法書士でも、自身と相性が良いかは会話をしてみなければわかりません。
実際に会話をし、電話の対応や話し方を基準として人間性や相性を確認すると良いでしょう。電話帳には司法書士事務所の広告が掲載されている場合もあるので、電話帳から探すのもひとつの手です。
メリットはWEBサイトには記載されていない情報がわかること、実際に会話をすることで司法書士の相性や人間性を判断できることです。反対にデメリットとしては、問い合わせをするのに勇気がいる等が挙げられます。
司法書士を選ぶときの5つのポイント
続いて、司法書士を選ぶときの5つのポイントを紹介します。
相続分野を得意としているか?
「相続」を専門分野にしている司法書士を選びましょう。司法書士は相続関連以外の業務も多いので、相続に詳しくない方や、相続分野の実績が少ない方もいます。WEBサイトや広告に「相続の相談を承ります」と記載されている司法書士事務所を選んだり、具体的な解決方法や事例が紹介されていて実績がわかる司法書士事務所を選ぶなど、相続分野を得意としている司法書士か確認するのが良いでしょう。
しっかりと話を聞いてくれる・話しやすそうな人柄か?
お客様が司法書士に相談するときは、そのほとんどは悩みを抱えて困っている方です。悩みや分からないこと、希望などをしっかり聞いてくれて、親身になってお客様の気持ちを理解しようとしてくれる司法書士が良いでしょう。
また、良いことも悪いことも話してくれる、できることとできないことをしっかり話してくれるなど、良いことだけではなく、リスクも含めてきちんとわかりやすい言葉で説明をしてくれる司法書士を選びましょう。
費用や料金表はわかりやすいか?
司法書士に依頼をすると、どうしても費用が発生します。依頼を検討するにあたって、費用は非常に重要な要素になります。最初の段階で、費用について丁寧に説明をしてくれた方が相談しやすいでしょう。ただし、業務によっては最初の段階では費用がわからない場合もあります。その場合でも、おおよその費用目安や最大でもどれくらいで収まるのかを教えてもらうようにしましょう。
他の士業と連携が可能か?
相続税や紛争が絡むなど、案件によっては司法書士が対応できる範囲を超えてしまう可能性があるため、そのときに他の士業(税理士や弁護士など)と連携ができるかどうかを確認することも大切です。
事務所には通いやすいか?
司法書士に依頼をする場合、その事務所に何度も行って話し合いをするケースが多いので、行きやすい場所に事務所があった方が良いと思います。また、行きやすい場所に事務所があることによっていつでも行けるという安心感があります。
相続手続きに強い司法書士をお探しなら…セゾン「相続手続きサポート」にお任せください
相続の手続きは、一生のうちに何度も経験するものではなく、誰もが不慣れで当たり前なので、自分で手続きをするとかなりの時間と手間がかかります。
セゾンの相続 「相続手続きサポート」では、戸籍の収集、相続財産の調査、遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更や預金の解約などの相続手続きはもちろん、終活・相続に関するお役立ちセミナーや各手続きに関する相談が無料でご利用いただけるなど、相続手続きに強い司法書士とともに、相続手続きをトータルでサポートします。
今すぐには依頼を考えておらず、相談だけしたい方でも、まずはお気軽にお問い合わせください。
おわりに
司法書士には、相続人調査や、相続財産の調査、不動産の相続登記、遺言に関する手続き、また生前対策など、相続に関するさまざまな手続きを依頼することができます。しかし、相続税の申告などの税務関連業務や遺産分割協定の過程で起きた家庭内の紛争など、司法書士が対応できない業務もあります。
司法書士に依頼をすると、費用が発生します。ただ、自分で相続の手続きを行っても費用は発生してしまいますし、多くの時間と手間がかかってしまいます。スムーズに相続を行うためにも相続が発生した場合はまずは親身になってくれる司法書士などの相続の専門家に相談してみましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。