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遺産分割協議書の書き方|預金のみの場合は?サンプル付きで解説

遺産分割協議書の書き方|預金のみの場合は?サンプル付きで解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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遺産として預金が残された場合、解約や払戻しをする際に「遺産分割協議書」の提出を銀行から求められることがあります。遺産分割協議書と聞いて戸惑う方もいるのではないでしょうか。しかも、相続人の人数や預金の分け方によって、遺産分割協議書の記載方法は異なってくるのです。

この記事では、預金を分ける方法ごとに遺産分割協議書の書き方をサンプル付きで解説します。

この記事を読んでわかること
  • 遺産分割協議書は、亡くなった方の預貯金の解約の際に必要となる書類である。
  • 遺産分割協議書に預金の残高を記載する必要はないが、口座特定に必要な情報を記載する。
  • 遺産分割協議書に不備があると、銀行で手続きができない可能性がある。
相続手続きサポート
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遺産分割協議書とは?

遺産分割協議書とは?

遺産分割協議書とは、被相続人(亡くなった方)の財産を相続人でどのように分割するかを相続人全員で話し合い、合意した内容を記載した文書です。

被相続人の預金の解約、相続登記、相続税の申告手続きなどの際に必要な証明になります。

ただし、次のようなケースでは作成する必要はありません。

  1. 相続人がひとりしかいない。
  2. 相続人全員が相続放棄をした。
  3. 法的に有効な遺言書があり、その内容に従って遺産分割する。

【遺産分割協議書の書き方】預金のみのケース|サンプル付き

【遺産分割協議書の書き方】預金のみのケース|サンプル付き

遺産分割協議書に決まった書式はなく、手書きあるいはパソコンのどちらで作成しても問題はありません。ただし、書くべき内容は決まっているので、記載漏れやミスがないよう慎重に作成する必要があります。

遺産分割協議書は、どの相続人がどの財産を相続するのかを明確に記載する必要があります。

預金のみのケースでは、①銀行名、②支店名、③預金の種類(普通か当座か)④口座番号⑤口座名義人を記載して、財産を特定する必要があります。

ひとつの預金口座を相続人ひとりが取得するケース

相続人がひとりしかいない場合は、その相続人がすべての遺産を取得するので、遺産分割協議書を作成する必要はありません。

銀行や登記所でも遺産分割協議書の提出を求められることはありません。

相続人が複数人いて、そのうちのひとりがひとつの預金口座を取得するケースでは、次のように遺産分割協議書に記載します。

【記載サンプル】

遺産分割協議書

令和6年9月14日、○○市○○町○番地・見本例壱の死亡によって開始した相続の共同相続人である見本例次及び雛形様子は、本日、その相続財産について協議を行い、次のとおり遺産分割協議が成立した。

下記の遺産については、相続人見本例次がすべて取得する。

この協議を証するため、本協議書を2通作成して、それぞれに署名、押印し、各自1通を保有するものとする。

令和6年10月1日
愛知県豊橋市今橋町○番地○           見本例次 (実印)
埼玉県さいたま市浦和区常盤6丁目○番地○    雛形様子 (実印)

預貯金
甲第一銀行安心町支店 普通預金
口座番号 1234567
口座名義人 見本例壱

ひとつの預金口座を複数人で分けるケース

ひとつの預金口座を複数人で分けるケースでは、相続人代表者を定めて、銀行から預金の全額を相続人代表者に全額入金してもらう方法が一般的です。その後、相続人代表者から他の相続人に送金します。このケースの遺産分割協議書は、次のように記載します。

【記載サンプル】

遺産分割協議書

令和6年9月14日、○○市○○町○番地・見本例壱の死亡によって開始した相続の共同相続人である見本例次及び雛形様子は、本日、その相続財産について協議を行い、次のとおり遺産分割協議が成立した。

下記の遺産については、相続人見本例次が2分の1、相続人雛形様子が2分の1の割合で、それぞれ取得する。

なお、見本例壱は相続人を代表して以下の遺産の解約及び払い戻しの手続きを行い、このうち雛形様子の取得分については、別途雛形様子が指定する口座に振り込んで引き渡すものとする。

この協議を証するため、本協議書を2通作成して、それぞれに署名、押印し、各自1通を保有するものとする。

令和6年10月1日
愛知県豊橋市今橋町○番地○           見本例次 (実印)
埼玉県さいたま市浦和区常盤6丁目○番地○    雛形様子 (実印)

預貯金
甲第一銀行安心町支店 普通預金
口座番号 1234567
口座名義人 見本例壱

複数の預金口座をそれぞれ別の相続人が取得するケース

二人の相続人がいる相続で、預金口座が二つ存在して、それらがほぼ同額であれば、それぞれひとつの預金口座をひとりの相続人が取得することになります。このケースでは、遺産分割協議書には次のように記載します。

【記載サンプル】

遺産分割協議書

令和6年9月14日、○○市○○町○番地・見本例壱の死亡によって開始した相続の共同相続人である見本例次及び雛形様子は、本日、その相続財産について協議を行い、次のとおり遺産分割協議が成立した。

1.相続人見本例次は、以下の遺産を取得する。

預貯金
甲第一銀行安心町支店 普通預金
口座番号 1234567
口座名義人 見本例壱

2.相続人雛形様子は、以下の遺産を取得する。

預貯金
乙信用金庫本通支店 普通預金
口座番号 9876543
口座名義人 見本例壱

この協議を証するため、本協議書を2通作成して、それぞれに署名、押印し、各自1通を保有するものとする。

令和6年10月1日
愛知県豊橋市今橋町○番地○           見本例次 (実印)
埼玉県さいたま市浦和区常盤6丁目○番地○    雛形様子 (実印)

複数の預金口座を複数人で分けるケース

複数の預金口座がある場合、一般的には、相続人代表者を定めて、すべて銀行から預金の全額を相続人代表者に全額入金してもらった後、相続人代表者から他の相続人に送金します。その場合の遺産分割協議書には、次のように記載します。

【記載サンプル】

遺産分割協議書

令和6年9月14日、○○市○○町○番地・見本例壱の死亡によって開始した相続の共同相続人である見本例次及び雛形様子は、本日、その相続財産について協議を行い、次のとおり遺産分割協議が成立した。

下記の遺産については、相続人見本例次が2分の1、相続人雛形様子が2分の1の割合で、それぞれ取得する。

なお、見本例次は相続人を代表して以下の遺産の解約及び払い戻しの手続きを行い、このうち雛形様子の取得分については、別途雛形様子が指定する口座に振り込んで引き渡すものとする。

この協議を証するため、本協議書を2通作成して、それぞれに署名、押印し、各自1通を保有するものとする。

令和6年10月1日
愛知県豊橋市今橋町○番地○           見本例次 (実印)
埼玉県さいたま市浦和区常盤6丁目○番地○    雛形様子 (実印)

預貯金
甲第一銀行安心町支店 普通預金
口座番号 1234567
口座名義人 見本例壱

乙信用金庫本通支店 普通預金
口座番号 9876544
口座名義人 見本例壱

預金口座加えて不動産がある場合に代償分割するケース

代償分割とは、遺産が不動産などの分割が困難な場合に用いる手法です。具体的には、相続人のひとりが不動産を相続し、不動産を相続した相続人が他の相続人に対して、不動産の資産価値を換算して分割した金銭を支払うものです。

代償分割では、遺産分割協議書で「代償分割による支払い」であることを明記することが重要です。記載がないと、支払いをした時点で税務署から「贈与」とみなされ、贈与税の対象になるからです。

また代償金の支払いが期限までに行われない場合、受け取り側の相続人は、遺産分割協議書を証拠として、支払いを求めることができます。

ここでは、長男の自宅が被相続人である父親名義であり、他には預金のみが遺産だった場合の遺産分割協議書のサンプルを示します。

【記載サンプル】

遺産分割協議書

令和6年9月14日、○○市○○町○番地・見本例壱の死亡によって開始した相続の共同相続人である見本例壱次及び雛形様子は、本日、その相続財産について協議を行い、次のとおり遺産分割協議が成立した。

1.相続人見本例次は、以下の遺産を取得する。

所在 愛知県豊橋市今橋町
地番 ○番○
地目 宅地
地積 200㎡

所在 愛知県豊橋市今橋町
家屋番号 ○番○
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 150㎡

2.相続人雛形様子は、以下の遺産を取得する。

預金
甲第一銀行安心町支店 普通預金
口座番号 1234567
口座名義人 見本例壱

3.相続人見本例次は、第1項に記載の遺産を取得する代償として、雛形様子に対し、金○○○万円を令和7年6月31日までに支払うものとする。

この協議を証するため、本協議書を2通作成して、それぞれに署名、押印し、各自1通を保有するものとする。

令和6年10月1日
愛知県豊橋市今橋町○番地○           見本例次 (実印)
埼玉県さいたま市浦和区常盤6丁目○番地○    雛形様子 (実印)

預金の遺産分割でよくある疑問

預金の遺産分割でよくある疑問

預金の遺産分割で発生する疑問についてお答えしていきます。

預金を分けて端数が出た場合は?

遺産分割協議書には具体的な金額を記載することはなく、「3分の1ずつ」といった相続割合を記載します。相続人全員の合意があれば、1円単位まで等分する必要はありません。

遺産分割協議書に預金残高を記載するべき?

遺産分割行儀所に預金残高を記載すると、万が一実際の金額と記載内容に相違があった場合、銀行が手続きを受け付けてくれない可能性があります。預金の残高を記載するのであれば、銀行で残高証明書を入手して、相続が発生した時点(被相続人が亡くなった日)の金額を正確に記載してください。

遺産分割協議書は自分で作成できる?

遺産分割協議書は、インターネットなどの雛形や文例集を参考に自分で作成できます。しかし、必ずしも雛形と同じパターンが適用できるわけではないので、作成が困難なときは弁護士などの専門家に依頼すると安心です。

預金の遺産分割の流れをおさらい

預金の遺産分割の流れをおさらい

預金の遺産分割協議書の作成に際して、遺産分割の流れを押さえておきましょう。

相続財産を調査

まず遺産分割協議の対象となる相続財産を調査します。現金や預金、不動産、有価証券などが対象です。また、借金などの負債も相続財産になるので注意が必要です。

分割割合を決定

分割割合は、相続の方法が法定相続か分割協議による相続かによって異なります。

法定相続の場合は、次の表の割合で相続します。同順位の人が複数いれば、人数でその相続分を平等に分けます。

相続人配偶者
(常に相続人)

(第1順位)

(第2順位)
兄弟姉妹
(第3順位)
第1順位1/21/2
第2順位2/3(不在)1/3
第3順位3/4(不在)(不在)1/4

分割方法を決定

遺産がすべて金銭であれば、分割割合どおりに分けることが可能ですが、不動産や有価証券が遺産である場合は、現物と金銭の分け方を相続人全員で協議をして決定します。現物の価値が相続分を超過する場合は、他の相続人に現金で代償します。

預金口座は口座ごとに分割方法を決定します。

遺産分割協議書を作成

遺産分割協議の結果を遺産分割協議書として書面化します。遺産分割協議書の様式に決まりはありませんが、相続人全員の署名と実印の押印が必要です。

預金の遺産分割で注意したいこと

預金の遺産分割で注意したいこと

預金は、遺産分割協議が成立するまでは、全相続人の共有財産となります。そのため、ひとりの相続人が勝手に払戻しができないといった制約があります。預金の遺産分割で注意したいことについて解説していきましょう。

銀行口座は凍結される

銀行は、被相続人の死亡の事実を知った時点で、被相続人の銀行口座をすべて凍結します。

ただし、凍結するのは死亡の事実を知った時点であり、死亡届を提出しただけでは、銀行に死亡の事実は伝わりません。銀行は、家族からの連絡によって、初めて被相続人が亡くなったことを知ることになるのです。

遺産分割前は預金の引き出しができない

銀行口座が凍結する前に、相続人のひとりが勝手に預貯金を引き出すと、相続トラブルの原因になります。

預金は遺産分割の対象財産です。遺産分割が完了するまでは、原則として預金引き出しはできません。

葬儀費用には金融機関の払戻し制度が利用可能

遺産分割が終了する前であっても、各相続人が当面の生活費や葬儀費用の支払いなどのために現金が必要になった場合に、相続預金の払戻しが受けられる相続預金の払戻し制度があります。

ただし、遺産分割前に預金払戻し制度を利用すると、払戻しを受けた相続人は相続を承認したものとみなされ相続放棄ができなくなる場合があります。

相続放棄を検討しているケースでは、慎重に判断することが重要です。

遺産分割協議書作成は慎重な対応が必要

被相続人名義の預金を解約して払戻しを受ける場合、銀行ごとに対応は異なりますが、複数の相続人がいれば遺産分割協議書の提出が求められることがあります。この場合、遺産分割協議書の作成に不備があると、銀行で手続きができない可能性があるので注意してください。

特に遺産分割協議書に預金の分割を記載する場合は、利息の発生や誤記に注意する必要があります。

遺産分割協議書の作成はセゾンの相続「相続手続きサポート」にお任せ!

遺産分割協議書の作成はセゾンの相続「相続手続きサポート」にお任せ!

相続手続きをスムーズに進めるうえ、遺産分割協議書の作成は非常に重要です。それだけに、記入漏れやミスがあると、大変な手間を要することになります。遺産分割協議書の作成にお悩みの場合は、司法書士に依頼するという方法が有効です。

セゾンの相続では、相続手続きに強い司法書士と提携しているため、信頼できる専門家との無料相談や最適なプランの提案を受けることができます。

セゾンの相続の特徴

セゾンの相談には次のような特徴があります。

  1. 安心のクレディセゾングループ:クレディセゾングループとしてお寄せいただく信頼と幅広いネットワークを背景に、お客さまのさまざまなニーズにお応えします。
  2. セミナー参加やご相談は無料:終活・相続に関するお役立ちセミナーや、各手続きに関するご相談はすべて無料。お気軽にご利用いただけます。
  3. 生前対策~相続手続きまで幅広く対応:将来に備えて元気なうちに対策したい方から、すでに相続が発生した方まで。 提携する専門家の協力を得ながら、終活・相続に関する幅広いお悩みをサポートします。

「相続人が行方不明」などのケースにも対応

遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、行方不明の相続人を除いて行うことはできません。セゾンの相続では、必要となる不在者財産管理人選任、失踪宣告などの申立て手続きも専門家にご相談いただけます。

セゾンの相続 相続手続きサポートの詳細はこちら

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おわりに 

遺産分割協議書は、亡くなった方の預金の解約の際に必要となる書類です。遺産が預金のみの場合であれば、相続人全員でどのように分割するかを協議をして、成立した内容を書面化します。

遺産分割協議書に預金の残高を記載する必要はありませんが、口座特定に必要な情報を記載してください。最後に、相続人全員の署名と実印を押印します。

遺産分割協議書に不備があると、銀行で手続きができない可能性があるので慎重に作成する必要があります。自分で作成するのが困難な場合は、司法書士などの専門家に依頼する方法があります。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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