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遺産分割協議がまとまらない場合の法的手続きの流れは?遺産分割調停についても詳しく解説

遺産分割協議がまとまらない場合の法的手続きの流れは?遺産分割調停についても詳しく解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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ここでは、遺産分割協議がうまくまとまらない場合の法的手続きや、遺産分割調停の流れについて分かりやすく解説しています。調停のメリットやデメリット、有利に進めるためのポイントも詳しく説明しています。協議が難航している方や相続トラブルに直面している方にとって、解決策を見つける手助けになるでしょう。ぜひ参考にしてください。

この記事を読んでわかること
  • 遺産分割協議でトラブルになりうる具体的なケースを解説
  • 遺産分割調停は遺産分割協議が行き詰まったときの解決策で、必要な書類や法的な手続きを解説
  • 遺産分割調停で調停不成立や不服申し立てがあった場合の法的手続きの流れ
  • 遺産分割調停のメリット、デメリットと、有利に進めるポイントや注意点、具体的な事例を解説
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遺産分割協議でトラブルになり得るケースは?

遺産分割協議でトラブルになり得るケースは?

遺産分割協議でトラブルになるケースはいくつか考えられます。代表的なもののひとつは、相続人の一人が話し合いに応じない場合です。

たとえば、相続人の誰かが意図的に協議を長引かせたり、いつまでも印鑑を押さないことで、遺産分割が進まないことがあります。特に兄弟姉妹間で意見が対立し、相続の話し合い自体を拒否されるケースでは、膠着状態に陥ることが少なくありません。

遺産分割協議は全員の同意が必要であり、話し合いに参加しない方がいると手続きが進まなくなります。このような場合、家庭裁判所に調停を申し立てることが考えられますが、それも時間がかかるため、遺産分割が大幅に遅れるリスクが生じます。

遺産分割協議が難航する場合の法的手続きの流れ

遺産分割協議が難航する場合の法的手続きの流れ

遺産分割協議は相続人同士の話し合いでまとめることが理想的ですが、まとまらない場合、法的手続きを進める必要があります。このような場合、家庭裁判所での調停や審判に頼ることが一般的です。遺産分割調停は相続人全員の合意を目指し、調停が成立しない場合には審判に移行します。

ここでは、調停から審判までの法的手続きの流れや、各段階にかかる時間や費用について説明します。

遺産分割調停の申し立て

相続人同士で遺産分割の話し合いがまとまらない場合、まず家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることが必要です。遺産分割調停は、裁判所が第三者として介入し、調停委員を通じて公平に協議を進める手続きです。

申し立てにはいくつか書類が必要で、主に以下の書類が挙げられます。

  • 遺産分割調停申立書:相続人の情報や遺産の内容を記載
  • 被相続人の戸籍謄本:被相続人が死亡したことを証明するために必要
  • 相続人全員の戸籍謄本:相続人の範囲を確認するために提出
  • 遺産の目録や評価証明書:遺産の範囲と価値を明確にするための資料

申し立てに必要な費用は、収入印紙代1,200円と裁判所から当事者へ郵便を送付するために必要な切手代です。相続人の人数分必要になります。東京家庭裁判所の場合には、5名までは2,760円です。詳細は、各家庭裁判所にて確認しましょう。また、申し立てに必要な書類として戸籍謄本の取得などにかかる費用も別途必要です。申し立てから初回の調停まで、通常1~2ヵ月程度かかるとされています。

調停委員の仲介による話し合い

調停では、家庭裁判所の調停委員が相続人全員の言い分を聞き取り、公平な形で合意を目指します。調停はおおむね1ヵ月に1回程度のペースで開催され、合意に向けた話し合いが進行します。調停委員は法律の専門家や地域の有識者で構成されており、相続人の感情や利益を考慮しながら調整を図ります。

相続人全員が合意すれば、調停は成立し、その合意内容に基づいて遺産分割が行われます。調停成立までの期間はケースバイケースですが、通常半年から2年程度かかることが多いです。調停にかかる費用は、基本的には申し立て時に使用するに使用する各種書類の費用と切手代、および1200円の収入印紙の費用のみで、追加の費用はほとんど発生しません。ただし、弁護士を依頼する場合は別途費用がかかることがあります。

【調停不成立の場合】遺産分割審判へ

調停で相続人全員の合意が得られなかった場合、遺産分割審判に自動的に移行します。遺産分割審判では、家庭裁判所が提出された書面や証拠を基に、事実関係を調査し、適切な遺産分割方法を決定します。必要に応じて、相続人の陳述を聴取することもあります。

審判では、家庭裁判所が最終的な判断を下し、それに基づいて遺産分割が行われます。調停から審判への移行には1~2ヵ月かかり、審判の手続きが完了するまでには審判の開始から半年から2年程度かかることが一般的です。審判にかかる費用は、各種書類の準備に必要な金額や収入印紙の費用程度で済みますが、弁護士に依頼している場合には、長期化すると弁護士費用などが増える可能性があります。

【不服申し立てがあった場合】高等裁判所が判断

審判の結果に不服がある場合、相続人は審判の通知を受けた日から2週間以内に高等裁判所へ即時抗告を申し立てることができます。即時抗告が認められた場合、高等裁判所が審理し、審判の内容が変更される可能性があります。

高等裁判所での審理は、家庭裁判所での審判内容を再検討するもので、裁判期間は数ヵ月から1年程度かかることがあります。抗告が認められた場合には新たな判決が出されますが、費用や手間がさらに増えるため、抗告を行う前に慎重な判断が求められます。

遺産分割調停の進め方と注意点

遺産分割調停の進め方と注意点

遺産分割調停は、家事審判官と調停委員が中立の立場から話し合いを斡旋し、相続人同士の対立を解消しながら、公正な遺産分割を目指す手続きです。

本記事では、遺産分割調停の進め方や注意点、メリット・デメリット、さらには有利に進めるためのポイントについて詳しく解説し、具体的な事例を交えながら、調停がどのように機能するのかを説明します。

遺産分割調停の申し立て先

遺産分割調停の申し立てを行う際、最初に考慮すべきは「どの家庭裁判所に申し立てをするか」という点です。基本的には、相手方の一人の住所地を管轄する家庭裁判所が申し立て先となります。これは、相続人が複数存在し、その中に遠方に住んでいる者がいる場合には特に重要な要素です。

例えば、申し立てをする相続人が東京に住んでおり、他の相続人がそれぞれ大阪や福岡に住んでいる場合、相手方の一人が住む大阪か福岡の家庭裁判所に申し立てを行うのが一般的です。ただし、すべての相続人が同意すれば、申し立て先の家庭裁判所を東京や他の地域の家庭裁判所にすることも可能です。

必要書類

申し立てには以下の書類が必要です。

  • 遺産分割調停申立書:申し立ての内容や相続人の情報を記載
  • 被相続人の戸籍謄本:出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要
  • 相続人全員の戸籍謄本:相続人の身分を証明するために必要
  • 遺産目録:遺産の内容と評価額を詳細に記載
  • 不動産登記事項証明書:不動産が遺産に含まれる場合に必要
  • 預貯金の残高証明書:金融資産の状況を示すために必要

これらの書類は正確かつ最新の情報を記載することが重要です。不備があると手続きが遅れる可能性があります。

メリット

遺産分割調停は多くの書類や手続きが必要ですが、その分メリットもあります。ここでは、遺産分割調停のメリットを解説します。

冷静な話し合いが望める

遺産分割の話し合いが感情的な対立に発展することは少なくありません。特に兄弟姉妹の間では、長年の人間関係が影響して、冷静な話し合いができないことが多いです。調停では、調停委員が第三者として仲介に入ることで、相続人が直接対面することなく、双方が自分の意見を伝えることができます。

調停委員は、相続の専門知識や経験があり、相続人それぞれの意見を冷静に受け止め、適切な解決策を導き出す手助けをします。これにより、感情的な対立を避け、より建設的な話し合いが期待できます。

公平に遺産分割できる

調停委員は中立の立場であるため、相続人の一方に偏ることなく、公平な解決策を提案します。これにより、感情や個人的な利害を超えた、法律的に適切な遺産分割が期待できます。

法定相続分での分割や遺産の性質に基づいて合理的な提案を行うため、相続人全員が納得しやすくなります。また、調停委員は円満な解決を目指しており、相続人同士の関係を維持しながら問題を解決することを優先します。最終的に全員の合意が得られた場合、調停は成立し、その合意内容に基づいて遺産分割が行われます。

デメリット

遺産分割調停にはメリットがある一方、調停を利用することによるデメリットもあります。ここでは、遺産分割調停のデメリットを解説します。

すぐの解決は望めない

遺産分割調停は、通常1ヵ月に1回程度のペースで行われます。各相続人のスケジュールを調整し、全員が出席できる日程を決める必要があるため、時間がかかることが多いです。特に相続人が遠方に住んでいる場合や仕事の都合がつかない場合、調停の日程調整が難航することもあります。調停が始まってから、解決までに通常5~6回、結果的に1年程度の期間がかかることが一般的です。

自分の主張どおりになるとは限らない

遺産分割調停は、全員が納得する解決を図る手続きなので、思いどおりになるとは限らないことを理解しておく必要があります。

有利に進めるためのポイント

自分が一方的に損をするような事態を避け、できるだけ有利に進めるポイントを解説します。

誠実な態度で臨む

調停の場では、調停委員は常に公正で中立な立場を保っています。しかし、それでも調停の成功には、相続人が誠実な態度で臨むことが大変重要です。たとえば、遺産に関する情報を隠したり、不利な事実を意図的に隠そうとすると、後でそのことが発覚した際に、調停委員からの信頼を失うことになります。信頼が失われると、その後の調停が不利に進む可能性が高まります。

したがって、知っていることはすべて正直に伝え、誠実に対応することが、調停の成功への第一歩です。誠実さは相手にも伝わり、円滑な話し合いにつながる可能性も高まります。

主張をしっかり伝える

調停では、自分の意見や希望をしっかりと調停委員に伝えることが大切です。相続において、どの財産を希望しているのか、またどのような理由でその財産が自分にとって重要であるのかを明確に伝えることで、調停委員が適切な解決策を提示しやすくなります。

主張が曖昧だったり、根拠が不十分であったりすると、調停委員は公平な判断がしづらくなり、自分にとって望ましい結果を得ることが難しくなります。そのため、しっかりとした意見を持ち、それを具体的に伝えることが重要です。

法律に関する知識を身に付けておく

裁判官や調停委員に納得してもらうためには、法律的な根拠に基づいた主張をすることが重要です。事前に基本的な知識を身に付けておきましょう。

専門家のサポートを受ける

弁護士など、プロにサポートしてもらうことで有利に進めやすくなります。専門家は法律の知識だけでなく、調停の手続きにも精通しています。

注意点

ここでは、遺産分割調停において注意すべき点を解説します。

遺言で遺産の行き先が決められているときは申し立てができない

遺産分割調停を申し立てる際には、まず遺言書の有無とその内容を確認することが重要です。もし遺言書が存在し、そこに遺産の行き先がすべて決められている場合には、基本的に遺産分割調停を申し立てることはできません。遺言書は法的に強力な効力を持ち、遺言に記載された内容が最優先されます。

ただし、遺言書が一部の遺産しか指定していない場合や、遺産の分割割合のみを定めている場合には、調停を申し立てることが可能です。このようなケースでは、残された未指定の遺産について話し合いを行い、公平な分割を目指すことができます。

調停期日に参加できなければ代理を立てるなどの対策が必要

調停期日には、基本的に相続人全員が出席することが求められます。しかし、どうしても調停に出席できない事情がある場合には、事前に適切な対策を講じる必要があります。

たとえば、代理人として弁護士を依頼し、調停に出席してもらうことがひとつの方法です。弁護士が代理として出席することで、自分の主張を代弁してもらい、調停の進行が滞らないようにできます。また、家庭裁判所では、電話会議システムを利用して遠隔地から調停に参加することも可能です。

この方法を利用すれば、出席が困難な相続人も、直接顔を合わせずに調停に参加でき、意見を述べることができます。調停に出席しないことが理由で不利になるのを避けるため、代理人の選任やシステムの利用など、柔軟に対応しましょう。

遺産が要らない場合は相続放棄の手続きをする

遺産分割手続きから抜けたい場合は、相続放棄の手続きをするのもひとつの方法です。相続放棄は家庭裁判所での手続きが必要であり、期限もあるため早めの対応が求められます。

遺産分割調停の事例

遺産分割調停が実際にどのように行われるのか、具体的なケースを紹介します。

兄弟間で不動産の分割をめぐる対立

父親が亡くなり、不動産を相続することになった兄弟がいました。兄は不動産を売却して現金を分割することを提案しましたが、弟はその不動産に住み続けたいと主張。遺産分割協議では合意に至らず、遺産分割調停を申し立てました。調停委員の仲介により、弟が不動産を相続し、その代わりに兄に相当額の代償金を支払うことで合意が成立しました。

相続人の一人が遺産分割協議に応じないケース

相続人の一人が遠方に住んでおり、遺産分割協議に全く応じないケースがありました。他の相続人は調停を申し立てましたが、その相続人は調停期日にも出席しませんでした。調停委員の助言により、代理人を立てることや電話会議システムを利用する提案がされ、最終的に全員の同意を得て調停が成立しました。

異母兄弟間で相続順位が争われたケース

被相続人に前妻との子供と後妻との子供がいる場合、相続順位や割合で争いが起きることがあります。調停では、法律に基づいて相続権を確認し、調停委員の助言により適切な割合で遺産を分割することで解決しました。

遺産分割でお困りの方は専門家へご相談を!

遺産分割でお困りの方は専門家へご相談を!

遺産分割協議がうまくまとまらない場合、家族間での対立が長引くことがあります。こうした問題に直面した際には、専門家に相談することが最も有効な解決方法です。専門家のサポートを受けることで、法的なアドバイスをもらいながら、円満な解決に向けて適切に手続きを進めることができます。

セゾンの「相続手続きサポート」は、相続に関する複雑な手続きをトータルでサポートするサービスです。相続人間で協議がまとまった場合、必要な協議書を作成するのはもちろん、その他の相続に関する手続きを一貫して行ってくれます。このサービスでは、経験豊富な司法書士が遺産分割協議書の作成や、不動産の相続登記なども依頼できるため、手続きの複雑さに悩むことなく安心して進めることが可能です。

相続は複雑でストレスの多い手続きですが、専門家に頼ることで、スムーズに進行させることができます。もしも協議が難航している場合や、手続きに不安がある場合は、ぜひセゾンの「相続手続きサポート」を活用してみてください。詳しいサービス内容はこちらからご確認いただけます。

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おわりに

遺産分割協議がまとまらない場合、法的手続きを理解し、適切に対応することが大切です。本記事では、トラブルが起こるケースや、調停の申し立てから審判までの流れ、メリット・デメリットを詳しく解説しました。相続問題に直面した際に、冷静に対応し、スムーズに解決するためには、有利に進めるポイントや注意点を理解しておくことが大切です。お困りの際には、専門家のサポートを活用することをおすすめします。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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