「親の実家を相続することになったけど、引き継いだ後の管理や手続きについて何も分からない……」。誰もが一度は直面する実家の相続。しかし、活用方法を決めずに相続したり、共有名義で引き継いだりすることで、相続人同士のトラブルや予期せぬ税負担が発生するケースが少なくありません。
この記事では、実家相続でやってはいけないポイントと、スムーズな引き継ぎのためのポイントを解説します。事前に知っておくべき対策や専門家に相談するタイミングが分かり、大切な実家を次世代に安心して引き継ぐことができます。
- 相続手続きは親の死後3ヶ月以内に始める必要があり、放置は大きなリスクとなる
- 実家の相続は使用目的を明確にしてから行うべきで、賃貸や土地活用などの収益化も選択肢として考えられる
- 兄弟での共有名義での相続は将来的なトラブルの原因となりやすいため避けるべきである
- 相続問題を防ぐためには、生前贈与や遺言書の作成、家族間での事前の話し合いが効果的である
実家の相続のときにやってはいけないこと5選
実家を相続する際にやってはいけないことは、以下の5点です。実家の相続でトラブルにならないために、まずはやってはいけないことを詳しく見ていきましょう。
親が亡くなってから3ヵ月以上放置する
親が亡くなると、まず相続人の調査、財産調査、遺言書の確認が並行して進められます。調査の結果、実家以外にも住宅ローンなどの借金が発覚し、負の遺産を相続することになるケースもあります。
このような場合、相続放棄という選択肢もありますが、これには期限があります。相続放棄は「相続開始を知った日から3ヵ月以内」に家庭裁判所へ申述する必要があります。この期間を過ぎると、自動的に相続人となり、プラスもマイナスも含めたすべての財産を相続することになってしまいます。
使い道を決めずに相続する
「長男だから」「他に引き取り手がいないから」といった理由で、将来の活用方法を決めずに実家を相続してしまうケースがあります。しかし、誰も住まない空き家になってしまうと、固定資産税や水道光熱費、建物の維持管理費などの支出が継続的に発生します。
さらに、空き家を放置すると不法侵入や放火などの犯罪に使われるリスクもあります。また、空き家の管理を怠ると行政から50万円相当の罰金が課される可能性もあるため、使い道を決めずに相続することは避けるべきです。
兄弟などの共有名義で相続する
共有名義での相続は、一見すると管理の負担が分散されるように思えますが、大きなリスクが伴います。共有名義の不動産を売却や貸し出しする際には、他の共有者全員の同意が必要になるため、実家の活用について意見が食い違うとトラブルに発展する可能性があります。
また、修繕費用など管理費用の負担割合をめぐって争いが起きたり、売却時に共有者全員の許可が必要なため手続きが複雑になったりする問題も発生します。将来的な相続人間の関係悪化を防ぐためにも、共有名義での相続は避けることをおすすめします。
相続の前後で家屋を解体する
実家を解体する場合、建物の規模にもよりますが、およそ200万円前後の費用が必要です。さらに、建物を解体して更地にすると、住宅用地の特例が適用されなくなり、固定資産税が最大で6倍に跳ね上がってしまいます。
例えば、土地の固定資産税評価額が1,000万円の場合、建物があれば年間約2.3万円の固定資産税ですが、更地になると年間約14万円に増加します。解体を検討する際は、この税負担の増加も考慮に入れる必要があります。
相続後すぐに売却する
相続税対策として「小規模宅地等の特例」という制度があります。これは、相続した土地の評価額を最大80%減額できる特例で、相続税を大幅に軽減できる可能性があります。
ただし、この特例を適用するには「相続開始時から相続税申告期限(相続発生を知った翌日から10カ月以内)まで相続した不動産を保有していること」という条件があります。相続後すぐに売却してしまうと特例が適用されず、多額の相続税を支払うことになるかもしれません。不動産の売却を考える場合は、税理士などの専門家に相談し、最適なタイミングを見極めることが重要です。
実家を相続したほうがいいのはどんなとき?
実家を相続する際にやってはいけないことを紹介してきましたが、実家を相続するのがプラスになる場合もあります。ここからは、実家を相続したほうがいいケースをご紹介します。
実家に住む予定がある
現在賃貸物件に住んでいる場合、実家に住むことで毎月の家賃支出がなくなるメリットがあります。また、定期的に居住することで建物の適切な維持管理ができ、資産価値の低下を抑えることができます。ただし、以下の点には注意が必要です。
- リフォームなどの維持費用が発生する
- 職場や学校までの距離が遠くなり、通勤・通学の負担が増える可能性がある
- 子どもの転校が必要になる可能性がある
- 他の相続人も実家に住みたいと考えている可能性がある
実家への居住を検討する場合は、家族の生活環境への影響や他の相続人との調整を十分に検討することが重要です。
実家の用途が決まっている
将来的に実家の土地や建物を有効活用する予定があれば、相続を検討する価値があります。例えば、賃貸経営や土地活用による収益化など、具体的な活用プランがある場合は、実家を相続することで資産としての価値を最大限に活かすことができます。
実家を賃貸物件にして収入を得る
実家を賃貸物件として活用すれば、定期的な家賃収入を得ることができます。ただし、建物の老朽化が進んでいる場合は、賃貸に出す前にリフォームなどの投資が必要になります。
また、立地条件が良くない場合や周辺の賃貸需要が少ない地域では、入居者が見つからないリスクもあるため、事前の市場調査が重要です。
家屋を解体して土地を貸し出す
駅や学校、商業施設が近いなど立地条件が良い場合は、建物を解体して土地を貸し出すことで安定した収入を得られる可能性があります。
特に、建設会社や土木会社などが資材置き場として長期契約してくれる場合もあり、維持管理の手間も少なく済みます。
土地活用で利益を得る
実家の土地をアパートや駐車場として活用することで、より高い収益を得られる可能性があります。ただし、初期投資が必要で、収益が安定するまでに時間がかかる場合があります。
また、需要が少ない地域では期待通りの収益が得られないこともあるため、周辺環境や市場調査を十分に行ったうえで判断する必要があります。
実家の相続問題に悩まないための4つのポイント
最後に、実家の相続問題で悩まないために、親が元気な間にしておきたいポイントをお伝えします。
生前贈与を検討する
生前贈与は、相続が発生する前に財産を子どもや家族に贈与することで相続財産を減らす方法です。古い実家の場合、評価額が基礎控除の範囲内に収まることもあり、相続税が課されないケースがあります。
ただし、生前贈与の場合は不動産取得税として実家の固定資産税評価額の1.5%が課せられる点に注意が必要です。相続税と生前贈与のメリット・デメリットを比較検討し、税理士などの専門家に相談しながら判断することをおすすめします。
活用方法を話し合っておく
親が健在なうちに、実家の将来的な活用方法について家族で話し合っておくことが重要です。実家に対する親の思いを理解したうえで、相続後の活用方法を決めておくことで、スムーズな引き継ぎが可能になります。
また、相続人が複数いる場合は、誰が住むのか、賃貸や売却にするのかなど、具体的な方針を事前に決めておくことで、相続後のトラブルを防ぐことができます。
遺言書を作成する
相続後の親族間の争いを避けるために、被相続人は生前に遺言書を作成しておくことをおすすめします。特に公正証書遺言は、公証人立ち会いのもと作成される正式な書類のため、相続時の争いを防ぐ効果があります。
遺言書があれば、遺産分割協議が不要になり、実家の相続人がスムーズに決定できます。また、配偶者の居住権を保護するなど、被相続人の意思を確実に反映させることができます。
遺産相続の放棄もできる
実家に住宅ローンなどの借入金が残っている場合や、維持費用が資産価値を上回る場合は、相続を放棄することも検討に値します。相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しないことになります。
ただし、相続放棄は相続開始を知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。また、一度相続放棄すると取り消すことができないため、慎重に判断することが重要です。必要に応じて、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
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相続する実家の荷物はどうする?
実家を相続するか放棄するか、どのような選択をしても、「実家の家具や荷物をどうするか」という問題に行き当たります。実家には日用品だけでなく、着物や楽器、雛人形・五月人形、嫁入り道具、子どもの工作物や制服など思い出品の数々が保管されていることでしょう。
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「遺品整理士」をはじめとする専門スタッフが、心を込めて丁寧に仕分けします。片付けを開始する前にヒアリングをおこない、仕分け方法などをしっかりと確認したうえで作業を始めるため、安心して任せることができます。
また、親が元気なうちに親の意向を尊重しながらおこなう「生前整理」は、親族ではない第三者が作業を実施することで、親子間・親族間のわだかまりが生じず、スムーズに片付けが進みやすくなります。また、親が高齢者住宅に入居した後、実家の荷物をまとめて整理・処分したい場合や親の逝去後に生じる遺品整理の依頼も可能です。
予算や要望に応じて専門的な観点からサポートしてくれるため、まずは気軽にご相談してみてはいかがでしょうか。
おわりに
実家の相続は誰もが直面する重要な問題です。活用方法を決めずに相続したり、共有名義で引き継いだりすることで、予期せぬトラブルや税負担が発生する可能性があります。実家の将来的な活用方法を家族で話し合い、必要に応じて生前贈与や遺言書の作成を検討することで、円満な相続が実現できます。
また、専門家に相談することで、相続税の節税対策や最適な引き継ぎ方法を見出すことができ、大切な実家を次世代に安心して引き継ぐことができます。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。