90代の一人暮らしは、超高齢化社会が進む中で増加していますが、さまざまなリスクや限界を抱えています。健康寿命の問題や、病気、認知症、孤立といった課題に直面することが多く、安心して暮らし続けるためには家族や地域のサポートが不可欠です。
この記事では、高齢者世帯の現状や、一人暮らしを続けるために必要な対策、そして離れて暮らす親のためにできる支援方法について解説します。親の安全を考える方は、ぜひ参考にしてください。
- 90代の一人暮らしの高齢者は年々増加傾向にあり、現代社会における重要な課題となっている
- 健康寿命を過ぎると一人暮らしが困難になりやすく、疾病の悪化や認知症の進行が主な原因となっている
- 高齢者の一人暮らしには、健康面の不安や犯罪被害、災害時の対応など、複数のリスク要因が存在する
- 一人暮らしを継続するためには、食事や運動の管理、コミュニティへの参加など、日常的な取り組みが重要である
超高齢化社会における高齢者世帯の現状
わが国は世界でも類を見ない超高齢社会へと突入しています。内閣府「令和5年版高齢社会白書」によると、2015年から2020年の間に、65歳以上の単独世帯(一人暮らし)は男性で15.0%、女性で22.1%に上昇しました。この数値は今後も増加の一途をたどると予測されています。
65歳以上の高齢者がいる世帯は約半数
2019年の国民生活基礎調査では、65歳以上の高齢者がいる世帯数は2,558万4千世帯となり、全世帯の49.4%を占めています。高齢者のいる世帯を世帯構造別にみると、「単独世帯(一人暮らし)」が28.8%、「夫婦世帯」が32.3%となっており、両者で全体の約6割を占めています。
これは、かつて4割を超えていた「三世代世帯」が減少し、現在では1割を下回っている状況を如実に表しています。
一人暮らし高齢者は年々増加
高齢者の一人暮らし世帯は、社会構造の変化や技術の進歩により、年々増加傾向にあります。インターネットや宅配サービスの充実により、家から出なくても生活できる便利な時代となった一方で、地域社会との関わりが希薄になりやすい環境も生まれています。
高齢者世帯の中でも特に「高齢者のみの世帯」の割合は上昇を続けており、そのうち「一人暮らし世帯」は736万9,000世帯にも上ります。この背景には、未婚率の上昇や核家族化の進行、配偶者との死別などさまざまな要因が存在します。今後も一人暮らしの高齢者は増加し続けると予測されており、社会全体での支援体制の構築が急務となっています。
一人暮らしが難しくなる年齢と原因
高齢者の一人暮らしには、年齢とともにさまざまな課題が生じてきます。加齢に伴う身体機能や認知機能の低下により、これまで当たり前にできていた日常生活動作に支障をきたすようになります。
ここでは、一人暮らしの限界年齢の目安と、継続が困難になる主な要因について解説します。
「健康寿命」がひとつの目安
「健康寿命」は一人暮らしの限界を考えるうえで重要な指標となります。内閣府の定義によると、健康寿命とは「健康上の問題で日常生活に制限のない期間」を指します。2019年時点での健康寿命は、男性が72.68歳、女性が75.38歳となっています。
この年齢を過ぎると、心身ともに自立した生活を送ることが徐々に困難になってきます。70代に入ると、男女ともに健康上の問題で日常生活になんらかの支障が出る可能性が高まり、一人暮らしの継続に影響を及ぼすようになってきます。
高齢者が一人暮らしを続けられない原因
一人暮らしの高齢者が自立した生活を送れなくなる背景には、さまざまな要因が絡み合っています。独居継続の限界は人によって異なりますが、大きく分けると健康面での問題、生活機能の低下、認知症の進行、そして介護する家族の疲弊などが挙げられます。
以下では、独居生活を妨げる具体的な要因について解説します。
疾病の悪化や突発的な怪我
高齢期には、持病の悪化や予期せぬ怪我により、突然一人暮らしが困難になるケースが少なくありません。特に転倒による骨折は、要介護状態に陥るきっかけとなりやすい事故です。
日常生活機能の低下
加齢に伴い、炊事や洗濯、掃除といった基本的な家事の遂行が難しくなることがあります。また、トイレの失敗や火の始末への不安、食事を適切に摂取できないなどの問題も、一人暮らしの継続を妨げる要因となります。
認知症の発症と進行
認知機能の低下により、金銭管理や服薬管理が適切にできなくなることもあります。独居の場合、認知症の初期症状に気付きにくく、発見が遅れて症状が進行してしまうリスクが高まります。
介護する家族の負担増加
遠方から通って介護をする家族自身が体調を崩すケースも報告されています。このような場合、結果として高齢者の一人暮らしの継続が困難となり、同居や施設入所を検討せざるを得ない状況に発展することがあります。
高齢者の一人暮らしが抱える6つのリスク
一人暮らしの高齢者は、以下のような深刻なリスクに直面する可能性があります。
- 病気やケガへの対応の遅れ
- 認知症の進行への気づきにくさ
- 生活水準の低下
- 社会的な孤立
- 災害時の対応困難
- 犯罪被害
これらのリスクは、一人暮らしをする高齢者の安全で健康的な生活を脅かす要因となっています。
以降では、各リスクの詳細と対策について解説します。
病気やケガへの対応が遅れる
若い世代であれば、病気やケガをしても日常生活に大きな支障は出にくいものです。しかし高齢者の場合、炊事や洗濯など普段の生活動作でさえ、急激に困難になることがあります。
さらに、一人暮らしの場合は体調の変化に気づく人がおらず、重症化するまで放置されてしまう可能性があります。
認知症が進行しても気づきにくい
高齢者の一人暮らしでは、認知症の初期症状を見逃しやすいという問題があります。人との約束を忘れる、ゴミの回収日を忘れがち、鍵や財布を忘れて外出するなど、些細な変化が認知症の始まりのサインかもしれません。同居家族がいれば気づきやすい変化も、一人暮らしだと発見が遅れ、症状が進行してしまうことがあります。
生活水準が下がる
加齢による体力低下は、日常生活の質を著しく低下させる原因となります。食事の回数が増えたり、自宅への帰路を忘れたり、コンロの火を消し忘れて火事を起こすなど、命に関わる危険性をはらんでいます。
こうした生活水準の低下は、さらなる体調悪化を招く悪循環に陥りやすい傾向があります。
社会的な孤立に陥る
内閣府の調査によると、親しい友人や仲間について「ほとんど持っていないと感じる」「持っていないと感じる」と答えた高齢者は合わせて20%に上ります。社会的な孤立は鬱などの心身の不調をもたらす恐れがあります。
東京都健康長寿医療センター研究所の調査では、社会的孤立と閉じこもり傾向が重なると、死亡リスクが約2倍に高まることが明らかになっています。
地震など災害に対応できない
災害時には正確な判断や迅速な行動が求められます。しかし、高齢者のみの世帯では自然災害への対応が困難です。近年は気候変動の影響で災害が増加傾向にあり、迅速な避難行動ができないと命の危険にさらされる可能性があります。近くに子世帯などがいれば、冷静な避難行動が取れますが、一人暮らしだと適切な判断や行動が難しくなります。
詐欺や犯罪に巻き込まれるリスクがある
近年は高齢者を狙った詐欺や強盗が横行しており、消費生活相談件数は減少に転じていません。振り込め詐欺、訪問販売による押し売り、インターネットを使った架空請求詐欺など、手口は多様化しています。
判断力や体力が低下した高齢者は犯罪者から狙われやすく、特に一人暮らしの場合はそのリスクが一層高まります。
90代でも一人暮らしを続けるために心がけること
高齢者が安心して一人暮らしを続けていくためには、以下のような日常的な取り組みが重要です。
- 健康的な食事を意識する
- 適度な運動習慣をつくる
- コミュニティに参加する
これらの取り組みは、虚弱の予防や認知機能の維持に効果があり、健康寿命を延ばすことにつながります。
健康的な食事を意識する
健康維持の基本は、バランスの良い食生活です。一人暮らしの高齢者は、少し体調を崩しただけでも著しく生活の質が低下する可能性があります。栄養素やカロリーに配慮した食事を心がけましょう。
外食は高カロリーで栄養バランスを自分でコントロールできない場合が多いため、できるだけ自炊を心がけることが大切です。体調管理のためにも、毎日の食事内容に気を配る必要があります。
適度な運動習慣をつくる
定期的な運動は、肥満や病気の予防だけでなく、精神的な安定にもつながります。激しい運動は必要ありません。軽めのウォーキングや体操など、生活に取り入れやすい運動から始めることをおすすめします。
運動は筋力の維持・向上に効果があり、転倒予防にもつながります。自分の体力に合わせて、無理のない範囲で継続することが重要です。
コミュニティに参加する
社会的な孤立を防ぐために、趣味のコミュニティや地域のゴミ拾い、パトロールといったボランティア活動に積極的に参加しましょう。人とのつながりやコミュニケーションは生きがいを生み出し、日々の活力となります。
地域のコミュニティやボランティア活動を探すなら、社会福祉協議会や自治体に問い合わせてみると良いでしょう。仲間が増えることで、知らず知らずのうちに一人暮らしの支えになっていきます。
90代で一人暮らしをする親のためにできること
高齢の親の一人暮らしを支えるためには、家族による見守りと適切なサポートサービスの活用が重要です。本人の意思を尊重しながら、安全で快適な生活環境を整え、必要に応じて専門家の支援を受けることで、より安心な一人暮らしが実現できます。
これからのことを本人と話し合う
将来の生活について、親が元気なうちから話し合うことが大切です。一人暮らしを希望する場合でも、自宅での生活に不安を感じているのであれば、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)への住み替えを検討することもできます。
また、万が一の事態に備えて、貯金や加入している保険の状況も把握しておきましょう。早めに情報を共有しておくことで、より適切な支援体制を整えることができます。
自宅をバリアフリーにする
安全な生活環境を整えるために、住宅内の危険箇所を把握し、バリアフリー化を進めることが重要です。手すりの設置や段差の解消、扉を横開きに変えるなどの対策により、転倒のリスクを減らすことができます。
家具の角を柔らかな素材でカバーすることも、万が一の転倒時の怪我を防ぐ効果的な対策です。
地域包括支援センターに相談する
地域包括支援センターでは、高齢者の健康や生活に関するさまざまな相談に対応しています。社会福祉士や主任ケアマネジャーなどの専門家が、具体的な解決策を提案してくれます。また、自治体独自の高齢者向けサロンなども運営されている場合があり、社会参加の機会として活用することができます。
見守りサービスなら選べる親御さまサポートサービス「親サポセレクト」を検討する
離れて住む親の一人暮らしを支えるために、セゾンカードでおなじみのクレディセゾングループの会社暮らしのセゾンが提供する「親サポセレクト」の利用がおすすめです。このサービスは、高齢の親の日常生活から将来的な課題まで、必要なときに必要なサービスを選んで頼める点です。
「親サポセレクト」の特徴は、24時間365日体制での見守り・駆けつけサービスも選べることです。大手セキュリティ会社のALSOKやSECOMと提携しているため、緊急時には迅速な対応が可能です。
日常生活のサポートも充実しています。買い物の付き添いや代行、掃除・洗濯・食事づくりといった家事代行サービスも提供。
さらに、入退院や施設入退居時の諸手続きの支援や、ご指定により病院・施設からの第2の緊急連絡先としての対応も行います。入退院や施設入退居時の付き添い、必要な備品の準備・購入なども代行可能です。
高齢者の見守りサービスを検討されるなら、ぜひ「親サポセレクト」に問い合わせをしてみてはいかがでしょうか。
おわりに
90代の一人暮らしを支えるためには、本人の意思を尊重しながら、適切なサポート体制を整えることが重要です。高齢者の一人暮らし世帯が増加する現代において、健康管理や生活環境の整備、地域とのつながりを維持することが、安全で快適な生活を送るための鍵となります。早期から将来の備えを行い、見守りサービスや地域包括支援センターなどの専門的なサポートを活用することで、高齢者とその家族がより安心して生活を送ることができます。一人暮らしの継続が難しくなったときには、サービス付き高齢者向け住宅への住み替えなど、状況に応じた選択肢を検討することも大切です。
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