親の介護と仕事の両立は、多くの人が直面する課題です。介護にかかる負担や時間的な制約から、仕事を辞めることを検討する方も少なくありません。しかし、収入や社会とのつながりを失うことで新たな悩みが生まれる可能性もあります。
この記事では、介護と仕事の両立が難しい理由を整理し、両立が必要な理由や親の介護をしながらできる働きやすい仕事を詳しく解説します。さらに、両立を成功させるためのポイントや、困ったときに頼れるサービスもご紹介します。介護と仕事のバランスを取りながら、安心して働き続ける方法を見つけましょう。
- 在宅やフレキシブルな働き方が可能なIT関連、WEB系、クリエイティブ系の職種が両立しやすい
- 介護休業給付金などの支援制度を活用することで、介護と仕事の両立が可能になる
- 要介護認定の取得や地域包括支援センターへの相談など、公的支援の活用が重要である
介護と仕事の両立がきつい3つの理由
高齢の親が要介護状態になると、仕事を続けながらの介護に直面する人が増えています。40代や50代前半の働き盛りの年齢で、突然親の介護が必要になり、どのように仕事と両立させればよいか悩む方も少なくありません。
ここでは、介護と仕事の両立を難しくする3つの理由について解説します。
仕事で残業ができない/休みが多くなってしまう
親の介護をしていると、残業を断ったり休みを取ったりする機会が増えてしまいます。1、2回であれば職場の理解も得られやすいものの、頻繁になると周囲からの理解を得にくくなってしまう現実があります。特に、休みが多くなると業務を引き継いでもらう必要が生じ、同僚に負担がかかることで職場内に不公平感が生まれることもあります。
さらに、社内の上司や同僚だけでなく、取引先などにも影響が及ぶ場合もあり、そのような状況が長く続くと、次第に職場に居づらい雰囲気となってしまうケースも少なくありません。
身心ともに負担が大きい
介護には日常生活の支援や身体的なケア、移動のサポートなど、体力を必要とする活動が多く含まれています。長時間の立ち仕事や重い荷物(人)の移動など、肉体的な負担が大きい作業が日常的に発生します。さらに、仕事と介護を両立する場合、十分な休息や睡眠を確保することが難しくなり、疲労が蓄積されやすい状況に陥ります。
また、大切な人が病気などの身体的な課題に直面している状況を目の当たりにすることで、心配や悲しみといった感情的なストレスも増大します。このような精神的な負担は、仕事への集中力やパフォーマンスにも影響を及ぼすことがあります。
介護がいつまで続くかわからない
公益財団法人・生命保険文化センターの調査によると、平均介護期間は5年弱とされています。ただし、これはあくまでも平均値であり、個人差が大きく、介護が必要な期間を事前に予測することは困難です。
介護期間が長期化すると、精神的な負担はさらに大きくなります。実際に介護を始めると、介護を始める前よりも「想像以上に精神的な負担が大きかった」と感じる方が多いのが現状です。終わりが見えない不確実性は、介護者のストレスや心理的負担を増加させる大きな要因となっています。
また、要介護度合いが変化する可能性もあり、常に状況を見極めながら対応を変えていく必要があることも、精神的な負担を重くする原因となっています。
介護と両立できない!でも仕事を続けるべき3つの理由
介護と仕事の両立に悩み、介護に専念するために仕事を辞めることを検討される方も多くいらっしゃいます。しかし、介護離職にはさまざまなリスクが伴います。
以下では、介護をしながらでも仕事を続けるべき理由について解説していきます。
収入がなくなる/再就職が難しくなる
一旦介護離職をすると、生活費と介護サービスの利用費を合わせた経済的負担が大きくなります。貯金や親の年金だけでは長期の介護期間をまかなうことは困難です。また、厚生労働省が民間企業に委託した調査によると、介護離職者の再就職率は約半数にとどまっています。
特に40~50代での介護離職は、再就職時に年齢による不利な扱いを受けやすく、以前と同水準の収入を得られる仕事に就くことは極めて困難です。さらに、介護期間が長期化するほど、職場復帰のハードルは高くなる傾向にあります。
介護休業給付金を受けられなくなる
介護休業給付金は、2週間以上にわたり常時介護を必要とする対象家族の介護のために休業した場合に支給される制度です。給付金額は介護休業開始時の月額賃金の67%が支給され、同一の対象家族について93日を限度に3回まで分割して取得することができます。
ただし、この制度を利用するためには、介護休業開始日前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上あることが条件となります。仕事を辞めてしまうと、この給付金を受給する資格を失ってしまいます。介護期間中の収入を確保するためにも、可能な限り雇用関係を維持することが重要です。
参考:厚生労働省|介護休業制度
介護と離れる時間をつくれる
仕事は、介護から一時的に離れることができる貴重な機会を提供します。ずっと自宅にいて介護を続けていると、だんだん精神的に辛くなってしまう可能性が高くなります。フルタイムでの勤務が難しくても、短時間勤務や週数日でも職場で過ごす時間を持つことで、心身のリフレッシュが可能になります。
また、職場での人との関わりは、介護の悩みを相談できる機会にもなり得ます。社会とのつながりを保つことで、介護者自身のメンタルヘルスを保つことができ、結果として介護の質の向上にもつながります。介護に専念することで、かえってストレスが蓄積してしまうケースもあるため、適度な距離感を保つことが重要です。
親の介護しながら出来る仕事は?働きやすい職種7選
親の介護と仕事の両立を考える際、働き方の自由度が高く、時間の融通が利きやすい職種を選ぶことが重要です。
以下は、介護との両立がしやすい職種の一例です。
- IT関連
- 経理
- データ入力・軽作業
- WEBライター
- インサイドセールス
- Instagram運用代行
- クリエイティブ系
これらの職種は、在宅での業務が可能であり、時間の融通が利きやすいという特徴があります。
以降では、それぞれの職種について解説します。
IT関連
ITの知識や対応力があれば、在宅で仕事を進められるヘルプデスクは介護との両立に適しています。主に会社のIT部門に属し、社員のITツールやシステムに関する問い合わせに回答する業務を担当します。仕事の相手が同じ会社の従業員となるため、突発的に介護で不在になってもリカバリーが効きやすいという利点があります。
また、プログラマーやCADオペレーターも、業務のほとんどをパソコンで進めることができます。特にCADオペレーターは、建築や機械製品の設計など活躍の場が広く、経験を積めばさまざまな業種への転職も可能です。
経理
経理の仕事は、会社の日常取引の記録や決算書作成などを行う事務職です。数字とExcelの操作スキルが求められますが、業務はパソコンのみで完結する事務作業が中心となります。マニュアル化されているケースが多いため、読解力や記憶力のある方に向いています。
在宅でリモートワークをしながら働くことも可能で、年収は450万円程度が見込めます。一度経理の仕事を覚えれば、自分の作業効率を高めることで介護の時間も確保しやすくなります。
データ入力・軽作業
データ入力は、手書きのアンケートやデータをWordやExcelなどに入力していく仕事です。パソコンでのタイピングスキルと長時間の集中力が必要ですが、自分で時間をコントロールしやすい特徴があります。
正社員だけでなく、派遣社員や副業としても働くことができ、親の介護が忙しくフルタイムで働けない場合は、派遣会社に登録してデータ入力の仕事を紹介してもらうことも可能です。
WEBライター
WEBライターは、WEBメディアに掲載する記事を執筆する仕事です。優れた文章力や情報収集力が求められますが、パソコンさえあれば場所や時間を問わず仕事ができます。金融、エンタメ、不動産などさまざまなジャンルのメディアがあり、メディアの方向性に合わせた記事を書いていきます。
納期さえ守れば働き方は自由で、介護メディアなどでは自身の経験を活かした記事を書くこともできます。
インサイドセールス
インサイドセールスは、オンライン商談での営業活動を担う仕事です。アポイント取得から商談、契約締結まで全てオンラインで完結できるため、在宅で働くことが可能です。商談時間は基本的に決まっており、アポイントを入れる時間も自分で調整できるため、介護との両立がしやすい職種です。
平均年収は491万円と比較的高く、経験を積めばさらに待遇の良い会社への転職も可能です。
Instagram運用代行
Instagram運用代行は、企業や店舗のインスタアカウントの運用を代行する仕事です。投稿内容の企画、画像作成、メッセージやDMへの返信などが主な業務となります。スマートフォンだけで仕事ができ、投稿を作り溜めることも可能なため、介護の合間に仕事を進められます。
近年、インスタグラムを活用した集客に注目が集まっており、企業からの需要も高まっています。
クリエイティブ系
WEBデザイナーは、ウェブサイトやバナーの制作、ロゴデザインなどを担当します。デザインソフトを使用する業務が中心で、在宅ワークが可能です。また、動画編集者は、動画素材のカットやエフェクト挿入、テロップ入れなどの編集作業を行います。
イラストレーターやカメラマンも、制作活動の多くを自宅で行うことができ、時間の融通が利きやすい職種です。クライアントの要望に応える高い技術力は必要ですが、実績を積めばフリーランスとしての独立も可能です。
親の介護をしながら仕事を両立させるポイント
介護と仕事の両立は、体力的にも精神的にも大きな負担となります。しかし、適切な支援制度やサービスを利用することで、その負担を軽減することができます。
ここでは、親の介護と仕事を両立させるための重要なポイントについて解説します。
要介護認定を受ける
どれだけ体力に自信がある方でも、仕事をしながら自分だけで親の介護をすることは困難です。介護サービスを利用するためには、まず要介護認定を受ける必要があります。認定は要支援1から要介護5までの区分に分けられ、その区分によって利用できるサービスの内容や費用負担が変わってきます。
要介護認定の申請は市区町村の窓口で行うことができます。認定を受けることで、介護保険制度を利用したさまざまなサービスを受けることが可能になり、仕事との両立もしやすくなります。
家族間で介護の分担について話し合う
親の介護の問題を自分一人で抱え込まないように、家族や親戚などに相談することが重要です。兄弟姉妹が交代で介護を担当することで、負担を軽減できる可能性があります。
特に親がまだ元気なうちに、介護が必要になった場合の対応について家族で話し合っておくことをおすすめします。遠方に住んでいたり、あまり仲が良くない場合でも、できる範囲での協力を依頼することで、介護の負担を分散させることができます。
働き方を変える
フルタイムでの勤務が難しい場合は、短時間勤務や在宅勤務など、より柔軟な働き方への変更を検討してみましょう。最近では新型コロナウイルスの影響もあり、在宅勤務制度を導入する企業が増えています。
また、正社員から派遣社員やパート・アルバイトへの転換も選択肢の一つです。派遣は時給が比較的高く、勤務日数や時間の調整が可能です。さらに、派遣会社による手厚いフォローも受けられるため、介護との両立がしやすい働き方といえます。
地域包括支援センターに相談する
介護について悩んでいる場合は、各自治体に設置されている地域包括支援センターに相談することをおすすめします。保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーが配置されており、介護に関するさまざまな相談を無料で受けることができます。
仕事で時間が取れない場合は電話での相談も可能です。介護サービスの利用方法や、仕事との両立についてアドバイスをもらえるため、早めに相談することで適切な支援を受けることができます。
介護サービスを利用する
親の介護の負担を軽減するために、介護サービスの利用を検討することが重要です。例えば、食事の準備や掃除、買い物などの生活支援から、入浴や排せつの介助といった身体介護まで、必要に応じてさまざまなサービスを利用することができます。
また、介護保険制度には「住宅改修費の支給」もあり、自宅のバリアフリー化などの支援も受けられます。サービスの利用によって介護の負担を軽減し、仕事との両立を図ることができます。
親の介護と仕事の両立に困ったらくらしのセゾンの「親サポセレクト」にご相談ください
親の介護と仕事の両立は、想像以上に大きな負担となります。特に親御さまと離れて暮らしている場合、頻繁な帰省が難しく、日々の見守りや支援に不安を感じることも少なくありません。
くらしのセゾンが提供している「親サポセレクト」は、離れて暮らす親御さまの暮らしをサポートするサービスです。ご自宅で突然の体調変化が生じたときの見守り・駆けつけサービスから、買い物や通院などの付き添い代行、入院や施設入居時の準備や引っ越しのサポートまで、経験豊富な専任スタッフがきめ細かく対応してくれます。
「親サポセレクト」は、以下のような方に特におすすめです。
- 同居していない高齢の親の安否確認を毎日電話で行っているが、緊急時に駆けつけてくれるサービスを探している方
- 仕事で頻繁に帰省できず、外出の付き添いや家事の代行をお願いしたい方
- 仕事中にすぐ連絡が取れないため、親の日常生活が心配な方
- 介護や相続についての不安があり、専門家に相談したい方
「親サポセレクト」では、ご家族の状況やご要望に応じて、最適なサービスの組み合わせを提案してくれるので、まずはお問い合わせしてみてはいかがでしょうか。
おわりに
親の介護と仕事の両立は、適切な支援とサービスを活用することで実現可能です。介護離職を避け、自身のキャリアを継続することは、経済的な安定だけでなく、メンタルヘルスの維持にも重要な役割を果たします。職種によっては在宅ワークやフレキシブルな働き方を選択し、介護保険制度や支援サービスを上手く活用することで、親の介護と仕事を両立させながら、充実した生活を送ることができます。支援制度の利用や働き方の見直しを通じて、介護と仕事の調和のとれたライフスタイルを実現することが可能となります。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。