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おひとりさまが終活で考えるべきことは?司法書士がやさしく解説します!

おひとりさまが終活で考えるべきことは?司法書士がやさしく解説します!
松野下 利代

執筆者

司法書士法人 松野下事務所 代表社員 司法書士

松野下 利代

1981年に東京・池袋で司法書士 松野下事務所を開設。2016年からは家族信託など生前対策・相続対策のコンサルタント業務を行う一般社団法人エム・クリエイトを設立。現在、超高齢社会の諸問題を解決する専門家として活動。

日本は世界で最も急速に高齢化が進む国のひとつです。この高齢化社会において、特に「おひとりさま」と呼ばれる方が増えており、「おひとりさま」の終活の重要性が高まっています。自分の人生の最期を考え、身辺整理をしていく「終活」は、「おひとりさま」にこそ、必要な備えではないでしょうか。今回は、経験豊富な専門家が「おひとりさまの終活」について具体的な実例をもとにやさしく解説します。

「おひとりさま」とは?「終活」とは?

「おひとりさま」とは?「終活」とは?

まず、この文章を書いている私自身が2025年に80歳 になる高齢者です。約45年司法書士として仕事をし、近頃は友人、知人とお互いに老いについて嘆いたり、笑い合ったりしています。

「おひとりさま」とは具体的にどのような人を指すのでしょうか。年齢を問わず共同生活者のいないひとり暮らしの方は全て「おひとりさま」ですが、この記事では、ひとり暮らしの高齢者を「おひとりさま」としてお話しします。ただ、この方達の中にもさまざまな背景の方がいらっしゃいます。

  • ひとり暮らしではあるが、近くに子や孫、親族もいて日常的に連絡し合っている
  • 遠方に子や孫、親族がいて連絡はしている
  • 身近に友人、知人がいて日常的な交友関係がある
  • 親族はいるが疎遠
  • 知る限り親族はいない

そして「終活」とは何をすることでしょうか。人には例外なく最期の時が訪れます。ただ、その時がいつかはわかりません。私が平均寿命まで生きられるとしても、残された時間は僅か8年余りです。その最期の時まで、自分が安心して心穏やかに生きるためにすべきこと、生きている間、さらには死後も遺された人たちの負担が軽くなるよう準備することが終活なのだと思います。

引用元:地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所「認知症と共に暮らせる社会をつくる

「終活」で重要なこと

「終活」で重要なこと

では、具体的には今何をしておけば良いのでしょうか。大きく分けて、重要なのは以下の3点でしょう。

  • 身心状態の把握(認知症対策)
  • 経済状態の把握
  • 相続の準備(死後の準備)

身心状態の把握について

健康診断などを受診し、自分の体調を知っておくことは大切です。すでに持病があり通院している方は、緊急時に対応してもらえる「かかりつけ医」を持ちましょう。

身体的な疾患は自分で気づいたり検査でもわかりますが、高齢者で最も問題になる「認知症」は判断が非常に難しいです。

個人差はありますが、誰でも加齢により記憶力や判断力などは衰えます。子どもや孫、親族が近くにいる方、友人・知人と交流がある方、または遠方であっても定期的に連絡している方であれば、周囲の方が異常に気づいて検査や通院を手配してくれるでしょう。困るのは、親族はいるものの疎遠になっている方、そもそも親族がいない方、人との繋がりが薄い方の場合で、本人が気づかないうちに症状が進み、周囲が気づいた時には大変な状態になっている可能性があることです

現在は認知症も早期発見と治療で進行を遅らせたり改善できるとされています。今まで使っていた機械の操作がわからない、約束を忘れるなどご自分でも「何かおかしい?」と感じたら、周囲の方に相談し、専門医の検査を受けることをおすすめします。

たとえ認知症という病気ではなくても、加齢による認知機能の衰えで、日常生活、社会生活が難しくなることは避けられません。

そのときは、外部の専門家のサービスを積極的に使いましょう。介護保険の相談は、居住地の市町村窓口や、地域包括支援センターで受け付けています。要介護の認定にならなくても、要支援の認定を受けてケアマネージャーやヘルパーさんとの交流ができれば、困った時に相談できますし、ひとり暮らしであれば日常生活の見守りを頼むこともできます。

引用元:地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所「認知症と共に暮らせる社会をつくる

経済状態の把握について

次に自分の経済状態の把握についてです。ご自分の資産がどこに、どれくらいあるか把握されていますか。預貯金などの流動資産、ご自宅や賃貸物件など不動産、保険、株式など全ての保有資産を調べてみてください。 すっかり忘れていた銀行口座に預金が残っていることもあります。。さらに、給与や年金、賃貸アパートの賃料などの収入を調べて把握しておくことも必要です。

次に、生活に必要となる費用はどのくらいになるでしょうか。

  • 住居費(家賃・自宅であれば固定資産税などを含む維持費)
  • 日常生活費(食費、光熱費など)
  • 医療費(手術費、入院費、介護費用など)
  • 施設入所が必要となった場合の一時金
  • 交際費(趣味、旅行など)

収入から生活に必要な費用を引いてマイナスであれば保有資産を取り崩して生活することになります。近年の平均寿命を考えると、90歳まで生きるとして計算するのがおすすめです。それでも残りがあれば、相続財産になります。とはいえ、財産の多い少ないに関わらず、相続の準備をなさった方が良いでしょう。

特に「おひとりさま」で相談相手のいない方は、ご自分がしっかりしているうちにこの計算をしておかないと、後々困ることにもなりかねません。

相続の準備について

プラス資産が残りそうな方は、相続について自分の意志をはっきり文書で残すことが大切です。

皆さんはご自分の相続人が誰かご存知ですか。遺言書がない場合、民法で相続人とその順位、相続割合が決められています。これを法定相続といいますが、死亡した順番により相続人とその割合が変わるため、ご自分が誰かの相続人になる可能性があることも含めて、相続について知識を深めることをおすすめします。

また、相続はプラスの財産だけでなく、借金や負動産などのマイナスの財産にも適用されます。先に述べた資産状態の把握で、生存中に赤字が発生しそうな場合は、マイナスの相続財産を残さないようにしましょう。

「どうせ大して残らないから自分の遺す遺産などどうなってもいい」と思っている方もいらっしゃるでしょうが、実は遺産相続での争いや相続手続きにかかる手間に遺産額の大小はあまり関係ありません。遺産相続を円滑におこなうために遺言書を作ることは有効な手段です。なるべく自筆証書ではなく、公正証書にすることをおすすめします。特に、法定相続人が誰もいない方は、遺言書で相続財産の行方を決めておかないと、最終的に国庫に入ってしまいます。ご自分の人生観、価値観で納得できる人、法人、団体への遺贈をお考えになるのもよろしいでしょう。

おひとりさまの最重要課題「身元保証」

おひとりさまの最重要課題「身元保証」

さらに、一人暮らしの高齢者が最も困ることの一つは、身元保証人を求められた場合でしょう。金融機関の借入契約は勿論、入院、手術、施設入所、賃貸借契約などさまざまな場面で身元保証を要求されます。

親族、友人で身元保証を引き受けてくれる方がいれば良いですが、債務の連帯保証まで含む身元保証を引き受けてくれる方は、なかなか少ないのではないでしょうか。

この問題の解決のために、民間の事業者と身元保証契約を結ぶ方法があります。事業者によってサービスの内容や契約の方式、費用など異なりますが、中には悪徳な事業者も存在しますので、よく調べることが必要です。主なサービス内容は、生存中の生活支援、財産管理、死後の葬送支援、遺言執行、死後事務などを引き受けるのが一般的です。

私が購読している大手日刊紙に「引き取り手のいない遺体、遺骨が急増している」という記事がありました。身寄りの無い一人暮らしの方が死亡すると、居住地の市町村は苦労して親族を捜しますが、やっと見つけても引き取りを拒否されることも多いそうです。

私が後見人を引き受けていた方が亡くなったときにも同じようなことになりました。病院から即日遺体の引き取りを求められ、慌てて葬儀会社を手配してご遺体を引き取りました。私が弟さんをどうにか説得し、火葬場に同席いただけましたが、海外にいる実の息子さんは、埋葬については 「そちらで勝手に処分してもらいたい」との返事でした。最終的には、弟さんの了解を得て共同墓地に埋葬いたしました。このように兄弟や子どもがいても関係性によっては、死後の手続きを行政や他人に頼ることになってしまいます。

身元保証を提供する事業者の中には、死後の諸手続きも対応できる事業者がいます。契約前に提供サービスや条件などをよく確認してください。

また、神奈川県横須賀市が有名ですが、終活支援制度がある自治体があります。エンディングノートなどを記録している方もいらっしゃるでしょうが、本人が亡くなった時にすぐ役立てられるようにするためには、信頼できる方に預かってもらったり、保管場所を教えておく必要があります。

今までお話ししてきたとおり、やっておかなければならないことは山積みです。しかし、年齢とともに体力も気力も判断力も徐々に衰えてしまいます。生きている間のこと、死後のこと、できることから早めに取り組みましょう。

引用元:横須賀市 わたしの終活登録

「家族信託」という選択肢

「家族信託」という選択肢

この数年マスコミをはじめ紙面上、ネット上でも取り上げられることが多くなっている「家族信託」という制度があることはご存知でしょうか。超高齢社会になった日本で平均寿命と健康寿命の間には男性8.73年、女性12.06年の差があります。平均寿命と健康寿命の間に、一人で物事を解決できなくなっていく可能性が高いのです。

引用元:厚生労働省 eヘルスネット 2019年統計

平均寿命と健康寿命の差

家族信託は、元気な時に財産の運用、管理、処分などを信頼できる家族、知人に頼み、以降は自分の健康状態にかかわらず契約したとおりに財産を使ってもらう仕組みです。

信託できる財産は、一部例外はありますが、財産的価値のあるものならほとんど可能です。財産を活かす視点から家族信託が優れているのは、「成年後見制度」や「遺言」の機能にくらべて、ご本人生存中の「資産凍結回避」のみでなく「資産承継先指定」という機能があり、遺言では指定不可能な二代先、三代先へと財産を引きつぐ方の指定ができることです。

一方「成年後見制度」は家庭裁判所が関与するので、ご本人の資産を安全に維持することに主眼があり、運用、処分などは制限されます。本人のためにする支出も制限を受ける場合があります。

ご注意いただきたいのは 「家族信託」はご本人がする契約行為なので、十分な意思能力がないと利用できません。つまり、認知症などでご本人の認知機能が低下してしまってからでは利用できないのです。

「もっと早く知っていれば家族信託が利用できたのに」と嘆かれるご家族が多勢いらっしゃいます。

仏陀が四苦(生、老、病、死)と言ったように、人は生まれた時から生きるという苦を背負っています。この先の老、病、死も見据えて全部背負うのが大変だと思ったら、分け持ってくれる方に頼みましょう。

家族信託は、家族信託に詳しい司法書士などの専門家に相談し、ご自身はもとよりご家族の希望にも合致した契約にすることが大切です。

おわりに

人生100年時代を迎え、ひとり暮らしを楽しむ高齢者にとって、生活の質を向上させることは非常に重要です。おひとりさまの悩みや将来の希望に寄り添い、適切な解決策を見つけることが求められます。特に『終活』に関心がある方は、専門的なアドバイスを受けることが大切です。信頼できる司法書士の先生に相談することで、安心して将来の準備を進めることができるでしょう。

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