一人っ子が親の相続をする場合、兄弟姉妹とのトラブルが発生しにくい一方で、すべての手続きを一人で進めなければならず、負担が大きくなることがあります。また、債務や不動産管理など、慎重に進めるべきポイントも多いため、事前の準備が重要です。
本記事では、一人っ子が相続する際のメリット・デメリットを整理し、具体的な手続きの流れを詳しく解説します。また、相続で注意すべきケースや、スムーズに手続きを進めるための対策についても紹介します。一人で相続手続きを進めることに不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
- 一人っ子の相続は手続きがシンプルで相続トラブルのリスクが低い一方、相続税負担が重くなるなど、メリット・デメリットがはっきりしている
- 一人っ子でも異母・異父きょうだいがいる可能性があり、必ず相続人調査を行う必要がある
- 相続登記されないまま被相続人の配偶者が亡くなるなど、複雑な相続のケースでは専門家に相談するとスムーズ
- 相続の負担を軽減するために、生前贈与や実家の整理など、親が健在なうちからできる対策がある

一人っ子の相続│メリット

一人っ子の相続では、手続きがスムーズに進みやすく、トラブルのリスクが低いという大きなメリットがあります。
ここでは、相続人が少ないことで生まれる利点について、具体的に見ていきましょう。
相続トラブルのリスクが低い
一人っ子の相続では、兄弟姉妹と遺産を分け合う必要がないため、遺産分割を巡るトラブルが起きにくいのが特徴です。
両親がともに亡くなった場合、相続人は子だけとなるため、遺産分割協議も不要です。また、どちらかの親が健在の場合でも、相続人は配偶者と子の2名のみとなるため、多人数での話し合いと比べて意思決定がスムーズに進みやすいといえます。
手続きに必要な書類が少ない
相続手続きでは、相続人全員分の戸籍謄本や印鑑証明書などの書類が必要となります。しかし、一人っ子の相続では相続人が1〜2名と少ないため、準備する書類も最小限で済みます。
また、相続人が複数いる場合は遺産分割協議書の作成が必要ですが、子のみが相続人の場合は不要となります。このように、手続きに必要な書類が少なくて済むことも、一人っ子の相続のメリットの一つです。
相続税額の計算がシンプルで把握しやすい
相続税の計算において、一人っ子の相続では計算がシンプルになります。これは、相続人が少ないことで、遺産分割の割合が明確になるためです。
相続人が複数いる場合、法定相続割合とは異なる割合で遺産分割を行うケースも多く、その場合は複雑な計算が必要となります。一方、一人っ子の場合は遺産をすべて単独で相続するか、もしくは配偶者と法定相続割合(各2分の1)で分けることが一般的なため、相続税額の計算や把握が容易になります。
このように、一人っ子の相続には手続き面で有利な点が多くありますが、相続税の基礎控除額が少なくなるなどのデメリットもあります。次回は、一人っ子の相続における注意点や対策について解説していく予定です。
一人っ子の相続│デメリット

一人っ子の相続は手続きがシンプルになるメリットがある一方で、相続人が少ないがゆえの課題も抱えています。
以下では、一人っ子の相続で直面する可能性のある3つのデメリットについて解説します。
一人で手続きや財産整理を進めなければならない
一人っ子の相続では、相続に関するすべての手続きを一人で担うことになります。遺言書の確認から始まり、相続人調査、相続財産の調査、相続税の申告など、複数の相続人がいる場合と同じ手続きを、協力者なしで進めていく必要があります。
特に実家の家財道具の整理は、一人では大きな負担となります。長年住んでいた家にはさまざまな思い出の品や大型の家具が残されており、これらの仕分けや処分を一人で判断し実行しなければなりません。
債務がある場合全額引き継ぎとなる
相続では、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、住宅ローンや事業の借入金などのマイナスの財産(債務)も引き継ぐことになります。一人っ子の場合、これらの債務も全額自分で引き継ぐことになるため、返済の負担が重くのしかかる可能性があります。
例えば、親が事業の連帯保証人になっていたことが相続後に判明し、多額の債務が発生するケースもあります。複数の相続人で分担できる場合と比べ、一人で全額を負担しなければならない状況は大きな課題となります。
相続税の負担が一人にのしかかる
一人っ子の相続では、相続税の負担も一人で背負うことになります。相続税の計算には基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)が適用されますが、一人っ子の場合は法定相続人の数が少ないため、基礎控除額も低くなります。
さらに、二次相続(残された親が亡くなった際の相続)では、相続税の負担が特に重くなりやすい傾向があります。これは、配偶者の税額軽減が使えなくなることや、小規模宅地等の特例の適用が制限される場合があるためです。
このように、一人っ子の相続には相続人が少ないことによるさまざまなデメリットが存在します。これらの課題に対する具体的な対策方法については、後ほど詳しく解説していきます。
一人っ子の相続手続きの流れ

相続手続きは期限のある手続きが多く、一定の順序に従って進めていく必要があります。一人っ子の場合、すべての手続きを一人で行うことになるため、あらかじめ流れを把握しておくことが重要です。
ここでは、一人っ子の相続における基本的な手続きの流れを解説します。
遺言書の確認
相続手続きの最初のステップは、遺言書の有無を確認することです。
遺言書には以下の3種類があり、それぞれ保管場所が異なります。
- 自筆証書遺言:自宅や法務局
- 公正証書遺言:公証役場
- 秘密証書遺言:公証役場
一人っ子であっても、遺言書によって法定相続人以外の第三者に財産を遺贈する場合があります。自筆証書遺言を発見した場合は、法務局保管のものを除き、家庭裁判所での検認手続きが必要です。
相続人の調査
一人っ子であっても、相続人調査は必ず行う必要があります。被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を収集し、異父母兄弟や認知された婚外子の有無を確認します。
【戸籍謄本の収集手順】
- 被相続人の最新の戸籍謄本を取得
- 戸籍に記載された本籍地をもとに、過去の戸籍(除籍、改製原戸籍)を遡って取得
- 出生時までの戸籍をすべて確認
相続財産の調査
相続財産には、プラスの財産(預貯金、不動産、有価証券など)とマイナスの財産(借金、未払金など)があります。
以下の方法で調査を進めます。
- 預貯金:通帳や郵便物の確認
- 不動産:固定資産税の納税通知書や登記事項証明書の確認
- 生命保険:保険証書の確認、生命保険協会への照会
- 借金:銀行の借入状況の確認
相続税の課税価格は、「遺産総額-基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)」で計算します。
相続税の申告と納税
相続税の申告・納税は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課されます。
【納付場所】
- 税務署
- 金融機関
- 郵便局
預貯金の解約と払い戻し・不動産の相続登記等
各種財産の名義変更手続きを行います。不動産の相続登記は2024年4月1日から義務化され、相続を知った日から3年以内に申請する必要があります。期限を過ぎると10万円以下の過料が科される可能性があります。
【その他の主な名義変更手続き】
- 自動車、バイクの名義変更
- ゴルフ会員権の名義変更
- 電話加入権の名義変更
- 各種保険契約の名義変更
相続手続きは複雑で時間がかかるため、期限に注意しながら計画的に進めることが重要です。不明な点がある場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
相続の際に気をつけたいケース

一人っ子の相続では、一見シンプルに見える手続きでも、状況によって複雑になるケースがあります。
ここでは、相続の際に特に注意が必要な5つのケースについて、具体的な対処方法とともに解説します。
被相続人の配偶者が健在である場合
父親または母親のどちらかが亡くなり、もう一方の親が健在な場合は「一次相続」となります。この場合、法定相続分に従って被相続人の配偶者と子でそれぞれ2分の1ずつ財産を相続することになります。
ただし、将来的に残された親も亡くなる「二次相続」が発生することを見据えて、遺産分割を検討する必要があります。二次相続では相続税の負担が重くなりやすいため、一次相続の段階から税理士等に相談し、対策を立てることをおすすめします。
異母・異父きょうだいなど知らない相続人がいる場合
亡くなった親に前婚での子供がいる場合や、婚外子が認知されている場合は、その子供も法定相続人となります。このような異母・異父きょうだいの存在は、戸籍を確認するまで分からないことも多々あります。
仮に異母・異父きょうだいの存在が判明した場合は、遺産分割協議が必要となります。関係性が希薄な場合は協議が難航する可能性もあるため、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。
相続登記されないまま被相続人の配偶者が亡くなった場合
例えば、父の死後に相続登記をしないまま母も亡くなった場合、「数次相続」という状態になります。この場合、通常は「父から母」「母から子」という2回の相続登記手続きが必要になります。
ただし、「中間省略登記」という制度を利用することで、「父から子」へ直接相続登記することが可能な場合があります。この制度の適用可否については、司法書士に相談することをおすすめします。
亡くなった親の準確定申告が必要になる場合
以下のような場合は、相続人が亡くなった親の準確定申告を行う必要があります。
- 自営業を営んでいた
- 不動産収入があった
- 給与所得が2,000万円を超えていた
- 2か所以上から給与を受け取っていた
準確定申告の期限は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内です。期限を過ぎると加算税等のペナルティが課される可能性があるため、早めに税理士に相談しましょう。
相続放棄を検討している場合
一人っ子でも相続放棄は可能です。借金など債務が資産を上回る場合や、相続したくない理由がある場合は、相続放棄を検討する価値があります。ただし、相続放棄をすると原則としてその決定を撤回できず、最終的に財産は国庫に帰属することになります。
また、限定承認という方法もあります。これは相続財産の範囲内でのみ債務を引き継ぐ制度です。相続放棄と限定承認はいずれも相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。
これらのケースに直面した場合は、早めに弁護士や税理士などの専門家に相談し、適切な対応を検討することが重要です。
一人っ子の相続で悩まないために!今からできる3つの対策

一人っ子の相続では、すべての手続きや判断を一人で担う必要があるため、事前の準備が重要になります。ここでは、相続発生前から取り組める3つの具体的な対策をご紹介します。
これらの対策を実践することで、将来の相続手続きをよりスムーズに進めることができます。
財産の生前贈与を行う
一人っ子の相続では相続税の負担が大きくなりやすいため、親が健在なうちに生前贈与を検討するのがおすすめです。生前贈与には以下のような方法があります。
- 暦年贈与:年間110万円までの贈与は非課税
- 教育資金の一括贈与:1,500万円まで非課税(2026年3月31日まで)
- 結婚・子育て資金の一括贈与:1,000万円まで非課税(2025年3月31日まで)
ただし、贈与から3年以内に相続が発生した場合は相続財産に加算される点や、定期的な贈与は「定期贈与」とみなされる可能性がある点に注意が必要です。
債務や不動産を明確にしておく
相続財産には、目に見えない債務が含まれていることがあります。
例えば、以下が相続後に発見すると対応が困難になるため、親が健在なうちに財産状況を把握し、可能な限り債務を返済しておくことが重要です。
- 住宅ローンの残債
- 事業の連帯保証人としての債務
- 医療費や介護費用の未払い
- 固定資産税の未納
また、不動産については登記簿を確認し、正確な所有関係や担保権の設定状況を把握しておきましょう。
実家の家財や親の持ち物の整理をしておく
相続が発生すると、実家の片付けは基本的に相続人が行うことになります。何十年も住んだ家には大量の家財道具が残されていることが多く、一人での整理は大きな負担となります。
対策として、親が元気なうちに以下のような整理を進めるとよいでしょう。
- 重要書類(権利証、保険証書など)の保管場所の確認
- 思い出の品の整理と継承者の決定
- 不要な家財道具の処分
- 貴重品や預貯金通帳の保管場所の確認
整理を進める際は、専門の生前整理サービスや不用品回収会社を利用するという方法もあります。親と一緒に少しずつ整理を進めることで、相続時の負担を軽減できるだけでなく、親の想いや財産に関する考えを知る機会にもなります。
このように、相続前から計画的に準備を進めることで、将来の相続手続きをよりスムーズに進めることができます。不安な点がある場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
実家の家財整理に悩んだらくらしのセゾン「遺品整理・生前整理」へ

相続手続きはシンプルに見えても、実家に残された家財の整理は大きな負担となります。特に一人っ子の場合、すべての作業を一人で進めなければならず、心理的にも体力的にも大変な作業となるでしょう。
このような状況で頼りになるのが、セゾンカードでおなじみのクレディセゾンのグループ会社くらしのセゾンの「遺品整理・生前整理」サービスです。経験豊富な専任のスタッフが、思い出の品や貴重品、供養が必要な品を独自の分別基準で丁寧に仕分けし、大切なものを誤って処分することがないよう、細心の注意を払って作業を進めます。
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くらしのセゾンの強みは、以下の3つの特徴にあります。
- 経験豊富なスタッフによる丁寧な対応
- 無料調査・無料お見積りの実施
- 幅広い家財整理への対応力
さらに、家財整理をきっかけに、将来の相続問題や実家が空き家になってしまう場合の負動産活用についても相談が可能です。また、生前整理や空家整理、リフォームにも対応しており、一人暮らしや高齢の親の施設入居に伴う整理作業も承っています。財産整理や家財整理についてのアドバイスも含めて、きめ細かなサポートを提供しています。
特に急を要する場合でも、現場調査から作業完了までの要望に柔軟に対応が可能です。また、床やクロスの張替えなどの一般的なリフォームから、特殊清掃や消臭作業まで、幅広いニーズに応えることができます。
一人っ子が直面する相続に伴う実家の家財整理や親の生前整理にお悩みの方は、くらしのセゾンの「遺品整理・生前整理」に問い合わせてみてはいかがでしょうか。

おわりに
一人っ子の相続では、相続人が少ないことによるメリットを活かしながら、デメリットへの事前対策が重要です。相続手続きを一人で進める必要があるため、遺言書の確認から相続登記まで、各ステップの内容を理解し、計画的に進めることが大切です。親が健在なうちから生前贈与や財産整理を行い、専門家に相談しながら準備を進めることで、将来の相続をスムーズに進めることができます。相続の専門家に早めに相談することで、知らない相続人の存在や相続税の負担など、予期せぬ問題にも適切に対応することができるでしょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。