近年、日本では「孤独死」が社会的な問題として注目されています。特に独身者においては、ひとり暮らしが一般化し、孤独死のリスクが高まっています。孤独死は、孤立した環境で死亡し、長時間発見されない状況を指し、その原因として生活環境や社会的背景が深く関係しています。
本記事では、孤独死の現状やその背景にある要因を掘り下げ、独身者が孤独死を防ぐために取るべき具体的な対策について詳しく解説します。また、孤独死リスクを軽減するための選択肢についても触れ、安心して暮らすためのヒントをお届けします。
- 日本では孤独死が増加しており、特に独身者に多く見られる現象である
- 孤独死の主な理由は、ひとり暮らし人口の増加、生涯未婚者の増加、経済的困窮、社会的孤立などである
- 独身者が孤独死を防ぐための対策として、地域コミュニティ活動への参加や見守りサービスの活用などがある
- 定期的な配食サービス利用や家族・友人との連絡維持も孤独死予防に効果的である


日本における孤独死の現状

近年、誰にも看取られず自宅で亡くなる「孤独死」が増加しています。警察庁の統計によれば、2024年第1四半期(1~3月)だけで、自宅で死亡したひとり暮らしの方は21,716人に上りました。
東京23区の統計では、孤独死の約70%が男性で、特に65~74歳の高齢男性に多く見られます。しかし注目すべきは、40~50代の働き盛り世代の孤独死も急増していることです。
東京都監察医務院の令和元年データでは、孤独死した5,554人のうち約30%が65歳以下であり、そのうち960人が40~50代でした。特に男性は45歳を超えると死亡者数が急増し、孤独死は高齢者だけの問題ではないことが明らかになっています。
参考:警視庁「警察取扱死体のうち自宅において死亡した一人暮らしの者」
参考:保健医療局「東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計」
孤独死が増えている理由

孤独死が増加している背景には、ひとり暮らしの増加や生涯未婚率の上昇といった社会構造の変化があります。また、経済的困窮による医療アクセスの制限や、地域コミュニティの希薄化も大きな要因となっているのです。
これらの複合的な要素が絡み合い、独身者の孤独死リスクを高めている現状について詳しく見ていきましょう。
ひとり暮らし人口の増加
総務省の平成30年度の資料によると、ひとり暮らしの「単独世帯」の割合は2000年頃の約27%から現在は35%以上に増加しています。このままのペースでは、2040年には単独世帯が全体の40%に達すると予測されています。
ひとり暮らしが増える主な理由は、生涯未婚の人の増加や、結婚後も配偶者の死亡・離別、子どもの独立などでひとり暮らしとなる人が増えていることが挙げられます。
ひとりで生活していると、急な発作や自宅内での事故など体調に異変があった際に、すぐに救急車を呼んでもらえなかったり、異変に気づいてもらえなかったりするケースが増え、孤独死のリスクが高まっています。
生涯未婚者の増加
未婚率の上昇は現代社会における顕著な傾向となっており、生涯を通して独身のまま過ごす人々が増えています。これにより、家族という身近なセーフティネットを持たない単身者が増加し、孤独死のリスクが高まっています。
また、結婚経験があっても配偶者との死別や離婚によってひとり暮らしになるケース、子どもがいても独立して別居するケースなど、さまざまな理由で単身世帯化が進んでいます。
こうした家族構成の変化は、緊急時に助けを求められる同居者がいないという状況を生み出し、体調の急変や事故が発生した際に発見が遅れ、結果として孤独死につながるケースが増加しているのです。
経済的困窮により適切な医療が受けられない
経済的に困窮している人々、特にひとり暮らしの方々は、十分な医療を受けられないことで孤独死のリスクが高まっています。たとえば持病がある場合、本来なら定期的な通院で検査や診察、投薬治療が必要ですが、家賃や光熱費、食費など最低限の生活費を支払うと医療費に充てるお金が残らず、病院に行かないことで持病が悪化し、最終的に孤独死に至るケースがあります。
また、胸の痛みなど体調不良を感じても、医療費の余裕がなければ病院に行かないため、心筋梗塞などの重大な病気が見つからないまま自宅で発作を起こして亡くなってしまうことも少なくありません。このように、経済的理由から適切な医療を受けられないことが孤独死の大きな原因となっているのです。
社会的孤立と近所付き合いの希薄化
近隣との交流が乏しい状態で生活している独身者は、孤独死のリスクが特に高まります。人づきあいが苦手で近所の人とは挨拶すら交わさない、目も合わせないという生活を送っていると、万が一自宅で体調が急変して倒れても、誰にも気づいてもらえずに孤独死する可能性が高くなります。
日本では以前、「お醤油が足りなければお隣さんに借りに行く」「ご近所さんと立ち話をしてコミュニケーション」といった距離の近い付き合い方が一般的でした。そのような時代であれば、毎日散歩している人が数日見かけないと気にかけて声をかけることもありました。しかし現代では、こうした近所づきあいが希薄化し、異変があっても気づかれにくい環境になっているのです。
独身者が孤独死を防ぐための5つの対策

孤独死のリスクを減らすためには、早めの備えが重要です。自分の生活環境や健康状態を見直し、万が一に備えた準備をしておくことで、リスクを大きく軽減することができます。心身ともに元気なうちに取り組める対策は多く、将来の安心のためにも、今すぐ行動に移すことが大切です。
ここでは、独身者が孤独死を防ぐための5つの具体的な方法をご紹介します。
地域コミュニティ活動への積極的参加
趣味のグループや町内会・自治会のイベントに積極的に参加することで、近所に住む知り合いや共通の楽しみを持つ仲間が増え、孤独死のリスク低減につながります。
遠方に住む家族となかなか会えなくても、地域コミュニティとの交流を定期的に持つことで、普段から顔を合わせる仲間が増えるでしょう。「遠くの親戚より近くの他人」という言葉があるように、ご近所付き合いは、命を守る重要な役割を果たします。
たとえば、いつも参加している集まりに突然来なくなった場合、心配した仲間が連絡を入れたり、近所であれば自宅まで様子を見に来てくれる可能性が高まります。こうした地域の人々の目が、異変の早期発見につながるのです。
自治体・民間の見守りサービスの活用
自治体や民間企業が提供している見守りサービスを利用することで、緊急時にすぐに対応してもらえる体制を整えられます。自治体のサービスは主に高齢者向けですが、年齢制限なしで利用できる民間サービスも多数存在します。
たとえば、川崎市の「高齢者等緊急通報システム」は、65歳以上で持病がある方や75歳以上のひとり暮らしの方を対象に、緊急時の位置検索や警備員の即時派遣といったサポートを提供しています。月額費用は所得に応じて無料~2,070円と、比較的負担が少ないのが特徴です。
民間企業が提供する見守りサービスにはさまざまな種類があります。
見守り方法 | 家族や知人に通知されるタイミング |
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LINEアプリのメッセージ | 初回のメッセージに反応がなく、24時間後の再送メッセージにも反応がなかった場合 |
電気ポットの給湯ボタン | 給湯ボタンを押した時 |
水道、ガスの使用量 | 一定期間使用がストップ、異常に量が増えた場合 |
電気の点灯や消灯 | 24時間、点灯や消灯の動作がない場合 |
これらのサービスは特別な操作を必要とせず、日常生活をそのまま送るだけで安否確認ができる点が大きな利点といえるでしょう。
定期的な配食サービスと健康管理の徹底
生協や高齢者専門の宅配弁当サービスを利用することで、定期的に人の目が入る環境を作れます。これらのサービスでは、配達員が直接手渡しで品物やお弁当を届けるため、その際に体調の異変などに気づきやすいという利点があります。配達時に体調不良などが見られた場合には、サービス提供会社のスタッフが市町村指定の連絡先に連絡したり、必要に応じて救急車の手配も行ってくれるところもあります。
また、健康管理の面でも配食サービスは有効です。健康の基盤となる毎日の食事において、外食やコンビニ食、インスタント食品に頼りっぱなしの生活を続けると、栄養バランスが崩れ健康状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特に添加物が多い加工食品を長期間摂取し続けると、健康リスクが高まることもあるでしょう。バランスの取れた食事を届けてくれる配食サービスの活用は、栄養管理と安否確認の両面で効果的な対策といえます。
家族・友人との定期的な連絡
家族や親戚、友人知人と定期的に連絡を取り合うことは、孤独死の早期発見において非常に効果的です。普段から連絡を密に取っていれば、「いつもならすぐにメールの返信があるのに、ここ数日反応がない」といった異変に気づきやすくなります。離れて住む家族や友人が心配になって連絡したり、場合によっては直接訪問してくれる可能性も高まるでしょう。
また、万が一の事態が起きた際にも、携帯電話の履歴やメールの記録から、警察や病院の担当者がすぐに連絡先を特定できるという大きなメリットがあります。携帯電話に「ICE(In Case of Emergency、緊急時連絡先)」として家族や信頼できる友人の連絡先を登録しておくのも良い方法です。普段から誰かと連絡を取り合う習慣は、社会とのつながりを維持する上でも重要で、心理的な健康を保つことにもつながります。孤独死防止の基本として、コミュニケーションの維持を心がけましょう。
孤独死保険への加入と生前整理の実施
孤独死保険とは、自宅で亡くなった後に発生する特殊清掃費用や原状回復費用を補償する保険です。個人での加入のほか、賃貸物件の大家さんが物件全体で加入している場合もあるため、まずは居住する物件が対象となっているか確認してみましょう。
大家さんが加入していない場合は、個人で加入することも可能です。費用は各社によって異なりますが、平均して年間約1万円程度とリーズナブルな料金設定になっています。多くの孤独死保険には、部屋の原状回復費用だけでなく、火災や盗難への備えとなる家財補償、ドアロックの交換などの修理補償も含まれているため、日常生活の安心にもつながります。
また、生前整理として持ち物や財産を整理しておくことも大切です。通帳や実印、有価証券、生命保険証書、不動産権利書などの重要書類はひとまとめにして保管しておきましょう。デジタル資産として各種IDやパスワードの管理も重要で、不要なアカウントは削除し、必要なものは一覧表にしておくと便利です。エンディングノートの活用も効果的で、何をどこに保管したか、誰に連絡すべきかなどを記録しておけば、万一の場合に残された家族の負担を軽減できます。
独身者の孤独死リスクを減らすためのその他の選択肢

「孤独死」を防ぐための対策として、地域コミュニティへの参加や見守りサービスの活用などをご紹介してきましたが、より手厚く、包括的な支援を望む方には、さらに安心感のある選択肢もあります。
注目したいのが、セゾンカードでおなじみのクレディセゾンのグループ会社「くらしのセゾン」が提供する「ひとりのミカタ」。おひとりさまの“日常の安心”と“緊急時や将来への備え”をトータルでサポートする総合支援サービスです。
入院や高齢者施設入居時の【身元保証】をはじめ、病院・施設からの【緊急連絡先代行】、ご逝去後の手続きを代行する【エンディングサポート】まで幅広いサポートが受けられます。
さらに、「プラチナプラン」では、見守り・駆付けサービスに加え、ご逝去後の葬儀・埋葬・各種手続きなどをおこなう「エンディングサポート」も含まれており、孤独死の不安を大きく軽減できるでしょう。将来への漠然とした不安を抱える独身者にとって、専門家による無料相談や専任担当制の親身なサポートも心強いポイントです。
「ひとりで最期を迎えることが心配」「亡くなった後の手続きを誰に頼めばいいか不安」という方は、サービスの詳細を確認してみるとよいでしょう。今なら、エンディングメモ付きパンフレットを無料で進呈中とのことです。これからの備えを考えるきっかけとして、資料請求から始めてみてはいかがでしょうか。


おわりに
独身者の孤独死は年々増加しており、今や40〜50代の若い世代にも及ぶ深刻な社会問題となっています。ひとり暮らし人口の増加、生涯未婚率の上昇、経済的困窮、社会的孤立などが主な原因であることが明らかになりました。しかし、地域コミュニティへの参加や見守りサービスの活用、定期的な配食サービス、家族・友人との連絡維持、孤独死保険への加入といった対策を講じることで、孤独死のリスクを大幅に軽減することが可能です。早めに行動を起こし、自分に合った対策を実践することで、より安心で豊かな独身生活を送ることができるでしょう。
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