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【シニア女性の一人暮らし】老後の生活費はいくら?安心して暮らすための基本知識

【シニア女性の一人暮らし】老後の生活費はいくら?安心して暮らすための基本知識
セゾンのくらし大研究 編集部

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セゾンのくらし大研究 編集部

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シニア女性の一人暮らしは、自由で気ままな反面、経済面や将来への不安を抱えることも少なくありません。特に「老後の生活費は足りるのだろうか」という心配は、多くの人に共通する悩みでしょう。安心して暮らし続けるためには、現状を正しく知り、早めに備えることが大切です。

本記事では、シニア女性の一人暮らしの現状から、具体的な生活費の目安、住まいによる違い、さらに老後資金を準備するための方法まで幅広く解説します。不安を軽減し、自分らしい暮らしを実現するための基本知識を身につけていきましょう。

この記事を読んでわかること
  • シニア女性の一人暮らしは増加傾向にあり、将来の生活費への不安が大きな課題となっている
  • シニア一人暮らしの生活費は月平均約14.5万円で、その内訳では食費が最も高い割合を占めている
  • 住まいの形態(持ち家・賃貸)によって老後の生活費に大きな差が生じる
  • 老後資金の準備は貯蓄だけでなく、iDeCoやNISA、個人年金、住宅資産の活用など複数の方法を組み合わせるのが効果的

シニア女性の一人暮らしの現状

シニア女性の一人暮らしの現状

シニア女性が一人暮らしをする割合は年々増加しています。この状況を理解し、将来に備えた生活設計を立てることが、安心して老後を過ごすための重要なポイントです。

具体的な生活費や必要な資金について詳しく見ていきましょう。

シニアおひとりさまの現状

内閣府の調査によると、2023年10月1日時点での高齢化率は29.1%です。65歳以上の一人暮らし世帯は男女ともに増加傾向にあり、特に女性の割合が高くなっています。

2020年の65歳以上人口に占める一人暮らしの割合は、男性が15.0%、女性が22.1%に達しており、女性は約5人に1人が老後に一人暮らしをしている状況です。この傾向は今後も続き、2050年には男性は26.1%、女性は29.3%に達すると予測されており、高齢者人口の約3割が一人暮らしになる見込みです。

内閣府|令和6年版高齢社会白書(全体版)「3 家族と世帯」

生活費が足りるのかという不安

老後の一人暮らしでは、健康面や孤独に対する不安だけでなく、経済的な問題も大きな課題となります。総務省の家計調査によると、65歳以上の単身無職世帯の家計収支では、毎月の支出が収入を約3万円上回っているのが現状です。

特に女性は男性よりも平均寿命が長く、受け取る年金額も少ない傾向にあるため、資金不足に陥るリスクが高まります。2019年に話題となった「老後に2,000万円の資金が必要」という問題も、近年の物価高騰によってさらに必要額が増えるのではないかという懸念が広がっています。

シニア女性が安心して一人暮らしを続けるためには、具体的な生活費を把握し、早めに対策を講じることが不可欠です。

シニア女性の一人暮らしの生活費はいくらかかる?

シニア女性の一人暮らしの生活費はいくらかかる?

シニア女性が一人暮らしを続けるうえで、毎月の生活費がいくらかかるかを把握することは重要です。収入と支出のバランスを正確に理解することで、将来の生活設計をより実現可能なものにできます。

以降では、具体的な金額と内訳を詳しく見ていきましょう。

シニア一人暮らしにかかる生活費は約14.5万円

総務省が発表した「2023年度の家計調査年表」によると、65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の消費支出は月額約14万5,430円、税金や社会保険料などの非消費支出は月額12,243円となっています。これに対して実収入は月額約12万6,905円であり、差し引きすると毎月3万768円の赤字状態で生活している計算になります。

この不足分は貯蓄を取り崩したり、親族からの援助などで補っているのが実情です。老後の安定した生活を維持するためには、この収支のギャップを埋める資金計画が必要となります。家計の現状を正確に把握することが、老後の生活不安を解消する第一歩といえるでしょう。

シニア一人暮らしの生活費の内訳

65歳以上の一人暮らし世帯では、どのような項目に生活費がかかっているのでしょうか。毎月の支出の内訳を正確に把握することで、無理なく節約できる部分も見えてきます。

【65歳以上単身無職世帯の生活費内訳】

項目金額(円)割合(%)
食料40,13927.6
住居12,5078.6
光熱・水道14,3989.9
家具・家事用品5,9634.1
被服及び履物3,1992.2
保険医療7,9995.5
交通・通信15,12510.4
教養娯楽15,27010.5
その他の消費支出30,83121.2
合計145,430100

参考:総務省|2023年(令和5年) 家計の概要

消費支出の内訳を見ると、最も大きな割合を占めるのは食費で、全体の約27.6%を占めています。続いて「その他の消費支出」が21.2%と高く、ここには交際費や諸雑費、介護費用や葬儀費用なども含まれています。第3位は教養娯楽費で10.5%、第4位は交通・通信費で10.4%となっています。住居費は8.6%と比較的低めですが、これは持ち家率が高いためと考えられ、賃貸住宅に住む場合はより高額になる傾向があります。

住まいによってシニア女性の一人暮らしにかかる生活費はどう変わる?

住まいによってシニア女性の一人暮らしにかかる生活費はどう変わる?

シニア女性が一人暮らしをする場合、住まいの形態によって生活費は大きく変わります。持ち家か賃貸かという選択は、老後の家計に長期的な影響を与えるため、それぞれのメリットとデメリットを理解しておくことが重要です。

持ち家の場合

総務省の家計調査によると、65歳以上の単身無職世帯の住居費は月平均約1万2,507円となっています。この金額が比較的低いのは、高齢者世帯の持ち家率が高いことが主な理由です。持ち家の場合、住宅購入時には大きな初期費用がかかりますが、定年退職までに住宅ローンを完済できていれば、老後の住居費負担は比較的軽くなります。

ただし、持ち家を維持するためには、毎年の固定資産税や都市計画税の支払いが必要です。マンションであれば管理費や修繕積立金も定期的にかかります。また、老朽化に伴う修繕やバリアフリー化のためのリフォーム費用なども老後の出費として考慮しなければならないでしょう。家を資産として残せる点はメリットですが、維持管理のためのコストは継続的に発生します。

賃貸の場合

によると、65歳以上の単身世帯の1ヶ月あたりの家賃は、公営の借家で1万8,689円、民営借家で5万847円、都市再生機構(UR)・公社の借家で5万9,814円となっています。賃貸住宅に住む場合、この家賃が毎月の固定費として大きな割合を占めることになります。

賃貸のメリットは、持ち家のような設備の修理費用や固定資産税などの負担がない点です。住居に関する維持費の心配が少なく、バリアフリー化された物件への住み替えも比較的容易です。しかし、デメリットとしては、家賃を生涯支払い続ける必要があり、更新月には通常1ヶ月分の家賃相当額が更新料として発生することが多いです。

また、高齢になるほど賃貸契約時の保証人確保が難しくなるという問題もあります。一人暮らしシニア女性にとって、保証人問題は深刻な課題となり、更新が断られるケースもあるため、早めに対策を考える必要があるでしょう。

不安を軽くするために今からできる生活設計

不安を軽くするために今からできる生活設計

シニア女性の一人暮らしにおける経済的な不安を軽減するためには、現役世代のうちから計画的な資金準備が欠かせません。

収入と支出のバランスを見直し、将来に向けた資産形成を始めることで、老後の生活に対する不安を和らげることができます。自分に合った方法で老後の備えを着実に進めていきましょう。

老後の生活費をシミュレーションする

老後の生活設計を始めるには、まず収入と支出のギャップを把握することが大切です。将来受け取れる年金額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できます。50歳以降に届く「ねんきん定期便」には、60歳まで現状の加入条件が継続すると仮定した年金見込額が記載されています。

この年金収入に対して、老後に必要な生活費を試算してみましょう。総務省の家計調査によると、65歳以上の単身無職世帯の月平均支出は消費支出と非消費支出を合わせると約15万7,000円です。これに対し年金などの実収入は約12万7,000円で、毎月約3万円の赤字となっています。この不足分を65歳から95歳までの30年間で計算すると、約1,080万円の老後資金が必要になります。持ち家か賃貸か、健康状態などによっても必要額は変わるため、自分の状況に合わせたシミュレーションが重要です。

生活費を見直して貯蓄を増やす

老後に備えるための第一歩は、現在の生活費を見直し、節約できる部分を探ることです。ここまで何度もお伝えしているとおり、老後の生活費は毎月15万円前後になる可能性があります。現在の生活費の内訳を把握し、無駄な支出を減らすことで貯蓄に回せる金額を増やせるでしょう。

効果的な貯蓄方法として、給与が入ったらすぐに一定額を貯蓄に回す「先取り貯蓄」がおすすめです。これにより、貯金を差し引いた金額で生活するという習慣が身につき、確実に資金を積み立てていくことができます。たとえば、老後30年間で600万円の資金が必要な場合、30年間で毎月約1.7万円の積立が必要となります。

ただし、日本円の価値下落やインフレのリスクを考慮すると、貯金だけに頼るのは十分とはいえません。資産運用など複数の手段を組み合わせた資金計画を立てることが望ましいでしょう。

iDeCoやNISAを利用する

老後資金を効率的に形成するには、資産運用も有効な選択肢です。預貯金は安全ですが利息が低い一方、投資では適切に行えばより大きな収益が期待できます。初心者でも始めやすい方法として、節税効果のあるiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)の活用を検討しましょう。

iDeCoは「自分で作る年金」とも呼ばれ、積立金は所得控除の対象となるため、税制上のメリットが大きい制度です。一方、NISAは2024年から非課税保有期間が無期限となり、投資枠も最大年間360万円に拡大しました。通常の株式売買では利益の約2割が税金として差し引かれるため、非課税で運用できるNISAは資産形成に有利です。

ただし、投資には元本割れのリスクもあります。長期的な視点で商品を選び、無理のない範囲で始めることが大切です。自分の年齢やリスク許容度に合わせた投資商品を選択しましょう。

個人年金や保険で補完する

貯金が苦手、資産運用は気が進まないという方には、民間の個人年金保険の活用も一つの方法です。保険商品のなかには、老後資金形成に適したタイプがあります。一定の年齢まで保険料を支払い続けることで、満期後に毎月一定額の給付を受けられるものです。

個人年金保険にはさまざまなタイプがあり、被保険者が生存する限り給付を受けられるタイプや、被保険者が死亡しても一定期間は給付されるタイプなど、目的に応じた選択が可能です。また、保険料は所得控除の対象となり、税制優遇も受けられるメリットがあります。

ただし、保険は途中で解約すると元本割れすることが多く、プランの変更も容易ではありません。加入前には複数の商品を比較し、メリット・デメリットをよく理解したうえで選択することが重要です。生命保険会社やファイナンシャルプランナーに相談するのも良いでしょう。

住宅資産を活用する

持ち家があれば、老後の住まいに心配がないうえに、住宅を資産として活用することも可能です。リースバックを利用すれば、持ち家を売却しても賃貸で住み続けることができます。

リースバックとは、自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社に家賃を支払うことで同じ家に住み続けられるサービスです。入院費用や老人ホームの入居資金など、まとまった資金が必要になった場合でも、住み慣れた家から退去せずに資金確保ができるメリットがあります。

また、リースバックを利用すれば、固定資産税などの維持費が不要になり、マンションの場合は管理費や修繕積立金の支払いもなくなります。ただし、自宅の所有者が変わるため、将来的に再度購入したい場合はその旨を契約時に確認しておく必要があります。健康で元気なうちに検討すると安心です。

おわりに

シニア女性の一人暮らしには、計画的な資金準備と適切な住まい選びが重要です。生活費の平均は月14.5万円程度ですが、住まいの状況により大きく変動します。老後資金の準備は早い段階から始め、貯蓄だけでなく投資や住宅資産の活用など複数の方法を組み合わせることがカギとなります。将来の不安を軽減し、安心して老後を迎えるためには、今からできる備えを着実に進めていきましょう。

※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。

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